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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻2号

2003年02月発行

文献概要

特集 薬物による聴覚障害

2.アミノ配糖体抗生物質による難聴update―遺伝子学的アプローチ

著者: 宇佐美真一1

所属機関: 1信州大学医学部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.101 - P.105

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I.アミノ配糖体抗生物質による難聴

 ストレプトマイシンを初めとするアミノ配糖体抗生物質は広い抗菌スペクトルをもち,比較的安価であることから現在でも多くの国々で使用されているが,アミノ配糖体抗生物質には耳毒性,腎毒性といった副作用があることからわが国では使用頻度がかなり減ってきている。しかし,アミノ配糖体抗生物質のもつ抗結核菌作用,抗緑膿菌作用,抗MRSA作用などを期待して使用する場合も多く,また最近では副作用の少ない新世代のアミノ配糖体抗生物質も出始めている。表1に現在わが国で用いられているアミノ配糖体抗生物質の一覧を示した。

 アミノ配糖体抗生物質による難聴は両側性,対称性の高音障害型の感音難聴を示す。オージオグラムでは,通常,まず8,000Hzが急墜し進行するに従い中低音域にも難聴がみられるようになる。難聴に先立ち耳鳴を自覚するといわれており,重篤な難聴の予防には耳鳴の発現に注意することが必要である。難聴は非可逆的で,ストレプトマイシン投与を中止した後も進行する場合がある。側頭骨病理および動物実験から,アミノ配糖体抗生物質による障害部位はコルチ器の有毛細胞,特に外有毛細胞が易受傷性が高く,次いで内有毛細胞が障害を受け,引き続いてラセン神経節が変性することが知られている。また,これらの障害は蝸牛の基底回転から始まり,次第に上方回転に及ぶことが知られている1)。この形態的変化は,初期には高音障害型の聴力像を呈し,進行するに従い中低音域も障害されるという臨床像とよく一致する。硫酸ストレプトマイシンには,前述の聴覚障害に比較し平衡障害をきたすことが多いことが知られている。

 これらの副作用の出現には一般に3つの要素が関係しているといわれている。すなわち1)投与量,2)局所の濃度,3)遺伝的要素(感受性の違い)である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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