文献詳細
原著
ボスミン(R)およびキシロカイン(R)による鼻粘膜の局所処置後の副作用について―水様性鼻漏やくしゃみの発生機序に関する考察
著者: 佐々木好久1
所属機関: 1佐々木耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.453 - P.457
文献概要
リドカイン(キシロカイン(R))およびエピネフリン(ボスミン(R))の噴霧や塗布による鼻処置は鼻疾患の診断や治療に使用されることが多く,欠かせないものとなっている。中耳炎や耳管狭窄症治療の際の鼻の処置に,またファイバースコープや内視鏡の使用前処置などにも重要である。この処置が耳鼻咽喉科疾患の診断や治療に占めてきた意味と役割は今後も変わらないと考えられる。
しかし,この局所処置で思わぬ副作用に見舞われることがある。くしゃみ発作やとめどもない水様性鼻漏の流出である。これらの症状の煩わしさや不快さに悩んでも特別に処置しないで,1~2日で自然に症状は消退してしまう。しかし,この発作に対する的確な対処法がなかった。アレルギー発作かと考えて,抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を投与しても,その症状に有効ではない。患者にも症状が自然に消失するので心配のないことを告げるのがほとんどであった。
筆者が診療所で経験した症例について検討した結果,ナシビン(R)などの点鼻薬による薬物性鼻炎の症状とは異なっており,またアレルギー性鼻炎とも異なっていた。さらにプラスミン拮抗薬のトラネキサム酸(トランサミン(R))の局所使用がこの副作用防止に有効なことを明らかにした1)。
さらに,キシロカイン(R),ボスミン(R)過敏症例数が増加してきたのでそれらを検討した。また耳鼻咽喉科医にアンケートを発送して,キシロカイン(R),ボスミン(R)による副作用の経験と対策をたずねた。
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