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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻1号

2003年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

腫瘤形成により偶然発見された頸部刺入異物の1症例

著者: 音在信治 ,   赤埴詩朗 ,   猪原秀典 ,   久保武

ページ範囲:P.8 - P.9

 異物肉芽腫は原因異物の種類,感染の有無,経過時間により様々な臨床症状を呈する。外傷の病歴が明らかな症例では診断は容易であるが,そうでない場合は診断が困難である。

 今回われわれは,腫瘤形成により偶然発見された頸部刺入異物の1症例を経験したので報告する。

Current Article

前庭誘発筋電位(VEMP)

著者: 室伏利久

ページ範囲:P.11 - P.20

I.はじめに

 前庭誘発筋電位(vestibular evoked myogenic potential:VEMP)は頸筋,中でも胸鎖乳突筋(SCM)に音響刺激などによって誘発される筋電位であり,その名前からもわかるように,今日,前庭機能検査として位置づけられている。本反応の最初の報告は,1992年になされたColebatchら1)によるものである。依然未解決の問題,議論の分かれている問題もあるが,徐々に前庭機能検査として普及しつつある1~9)

 本稿では,これまでに明らかになったことを中心に解説する。なお,以下の記述では前庭性誘発筋電位の略称としてVEMPを用いるものとする。

原著

両側上半規管裂隙症候群(superior canal dehiscence syndrome)の1症例

著者: 鈴木光也 ,   加我君孝 ,   中村雅子 ,   中村直也 ,   江上直也 ,   小倉恒子

ページ範囲:P.23 - P.26

I.はじめに

 瘻孔症状とは,半規管膨大部または耳石器の感覚細胞が圧刺激により病的に刺激されて生じる前庭症状である1)。圧刺激のかわりに強大音によりこれが生じた場合はTullio現象と呼ばれている2)。瘻孔症状およびTullio現象は,真珠腫性中耳炎によって内耳骨包が破壊された場合や外リンパ瘻症例においてしばしば観察される1,3)。近年,上半規管骨迷路の中頭蓋底部分に特発性の骨欠損が生じ,瘻孔症状やTullio現象をきたす上半規管裂隙症候群(superior canal dehiscence syndrome)が報告された4)。この症候群は新しい疾患概念であり,本邦において未だ報告はない。

 今回われわれは,神経耳科学的所見および高分解能CT検査により,上半規管裂隙症候群と診断された症例を報告する。

鼻・副鼻腔血管性腫瘍の2症例

著者: 馬場信太郎 ,   牛尾宗貴 ,   木村美和子 ,   石橋敏夫

ページ範囲:P.27 - P.30

I.はじめに

 鼻・副鼻腔における血管性腫瘍病変はその存在部位から術前診断が困難な例もあり,手術に際して予想を超える出血がみられることがしばしばある。

 今回われわれは,初診時に一側性副鼻腔炎と診断し,その後,鼻・副鼻腔血管性腫瘍が明らかになった2症例を経験したので報告する。

ガッセル神経節ブロックを併用し疼痛緩和を行った末期上顎癌患者の1例

著者: 小原健 ,   高橋雅彦 ,   山中啓之 ,   島田哲 ,   中保利通 ,   山室誠

ページ範囲:P.33 - P.35

I.はじめに

 頭頸部癌の患者の80%は癌による痛みを経験するといわれている1)。モルヒネを主体としたWHOガイドライン2)を頭頸部癌患者に用いて疼痛緩和を行い,良好な結果が得られたとする報告は多い1,3,4)。一方,骨および神経に浸潤のあるものの疼痛緩和は困難であったという報告もある5,6)

 今回,モルヒネおよび鎮痛補助薬で疼痛緩和は困難であり,日常生活動作(activity of daily living:ADL)制限をきたした上顎癌の患者に神経ブロックを併用し,良好な結果が得られた症例を経験したので報告する。

咬筋内血管腫の1例

著者: 高橋卓也 ,   柴田裕達 ,   毛利麻里 ,   佐藤英明 ,   内沼栄樹

ページ範囲:P.39 - P.43

I.はじめに

 血管腫は,頭頸部領域において口唇,舌,頬粘膜に好発するが,稀に咬筋や僧帽筋などの筋内に発生する1)。咬筋内血管腫は,咬合すると腫瘍が突出することが多く,咬筋部勃起性血管腫とも呼ばれる。

 今回われわれは,咬合により突出する咬筋内血管腫を経験したので,考察を加えて報告する。

舌癌頸部リンパ節転移と頸部リンパ節結核との合併例

著者: 野々山勉 ,   藤田健一郎

ページ範囲:P.49 - P.52

I.はじめに

 BCGの普及,化学療法の進歩により減少傾向にあった結核は,近年その減少率が鈍化し,1997年には43年ぶりに罹患率が反転上昇し,新規登録患者数も38年ぶりに前年より増加した1)。さらに,1999年7月には厚生省から「結核緊急事態宣言」が出され,再興感染症として注目されている。一方,悪性腫瘍患者も中高齢者を中心に増加傾向にあると思われる。かつて結核と悪性腫瘍は拮抗すると考えられていたが2),両者の合併例も多数報告されている3)

 今回われわれは,舌癌の頸部リンパ節再発に頸部リンパ節結核を合併した症例を経験したので報告する。

131I治療を施行した甲状腺癌遠隔転移例の検討

著者: 中野宏 ,   中井茂 ,   大西弘剛 ,   上田大 ,   島田剛敏 ,   四ノ宮隆 ,   久育男 ,   牛嶋陽

ページ範囲:P.53 - P.57

I.はじめに

 分化型甲状腺癌は一般に発育が緩徐であり,比較的予後良好とされている。治療法は,化学療法や外照射による放射線治療は効果が期待できず外科的摘出が主体となる。遠隔転移をきたした症例に対しては131Iによるアイソトープ治療が施行されることが一般的であり,その有用性については既に多くの報告がある。

 今回われわれは,過去 7年間に131Iによるアイソトープ治療を施行した分化型甲状腺癌遠隔転移例20例について,安全性,治療効果などについて検討し,その適応について再考した。

急性期頸髄損傷例における嚥下障害の発症機序と機能訓練

著者: 伊藤裕之 ,   金子浩治 ,   冨田昌夫 ,   北村啓 ,   加藤邦孝 ,   鈴木康司

ページ範囲:P.58 - P.62

I.はじめに

 1930年代に嚥下障害に対して機能訓練が行われた報告があるが1),嚥下障害の機能訓練が普及し始めたのは1980年以降である。今日では嚥下障害に対する機能訓練の有効性に疑いはないが,機能訓練の効果発現機序や適応は明らかでないものが多い。

 最近われわれは,嚥下障害を合併した若年者の頸髄損傷を治療する機会を得て,頸椎前方固定術を受けた急性期脊髄損傷にみられた嚥下障害の発症機序と,嚥下障害に対する機能訓練の効果発現機序について若干の知見を得たので報告する。

皮膚瘻孔を生じた亜急性甲状腺炎(de Quervain)の1例

著者: 佐野真幸 ,   萩沢美帆 ,   藤城芳徳 ,   岩崎真一 ,   阿部和也

ページ範囲:P.63 - P.65

I.はじめに

 亜急性甲状腺炎は,1894年にMygindによりthyroiditis acuta simplexとして初めて報告され1,2),その後1904年にde Quervainが文献より67例を集め,その特異的な病理像を急性非化膿性甲状腺炎として報告したものである2~4)

 熱発,甲状腺の疼痛,全身症状をもって急激に発症し,放置していても数か月で自然治癒することを特徴とする疾患とされる。

 しかし,今回われわれは,無痛性の前頸部腫脹として発症し,自然治癒せず経過中に皮膚瘻孔を形成,病理学的に亜急性甲状腺炎と診断された非典型的な症例を経験したので,その発症機転について文献的考察を加え報告する。

ICT(infection control team)と医療情報部の立場からみた耳鼻咽喉科病棟の多剤耐性菌の現状―2001年度1年間の実践より

著者: 中川肇 ,   渡邉行雄 ,   林隆一 ,   境美代子

ページ範囲:P.67 - P.72

I.はじめに

 近年,病院のリスクマネージメントの1つとして,また対費用効果の点から院内感染対策は重要な問題となっている。各病院においてチームを編成し,多剤耐性菌をはじめとする病原体の検出状況の分析,院内感染予防の対策がなされ,その結果について情報開示がなされている。マニュアルも整備され,他院への参考のために公開もされている1,2)。しかし,依然として院内感染の発生が散発的に報道されている。また,いったん院内感染が発生すると,莫大な時間的,経済的損害および心理的な障害が患者のみならず病院スタッフにも生じる。一方,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は医療従事者の鼻腔3),さらには高齢者では咽頭からも検出され4),耳漏や喀痰からもしばしば検出される。また,通常は気道には常在化しないとされる緑膿菌は,無症候性の咽頭からも検出される5)。ところが,耳鼻咽喉科病棟は混合病棟であることがほとんどで,他科患者からの感染が危惧される。

 今回われわれは,当院全体(以下,全体と略)と耳鼻咽喉科病棟(以下,病棟と略)における多剤耐性菌の検出の状況を報告するとともに,院内感染予防対策と耳鼻咽喉科特有の問題点について検討を加える。

連載 シリーズ/耳鼻咽喉科診療に必要な他科の知識

①小児科:気管支喘息,気道感染症

著者: 鈴木五男

ページ範囲:P.73 - P.80

I.はじめに

 小児気管支喘息はいわゆるアトピー型が90%以上といわれているが,乳幼児などでは気道感染が引き金となって喘息の発症,もしくは症状の誘発,悪化の原因となる可能性が多くの疫学的検討から示唆されている。Johnstonら1)は,学童期の喘息児の発作にウイルス感染症の関与に関する頻度調査で,80~85%にライノウイルスおよびその関連ウイルスの存在を指摘している。

 さらに,ウイルス感染症後に肺機能への影響や気道の過敏性の増加,さらに好酸球との関わりや炎症性サイトカインの増加などが確認2,3)されて,喘息の悪化,発症の機序の解明が期待されている。

 本稿では耳鼻咽喉科外来で経験するであろう小児の気管支喘息,その喘息に影響するといわれる病原因子および気道系の主な感染症について述べる。

鏡下咡語

音楽に身を捧げたある耳鼻咽喉科医の生涯

著者: 髙坂知節

ページ範囲:P.46 - P.48

 初冬の柔らかな日差しが窓越しに入る1999年11月19日の朝,ひとりの年老いた耳鼻咽喉科医が,集まった家族に囲まれて静かに息を引き取った。享年93歳の見事な大往生であった。ここに音楽をこよなく愛して,その生涯の大半をオーケストラ活動に捧げたある耳鼻咽喉科医の一生を振り返ってみたい。

1.満洲医科大学への道

 帝国陸軍軍人の三男として出生し,多感な少年時代を山形の庄内で過ごした筆者の父髙坂知甫(たかさかともすけ)は,小学校の書道展に入賞して褒美として真鍮ラッパを祖母に買ってもらったのが自慢の種であった。7歳の時に父親が他界し,病弱な母親も間もなく後を追うように逝ったため,幼くして孤児となり,やがて九州大牟田の親戚へと引き取られることになった。大牟田では三池中学へと進学したものの,家庭内の葛藤が続き暗い青春時代を過ごすことになる。この暗い時代から逃避するかのように,満洲医科大学予科を受験して合格し,勇躍満洲国奉天へと単身で乗り込むことになった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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