文献詳細
原著
ペニシリン耐性肺炎球菌による急性中耳炎で発見されたX連鎖無ガンマグロブリン血症の1例
著者: 増田佐和子1 中野貴司2 神谷齊2 金兼弘和3 宮脇利男3
所属機関: 1国立療養所三重病院耳鼻咽喉科 2国立療養所三重病院小児科 3富山医科薬科大学小児科学教室
ページ範囲:P.365 - P.369
文献概要
X連鎖無ガンマグロブリン血症(X-linked agammaglobulinemia:XLA)は,X染色体上のBTK遺伝子変異を病因とする抗体産生不全症である1~3)。BTK遺伝子産物であるBrutonのチロシンキナーゼ(BTK)はB細胞分化に必須であり,この欠損により末梢血B細胞は著減し,ガンマグロブリンが著明に低下する1~3)。一方,急性中耳炎は,3歳までに50~71%の児が少なくとも1回は罹患するといわれる一般的な疾患である4)。しかし近年,ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin resistant Streptococcus pneumoniae:PRSP),βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-negative ampicillin resistant Haemo-philus influenzae:BLNAR)などの耐性菌により,遷延,重症化し,反復する乳幼児例が珍しくなくなってきた4~6)。
今回,われわれはPRSPによる重症急性中耳炎を契機として発見されたXLAの1例を経験したので報告する。
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