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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻6号

2003年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

急激に気道狭窄を呈した急性喉頭蓋炎症例

著者: 八田千広 ,   寺田友紀 ,   辻恒治郎 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.346 - P.347

 急性喉頭蓋炎は耳鼻咽喉科の一般診療においてしばしばみられる疾患で,抗生剤やステロイド投与により治癒することが多い。しかし急激な経過をたどり,気道狭窄を起こすことがあり注意を要するとされている。

 今回われわれは,急激な気道狭窄を呈し緊急気道確保が必要となった急性喉頭蓋炎症例を経験したので報告する。

Current Article

頭頸部癌の化学療法と基礎的研究

著者: 甲能直幸

ページ範囲:P.349 - P.357

I.はじめに

 頭頸部癌の化学療法を効果的に施行する際に考慮すべき基礎的な事柄がある。これらに立脚してregimenが作成されるわけであるが,筆者はこれまでに基礎的な研究を行い,この中のいくつかを解明してきた。本稿ではこれらを解説しながら癌化学療法の基礎について述べてみたい。

 癌化学療法において治療の対象となるものは,癌が臨床検査でみつかり病理組織学的に確定診断されたあとの細胞集団に対してである。一般的にこの段階で癌細胞の数は1×109(1グラム)以上に達し,腫瘍増殖はゆっくりとなり1),細胞集団のheterogeneityも高くなる。すなわち分裂増殖期の細胞が少なく,癌化学療法の効果が期待されにくい状態となっている。Heterogeneityの高い細胞集団に対しては,単一の抗癌剤投与では効果の期待される集団と,抵抗性の集団の存在が予想される2)。そこでいくつかの作用機序の異なった薬剤を併用して治療することが必要となる。

 癌化学療法で根治が期待される場合は,理論的には耐性細胞が出現,もしくはその数が多くなる前に強力な治療が行われた時である。

原著

両側顔面神経麻痺を発症したHTLV-I関連脊髄症(HAM)の1例

著者: 杉浦むつみ ,   石橋誠也 ,   茂木立学 ,   大前由紀雄 ,   池田稔 ,   日野太郎 ,   椎名盟子

ページ範囲:P.359 - P.362

I.はじめに

 HTLV-I関連脊髄症(human T-cell lymphotropic virus type I associated myelopathy:HAM)は,1986年に納ら1)により報告されたHTLV-I感染により発症する脊髄障害を主とした神経疾患である。本疾患は一過性に脳神経症状を伴うことがあり,顔面神経麻痺の陽性率は3.5%との報告がある2)。しかし,陽性率が記載されている報告はあるものの,HAMにおける顔面神経麻痺についての症例報告やその詳細についての報告は,われわれが検索した限りでは,これまでになされていない。

 今回われわれは,両側の顔面神経麻痺を発症したHAMの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

ペニシリン耐性肺炎球菌による急性中耳炎で発見されたX連鎖無ガンマグロブリン血症の1例

著者: 増田佐和子 ,   中野貴司 ,   神谷齊 ,   金兼弘和 ,   宮脇利男

ページ範囲:P.365 - P.369

I.はじめに

 X連鎖無ガンマグロブリン血症(X-linked agammaglobulinemia:XLA)は,X染色体上のBTK遺伝子変異を病因とする抗体産生不全症である1~3)。BTK遺伝子産物であるBrutonのチロシンキナーゼ(BTK)はB細胞分化に必須であり,この欠損により末梢血B細胞は著減し,ガンマグロブリンが著明に低下する1~3)。一方,急性中耳炎は,3歳までに50~71%の児が少なくとも1回は罹患するといわれる一般的な疾患である4)。しかし近年,ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin resistant Streptococcus pneumoniae:PRSP),βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-negative ampicillin resistant Haemo-philus influenzae:BLNAR)などの耐性菌により,遷延,重症化し,反復する乳幼児例が珍しくなくなってきた4~6)

 今回,われわれはPRSPによる重症急性中耳炎を契機として発見されたXLAの1例を経験したので報告する。

良性発作性頭位めまい症100例からみた頭位変換療法の効果と問題点

著者: 藤井守 ,   平位知久 ,   井口郁雄

ページ範囲:P.371 - P.375

I.はじめに

 良性発作性頭位めまい症(以下,BPPV)は従来自然治癒傾向の強い疾患とされ,1990年代前半以前は本邦では積極的な理学的療法が行われることは稀であった。しかし,米国ではEpley1)の努力により,その原因と推測される半規管内の耳石片を卵形囊へ戻す頭位変換療法(canalith repositioning procedure:CRP)が第1選択の治療法となっている。

 本邦でも1990年代半ばより,CRPによる治療成績の報告がみられるようになってきた2~12)。諸家の報告で安定した成績の得られることが認められており1~15),既に多くの施設で治療の第1選択となっていると思われる。

 われわれの治療してきた100例のBPPV症例を振り返って,CRPの効果と問題点を検討した。

レックリングハウゼン病における外耳道狭窄症例―病理学特性と外科的治療法に関する考察

著者: 大木雅文 ,   阿部和也 ,   石尾健一郎 ,   宮島千枝 ,   水野正浩 ,   市村恵一

ページ範囲:P.376 - P.379

I.はじめに

 レックリングハウゼン病は,皮膚のカフェオレ斑や神経線維腫を主徴とし,骨病変,眼病変,脳脊髄腫瘍など多彩な症状を呈する全身性母斑症である。比較的稀な疾患ではあるが,約0.25%の頻度で生じるとされている1,2)。頭頸部病変も高頻度に認め,多彩な症状を示す。外耳道病変は比較的稀ではあるが,周囲に重要な組織が隣接しているため,特有の問題を生じる1~3)

 われわれは,レックリングハウゼン病における外耳道狭窄症例を経験し,その病理学的特性と対処法について文献的考察を加え報告する。

伝染性単核球症に続発した血球貪食症候群の1症例

著者: 森正 ,   八田千広 ,   森裕司 ,   寺田友紀 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.380 - P.383

I.はじめに

 伝染性単核球症は,思春期以降にEBウイルスに初感染することにより生じる全身症状を伴った感染症で,耳鼻咽喉科医にとって日常診療においてしばしば遭遇する疾患である。細菌性扁桃炎に比べて全身症状が強いが,保存的治療で軽快・治癒することが多いとされている1)

 今回われわれは,伝染性単核球症罹患後に血球貪食症候群を続発し死亡したと考えられた症例を経験したので報告する。

自傷行為による頸部切創の9症例

著者: 宮本隆行 ,   大上研二 ,   大貫純一 ,   小田桐恭子 ,   飯田政弘 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.389 - P.392

I.はじめに

 頸部には頸動静脈,喉頭,気管,食道,脊髄などの重要臓器があり,頸部切創は致死的となる可能性が高い。われわれ耳鼻咽喉科・頭頸部外科医は頸部の外傷を扱う科として,救急救命の現場で果たす役割は大きい。頸部切創の原因には交通事故,労働災害,スポーツ事故などがある。近年,不景気な社会に伴い,自殺企図などの自傷行為による頸部外傷で,救命救急に搬送される患者が増加している1)。当科では最近1年間に自殺企図による頸部切創を9例経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

下咽頭肉腫様癌の1例

著者: 江上直也 ,   越智篤 ,   石川敏夫 ,   戸島均

ページ範囲:P.395 - P.399

I.はじめに

 下咽頭癌はほとんどが扁平上皮癌であるが,扁平上皮癌の亜型として分類されている肉腫様癌が下咽頭に発生することは少なく,これまでのところ国内報告例は15例をみるに過ぎない1~4)

 今回われわれは,下咽頭に発生した肉腫様癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

下顎骨に発生した類皮囊胞の1例

著者: 任書晃 ,   宇野敏行 ,   安田誠 ,   宮﨑信 ,   廣田隆一 ,   正垣一博 ,   築谷康二 ,   久育男

ページ範囲:P.400 - P.403

I.はじめに

 類皮囊胞は上皮組織の嵌入によって生じる囊胞で,卵巣肛門後部に好発し,耳鼻咽喉科領域では,眉間部眼窩,鼻,口腔底など軟部組織に発生するのが一般的である。

 一方,顎骨内に発生する囊胞は,ほとんどが囊胞壁に脂腺,毛囊,汗腺などの皮膚付属器官のない類表皮囊胞であり1),骨内に発生した類皮囊胞についての報告は極めて少ない1)

 今回われわれは,下顎骨に発生した脂腺を含む類皮囊胞の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

小児喉頭異物の1例

著者: 長谷川達央 ,   内田真哉

ページ範囲:P.405 - P.408

I.はじめに

 喉頭異物は,気道異物の5~10%を占めるに過ぎない1,2)。時に呼吸困難に至るため早期診断が必要であるが,実際には呼吸器系の急性炎症に症状が類似し,診断が遅れることが少なくない。

 今回われわれは,小児の喉頭異物症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

連載 シリーズ/耳鼻咽喉科診療に必要な他科の知識

⑤内科:肝炎

著者: 柴田実

ページ範囲:P.410 - P.417

I.はじめに

 肝臓の壊死炎症性疾患を肝炎という。通常,肝炎といえば肝炎ウイルス感染によるものを意味するが,稀には肝炎ウイルス以外のウイルス,細菌,寄生虫,化学物質(アルコール,薬物,毒素),免疫異常などでも肝炎の病態を示すことがある。肝炎ウイルスによる肝炎はウイルス肝炎,それ以外の病因による肝炎は非肝炎ウイルス性肝炎,薬剤性肝障害,自己免疫性肝炎,アルコール性肝炎,非アルコール性脂肪性肝炎などと呼称される。

 本稿では頻度の高いウイルス肝炎について解説する。

鏡下咡語

大学病院よ,何処へ行く

著者: 齋藤等

ページ範囲:P.386 - P.387

 日本の総医療費,約30兆円のうちのわずか1.6兆円(5.44%)が全国大学病院の医療費であるが,「医療費高騰における諸悪の根源は大学病院にあり」との考えで,昨今は大学病院を目の敵にしている。大学病院は厚労省や文科省の恫喝によって締め付けられ,最悪の場合,そのいくつかは消えようとしているし,それも視野に入れているという。

 いままではどちらかというと,日本の政策哲学は底上げの重視,悪平等の奨励との感覚は否めなかったが,小泉内閣になってから最近は急激に,トップ重視,底辺切り捨て,格差助長の風潮に変わってきている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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