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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科74巻6号

2002年05月発行

雑誌目次

特集 私のクリニック

1.仙台・中耳サージセンターの紹介—短期入院による鼓膜・鼓室形成術を主体としたシステム

著者: 湯浅有

ページ範囲:P.341 - P.345

 はじめに
 1989年に当施設長(湯浅 涼)らが発表した鼓膜形成術(接着法)は,従来法に比べ極めて低侵襲であったため,日帰りまたは短期入院で施行可能となった。発表当時はマスコミに取り上げられたこともあり,全国から当時の勤務先であった東北労災病院に患者が殺到した。東北労災病院の退職後,1993年9月に全国からの接着法希望者に対処すべく,有床(2床)診療所,将監耳鼻咽喉科が開院され400例以上の接着法を中心とした中耳手術が施行された。1年後の1994年10月,病床の拡大(10床),CTなど設備の充実に伴い,石田名香雄元東北大学総長により「仙台・中耳サージセンター」と命名され,当施設が開設された(図1)。翌年の4月には日本耳鼻咽喉科学会より研修施設の認可を受け,現在に至るまでに約3,700例の中耳手術が当施設で施行されている。内訳としては鼓膜形成術が約半数を占めるが,約15%は真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術であり,この場合でも5泊の入院で手術可能である。
 本稿では,主に短期入院による低侵襲性中耳手術に関連した当施設のシステムを紹介する。

2.短期入院による無痛手術を軸とした効果的な低侵襲治療の追及

著者: 黄川田徹

ページ範囲:P.347 - P.349

 はじめに
 浜松耳鼻咽喉科サージセンターは,全身麻酔下の手術を短期間の入院で行うことを主目的とした耳鼻咽喉科専門の医療施設で,平成3年1月に設立された(図1)。筆者は,その前身となるクリニックを昭和63年に浜松市に隣接した浜北市に開院し,わずか50坪の小さなクリニックで,外来診療開始前に週2例ほど慢性中耳炎,副鼻腔炎,鼻アレルギーなどを対象とした全身麻酔下の手術を行ってきた。
 開業前は,松戸市立病院および浜松医科大学において約10年の間,専ら悪性腫瘍の外科的治療,特に遊離筋皮弁による頭頸部再建術に取り組んできた。したがって開業後の対象疾患は,専門外ともいえる慢性副鼻腔炎や鼻アレルギーなどの慢性炎症性疾患が中心であった。それまで鼻科領域の慢性炎症性疾患に対しては,外来患者の多くを占める小児にも適応可能な有効な治療手段がなく,一時的に症状を改善させるためだけの保存治療を漫然と継続することに物足りなさを感じていた。このようなことから自然に,小児にも適応可能であり,開業形態の中で実施可能な,低侵襲,かつ有効性の高い手術治療に興味をもつようになった。最初に整形外科用の内視鏡を購入し,手術的に開窓した副鼻腔粘膜を術後経過の中で観察するうち,わずかに環境を変化させただけでダイナミックに変動する粘膜に,驚きとともに強く惹きつけられたことを今でも記憶している。
 浜北市における3年間の経験を基に,さらに充実した設備の中での新しい治療の模索と実施を目的として,当サージセンターを設立した。当時は,本邦において,day surgeryあるいはサージセンターといった用語も使用されておらず,他科も含めて,全身麻酔下の短期入院を目的とした専門施設は皆無であったと思われる。したがって,参考となる対象がなく,全く手探り状態の中での開設であった。現在まで約10年が経過したが,全身麻酔の総手術件数は8,000件を超える。その間,2〜3年ごとに増改築を繰り返し,現在では敷地1,600坪,総坪数約700坪の建物の中に,19床を有する施設へと発展した。

3.開業医にとっての連携診療の意義および治療のソフトウェア

著者: 朝隈真一郎

ページ範囲:P.351 - P.355

 はじめに
 私は,耳鼻科医になって今年で30年になる。この間,初めの15年間は大学で仕事をし,後の15年間は開業医として働いてきた。ある意味で節目のときを迎えたような気持がする。そのような時期に「私のクリニック」というテーマで原稿を依頼された。日常の診療をしている,その根幹にある理念について書くようにとのお話であった。理念というほどの大袈裟なものはないが,15年の開業医としての活動を振り返って感じている2つのことを述べたいと思う。1つは,開業医として働くうえで他の医師と連携することの重要性,もう1つは診療を行うときの考え方,ソフトウェアの重要性である。これから開業なさる若い先生方のご参考になれば幸いである。

4.めまい診療のルーチン化を目指して

著者: 江上徹也

ページ範囲:P.359 - P.362

 当院は今年開業20周年の節目を迎える。開業当初に設定した理念は現在も通用するものと確信して継続しているが,具体的な方法は修正されているものも多い。この間の診療内容の変遷と現況を報告し,今後の耳鼻咽喉科開業医のあり方を考えるうえでの参考にしていただくことを期待したい。

5.IT(情報技術)化の流れの中で

著者: 白戸勝

ページ範囲:P.363 - P.367

 はじめに
 当院は開業して10年足らずの小医院である。一般の耳鼻咽喉科開業医と多少違うところといえば,めまい診療に力をいれていることと,パソコンを駆使して現在のIT(情報技術)化の波に乗り遅れないよう努めていることであろうか。
 以下にその概略を述べ参考に供したい。

6.私のクリニック

著者: 今一郎

ページ範囲:P.369 - P.376

 はじめに
 診療所の所在地青森市は,東北地方の最北県の県庁所在地で,人口約29万人の小都市であり,以前は善知鳥村と呼ばれておりました。本州の最北端に位置している関係で,平野部の積雪期間は約4か月あります。夏の気候は冷涼ですが,30度を超す日が十数日あります。このような気候条件のため,呼吸器系疾患が多くみられます。

目でみる耳鼻咽喉科

副咽頭間隙に発生したCastleman病とバイザー皮弁による下顎正中離断摘出法

著者: 稲上憲一 ,   間島雄一

ページ範囲:P.338 - P.339

 Castleman病は1956年Castlemanら1)が胸腺腫に類似した孤立性の縦郭のリンパ節過形成として報告した。この疾患には,リンパ節腫大が限局している限局型と多発性リンパ節腫大を伴う全身型(あるいは多中心型)の2型がある。この病理学上の違いは,前者が硝子化を伴った血管増生の強いhyaline vascular type (HV型)が大部分(約90%)を占めているのに対し,後者は形質細胞増生の強いplasma cell type (PC型)がほとんどを占めている点である。その共通点はリンパ節の基本構造が保たれていること,濾胞の過形成が著明であること,血管の増生がみられることである。われわれは副咽頭間隙に発生したCastleman病を経験したので,その手術法とともに報告する。
 症例:24歳男性。主訴:なし。既往歴:特にな①。家族歴:特になし。現病歴:2000年1月下旬,血疾があり近医を受診した。出血点は不明だったが,顔面の腫脹を訴えたためCT,MRIを施行した。画像で右副咽頭に腫瘍を認め,当科に紹介された。初診時所見:顔面の腫脹はなく変形と考えられた。脳神経麻痺はなく,軽度の中咽頭側壁の腫脹を認めた。

鏡下咡語

Global Standard

著者: 村上泰

ページ範囲:P.380 - P.382

 最近global standardという言葉をよく耳にする。TVなどのマス・メディアでもいろいろな職種の方々が使っておられるし,国会質疑などの公の場で用いられることも多いようである。英和辞典で調べると,globalはglobe (球体,天体)の形容詞で,球形の,全世界の,世界的な,包括的な,全面的な,の意である。一方,standardは規格,標準を意味するから,「global standard」は世界的な標準すなわち「国際規格」と訳すべきなのであろう。しかし和英辞典で国際規格を引くと,「international standard」であってglobalという用語は使われていない。とすると「人類共通の一般常識」「全世界において当然の事項」とでも訳すのがよいのであろうか。それらを堅苦しくなく表現する用語として,われわれ日本人には使い勝手のよい言葉ではあるが,厳密にいうと正しい英語ではないとする言語学者もいる。しかし,国際線のスチュワーデスも使っているので,既に国際用語になってしまっているのであろう。
 昨年の6月に南仏カンヌで耳真珠腫に関する国際学会があり,教室の若い方々と4家族9人で南仏観光を兼ねて参加しようと相談がまとまり,私が全旅程を企画することになった。パリ市内観光を早々に済ませてから超特急TGVでアヴィニヨンに到着。ここを起点にしてフォンテーヌ・ド・ヴォクリューズ,ゴルド,ルション,セナンクなど芳香最盛期のラベンダー街道沿いに点在するリュベロン地方の村々を堪能した。そこからニースへ移動し,バスとローカル鉄道を利用してフェラ岬のロスチルド邸別荘地サン・ジャン・カップ・フェラからサン・ジャン湾沿いの遊歩道を下って気候温暖な保養地ボリュー・シュル・メール,ヴィルフランシュ・シュル・メールなどパステルカラー一杯の港町を楽しんだのであった。しかし学会前の短いスケジュールであったので,たった2泊しかできず後ろ髪を引かれる思いで通過してしまったパリへの思いを断ち切れず,今年こそは花の都を心ゆくまで楽しもうということになり家内と計画を練り直し,勇躍出発したのである。

原著

喉頭・気管に発生した髄外性形質細胞腫の1例

著者: 武田靖志 ,   小川晃弘 ,   赤木博文 ,   結縁晃治 ,   西﨑和則 ,   服部央 ,   赤木成子 ,   吉野正

ページ範囲:P.383 - P.387

 はじめに
 形質細胞は体内に広く分布しているが,その腫瘍性病変である形質細胞腫はほとんどが骨髄に発生し,骨髄外に発生する例は4〜5%と報告されている1〜3)
 今回われわれは,喉頭から気管に生じた髄外性形質細胞腫を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

突発性難聴との鑑別を要した心因性難聴急性発症の2症例

著者: 熊田千栄子 ,   狩野章太郎 ,   山岨達也

ページ範囲:P.389 - P.392

 はじめに
 心因性難聴は,機能性難聴または非器質的難聴と呼ばれる疾患群の一病型と考えられている。急性に発症した場合の鑑別診断として,突発性難聴やその他の急性感音難聴が挙げられる。
 今回,われわれは急性に難聴が出現し,初診時での通常の純音聴力検査と問診では突発性難聴との鑑別が困難であった心因性難聴の2症例を経験したので報告する。

耳下腺浸潤をきたした外毛根鞘癌

著者: 長谷川信吾 ,   毛利光宏 ,   丹生健一 ,   天津睦郎

ページ範囲:P.393 - P.396

 はじめに
 外毛根鞘癌(trichilemmal carcinoma)は比較的稀な毛包系悪性腫瘍であるが,その中で頭頸部は好発部位である1)。本腫瘍の多くは比較的早期に皮膚科で治療され,上皮内にとどまっているものでは外科的切除により予後は良好とされている2)。そのため耳鼻咽喉科の日常臨床で遭遇することはほとんどない。
 今回われわれは右耳下部に発生し耳下腺に浸潤した同腫瘍症例を経験したので,その臨床像,治療経過について報告する。

連載 シリーズ/ここまでわかる画像

⑤唾液腺のエコー・CT・MRI

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.399 - P.408

 はじめに
 唾液腺は耳下腺,顎下腺,舌下腺の大唾液腺と口腔内には無数にある小唾液腺が存在している。唾液腺には様々な疾患がみられ,腫瘍においてもその組織像は極めて多彩である。各疾患の診断は画像診断のみで行えるものではなく,臨床所見,血液検査,細胞診,組織診断が必要となるものも多い。しかし,極めて特徴的な画像所見を示す疾患や,種々の画像検査を組み合わせることにより診断が可能な疾患も多くみられる。さらに唾液腺腫瘍では,病理診断の推測という術前の質的診断にも有用な情報をもたらす。唾液腺疾患は多岐にわたり,治療法も薬物療法から手術療法まで様々である。表1に主な疾患を示す。
 本稿では,正常唾液腺および実際の疾患の画像所見を述べたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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