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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻1号

2003年01月発行

鏡下咡語

音楽に身を捧げたある耳鼻咽喉科医の生涯

著者: 髙坂知節12

所属機関: 1仙台逓信病院 2東北大学

ページ範囲:P.46 - P.48

文献概要

 初冬の柔らかな日差しが窓越しに入る1999年11月19日の朝,ひとりの年老いた耳鼻咽喉科医が,集まった家族に囲まれて静かに息を引き取った。享年93歳の見事な大往生であった。ここに音楽をこよなく愛して,その生涯の大半をオーケストラ活動に捧げたある耳鼻咽喉科医の一生を振り返ってみたい。

1.満洲医科大学への道

 帝国陸軍軍人の三男として出生し,多感な少年時代を山形の庄内で過ごした筆者の父髙坂知甫(たかさかともすけ)は,小学校の書道展に入賞して褒美として真鍮ラッパを祖母に買ってもらったのが自慢の種であった。7歳の時に父親が他界し,病弱な母親も間もなく後を追うように逝ったため,幼くして孤児となり,やがて九州大牟田の親戚へと引き取られることになった。大牟田では三池中学へと進学したものの,家庭内の葛藤が続き暗い青春時代を過ごすことになる。この暗い時代から逃避するかのように,満洲医科大学予科を受験して合格し,勇躍満洲国奉天へと単身で乗り込むことになった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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