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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科74巻13号

2002年12月発行

雑誌目次

特集 身体障害者福祉法と耳鼻咽喉科

1.15条指定の耳鼻咽喉科医

著者: 真鍋敏毅

ページ範囲:P.913 - P.916

 はじめに
 身体の不自由な人々の生活支援を目的とした法体系として,身体障害者福祉法(身障法と略)が施行されて50年余になる。昭和25年に施行されて以後,身障法の概念または基本理念は,国民の生活水準や世相を反映して変化してきている1)
 一方,障害を有する人々が身障法の保護の対象になるためには,障害認定規準に該当するか否かの診断を受けなければならない。障害の認定には同法第15条に規定された指定医師の診断が必要である。第15条指定医は,障害者が身障法の保護の対象になるか否かを決定する重大な責任がある。

2.聴覚障害

著者: 三辺武幸

ページ範囲:P.917 - P.923

 はじめに
 身体障害者福祉法は昭和24年12月26日に公布され,昭和25年4月1日に施行された。この法律は,身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するために,身体障害者を援助し,必要に応じて保護し,もって身体障害者の福祉の増進を図ることを目的として作られ施行された1,2)
 われわれ耳鼻咽喉科医は聴覚障害者のために,身体障害者手帳の診断書の作成を行う際,上記の法の精神を理解し対応すべきである。
 本稿は,身体障害者手帳(身体障害者福祉法の別表に定められた範囲の障害程度に該当すると認定された方に交付されるためのもので,障害者の自立と社会参加を促進する様々な福祉サービスを受けるために必要とされるもの)取得に必要な書類作成に必要な項目と,補装具(補聴器)申請のための注意点について述べる。

3.平衡機能障害

著者: 重野浩一郎

ページ範囲:P.925 - P.927

 はじめに
 身体障害者福祉法で規定する障害は永続するものとされているが,永続とはその障害が将来にわたって不変なものではなく,回復する可能性が極めて少ないものとされている。また,身体障害者福祉法は身体障害者の更生援護を目的としている。更生とは必ずしも経済的,社会的独立を意味するものではなく,日常生活能力の回復をも含む広義のものである。
 平衡機能障害は視覚障害,聴覚障害,音声・言語機能・そしゃく機能障害,肢体不自由や内部障害(心臓・じん臓機能障害など)に比べて,その認定の頻度は低い(表1)。しかし,脳血管障害における疾患の変遷や平衡機能障害の診断の進歩に伴い,認定対象者が増加することが予想される。
 耳鼻咽喉科医,脳神経外科医,神経内科医,リハビリテーション科医は,永続する平衡機能障害の診断を行うとともに,平衡機能障害の日常生活能力へ及ぼす支障度にも注目する必要がある。

4.音声・言語機能障害

著者: 牛嶋達次郎

ページ範囲:P.929 - P.932

 はじめに
 従来の医師の指定の状況から,医師の指定基準の見直し作業が進み,平成14年4月1日付けの改訂で各種の障害に関係のある診療科名が追加されている。これを受けて,日本耳鼻咽喉科学会としてはみずからの専門性を堅持するためのにも,耳鼻咽喉科指定医は聴覚障害以外の平衡機能,音声・言語機能,咀嚼機能の障害認定に積極的に関わる方針を打ち出した。音声・言語機能障害の認定に関わる指定医は,従来は耳鼻咽喉科以外には気管食道科,神経内科であったが,新たにリハビリテーション科,脳神経外科,内科,形成外科の医師も境界領域へ参入してきて,申請が可能となっている。
 そこで,音声・言語機能障害は耳鼻咽喉科の主要な専門領域の1つであることを再認識しつつ,障害認定に努力することを義務と考えねばならない。診断を拒否したり申請のための書類作成を拒絶することは行ってはならないのである。
 本稿では,学問的な解説よりも実際の申請の業務に役立てることに焦点を向けてまとめることにした。

5.身体障害者福祉法の診断書作成—嚥下障害

著者: 伊藤裕之

ページ範囲:P.935 - P.941

 はじめに
 厚生労働省で身体障害の認定基準の見直しが検討されているといわれ,近い将来,認定基準が改正される可能性があるが,本稿では,2002年10月現在の認定基準に沿って嚥下障害の診断書の書き方について述べる。認定基準は身体障害者福祉法とその関連法令に準拠したものであり,現行判定基準に医学的に不合理と思われるものもあるとしても,それは法制上の問題であり,医学的な問題はない点に留意する。
 ところで,身体に障害を有するものが公的医療・福祉サービスを受けるためには,身体障害者と認定されなければならない。脳血管障害などの嚥下障害においては,片麻痺や運動失調など複数の障害が重複している重複障害者が多いが,重複障害者であっても他の障害とは別に嚥下障害の認定が必要になる。

目でみる耳鼻咽喉科

鑑別に苦慮した甲状腺微小癌頸部リンパ節転移症例

著者: 楠威志 ,   森一功 ,   寺尾恭一 ,   村田清高

ページ範囲:P.910 - P.911

 最大径1cm以下の甲状腺微小癌については,子後がよく治療の必要がないとする報告1)もある。その反面,原発巣が微小癌であっても頸部リンパ節転移巣から発見されたオカルト癌の報告2〜4)も散見される。
 今回,われわれは鑑別に苦慮した甲状腺微小癌頸部リンパ節転移症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

過酷な研修医勤務時間は改善されるか—日本とアメリカの状況をめぐって

著者: 坂井真

ページ範囲:P.944 - P.945

 某医科大学の耳鼻科研修医が急死した事件をめぐって,研修医のあまりにも過酷な勤務状況が死亡と関連があるとして両親が過労死の認定を申請し認められたことが報じられた。その際,わが国では研修医の中には,今どきの中学生の携帯電話料金の1か月分程度の月2〜3万円の報酬で長時間の勤務に耐え,さらに生活費のために市中の病院当直さえもやらざるを得ない実態が新聞紙上で明らかにされた。研修のためとはいえ過酷労働に耐え忍んでいる若い研修医の存在を,世間一般の人に理解してもらうことに役立った事件ではなかろうか。
 実は研修医の過酷な勤務状態がアメリカでも問題になった事件があったと,American College of Surgeons(ACS)の会員向け月刊誌3月号に載っているので紹介したい1)

原著

上皮小体重複腺腫の1例

著者: 石原明子 ,   西嶌渡 ,   竹生田勝次 ,   角卓郎 ,   黒住昌史

ページ範囲:P.947 - P.950

 はじめに
 複数の上皮小体に腫大がある場合には,一般的に過形成を考えるが,稀にいずれもが腺腫の場合がある。このような症例は,術前の診断は困難であり,病理組織診断が重要となる。
 今回われわれは,初回手術で正常部位の上皮小体腫瘍を摘出した後にも上皮小体機能亢進症が改善せず,99mTc-MIBIシンチグラフィーで精査したところ異所性上皮小体腫瘍を認め,これを2回目の手術で摘出した後に血清カルシウム値が低下した上皮小体の重複腺腫の1例を経験した。その確定診断に至るまでの経緯を呈示し,若干の文献的考察を加えて報告する。

舌に発生した筋肉内脂肪腫の1例

著者: 中野友明 ,   愛場庸雅 ,   久保武志 ,   山田浩二 ,   和田匡史 ,   鵜山太一

ページ範囲:P.953 - P.955

 はじめに
 脂肪腫は非上皮性良性腫瘍の代表的疾患の1つで,全身の脂肪組織の存在する部分のいずれにも発生するが,背部,頸部,胸部などの皮下組織に多く発生し,口腔内に発生することは稀とされる1)。筋肉内脂肪腫は良性脂肪腫の稀な一型で,四肢の大きな筋に好発する。口腔内に発生することは稀で2),本邦では舌に発生した筋肉内脂肪腫は6症例の報告があるに過ぎない3)
 今回,われわれは舌に生じた筋肉内脂肪腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

急性咽頭側索炎に続発した成人の咽後膿瘍症例

著者: 山口宗一 ,   末野康平 ,   野村泰之 ,   鈴木伸 ,   小林大輔

ページ範囲:P.959 - P.962

 はじめに
 咽後膿瘍は咽頭後間隙に膿汁の貯留する病態であるが,近年では抗生剤の発達により耳鼻咽喉科の日常臨床の場で遭遇することは比較的少なくなっている。
 今回われわれは,急性化膿性咽頭側索炎に続発した成人の咽後膿瘍症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

眼痛を主訴とした陳旧性眼窩内側壁骨折の1例

著者: 馬場信太郎 ,   前田陽一郎 ,   渡邉弘子 ,   竹内直信

ページ範囲:P.965 - P.967

 はじめに
 眼窩内側壁骨折は保存的に経過をみていても複視などが改善する場合が多く,自然治癒が90%とも報告されている1)。一方で,眼窩内側壁骨折を放置したことによる晩発性の副鼻腔への障害も報告されており1〜3),本疾患に対する手術的療法の是非に関しては論議の一致をみていない。
 今回われわれは,受傷約20年後に眼痛および視野欠損が出現した陳旧性眼窩内側壁骨折の1症例を経験したので報告する。

連載 シリーズ/ここまでわかる画像

⑫甲状腺のエコー・CT・MRI

著者: 山田恵子 ,   五味直哉 ,   有賀明子 ,   澤野誠志 ,   河野敦 ,   小泉満 ,   山下孝 ,   杉谷巌 ,   鎌田信悦

ページ範囲:P.969 - P.977

 はじめに
 一般に最もよく知られている甲状腺の疾患であるバセドウ病は,検診で約1,000人に1人の割合でみつかるといわれている1)。橋本病はもっと頻度が高く,成人女性の20〜30人に1人にみられる。腺腫様甲状腺腫は触診で100人中5〜6人にみつかり,甲状腺癌は成人女性の1,000人に3人の割合でみつかるという。さらに,エコー(US)を行うと約半数に甲状腺の結節性病変がみられるといわれている。
 本稿では,正常甲状腺およびこれら甲状腺疾患のUS,CTおよびMRI所見について述べたい。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第74巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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