文献詳細
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の機能検査―何がどこまでわかるか―
文献概要
I.はじめに
嚥下は,延髄の嚥下中枢をはじめとした強固な中枢神経系に支配される生理学的な運動であるという側面を有しているものではあるが,実際に治療や診察を求められている嚥下障害患者の多くは,必ずしもそれに沿ったものではない。また,舌や咽喉頭の麻痺や欠損がある場合には,もちろん,嚥下障害の原因として理解しやすいかも知れないが,いざ診察を行ってみると,そのような場合はむしろ少なく,診療の指針さえつかず途方に暮れてしまうことも多いにあるだろう。これらの局所的な所見がなかろうとも,嚥下は障害され得るものであり,例えば意識や意欲の状態にも多いに左右され得るし,何よりも,特に「寝たきり」や,長期臥床に伴う廃用症候群,片麻痺や失調の程度などが,嚥下に大きく影響することは極めて重要である。実際に,これらの改善につれて嚥下も改善することは多いに経験されるところである。嚥下に失敗すれば,気管支炎,さらには肺炎に,また窒息することもあろう。かといって,嚥下を制限され,禁止されようものならば,心理的,精神的にも非常な苦痛を味わおう。すなわち,嚥下は決して局所の問題ではなく,全身の症状として,さらには人格や精神を含めた症状としても捉えられるべきものである1)。
本稿では,口腔から咽頭を経て食道に至るという生理学的な意味での嚥下機能について焦点を絞り,臨床で用いられている主な嚥下機能検査について,その目的と原理,解釈について述べ,最後にそれらから,そのヒトの嚥下障害をいかに理解すべきかということを述べたい。
嚥下は,延髄の嚥下中枢をはじめとした強固な中枢神経系に支配される生理学的な運動であるという側面を有しているものではあるが,実際に治療や診察を求められている嚥下障害患者の多くは,必ずしもそれに沿ったものではない。また,舌や咽喉頭の麻痺や欠損がある場合には,もちろん,嚥下障害の原因として理解しやすいかも知れないが,いざ診察を行ってみると,そのような場合はむしろ少なく,診療の指針さえつかず途方に暮れてしまうことも多いにあるだろう。これらの局所的な所見がなかろうとも,嚥下は障害され得るものであり,例えば意識や意欲の状態にも多いに左右され得るし,何よりも,特に「寝たきり」や,長期臥床に伴う廃用症候群,片麻痺や失調の程度などが,嚥下に大きく影響することは極めて重要である。実際に,これらの改善につれて嚥下も改善することは多いに経験されるところである。嚥下に失敗すれば,気管支炎,さらには肺炎に,また窒息することもあろう。かといって,嚥下を制限され,禁止されようものならば,心理的,精神的にも非常な苦痛を味わおう。すなわち,嚥下は決して局所の問題ではなく,全身の症状として,さらには人格や精神を含めた症状としても捉えられるべきものである1)。
本稿では,口腔から咽頭を経て食道に至るという生理学的な意味での嚥下機能について焦点を絞り,臨床で用いられている主な嚥下機能検査について,その目的と原理,解釈について述べ,最後にそれらから,そのヒトの嚥下障害をいかに理解すべきかということを述べたい。
掲載誌情報