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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻12号

2003年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

総頸動脈走行異常症

著者: 楠木誠 ,   井口広義 ,   中村有希 ,   藤岡孝典 ,   山根英雄

ページ範囲:P.846 - P.847

 総頸動脈走行異常症は,拍動性頸部腫瘤として発見されることが多いものの,咽喉頭違和感を初発症状とした報告は稀である。

 今回,咽喉頭違和感を主訴とした総頸動脈走行異常症例を経験したので報告する。

Current Article

エビデンスからみた突発性難聴の治療

著者: 小川郁

ページ範囲:P.849 - P.860

I.はじめに

 近年,エビデンスに基づいた医療(evidence based medicine:EBM)が注目されている。EBMとは,研究結果からの科学的裏づけをもった証拠(エビデンス)と臨床的専門技術および各患者の価値観とを統合した医療を意味し,その最終目標は臨床医と患者が最善の治療結果とQOLを診断,治療の目的として共有することである。したがって,EBMとは単にエビデンスのみで医療を論じるものではないことを認識しなければならない。

 突発性難聴(sudden deafness, idiopathic sudden sensorineural hearing loss)の診療においてもEBMが重要視されてきており,その一環として薬物療法のコントロールスタディや診療ガイドラインの作成など多くの試みがなされている。

 本稿では,突発性難聴の治療におけるエビデンスとして,これまで国内外で行われてきた薬物療法などのコントロールスタディの報告をまとめるとともに,エビデンスからみた突発性難聴の治療について概説する。

原著

直達鏡下CO2レーザーによるラリンゴケーレの治療経験

著者: 乾崇樹 ,   東川雅彦 ,   牧本一男 ,   田中朝子 ,   荒木倫利 ,   竹中洋 ,   辻求

ページ範囲:P.862 - P.866

I.はじめに

 ラリンゴケーレ(laryngocele)の発症頻度は,欧米においては250万人に1人といわれている1)。一方,日本人における発症頻度はさらに低い2,3)。この違いが生じる原因としては,喉頭小囊の長さの違いなどの解剖学的要因が推測されているものの,いまだ不明である2,3)。ラリンゴケーレの発症様式は先天性,後天性に分けられ,先天性の場合は出生直後より呼吸困難で発見されるため,速やかな処置を要する4)

 後天性のラリンゴケーレの発生原因は,喉頭室より上方に伸びた喉頭小囊が気圧などにより拡大して気囊胞を呈したものとする説が有力である5)。ラリンゴケーレは,その占拠範囲が甲状軟骨内にとどまっているか否かによりinternal type,external type,mixed typeに分けられる6)。Internal typeでは,小さなものでは無症状で経過するが,大きなものであれば異物感,呼吸困難が生じる。External typeであれば頸部腫脹で発見される頻度が高い。ラリンゴケーレの臨床上の扱いに関しては,悪性腫瘍を合併することもあることから7~9),生検も兼ねた切除術,できれば全摘出を行うのが望ましいとされている。

 今回われわれは,成人男性において臨床症状が乏しい状態でラリンゴケーレを発見し,それに対して手術侵襲の小さい直達鏡下CO2レーザーによる切除を選択し奏効した例を経験したので報告する。

早期に診断し手術的に加療し得たPlummer病の2症例

著者: 宮尾益道 ,   佐藤克郎 ,   髙橋姿 ,   川名正博 ,   五十嵐文雄

ページ範囲:P.869 - P.874

I.はじめに

 Plummer病は,1913年にPlummerによりBasedow病とは異なる甲状腺機能亢進症として初めて報告された疾患である1)。本症はTSHの支配を受けずに甲状腺ホルモンを過剰分泌する過機能性結節性甲状腺腫であり,欧米では時にみられるが2),本邦において甲状腺機能亢進症全体に占める割合は非常に少ない3)

 今回,Plummer病と診断され手術的に加療し甲状腺機能が正常化した2症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

当科における急性喉頭蓋炎症例の検討

著者: 志村玲緒 ,   寺山善博 ,   長舩宏隆 ,   小田恂

ページ範囲:P.876 - P.879

I.はじめに

 急性喉頭蓋炎は日常診療でしばしば遭遇する疾患であるが,ときに重篤な呼吸困難を呈することがあるため,耳鼻咽喉科救急疾患の最も重要なもののうちの1つである。

 今回われわれは,過去5年間に東邦大学医学部附属大森病院耳鼻咽喉科外来を受診した急性喉頭蓋炎症例30例について臨床的に検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

舌根部囊胞の2症例

著者: 佐野真幸 ,   北原伸郎 ,   遠間真希子

ページ範囲:P.881 - P.884

I.はじめに

 舌根部囊胞は,舌根部甲状舌管囊胞や舌根部貯留囊胞など舌根部にできる囊胞の総称で,比較的稀な疾患である1)

 最近われわれは,舌根部囊胞の新生児例と成人例の2症例を経験した。新生児例では啼泣時にチアノーゼを呈し,成人例は咽喉頭異常感を主訴とした。これらの経過と診断および治療について,新生児例と成人例を比較し文献的考察を加え報告する。

急速に進行する両側感音難聴を初発症状とした髄膜癌腫症の1例

著者: 渡邊健一 ,   日高浩史 ,   水谷伸 ,   横山純吉 ,   大島猛史

ページ範囲:P.890 - P.893

I.はじめに

 髄膜癌腫症とは,悪性腫瘍の癌細胞が脳・脊髄の髄膜へび漫性浸潤することにより髄膜刺激症状,頭蓋内圧亢進症状,脳・脊髄神経障害などを引き起こす極めて予後不良の疾患である1)。原発部位としては乳癌,肺癌,胃癌などの腺癌あるいは悪性黒色腫が多く報告されている1,2)

 今回われわれは,急速に進行する両側感音難聴を初発症状とした乳癌原発の髄膜癌腫症の症例を経験したので報告する。

血清アルブミン値の上昇とともに改善を認めたCronkhite-Canada症候群の味覚障害の1例

著者: 平井良治 ,   生井明浩 ,   池田稔 ,   中村裕子 ,   大塚健司 ,   伊藤勇 ,   大木光義 ,   鴫原俊太郎 ,   木田亮紀

ページ範囲:P.895 - P.898

I.はじめに

 Cronkhite-Canada症候群(以下,CCSと略)は,下痢を主症状とし消化管ポリポーシス,皮膚色素沈着,脱毛,爪甲萎縮,味覚障害を伴う疾患として,1955年にCronkhiteとCanada1)が報告した。

 今回われわれは,血清アルブミン値の上昇とともに味覚障害の改善を認めた本症候群の1例を経験したので報告する。

感染性瘻孔を伴った耳下部石灰化上皮腫の1例

著者: 渡辺麗子 ,   國弘幸伸 ,   神崎晶 ,   増田正次 ,   小川郁

ページ範囲:P.901 - P.904

I.はじめに

 石灰化上皮腫は若年者の頭頸部領域に発生する良性腫瘍である。好発部位として頭頸部領域,上肢など1~3)が挙げられる。皮膚科領域からの報告が多い4~10)が,近年,耳鼻咽喉科領域からも報告例が散見されるようになってきた。

 今回われわれは,瘻孔を形成した非特異的外観を伴う石灰化上皮腫の1例を経験し,その発生機序を病理組織所見から考察したので報告する。

手術・手技

両側経鼻腔法を用いた内視鏡下鼻内下垂体腫瘍摘出術と鞍底部再建の工夫

著者: 佐生秀幸 ,   生見薫子 ,   田村奈々子 ,   湯本英二

ページ範囲:P.907 - P.911

I.はじめに

 内視鏡下鼻内下垂体手術は従来の顕微鏡下の経鼻中隔的アプローチ,いわゆるハーディ手術1)に比べ歯齦部切開が不要で,より低侵襲であるため国内外で行われるようになってきた2~14)。しかし,内視鏡下鼻内下垂体手術は広く普及しているとはいい難く,その手術手技についてもいまだ議論の余地のあるところである。

 筆者らも2000年より内視鏡を用いた下垂体腫瘍摘出術を開始し,2002年12月までに脳神経外科医と合同で27例に行った。筆者らは,鞍底部へのアプローチは両側経鼻腔法を原則とすることで,脳神経外科医による腫瘍摘出時の良好な操作性を確保するように努めてきた。また,鞍底部の再建に両側有茎鼻中隔粘膜弁を用いるなどの工夫を重ねてきた。

 本稿では,筆者らの手術法を紹介し鞍底部の安全な再建法を述べ,大きな鼻中隔欠損例における有茎粘膜弁の採取法についても併せて報告する。

連載 シリーズ/耳鼻咽喉科診療に必要な他科の知識

⑪セラチア,MRSA,PRSP,PISP,チフス,ジフテリア,マラリア

著者: 横山隆 ,   桑原正雄

ページ範囲:P.913 - P.919

I.はじめに

 20世紀後半には,感染症の治療における進歩,中でも抗菌薬のめざましい開発が感染症との戦いで大きな成果を上げ,もはや感染症との戦いは終わると予言する人さえあった。しかしその後,新興感染症,再興感染症と呼ばれる多くの治療困難な感染症が台頭,21世紀は感染症が重大な問題となると指摘されている。実際にsevere acute respiratory syndrome(SARS)など新たな感染症や,先進国では入院患者でバンコマイシン耐性腸球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌など,外来患者ではペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP),β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ桿菌(BLNAR)など治療に難渋する耐性菌感染症が次々と拡がりつつある。

 以下に最近問題となった起炎菌,感染症について簡単な概説を試みる。

鏡下咡語

問題解決型セクレタリーワーク―(その2)-海外出張編-

著者: 加我君孝

ページ範囲:P.886 - P.888

 本欄の2001年12月号に“問題解決型セクレタリーワーク”という題で小文(73:926-927,2001)を書いたところ,思いがけない反響があり,私を担当する秘書のSさんを見に来る人までいた。もともと東邦大学の小田恂先生に勧められ国内の学会出張について寄稿したものであった。彼女が来てからというもの,海外出張もすっかり楽になった。まるで海外旅行の業務を兼ねたセクレタリーワークで,諸先生方に参考になることもあるかもしれないと思い,2002年の3回の出張について御紹介したい。

 海外出張はできるだけ少なくしたい。海外出張はどうしても1週間近くなり,帰ると多量の手紙や書類が待っており,中には不在であったため申請が手遅れになることすらある。海外の学会は知らない土地が多く,正確なスケジュール,情報,外貨,英語による発表の準備,観光案内,ホテルのTELやFAXの番号などが必要である。いつも過密スケジュールの中に出かけるので何か忘れていないか心配する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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