icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科74巻7号

2002年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

第1鰓裂由来の側頸嚢胞,側頸瘻の2症例

著者: 及川敬太 ,   古田康 ,   八木克憲 ,   大谷文雄 ,   須藤敏 ,   福田諭

ページ範囲:P.420 - P.421

 第1鰓裂由来の側頸嚢胞,側頸瘻は比較的稀な疾患であり,症状は先天性耳瘻孔に類似しているものの手術方法は大きく異なり,顔面神経を確認したうえで摘出する必要がある。
 今回われわれは,2例の第1鰓裂由来と考えられる側頸嚢胞,側頸瘻の治療を通して,それらと顔面神経との位置関係を確認し得たので報告する。

Current Article

IgEとアレルギー性鼻炎—クラススイッチから遺伝子治療の可能性まで

著者: 藤枝重治

ページ範囲:P.424 - P.432

 はじめに
 アレルギー性鼻炎の病因抗原の大部分は,花粉やダニなどの吸入系抗原である。吸入系抗原に対するIgE抗体の多くは,Fcεレセプターを介して肥満細胞や好塩基球の細胞膜上に固着している。IgEが固着した肥満細胞や好塩基球は鼻粘膜に広く分布し,抗原が鼻腔より吸入されると抗原特異的IgEと結合しIgE同士を抗原を介して架橋させ,それにより細胞内シグナルが作動し,ヒスタミンを代表とするケミカルメディエイターを放出させ,くしゃみ,鼻汁,鼻閉を引き起こすとされている。現在まで,抗原特異的IgEがどこで,どのようにして産生されるかについてはよくわかっていない。
 本稿ではIgEへのクラススイッチ機構や鼻粘膜に存在するIgEの産生および供給,臨床的意義,IgEに限定した治療戦略,とりわけ遺伝子治療の可能性に関して述べる。

原著

リンパ腫関連血球貪食症候群を発症した鼻性T/NK細胞リンパ腫の1例

著者: 郷充 ,   氷見徹夫 ,   播摩谷敦 ,   原渕保明

ページ範囲:P.433 - P.436

 はじめに
 鼻性T/NK細胞リンパ腫は,耳鼻咽喉科領域における悪性腫瘍の中でも,その病理診断の困難さや多様な臨床症状により診断・治療に苦渋することが多い。
 今回われわれは,治療経過中にリンパ腫関連血球貪食症候群(lymphoma associated with hemo-phagocytic syndrome:LAHS)を発症した症例を経験したので報告する。

耳下腺木村病に再発を繰り返す口腔・咽頭好酸球浸潤性肉芽を認めた1例

著者: 武田靖志 ,   赤木博文 ,   小川晃弘 ,   結縁晃治 ,   西崎和則 ,   山下安彦 ,   岡本伸 ,   吉野正

ページ範囲:P.439 - P.442

 はじめに
 木村病は頭頸部を中心とする腫瘤として,しばしば末梢血の好酸球増多やIgEの高値を認める良性疾患である。
 今回,木村病に末梢血好酸球増減と消長する口腔咽頭肉芽病変を認めた症例を経験したので報告する。

透析患者に対し胸鎖乳突筋皮弁(下方茎)にて再建を行った頭頸部癌の1症例

著者: 高橋悦 ,   松浦一登 ,   古川正幸 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.445 - P.448

 はじめに
 現在,頭頸部癌手術における組織欠損部には,有茎・遊離筋皮弁による再建術が行われ,良好な結果が得られている。しかし,合併症を有する患者に対し,再建を含めた長時間手術を行う場合には周術期管理を十分に配慮し,症例に応じた再建方法を検討する必要がある。
 今回われわれは,人工透析中に,右顎下部に皮膚浸潤を含む扁平上皮癌の患者に対し胸鎖乳突筋皮弁(下方茎)を利用した再建手術を施行し,良好な結果が得られたので若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部皮下に生じた気管支性嚢腫の1症例

著者: 長谷川敦子 ,   今中政支 ,   愛宕利英 ,   林伊吹 ,   牧本一男 ,   竹中洋

ページ範囲:P.451 - P.454

 はじめに
 気管支性嚢腫は胎生期に前腸の異常分化により発生するといわれており,大部分は気管,気管支近傍または後縦隔に生じる先天性嚢腫である1)。皮下に生じることは稀であり,本邦ではわれわれが検索した限りでは23例が報告されている。
 今回,頸部皮下に生じた気管支性嚢腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

乳幼児急性乳様突起炎の4例

著者: 糸数哲郎 ,   田中克典

ページ範囲:P.461 - P.465

 はじめに
 抗生剤の普及に伴い急性乳様突起炎は減少しているといわれているが1,2),皆無となったわけではなく,小児の急性中耳炎の合併症として念頭におく必要のある疾患である。
 われわれは,過去2年間に4例の乳様突起炎を経験し,いずれも鼓膜の切開排膿と抗生剤の点滴静注などの保存的治療で治癒することができた。今回これらの症例を報告するとともに,乳幼児の急性乳様突起炎に対する治療法について,若干の文献的考察を加えて報告する。

ビタミンE単独欠乏によるフリードライヒ型失調症症例の神経耳科学的所見

著者: 今内豊 ,   高野澤美奈子 ,   室伏利久

ページ範囲:P.469 - P.472

 はじめに
 特発性のビタミンE単独欠乏により,フリードライヒ失調症型の脊髄小脳変性症様症状が小児に発症することが1981年にBurckら1)により報告され1987年にはYokotaら2)により成人発症例が報告された。αトコフェロールの血中濃度の維持は,αトコフェロール転移蛋白(αTTP)がαトコフェロールを選択的に摂取し,肝臓で合成される超低比重リボ蛋白(VLDL)に選択的に取り込ませて再び血中に戻すことによって保たれている。本症では,αTTP遺伝子の変異によりこの機構が障害され血清ビタミンEが低値になると考えられている3)。現在まで家族例,孤発例を含めて50例以上1〜8)が報告されているが,神経耳科学的な考察はなされていない。
 今回われわれは,ビタミンE単独欠乏によるフリードライヒ型失調症症例の神経耳科学的所見を検討する機会を得たので報告する。

ナビゲーションシステムが有用であった鼻・副鼻腔神経鞘腫の1例

著者: 堀池修 ,   今手祐二 ,   田原哲也 ,   小野信周 ,   山下裕司 ,   河内茂人

ページ範囲:P.473 - P.477

 はじめに
 近年,ナビゲーションシステムが内視鏡下副鼻腔手術に応用されるようになってきた1〜6)。これまでに蝶形洞手術やオリエンテーションの困難な再手術症例などでの使用経験が報告されている4〜6)
 今回われわれは,ナビゲーションシステムを用いて摘出した鼻・副鼻腔神経鞘腫の1症例を経験した。本症例では,ナビゲーションシステムを併用した内視鏡下鼻内手術が有用であった。その診断,治療,経過などを呈示し,若干の文献的考察を加えて報告する。

内視鏡下に開放した斜台粘液嚢胞の1例

著者: 盛實勲 ,   有友宏 ,   浅井真紀 ,   岡田亜紀

ページ範囲:P.478 - P.482

 はじめに
 斜台はトルコ鞍背から後方へ続くなだらかな傾斜部にあり,通常は骨髄で満たされ含気化することは少なく,同部に粘液嚢胞が生ずることは極めて稀で,今回検索した限りでは過去に2例しか報告がなかった1,2)
 診断にはCT,MRIが欠かせないが,骨欠損を伴う場合,脊索腫など腫瘍との鑑別が困難で生検を必要とする。

鏡下咡語

ダンシングクラブ

著者: 野村恭也

ページ範囲:P.458 - P.459

 2000年の6月,この年はボストンで3年ごとに開催されるHFS Societyの学会があるので行くことにした。HFSとはHarold F.Schuknecht(1917〜1996)の頭文字で,先生の特徴ある書体のサインHFSは,そのままプログラムの表紙に使われた(図1)。この会の名称は先生のご存命中にThe International Otopathol-ogy Society (The Schuknecht Society)に変更され,現在も3年ごとに開催されているが,長年の習慣でついHFS Societyと口から出てしまう。この年は40年近くお付き合いのあるRobert Kimura先生の退職記念会も兼ねており,私にとっても特に大事な会であった。ワシントン経由でボストンへ行く便を選んだが,当時(現在も)ワシントンには東大耳鼻咽喉科から小崎寛子博士がご夫君とともにNIHに留学中であるので,できればお目にかかりたいし,またスミソニアン博物館も訪れたいと思い,ボストンに行く前にまずはワシントンを訪問することにした。
 小崎夫妻が空港まで出迎えに来てくれた。そして今夜は「ダンシングクラブへ行きましょう」と彼女は言う。たいしたもんだ。アメリカに来てまだ1か月しか経っていないのに,こちらの生活にすっかり溶け込んでいる感じなのだ。ふと私が留学していた1962年の頃を思い浮かべた。ボストンへ来て1か月の頃は何をしていたか。7月1日からMassachusetts Eye and Ear Infirmaryに出勤し始めた。6月初めに日本から船で送った荷物はまだ着いていない(12月に着いた)。英語もよく聞き取れない。現在と違い,当時の日米間は生活,習慣などの面でも大きな開きがあったのだ。Cul-ture shockの連続であった。とても遠来の客を車でダンシングクラブへお連れするなど出来る状態ではなかった。しかし,ほどなく事情が明らかとなった。

連載 シリーズ/ここまでわかる画像

⑥脳のMEG非侵襲計測

著者: 外池光雄

ページ範囲:P.483 - P.491

 はじめに
 嗅覚や味覚は化学感覚といわれているが,どちらの感覚についてもこれまで客観的計測の困難さ,刺激法に対する開発の困難性があり,匂いや味は現在においても何が刺激の基本量であるかさえ不明瞭である。一般に嗅覚や味覚の感覚は個人差が大きく,感覚の標準化が難しいのが実情である。さらに,匂いや味を正確に計測できるセンサーや測定器はまだ開発途上にあるなど,匂いや味が抱えている問題は複雑,かつ深刻である。これは,匂いや味による刺激が化学物質による物質刺激そのものであって,光(電磁波の波)や音(空気の粗密波)のように統一的に定義される基本物理量が未だ不明だからである。この問題は嗅覚や味覚に関して最も本質的なものであるが,われわれ人間が匂いや味をいかに知覚・認知しているかをもっと客観的に調べることができるなら,何が匂いや味の基本量であり,それらが生体内ではいかに情報処理されているかを解明することができるであろう。
 近年,解明が遅れていた嗅覚の受容機構に対する研究が,わが国も含め欧米の先進国で急速に発展し,匂いリセプターに関するホットな話題が学術発表されるなど,最近,匂いの話題が生理学の基礎医学の学会でもフィーバーしている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?