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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科74巻4号

2002年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

中耳炎と副鼻腔炎を認めたChurg-Strauss症候群の1例

著者: 中村英生 ,   小幡昌史 ,   近藤宏美 ,   樋口豊 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.252 - P.253

 Churg-Strauss症候群(以下,CSSと略)は気管支喘息,好酸球増加および全身性血管炎を主徴とする一群の疾患であり,1951年にChurgとStrauss1)により結節性動脈周囲炎より分離独立された。CSSにおける耳鼻咽喉科疾患の報告はまだ少ないが,高度の好酸球浸潤を伴う難治性の中耳炎2),副鼻腔炎を併発することもあり注意が必要である。
 患者:32歳男性。

Current Article

内耳障害と一酸化窒素

著者: 工田昌矢

ページ範囲:P.255 - P.264

 はじめに
 内耳は聴覚・平衡覚を司る器官であり,その障害は臨床的には難聴,めまいを引き起こす。内耳障害の原因には感染,騒音,耳毒性薬剤,代謝性疾患,遺伝,老化など様々なものが挙げられるが,その病態を細胞レベルでみた場合,特に感覚細胞の障害様式については,共通する点が数多く認められる。近年,分子生物学の内耳への応用が盛んとなり,内耳の病態について分子レベルでの解明がなされるようになり,内耳障害のメカニズムも徐々に明らかになってきている。一方,近年,各種生物学的分野において活性酸素,一酸化窒素(NO)に代表される,いわゆるフリーラジカルの病態への関連が注目されるようになり,内耳の病的変化にもフリーラジカルがかかわっていることが示唆されている。これまで内耳では,正常の状態では,NOが感覚細胞の神経伝達,血流調節,内リンパの恒常性の維持に関与していること,さらに感染などにより過剰のNOが産生された場合にはNOが細胞障害性に働き,病態を惹起することなどが示唆されており,同様に,活性酸素に関してもNOとの相互作用により内耳障害を引き起こすと考えられている。このような現象は広く難聴,めまいを引き起こす病態に共通したものと推測され,内耳の機能障害とNO,活性酸素との関連を分子生物学的レベルで解析することは現在のところ有効な治療法の少ない難聴,めまいの予防,治療に大きく役立つものと思われる。
 本稿では,内耳障害の発現機構をフリーラジカル,特にNO,活性酸素との関連から述べるとともに,難聴,めまいの新たな治療法の可能性についても言及する。

原著

側頭骨浸潤をきたした急性骨髄性白血病の1例

著者: 宇良政治 ,   幸地綾子 ,   真栄田裕行 ,   大輪達仁 ,   野田寛

ページ範囲:P.267 - P.270

 はじめに
 急性骨髄性白血病(AML)は耳鼻科領域に症状が出現することがあり,側頭骨浸潤による報告例が散見される1〜15)
 今回われわれは,化学療法によって完全寛解を得ていたにもかかわらず,側頭骨への白血病細胞浸潤による再発をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

一側性感音難聴を呈したサルコイドーシスの1症例

著者: 稲井俊太 ,   渡邊健一 ,   八木聰明

ページ範囲:P.271 - P.273

 はじめに
 サルコイドーシスは原因不明の全身性の非乾酪性肉芽腫性疾患である。特に肺,心臓,眼,皮膚などを主病変とするが,神経系病変を伴うことも知られている1)。脳神経症状の発生頻度は顔面神経麻痺が最も多く,舌咽神経および迷走神経の麻痺,聴神経障害の順である2)
 今回われわれは,サルコイドーシス経過中に一側性感音難聴を呈した神経サルコイドーシスの1症例を経験したので報告する。

蝶形骨洞と篩骨洞に生じた腺様嚢胞癌の1例

著者: 武田靖志 ,   赤木博文 ,   結縁晃治 ,   小川晃弘 ,   西﨑和則 ,   服部央 ,   赤木成子 ,   國友忠義

ページ範囲:P.275 - P.278

 はじめに
 腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma)は,耳下腺,顎下腺,舌下腺などの大唾液腺や口腔,鼻咽頭の小唾液腺,気管,気管支,涙腺や乳腺などの腺組織に発生する腫瘍である1)。また,蝶形骨洞を占拠部位とする悪性腫瘍は多くなく2〜8),そのうち腺様嚢胞癌は稀9〜11)とされている。
 今回われわれは,蝶形骨洞と篩骨洞に生じた腺様嚢胞癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

咽頭痛を主訴とした咽後および縦隔気腫の1症例

著者: 神谷義雅 ,   名渡山愛雄 ,   宮城淳 ,   宇良政治

ページ範囲:P.280 - P.283

 はじめに
 皮下気腫および気胸は,気管切開術などの頸部手術の合併症としてよく知られている。しかし,手術および外傷の既往もなく皮下気腫,咽後気腫および縦隔気腫を呈する,いわゆる特発性縦隔気腫に耳鼻咽喉科医が遭遇することは稀である。咽頭痛は耳鼻咽喉科の日常診療で最も多い主訴の1つであるが,ときとして下咽頭腫瘍のような重篤な経過をたどる疾患の初期症状であることもあり,重要な症状である。
 われわれは,耳鼻咽喉科領域での視診検査では明らかな所見がないにもかかわらず,咽頭痛を強く訴えた咽後および,縦隔気腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

甲状腺癌再発と診断された頸部デスモイド腫瘍の1例

著者: 渡辺太志 ,   山本悦生 ,   篠原尚吾 ,   田辺牧人 ,   前谷俊樹 ,   藤原敬三 ,   菊地正弘

ページ範囲:P.285 - P.288

 はじめに
 デスモイド腫瘍は侵襲性線維腫症(aggressivefibromatosis)とも呼ばれ,全身の筋肉や腱筋膜より発生する比較的稀な線維性腫瘍である1)。本腫瘍は組織学的には良性であるが周囲組織に浸潤性に増大し,また術後に再発しやすいことから悪性腫瘍に準じた治療が必要とされている2)。しかし,本腫瘍の術前診断は困難なことが多い。
 今回,過去に摘出された甲状腺左葉の位置に発生し,術前に甲状腺癌再発と診断された頸部デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する。

歯科治療中に発症した縦隔気腫の1例

著者: 小野田恵子 ,   生井明浩 ,   山内由紀 ,   木田亮紀

ページ範囲:P.293 - P.297

 はじめに
 顔面や頸部の皮下気腫は頭頸部手術後にみられることがあるが,日常の診療においてはあまりみられない1〜4)。しかし,それらは顔面や頸部の腫脹を呈するため,原因によらず耳鼻咽喉科を受診することが多い。
 今回われわれは,某歯科医院で左下顎智歯の抜歯時に皮下気腫と縦隔気腫を発症した1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

サルモネラ菌による深頸部膿瘍の1症例

著者: 酒井昭博 ,   竹本成子 ,   日吉正明

ページ範囲:P.301 - P.304

 はじめに
 サルモネラ菌の感染症は急性の胃腸炎が最も多いが,中には菌血症に至り腸管以外の局所感染を起こすものがある1)。その中でも頭頸部領域の感染は珍しく報告は少ない2)
 今回われわれは,サルモネラ菌による深頸部膿瘍という稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

喉頭原発のsmall cell nenroendocrine carcinomaの1例

著者: 柳裕一郎 ,   窪田哲昭 ,   松井和夫 ,   門倉義幸 ,   華岡肇

ページ範囲:P.307 - P.310

 はじめに
 喉頭原発のsmall cell neuroendocrine carcinoma(以下,SCNCと略)は比較的珍しい疾患といわれ,喉頭癌の0.5%を占める1)。悪性度が高く,悪性リンパ腫,小細胞癌,類基底細胞癌,atypical carcinoid(以下,ACと略)との鑑別を要し,診断に免疫組織化学染色,電子顕微鏡所見を必要とする。
 今回われわれは,喉頭蓋より発生したSCNCの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

頭頸部腺様嚢胞癌の臨床統計的検討

著者: 篠昭男 ,   吉原俊雄 ,   佐藤美知子 ,   河野聖美 ,   志津木眞埋子 ,   西嶋文美

ページ範囲:P.313 - P.317

 はじめに
 腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma)は大唾液腺,小唾液腺に好発し,その臨床経過の特徴として腫瘍の発育は緩徐であるが局所再発や遠隔転移がしばしばみられ,長期にわたると予後が悪いとされている1〜3)
 今回われわれは,当科で経験した頭頸部腺様嚢胞癌27例について臨床統計的検討を行ったので,文献的考察を含め報告する。

鏡下咡語

郷愁と匂い

著者: 大山勝

ページ範囲:P.290 - P.291

 大連は,小学校から中学(3年)までを過ごした想い出深い都市である。1983年,戦後初めて,36年ぶりに大連を訪れた。藩陽の中国医科大学(旧満州医大)での気道分泌に関する講演会を終えて,大連鉄路病院(旧満鉄大連病院)を訪問し,講演するためであった。逗子で開業されていた故A先生ご夫妻のお誘いにより,先生の義弟で喀痰学の権威者,N先生ともご一緒させて戴いた。藩陽から大連への移動は,“あじあ号”で有名な汽車の旅であった。地平線に沈む真赤な太陽は,今も昔も変わらなかった。大連駅には日が暮れて到着,マイクロバスで宿舎へ向かった。ホテルは大連賓館(旧ヤマトホテル)の別館で,外国人専用に改築された建物と聞いた。長旅の疲れもあって,その夜は熟睡した。お陰で翌朝はいつもよりも早く目覚め,部屋のカーテンを開けて驚いた。36年前まで住んでいた4階建てのアパートが目の前にあった。夢ではないかと自分の目を疑った。紛れもなく“旧敷島ビル”であり,その位置関係からこのホテル別館は,昔の証券取引所のビルであることがわかった。その時の感激は,未だに忘れることができない。居ても立ってもおられず,ホテルから飛び出し,昔のわが家の方に不思議な力で引きつけられていった。ビルの外壁は,ベージュ色に塗り変えられていたが,窓枠の数や形は昔と同じであった。しかし,当時と比べてビル全体が小さく思われた。子供の感覚での大きさや距離,時間などは,現実以上に大きくあるいは長いものとして記憶されているようだ。講演終了の翌日は,中山広場(旧大広場)を散策し,大連賓館で昼食をご馳走になった。ホテルの内外装は,重厚,ヨーロッパ風で往時の姿そのままであった。室内のシャンデリアや石炭酸(床板やリノリウムの清掃,防腐用)のような匂いまで一緒であった。小学校時代に,父の会社(旧東託ビル)を訪れ,土曜日には,このホテルの食堂でライスカレーを一緒に食べたことが想い出された。そのときの匂いと味が今でも鮮烈に記憶として残っている。専門家によれば,ライスカレーは,カレーソースとご飯が別々に出されるもので,カレーライスは,ご飯の上にカレーソースがかかったものである。ヤマトホテルのそれは,紛れもなくライスカレーであり,母の得意なカレーは,ご飯にカレーソース,それも肉とじゃが芋の具が多く入ったものがかけられていてカレーライスであった。しかし,わが家では,皆がライスカレーといっていた。その味は,今でも天下一品であり,以来,カレーは私の嗜好食事のトップの座を占めている。このカレーは,本場インドからイギリス,フランスに渡り,伝統的なルーの手法が取り入れられて,とろみのあるカレーに変身し,日本に伝わったらしい。それも,インド,ヨーロッパからまず中国に入り,大連経由で日本へ伝えられたという。カレーがわが国に入って既に100年内外を経過している。国産のカレー粉が誕生したのは,1923年,本格的な固形のカレールーが発売されたのは1954年である。以来,カレーは,今日まで国民食として定着している。われわれは,大連でカレーの元祖に出合い,日本内地に先馳けて日常的に美味しい匂いや味を楽しんでいたことになる。よく故郷を想う時,生れ育った山河を瞼に浮かべ,親のこと,友や恩師の顔そして古里の匂いや味を思い出す。そこには懐かしい感情と憧れを伴っている。この故郷の記憶は,匂いの記憶に似ていて,いつも感情を伴っている。また,匂いは無意識の中に感情や精神に影響し,その匂いが“好き”とか“嫌い”とかいう情緒までも支配してしまう。匂いに関係する神経が,感情と記憶の中枢である大脳辺縁系や脳幹部などに作用して無意識的な活動や精神作用さらには情動などと深く係わっているからだ。子供時代のカレーの匂いと味の記憶は,まさにこれである。さて,辛味を出すスパイスには,胡椒,唐辛子,しょうが,にんにくなどがあるが,カレー粉はこれら30〜40種のスパイスとシナモン,ナッツなどの香料をブレンドしたものである。カレーは,インドの胡椒や肉桂,中国の唐辛子,しょうがなど東洋の香料,スパイスを原料として,長い年月を経て西洋的な嗜好食品に育った代表的なものである。最近,カレーを食すると,脳血流が30分後に5%増量し,上腹部の温度や心拍数が上昇することが報告されている(丁宗鉄)。これまでの西洋薬や食品には,未だみられなかった効果として注目されている。今後,冷え症の改善のみならず,高齢者の食生活や病院食などで,東洋医学的考えを導入した食事の献立,特にカレーのようにアジア文化(香料,スパイス)と漢方の特徴を併せもったメニューの導入が大いに期待される。
 カレー談義は,これくらいにして,かつて大連で出合った匂いと味への再会の旅を紹介したい。1999年,藩陽で中日消化器内視鏡学会が開催され,その際,大連二中時代の中国人同級生,U君(北京首都医科大消化器内科教授)(図)が会長として,われわれ家族を招待してくれた時のことである。

連載 シリーズ/ここまでわかる画像

④喉頭・頸部のMRI

著者: 黒木岳人 ,   中島格

ページ範囲:P.319 - P.326

 はじめに
 頭頸部領域においてCT,MRIに代表される画像診断はいまや必要不可欠なものになっている。今回のテーマは喉頭・頸部のMRIということであるが,MRIを撮影するうえで問題になるのは本当にMRIが必用か,すなわちCTではいけないのかということである。
 本稿では,頭頸部外科における実地臨床の立場からMRIの有効性について検討する。
 MRIはCTと比較して以下のような利点がある。①組織コントラストが高い。②任意の方向からの直接撮像が可能である。③T1,T2強調像の比較により,ある程度の生化学的情報が得られる。④X線被曝がない。逆に欠点は,①検査時間が長く,撮像できない被験者がいる。また,動きによるアーティファクトが生じる。②石灰化やガスの検出能が低いなどがある。MRIを撮影するうえではこの利点を生かせるような症例を選択する必用がある。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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