原著
Open型先天性真珠腫を合併した耳小骨奇形症例
著者:
高橋直一
,
長原太郎
,
松田秀樹
,
吉田高史
,
山岡秀之
,
稲葉鋭
,
佃守
ページ範囲:P.129 - P.133
はじめに
1965年,Derlackiら1)は先天性真珠腫について,①鼓膜所見が正常であること,②中耳炎の既往がないこと,③胎生期の扁平上皮の迷入もしくは未分化組織の扁平上皮化生によって生じるという3点をもって定義した。現在では,中耳炎の既往の有無については問わない立場をとる者が多いが2,3),後天性真珠腫と比較すれば耳漏やポリープをきたすほどの中耳炎の既往が少なく,発見されにくい。健診において,難聴や鼓膜を通しての白色塊の存在が指摘され,みつかることが多い4,5)。1988年,Michaels6)は先天性真珠腫をclosedタイプとopenタイプに分類した。Closedタイプは嚢腫構造を呈する真珠腫であり,openタイプは嚢腫構造をとらない膜様の重層扁平上皮からなるもので,近年先天性真珠腫の分類に一般的に用いられている。
耳小骨奇形と先天性真珠腫の合併例はときどき認められるが,その場合はopen型の形状を呈することが多い7)。
今回われわれは,アブミ・キヌタ関節離断型耳小骨奇形および先天性open型真珠腫を合併した1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。