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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻11号

2003年10月発行

文献概要

Current Article

末梢性顔面神経麻痺における水痘帯状疱疹ウイルス再活性化動態の解析と治療への応用

著者: 古田康1

所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野

ページ範囲:P.766 - P.779

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I.はじめに

 Ramsay Hunt症候群(以下,Hunt症候群)は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の再活性化により発症し,耳介や口腔咽頭の帯状疱疹,末梢性顔面神経麻痺,難聴や耳鳴およびめまいなどの第8脳神経症状を3主徴とする“古典的”疾患である。典型的なHunt症候群は病因が明らかで診断も容易であり,治療もさほど工夫を要さない疾患と考える向きもあると思われる。しかし,Hunt症候群の発症パターンおよび随伴症状の発現には様々なパターンがみられること,またBell麻痺と比べて麻痺の回復が不良であることから,その病態の解析およびそれに基づいた新たな治療法の開発が望まれている。また,VZV再活性化が原因の顔面神経麻痺でありながら帯状疱疹を欠き,臨床所見からはBell麻痺との鑑別が困難であるzoster sine herpeteもHunt症候群の一亜型とみなすことができ,その早期診断法の確立が重要である。近年,human immunodeficiency virusや種々の肝炎ウイルスなど新たなるウイルス疾患の蔓延化に伴い,ウイルス感染動態の解析方法に目を見張る進歩がもたらされてきた。特に,real-time PCR法を用いてウイルス量を簡便に定量することができるようになり,病状の解析,抗ウイルス剤による治療効果のモニタリングなどに臨床応用されつつある1)。筆者らは,Hunt症候群およびzoster sine herpete症例におけるVZV再活性化動態の解析に本法を応用し,その病態を解明すべく研究を行ってきた。

 本稿では,筆者らのこれまでの研究成果について述べるとともに,将来的な課題としての治療への応用についても言及した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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