文献詳細
原著
低音障害型感音難聴とめまいを呈した特発性低髄液圧症候群の1例
著者: 松村道哉1 千田英二1 柏村正明1 福田諭1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
ページ範囲:P.735 - P.738
文献概要
何らかの原因で髄液量が減少し,髄液圧の低下と起立性頭痛を特徴とする疾患群が低髄液圧症候群と総称される。特発性と続発性とに分けられ,腰椎穿刺や開頭術後などの誘因がないものを特発性低髄液圧症候群と称する1)。特発性低髄液圧症候群は1938年Schaltenbrandが最初に“spontaneous aliquorrhea”という名称で報告し,髄液の産生低下が原因と考察した2)。しかし,最近になって本症の特徴的なMRI所見が報告され3),その病態は髄液漏出説が有力となり“spontaneous intracranial hypotension”の名称が広く用いられるようになった2)。本症はわが国において低髄液圧症候群,特発性低頭蓋内圧症候群の名称で神経内科領域での報告がしばしばみられる。
今回われわれは,難聴,耳鳴,めまいの反復を主訴とし,起立性の頭痛を伴った症例で,その特徴的なMRI所見により原因が低髄液圧症候群と考えられた1例を経験したので報告する。
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