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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻4号

2003年04月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

咽頭潰瘍,口内炎を初発症状としたクローン病の2例

著者: 石塚洋一 ,   小島千絵 ,   平石光俊 ,   加藤隆司 ,   永井孝三

ページ範囲:P.258 - P.259

 耳鼻咽喉科の日常臨床の中で,口内炎や咽頭潰瘍は比較的よく遭遇する疾患である。しかし,時に難治性で治療に難渋したり,明らかな原因がなく診断に苦慮することがある。

 今回われわれは,咽頭潰瘍,口内炎を初発症状としたクローン病の2例を経験したので報告する。

Current Article

中耳換気と中耳真珠腫

著者: 髙橋晴雄

ページ範囲:P.262 - P.271

I.はじめに

 中耳真珠腫の病因については数多くの研究が現在までなされてきたが,まだ完全に解決されているとはいえない。例えば,その多くは小児滲出性中耳炎の後遺症であり,滲出性中耳炎と同様に耳管機能障害がその病因に関係するといわれているが,あるものは滲出性中耳炎にとどまり,あるものは中耳真珠腫に移行する事実は耳管機能障害だけでは説明できない。さらに,中耳真珠腫の耳管機能が正常であることもしばしば経験するところである。

 一方,中耳真珠腫の乳突蜂巣発育は一般に抑制されているといわれているが,他の中耳炎でもそれはみられることであり,何か真珠腫では特有の付加的な病態があるのかなどの疑問もある。さらに成因として,鼓室狭部のブロックがまず起こり,その結果乳突腔に陰圧が生じて上鼓室が乳突腔側へ陥凹するともいわれているが,本当に鼓室狭部のブロックが一次的な病因なのであろうかなど疑問は尽きない。

 本稿では,まず正常耳の中耳換気,中耳真珠腫での換気病態について解説し,次いでその換気病態の難治性滲出性中耳炎との比較や,保存治療が有効な中耳真珠腫の病態などを主に中耳換気の面から分析することにより,中耳真珠腫の成因,成立過程を探ってみたい。

原著

反復性めまい発作を呈したUsher症候群III型症例

著者: 鈴木伸嘉 ,   佐々木修 ,   工穣 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.273 - P.276

I.はじめに

 Usher症候群(USH)は網膜色素変性症と感音難聴を合併する常染色体劣性遺伝疾患であり,先天性高度難聴の3~6%を占めるとされている1)。USHは臨床経過によりI型(USH1)からIII型(USH3)に分類され2),特に進行性感音難聴と前庭障害を特徴とするIII型はUSHのうち1%程度にみられる稀な疾患である1)。その難聴の進行経過と前庭障害との関連に関する詳細な報告はほとんどされていない。

 今回われわれは,変動する感音難聴と,それに伴って回転性めまい発作を反復したUSH3に該当すると思われる症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

頭蓋底手術を行った嗅神経芽細胞腫の1例

著者: 酒井昭博 ,   大上研二 ,   大貫純一 ,   小田桐恭子 ,   飯田政弘 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.279 - P.283

I.はじめに

 嗅神経芽細胞腫は,鼻腔に発生する嗅粘膜上皮由来の比較的稀な腫瘍である。近年本疾患に対し,頭蓋底手術による良好な結果が報告がされている1,2)。しかし,頭蓋内操作を伴うため重篤な合併症や不幸な転帰をたどる危険性もある3)

 今回われわれは,前頭葉に進展した嗅神経芽細胞腫に対して頭蓋底手術を行い,様々な術後合併症を認めたが根治し得た症例を経験した。症例の問題点,術後合併症,対策を中心に報告する。

副鼻腔に発生したコレステリン肉芽腫の3例

著者: 山本昌範 ,   石井甲介 ,   椿恵樹 ,   阿部弘一 ,   大森義男 ,   岩佐英明

ページ範囲:P.286 - P.291

I.はじめに

 耳鼻咽喉科領域において,コレステリン肉芽腫は主に中耳に発生し,副鼻腔に発生するコレステリン肉芽腫は比較的稀であるとされる1~6)

 今回われわれは,副鼻腔に発生したコレステリン肉芽腫を3例経験したので,文献的考察を加えて報告する。

 コレステリン肉芽腫の診断は臨床所見に加えて,多くは画像診断によることが多いとされる。CT所見では近接する脳組織とほぼ同等の濃度を示し,コントラストがつかないことが多い。他方で,MRI所見では典型的にはT1,T2ともに高信号を呈することが知られている。その場合,鑑別診断として貯留性囊胞,腫瘍などがある。腫瘍との鑑別がつかない場合は,今回の報告例のように開頭術による手術操作が必要な場合もある。術式は通常の貯留囊胞と同様に十分開放させることが重要である。

鼻閉を主訴としたTornwaldt病の1症例

著者: 渡邊健一 ,   國友万由美 ,   富山俊一 ,   八木聰明

ページ範囲:P.293 - P.295

I.はじめに

 Tornwaldt病は胎生期鼻咽頭囊の遺残に起因し,Millerら1)によると,Tornwaldtが1885年に臨床症状を最初に報告したとされている。ほとんどは無症状に経過するが,感染を契機として後鼻漏,頭痛,鼻閉などの症状を引き起こすことがある2)

 今回われわれは,鼻閉を主訴に来院したTornwaldt病の1症例を経験したので報告する。

60歳以上の口蓋扁桃摘出例の手術効果に関する検討

著者: 中島成人 ,   川田晃弘

ページ範囲:P.302 - P.304

I.はじめに

 一般的に高齢者の口蓋扁桃は肉眼的にも萎縮している。図1aは77歳女性の摘出扁桃の切片で萎縮は著明で,図1bの40倍拡大の病理組織にみるように,33歳のそれと比較しても明らかに二次小節は消失し活動性が低下している印象を受ける。形浦1)も加齢に伴う扁桃組織の変化は慢性炎症の影響も加わり退縮であるとしており,高齢者における口蓋扁桃摘出(扁摘と略)の効果の有無を臨床的に検討することは意義があると思われる。

喉頭カルチノイドの1例

著者: 持木将人 ,   中嶋正人 ,   遠間真希子 ,   狩野章太郎 ,   仙波哲雄

ページ範囲:P.307 - P.310

I.はじめに

 カルチノイド腫瘍は,一般に消化管や肺より発生することの多い成長緩慢な腫瘍である。1969年のGoldmanら1)の喉頭カルチノイドの報告以来,その報告が散見されるようになったが,稀な疾患である。

 今回われわれは,披裂部に限局した喉頭カルチノイドの1症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

急性に嚥下障害を発症したForestier病の1例―Forestier病による嚥下障害の1考察

著者: 長谷川純 ,   三枝英人 ,   横島一彦 ,   八木聰明 ,   宮本雅史 ,   元文芳和

ページ範囲:P.313 - P.317

I.はじめに

 Forestier病とは,椎体前面に著しい連続性の骨化病変をきたす原因不明の疾患であり,耳鼻咽喉科領域では頸椎前縦靱帯の骨性増殖により嚥下障害や咽喉頭異常感の原因となり得ることで知られている1~11)。その報告例は決して少なくないものの,嚥下障害の発症機序と治療方針については,未だに明確な指針がないのが現状である。

 今回われわれは,数年間にわたり嚥下時の違和感を自覚していた後に急激な嚥下障害を発症したForestier病の1例を経験した。その経過を報告するとともに,本疾患の嚥下障害の発症機序および治療方針について若干の考察を加えた。

当院における嚥下障害手術例の検討

著者: 定永恭明 ,   木下澄仁 ,   竹村孝史

ページ範囲:P.320 - P.323

I.はじめに

 脳梗塞やその他の中枢性疾患に合併して嚥下障害を発生した患者が,嚥下性肺炎など重篤な状態になるのを防ぐために,神経内科などの他科から嚥下の専門医である耳鼻咽喉科に嚥下改善手術を依頼される場合がある。

 今回われわれは,当院でこれらの中枢性疾患の合併症として発症した嚥下障害に手術加療を施行した症例について検討を加えた。

縦隔に進展した巨大上皮小体腺腫の1例

著者: 柳裕一郎 ,   門倉義幸 ,   衣笠えり子 ,   緒方浩顕 ,   原田容治 ,   大森順子

ページ範囲:P.325 - P.328

I.はじめに

 上皮小体腺腫は,原発性上皮小体機能亢進症(Ⅰ°HPTと略)の原因として最も多く認められ,PTH過剰分泌による高カルシウム血症をきたす。唯一の治療法は外科的な摘出であり,摘出により90%以上軽快するといわれている1)。また,原発性上皮小体機能亢進症における腺腫は,一般的に50~2,000mg程度の大きさのものが多いとされている2)

 今回われわれは,縦隔に進展した巨大な上皮小体腺腫を経験したので,文献的考察を加え報告する。

連載 シリーズ/耳鼻咽喉科診療に必要な他科の知識

④産婦人科:妊娠と薬物療法

著者: 鎌田正晴 ,   大頭敏文 ,   桂真澄 ,   美馬加奈子

ページ範囲:P.331 - P.335

I.はじめに

 WHOの調査(1992年)では,妊婦の86%に1~15種類,平均して3種類の薬剤が投与されている。そのうち12%が産婦人科医以外の医師の処方である1)。母体と胎児には血管の交通はなく,一見隔絶されているように思われるが,胎盤は決してバリアーの役目を果たさず,妊婦に投与された薬剤は全て胎児に移行すると考えなければならない。すなわち妊娠中の薬物療法は,可能な限り胎児への影響が少ない薬剤を選択し,必要最小限にとどめるべきである。

 本稿では,耳鼻咽喉科領域で使用される薬剤を中心に,胎児への影響,投与法などを述べる。

鏡下咡語

身近な薬になる草花

著者: 中野雄一

ページ範囲:P.298 - P.299

 身近な草花の中には,かつて大切な生薬であったと思われるものがあります。現在でもアロエを育てている家庭が少なくありません。そんな草花のいくつかを取り上げ,その意外な一面に触れてみたいと思います。

 ドクダミを知らない人は少ないと思います。庭先や露地裏にこの花,すなわち白い十字形の四弁で,真ん中に黄色い芯のある花を目にしますと(図1),季節は確実に夏に向かっていることを知らされます。と同時に独特な臭気がよみがえってきます。するとこの匂いのほうがむしろこの花と固く結びついて,何やらこの花には毒が含まれているような気がしてきます。そんなことから名前にドクがつけられたのかも知れません。しかし毒はありません。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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