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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻7号

2003年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

涙囊癌の治療経験

著者: 岩元純一 ,   太神尚士 ,   小笠原圭子 ,   佐野啓介 ,   片岡真吾 ,   川内秀之

ページ範囲:P.430 - P.431

 頭頸部領域に発生する腫瘍の中で,涙囊原発の腫瘍は国内外併せて約300例が報告されている1,2)。その初期症状が慢性涙囊炎に類似しているため,確定診断が困難であり,悪性腫瘍の場合には治療の開始が遅れると予後不良となる3,4)。涙囊原発の悪性腫瘍で周囲組織への浸潤が疑われる進行例では,涙囊や鼻涙管とともに鼻・副鼻腔,眼窩構成骨や眼窩内容を含めた拡大手術が必要となり,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医の果たす役割は大きい5)

 今回,当科で経験した涙囊原発の移行上皮癌症例について報告する。

Current Article

頭頸部癌の遺伝子診断と遺伝子治療

著者: 丹生健一 ,   田中博紀

ページ範囲:P.433 - P.441

I.はじめに

 近年の目覚ましい分子生物学領域の発展により,癌の発生や進展のメカニズムが遺伝子レベルで明らかになってきた。近い将来,われわれが取り扱う頭頸部腫瘍の領域においても,その成果が一般臨床レベルで発揮されることが期待される。

 本稿では現在,頭頸部領域において遺伝子診断や遺伝子治療がどこまで進歩しているのか,今後どのような発展が期待されるのかについて筆者らの研究も含めて解説する。

原著

外耳道真菌症の菌学的研究

著者: 野口美和 ,   上田成一 ,   江上徹也

ページ範囲:P.444 - P.450

I.はじめに

 外耳道真菌症は外耳道から鼓膜にかけて真菌が寄生し,そう痒感,耳閉感,難聴などの症状が出現する疾患である。外耳道真菌症の典型例では外耳道に湿潤な耳垢の過剰形成や外耳道,鼓膜表面に形成された鋳型状の膜様物に褐色の粉を吹いたような所見がある。近年,抗真菌剤の開発が目覚しく,それらによる治療が主流となっているが,なお統一された治療法はなく,実際臨床の場でも難治であったり,再発を繰り返す症例が多いことが認められている。1990年代に入ってから市販され始めた外用抗真菌剤は従来のそれに比べ,病原真菌に対してin vitroでは数段高い抗真菌活性を示すことが報告されている1)。前報2)において外耳道真菌症由来の分離株に対して,市販のクロトリマゾール(CTZ,エンペシド(R)),硝酸エコナゾール(ECZ,パラベール(R))およびamphotericin B(AMPHB,ファンギーソン(R)),フェニルヨードウンデシノエート(PIU,デルマシド(R)),ポピドンヨード(PI,イソジン(R))の5種の抗真菌剤および消毒薬に対する感受性試験の結果について報告した。

 今回われわれは,1994年1月~2001年1月までに外耳道真菌症患者95例(女性59人,男性36人)より分離した菌株の菌学的検索と,1990年以降に市販された4種類の抗真菌剤についての薬剤感受性試験を行ったので報告する。

ボスミン(R)およびキシロカイン(R)による鼻粘膜の局所処置後の副作用について―水様性鼻漏やくしゃみの発生機序に関する考察

著者: 佐々木好久

ページ範囲:P.453 - P.457

I.はじめに

 リドカイン(キシロカイン(R))およびエピネフリン(ボスミン(R))の噴霧や塗布による鼻処置は鼻疾患の診断や治療に使用されることが多く,欠かせないものとなっている。中耳炎や耳管狭窄症治療の際の鼻の処置に,またファイバースコープや内視鏡の使用前処置などにも重要である。この処置が耳鼻咽喉科疾患の診断や治療に占めてきた意味と役割は今後も変わらないと考えられる。

 しかし,この局所処置で思わぬ副作用に見舞われることがある。くしゃみ発作やとめどもない水様性鼻漏の流出である。これらの症状の煩わしさや不快さに悩んでも特別に処置しないで,1~2日で自然に症状は消退してしまう。しかし,この発作に対する的確な対処法がなかった。アレルギー発作かと考えて,抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を投与しても,その症状に有効ではない。患者にも症状が自然に消失するので心配のないことを告げるのがほとんどであった。

 筆者が診療所で経験した症例について検討した結果,ナシビン(R)などの点鼻薬による薬物性鼻炎の症状とは異なっており,またアレルギー性鼻炎とも異なっていた。さらにプラスミン拮抗薬のトラネキサム酸(トランサミン(R))の局所使用がこの副作用防止に有効なことを明らかにした1)

 さらに,キシロカイン(R),ボスミン(R)過敏症例数が増加してきたのでそれらを検討した。また耳鼻咽喉科医にアンケートを発送して,キシロカイン(R),ボスミン(R)による副作用の経験と対策をたずねた。

鼻腔悪性腫瘍の臨床的検討

著者: 村川哲也 ,   村田保博 ,   北原哲 ,   田部哲也 ,   唐帆健浩 ,   増田行広 ,   磯田幸秀 ,   山内宏一 ,   前川仁

ページ範囲:P.459 - P.462

I.はじめに

 鼻腔に発生する悪性腫瘍は多彩な病理組織型を呈するが,TNM分類は副鼻腔の分類しかなく,鼻腔の分類は未だ確立されていない。また,治療方針も病理組織型および腫瘍の浸潤範囲によって手術療法,化学療法,放射線療法の単独あるいは組み合わせで行われているが,確立されたものはなく治療上検討すべき点を少なからず残している。

 今回われわれは,過去15年間に一次治療を行った鼻腔悪性腫瘍12症例を臨床的に検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

顔面神経麻痺をきたした乳児耳下腺血管腫の1例

著者: 松本理恵 ,   前田学 ,   西﨑和則 ,   斉藤龍介

ページ範囲:P.465 - P.468

I.はじめに

 小児の耳下腺腫瘍は稀な疾患であり,Nagaoら1)は584例中16歳以下が36例(6.2%),Skolnikら2)は391例中20例(5.1%)と報告している。また,多形腫を中心とする上皮性腫瘍が主な成人と異なり,小児では血管腫が多いとされる1)。小児耳下腺血管腫は良性のことがほとんどであり,経過観察や保存的治療が第1選択であるが,症例によっては手術を考慮する必要がある。

 われわれは,顔面神経麻痺をきたし手術的治療を行うに至った乳児耳下腺血管腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

顔面に巨大血腫を形成した神経線維腫症例

著者: 熊切健一 ,   武林悟

ページ範囲:P.473 - P.476

I.はじめに

 神経線維腫症は,皮膚のcafé-au-lait spotと神経線維腫を主病変に,多彩な症候を呈する全身性疾患である。本症の合併症として,骨病変や中枢性神経腫瘍の発生頻度は高いが,出血に関してはあまり知られていない。

 今回われわれは,神経線維腫症の小児において外傷により顔面,頸部に巨大な血腫を形成し,進行性の気道狭窄をきたし,気管内挿管による気道確保ののちに,動脈塞栓術と外頸動脈結紮を行い止血し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

悪性変化を示した顎下部solid cystic hidradenomaの1例

著者: 高橋卓也 ,   柴田裕達 ,   毛利麻里 ,   冨田俊樹 ,   新田清一 ,   毛利忍 ,   内沼栄樹

ページ範囲:P.478 - P.481

I.はじめに

 今回われわれは,顎下部に発生した汗器官由来の腫瘍であるsolid cystic hidradenomaを経験した。本来は良性の腫瘍であるが,病理組織検査で一部悪性化を疑う所見を認めた稀な症例であった。考察を加えて報告する。

喉頭平滑筋肉腫の1例

著者: 渡辺健太 ,   荒井直樹 ,   横山正人 ,   水野文恵

ページ範囲:P.484 - P.487

I.はじめに

 喉頭悪性腫瘍のほとんどが扁平上皮癌であり,肉腫の発生率は癌腫の1%以下といわれている1)。とりわけ平滑筋肉腫は稀であり,本邦では十数例の報告をみるに過ぎない。

 今回われわれは,喉頭平滑筋肉腫の1例を経験し,興味深い病理組織所見が得られたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部リンパ節転移で発見された扁桃オカルト癌

著者: 富所雄一 ,   小林泰輔 ,   中村光士郎 ,   吉田正

ページ範囲:P.489 - P.492

I.はじめに

 頸部腫瘤を摘出して病理組織学的検査を行い転移性癌と判明した場合,種々の検査を行い原発巣検索が行われる。しかし,精査を行っても原発巣が発見できず原発不明癌として治療される患者の割合が全頭頸部癌の1~5%1)を占めている。これら原発不明癌として一次治療を開始された症例のうち,10~30%2)でのちに原発巣が判明するとされる。最近このような症例で,比較的高率に口蓋扁桃に原発巣が発見されたという報告が散見される3)

 今回われわれは頸部転移性扁平上皮癌症例で,原発巣の検索に難渋しながらも,口蓋扁桃の病理組織学的検査で一次治療開始前に原発巣が判明した症例を経験したので報告する。

救急外来を受診した鼻出血症例の検討

著者: 佐藤春城 ,   長谷川剛 ,   井上斉 ,   金林秀則 ,   清水重敬 ,   河野淳 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.494 - P.496

I.はじめに

 鼻出血は,耳鼻咽喉科の日常診療において遭遇する頻度の高い疾患である。その大半は比較的容易に止血し得るものであるが,重症例では入院治療や輸血なども必要になることがある。特に休日,夜間の鼻出血は止血処置の専門性において他科には対応が困難なため,耳鼻咽喉科にとって重要な救急対応疾患の1つと考えられる。

 今回われわれは,東京医科大学病院耳鼻咽喉科救急外来を受診した鼻出血患者に対し,患者動態を統計的に検討した。

連載 シリーズ/耳鼻咽喉科診療に必要な他科の知識

⑥神経内科:頭痛

著者: 間中信也

ページ範囲:P.497 - P.502

I.はじめに

 頭痛は全診療科が関わる普遍的な症状である。その原因の有無により症候性頭痛(二次性頭痛)と機能性頭痛(一次性頭痛)とに大別される。機能性頭痛は「反復性または持続性に起こり,経過が長期にわたる頭痛」であり慢性頭痛と同義に用いられる。片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛がその代表である。俗に「頭痛もちの頭痛」ともいわれている。

 慢性頭痛は,自覚症状が主で他覚的な症状に乏しく,確実な診断マーカーがないために診断があいまいになりがちであった。1988年国際頭痛学会(IHS)では,慢性頭痛の疾患概念を明らかにする第一歩として,表1に示す新しい分類と診断基準を作成した1)。ちなみに耳鼻咽喉科的な疾患による頭痛は第11群に分類されている。この診断基準により初めて共通の土俵の上に立つ頭痛の調査が可能となり,頭痛の疫学調査が多くの国で行われ,慢性頭痛の有病率が明らかにされるようになった。

 本稿では慢性頭痛の中でもインパクトが大きく,かつトリプタンの登場により治療の新世紀を迎えた片頭痛を中心に頭痛の最新動向を紹介する。

鏡下咡語

“YOUTH” of seventy-four

著者: 調賢哉

ページ範囲:P.470 - P.471

 Youth is not time of life―it is a state of mind:it is a temper of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions, a predominance of curage over timidity, of the appetite for adventure over of ease.

 Nobody grows old by merely living a number of years;people grow old only by deserting their ideals.

―Samuel Ullman―

 青春とは人生のある期間をいうのではなく,心の様相をいうのだ。逞しき意志,優れた創造力,炎ゆる情熱,怯懦を却ける勇猛心,安易を振り捨てる冒険心,こういう様相を青春というのだ。年を重ねただけでは人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。

―サムエル・ウルマン―

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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