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頭頸部癌の化学療法と基礎的研究
著者: 甲能直幸1
所属機関: 1杏林大学医学部耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.349 - P.357
文献購入ページに移動I.はじめに
頭頸部癌の化学療法を効果的に施行する際に考慮すべき基礎的な事柄がある。これらに立脚してregimenが作成されるわけであるが,筆者はこれまでに基礎的な研究を行い,この中のいくつかを解明してきた。本稿ではこれらを解説しながら癌化学療法の基礎について述べてみたい。
癌化学療法において治療の対象となるものは,癌が臨床検査でみつかり病理組織学的に確定診断されたあとの細胞集団に対してである。一般的にこの段階で癌細胞の数は1×109(1グラム)以上に達し,腫瘍増殖はゆっくりとなり1),細胞集団のheterogeneityも高くなる。すなわち分裂増殖期の細胞が少なく,癌化学療法の効果が期待されにくい状態となっている。Heterogeneityの高い細胞集団に対しては,単一の抗癌剤投与では効果の期待される集団と,抵抗性の集団の存在が予想される2)。そこでいくつかの作用機序の異なった薬剤を併用して治療することが必要となる。
癌化学療法で根治が期待される場合は,理論的には耐性細胞が出現,もしくはその数が多くなる前に強力な治療が行われた時である。
頭頸部癌の化学療法を効果的に施行する際に考慮すべき基礎的な事柄がある。これらに立脚してregimenが作成されるわけであるが,筆者はこれまでに基礎的な研究を行い,この中のいくつかを解明してきた。本稿ではこれらを解説しながら癌化学療法の基礎について述べてみたい。
癌化学療法において治療の対象となるものは,癌が臨床検査でみつかり病理組織学的に確定診断されたあとの細胞集団に対してである。一般的にこの段階で癌細胞の数は1×109(1グラム)以上に達し,腫瘍増殖はゆっくりとなり1),細胞集団のheterogeneityも高くなる。すなわち分裂増殖期の細胞が少なく,癌化学療法の効果が期待されにくい状態となっている。Heterogeneityの高い細胞集団に対しては,単一の抗癌剤投与では効果の期待される集団と,抵抗性の集団の存在が予想される2)。そこでいくつかの作用機序の異なった薬剤を併用して治療することが必要となる。
癌化学療法で根治が期待される場合は,理論的には耐性細胞が出現,もしくはその数が多くなる前に強力な治療が行われた時である。
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