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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科75巻8号

2003年07月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科領域の皮膚・粘膜疾患

1.耳性帯状疱疹

著者: 古田康 ,   大谷文雄

ページ範囲:P.517 - P.522

I.はじめに

 耳性帯状疱疹(herpes zoster oticusまたはRamsay Hunt症候群)は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の再活性化により発症し,耳介・口腔咽頭の帯状疱疹,末梢性顔面神経麻痺,難聴・耳鳴・めまいなどの第8脳神経症状を3主徴とする。典型的な皮膚または粘膜疹と神経症状があれば診断は容易であるが,3主徴が同時に揃わない症例もよくみられ,また帯状疱疹が外耳道の発赤など外耳炎様症状を呈する非典型例もあり,慎重な診断を要する。また,顔面神経麻痺の回復はBell麻痺症例に較べて不良であることから適切な治療が重要である。

 本稿ではRamsay Hunt症候群の診断ポイントを中心に解説する。

2.外耳道湿疹

著者: 大輪達仁

ページ範囲:P.525 - P.529

I.はじめに

 外耳道湿疹,あるいは外耳道炎は,耳鼻咽喉科の日常診療としては比較的ありふれた疾患といえる。日常臨床では,外耳道局所の観察や患者本人の訴えから診断に難渋することも少なく,治療に関しても個々の医師で確立していると思われるが,時に難治例に遭遇することもある。

 本稿では,外耳道の特徴や湿疹の病態,治療などについてまとめ,改めて外耳道湿疹について再考してみた。

3.水疱性鼓膜炎

著者: 高山幹子

ページ範囲:P.531 - P.536

I.はじめに

 鼓膜炎は,耳痛を主訴に受診する症例に時折観察される水疱の形成を伴った水疱性鼓膜炎と(図1),耳漏を主訴に鼓膜にびらんあるいは肉芽形成のみられる慢性鼓膜炎(肉芽性鼓膜炎)の2つに分類される。しかし,水疱性鼓膜炎は急性中耳炎に比較し疾患名として使用されることは少ないようである。

 そこで本稿では,この疾患について臨床的な観点から述べてみる。

4.口唇ヘルペス

著者: 藤枝重治

ページ範囲:P.539 - P.545

I.はじめに

 ヘルペス(疱疹)は,皮膚科用語において小水疱が集まった急性炎症疾患を意味する。口唇ヘルペスは,その名のごとく口唇の皮膚粘膜移行部を中心に形成された水疱の集団であり,単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)は,1型(HSV-1)と2型(HSV-2)に分類され,一般に口唇ヘルペス(herpes labialis)を起こすのはHSV-1であるとされている。一方,性器ヘルペス(genital herpes)を起こすのはHSV-2とされている。しかし,HSV-2で起こる口唇ヘルペスや逆にHSV-1で引き起こされる性器ヘルペスも報告されている。

 皮膚粘膜の単純ヘルペスウイルス感染症の発症部位の臨床統計を示す(表1)。口唇(27.8%),性器(24.8%)が多く,続いて顔面,皮膚と続く。

5.口腔粘膜疾患

著者: 牛飼雅人 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.548 - P.551

I.はじめに

 口腔は,常に外部に開かれているため外からの感染や食物,異物による刺激を受けやすく,これらの直接的作用による病変や症状を呈する。またその一方で,口腔とは離れた皮膚やそのほか全身疾患の間接的作用,あるいはその部分症状として病変が生じることも稀ではない。したがって,その診察にあたってはそれらのことを常に念頭に置く必要がある。

 本稿では,口腔粘膜の主な潰瘍・炎症性疾患を中心に概説する。

目でみる耳鼻咽喉科

副咽頭間隙原発の脂肪腫の1例

著者: 鵜久森徹 ,   兵頭政光 ,   本多伸光 ,   暁清文

ページ範囲:P.514 - P.515

 副咽頭間隙に発生する腫瘍は大部分が神経鞘腫,多形腺腫,傍神経腫などの良性腫瘍である1)。これらは初期には自覚症状に乏しく,増大してから診断されることが少なくない。

 今回,頸部から頭蓋底に及ぶ副咽頭間隙原発の大きな脂肪腫症例を経験したので報告する。

原著

外耳道に生じた皮脂腺癌の1症例

著者: 境修平 ,   辻茂希 ,   大久保英樹 ,   原晃

ページ範囲:P.557 - P.560

I.はじめに

 皮脂腺癌は,臨床病理学的に眼瞼に生じるものと眼瞼以外の部位に生じるものに大別され,予後についてもそれぞれ異なるものとして扱われている1)。眼瞼に生じる場合,マイボーム腺からのものが多く,眼瞼の悪性腫瘍の1~5.5%を占め,予後不良の腫瘍として知られている2)。一方,眼瞼外皮脂腺癌の発生部位は頭頸部に多く,中でも顔面,特に鼻部,頰部に多いとされている3)

 今回われわれは,外耳道に生じた皮脂腺癌の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

急性中耳炎に続発した化膿性髄膜炎の1例

著者: 佐藤賢太郎 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.563 - P.565

I.はじめに

 近年,抗菌剤の発達により耳性化膿性髄膜炎は減少している。耳性化膿性髄膜炎の原疾患は慢性中耳炎の急性増悪や真珠腫性中耳炎が多く,成人で急性中耳炎に伴う化膿性髄膜炎は少ない1)。急性中耳炎は耳鼻咽喉科の日常診察では最も多く遭遇する疾患の1つである。一方,耳性化膿性髄膜炎は発症すると重篤な状態に陥る可能性が極めて高く,早期の診断および適切な対応が重要である。

 今回われわれは,急性中耳炎に続発した化膿性髄膜炎を経験したので報告する。

蝶形骨洞真菌症の2症例

著者: 五島史行 ,   藤岡正人 ,   國弘幸伸 ,   小川郁

ページ範囲:P.566 - P.570

I.はじめに

 近年,食生活の向上や抗生物質の頻用によって細菌性の慢性副鼻腔炎は減少した。一方でステロイド剤,免疫抑制剤,抗がん剤などの頻用などにより副鼻腔真菌症は増加傾向にある1)

 今回われわれは,蝶形骨洞に発生した真菌症を2例経験したので報告する。

振子型を呈した口蓋扁桃乳頭状肥大症の1例

著者: 鈴木政美 ,   岡本誠 ,   鵜澤正道 ,   喜多村健

ページ範囲:P.573 - P.575

I.はじめに

 口蓋扁桃の異型肥大として,乳頭状肥大症と振子様肥大症が知られているが1,2),今回,両方の形態を合わせもつ症例を経験したので報告する。

Branchio-oto-renal syndromeの1例

著者: 尾関安英

ページ範囲:P.577 - P.581

I.はじめに

 第1,第2鰓弓由来の奇形(耳小骨奇形,耳介奇形,耳瘻孔,側頸部瘻孔,下顎骨形成不全など)に難聴や腎形成不全を合併したものをbranchio-oto-renal dysplasia,腎異常を伴わないものをbranchio-oto dysplasiaとして1975年および1976年にMelnickら1,2)が疾患概念を提唱した。本邦では1985年,市村ら3)の発表以来報告が散見される4~7)

 最近,本症候群と考えられる1例を経験したので,中耳手術所見,聴力成績を併せて報告する。

連載 シリーズ/耳鼻咽喉科診療に必要な他科の知識

⑦内科:新興・再興感染症

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.583 - P.586

I.新興感染症

1.新興感染症の変遷

 新興感染症と呼ばれる感染症は,今までわれわれが経験しなかった,あるいは経験し得たとしても極く稀であった感染症を多くみるようになったものを呼んでいる。

 しかし,この定義には地域差が存在する。例えば,米国で新興感染症とされているWest Nile feverはわが国ではまだ経験されていないので,この感染症は新興感染症といわれても,感覚的に馴染みがない。

 以前には,種々の細菌感染症が新興感染症として挙げられてきたが,2003年においては新興感染症は主にウイルス性疾患となっているとしても過言ではないだろう。

鏡下咡語

恩師高原滋夫先生と無カタラーゼ血症

著者: 藤森春樹

ページ範囲:P.554 - P.555

 某書店発刊の耳鼻咽喉科全書シリーズ中「耳鼻咽喉科と全身疾患」を手にして,血液疾患の中に「無カタラーゼ血症」Acatalasemiaの記載がないのに気づいた。もちろん,現在よくみられる疾患でないから取り上げられなかったのだろうと推察される。しかし,その業績で耳鼻咽喉科医として学士院賞を受賞され学士院会員にもなられた,私の恩師高原滋夫先生の業績が忘れ去られようとしているのかと思い,世界的に認められるまでの御苦労も含め改めて紹介したい。

 耳鼻咽喉科領域においては,手術創面の消毒に好んでオキシドール(3%過酸化水素水H2O2)が用いられている。その際,H2O2の滴加と同時に多量の気泡の発生がみられることは周知の通りである。この現象は血中に存在するカタラーゼ酵素の作用によりH2O2が化学反応を起こし,その際に発生するO2が気泡となって出るのである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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