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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科76巻1号

2004年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

診断に苦慮したツツガムシ病の1例

著者: 永野広海 ,   出口浩二 ,   福岩達哉 ,   牛飼雅人 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.6 - P.7

 ツツガムシ病は届け出感染症の1つで,頭頸部領域に特徴的な症状を呈するが,その報告は稀である。最近,この診断に苦慮した症例を経験したので報告する。

Current Article

温度眼振今昔―眼振の三次元分析と重力―

著者: 新井寧子

ページ範囲:P.9 - P.22

I.はじめに

 温度眼振とは,迷路に加えられた温度刺激によって惹起される眼振のことである。迷路を一側のみ刺激して,前庭眼反射をみることができる唯一の方法であることから,めまい患者の臨床に欠くことのできない検査であり,1906年のBarany1)の報告以来“温度刺激検査caloric test”として広く行われている。“温度眼振”をキーワードにして文献検索をかけるとたちどころに1,000以上の文献がみつかり,もう研究され尽くした感がある。

 一方,耳科医にとって温度眼振とは極めて日常的な現象である。耳垢や耳漏を吸引したり洗い流すとき,ときに患者は気持ち悪いとかめまいがするとか言い大騒ぎする。眼振が出ていることで,心筋梗塞や脳梗塞,vago-vagal reflexによる血圧低下と容易に区別できる。点耳薬を処方する際は,“手で握るなどして人肌に温めて”から点耳するよう指示しないと,温度刺激によるめまいのために患者は一度の点耳でやめてしまう。鼓膜麻酔のためのイオントフォレーゼには37℃に温めた薬液を使わなければならない。

 本稿では,この古くて新しい温度眼振の今日的おもしろさを紹介したい。

原著

鼻口蓋管囊胞の1症例

著者: 木村まき ,   渡邊健一 ,   増野聡 ,   山内陽子 ,   青木秀治

ページ範囲:P.25 - P.27

I.はじめに

 鼻口蓋管囊胞は鼻口蓋管の遺残が原因と考えられ,顎骨囊胞の約2%と比較的少ない疾患である1)。囊胞は通常上顎骨内に存在し,囊胞の増大に伴い鼻腔や副鼻腔を圧排することがある1~5)

 今回われわれは,鼻閉を主訴とした鼻口蓋管囊胞の1例を経験したので報告する。

無呼吸発作と呼吸困難を呈した乳児舌根囊胞の1例

著者: 石田良治 ,   山田弘之 ,   西井真一郎

ページ範囲:P.29 - P.31

I.はじめに

 乳幼児の呼吸障害をきたす上気道疾患として,舌根囊胞は比較的稀な疾患であるが,咽頭部の狭窄,喉頭蓋の圧迫により重篤な呼吸障害の原因となり得る。

 今回われわれは,上気道炎の合併により著明な呼吸障害を呈した生後3か月女児の舌根囊胞症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

呼吸困難を生じた巨大な咽後血腫の1例

著者: 椿恵樹 ,   石井甲介 ,   太田康 ,   山本昌範 ,   篠崎剛

ページ範囲:P.34 - P.37

I.はじめに

 咽後血腫は,非炎症性の急速な頸部腫脹としては非常に稀な疾患である1,2)。しかし,その病変は拡がりやすく,時に上気道の閉塞をきたすため,緊急で挿管,気管切開などの気道確保が必要となる。

 今回われわれは,外傷などの明らかな原因がなく咽後血腫を生じ,呼吸困難により気道確保が必要になった症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

口蓋扁桃の形態と扁桃周囲膿瘍の発症について

著者: 鈴木政美 ,   鵜澤正道 ,   畑中章生 ,   金沢弘美 ,   喜多村健 ,   岡本誠

ページ範囲:P.39 - P.41

I.はじめに

 扁桃周囲膿瘍は,耳鼻咽喉科日常臨床で多数経験する疾患で,診断,治療法も確立されている。しかし,発症機構については,いまだ確定されていない1~4)

 われわれは,日常診療で多数の扁桃周囲膿瘍,急性扁桃炎を診察している中で,扁桃周囲膿瘍の口蓋扁桃の形態に一定の傾向があるのではないかと推察した。そこで,扁桃周囲膿瘍,急性扁桃炎の口蓋扁桃の形態を確認し,口蓋扁桃の形態と扁桃周囲膿瘍の発症について検討を加えた。

直達喉頭鏡下に摘出した巨大喉頭蓋囊胞の1症例

著者: 加藤高行 ,   石川浩太郎 ,   瀬嶋尊之 ,   木村宙倫 ,   市村恵一

ページ範囲:P.44 - P.46

I.はじめに

 喉頭蓋囊胞は日常臨床でよくみかける疾患であるが,咽喉頭違和感や嚥下障害をきたし,さらに大きさが増すと呼吸障害などの重篤な症状を惹起する疾患である。喉頭蓋舌面から発生することが多く,組織学的には類表皮囊胞や貯留囊胞が多い1~3)

 今回われわれは,喉頭蓋谷から喉頭蓋舌面にかけて基部をもつ巨大な喉頭蓋囊胞を直達喉頭鏡下に摘出し,病理学的に類表皮囊胞であった症例を経験したので報告する。

Ejnell法による声帯外方移動術を施行した両側反回神経麻痺の1症例

著者: 榎本美紀 ,   大川靖弘 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.54 - P.57

I.はじめに

 両側声帯麻痺による呼吸困難に対して施行される声門開大術には様々な手術手技があり,大別すると前方開大術と後方開大術がある(表1)。1984年にEjnellら1)により報告された方法は,他の方法と比べ喉頭の正常構造を破壊せず手技も簡便であり,本邦においても近年第1選択とする施設が増えつつある2~5)

 今回われわれは,両側反回神経麻痺に対してEjnell法を施行し経過を観察した症例を経験したので報告する。

Navigation systemを利用した頭頸部悪性腫瘍手術

著者: 安藤瑞生 ,   持木将人 ,   中尾一成 ,   近藤健二 ,   竹内直信 ,   菅澤正

ページ範囲:P.60 - P.63

I.はじめに

 Navigation systemは主に鼻内内視鏡下副鼻腔手術において活用されている。その利用範囲は拡大しているが,頭頸部悪性腫瘍の手術において使用した報告はまだ少ない1)

 当科では現在までに7症例の頭頸部悪性腫瘍に対してナビゲーション支援手術を施行し,その有効性を実感している。今回,その中から代表的な症例を選んで呈示し,その有効性や問題点について検討を加えて報告する。

手術・手技

頭頸部腫瘍に対する半導体レーザーの使用経験

著者: 平位知久 ,   木村信次 ,   森直樹

ページ範囲:P.65 - P.67

I.はじめに

 耳鼻咽喉科頭頸部外科領域におけるレーザーはCO2レーザー,YAGレーザー,KTPレーザーなどが主に用いられている。CO2レーザーは切開や蒸散に,YAGレーザーは凝固や止血に有用であり,KTPレーザーは血管腫に対する照射に適している。半導体レーザーは,機能的には従来のNd:YAGレーザーとほぼ同じで,主たる用途は一般外科および内視鏡治療における凝固,止血および小切開である1)

 今回,半導体レーザー(オリンパス社製,UDL-15)を乳頭腫や血管腫症例に対して使用し,その有用性と安全性を確認したので報告する。

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

①鼻茸切除術

著者: 上條篤 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.69 - P.73

I.はじめに

 鼻茸の罹患率は欧米では1~4%といわれており,日常診療においてよくみかける疾患である。鼻茸切除術は,耳鼻咽喉科手術の中でも日帰りもしくは短期入院に適した手術の1つであり,従来より,各施設で盛んに行われている。最近では内視鏡を用いた手術が主流となり,いっそう安全に,正確に施行されるようになってきた。しかし,「鼻茸があるからそれを切除する」というような短絡的な発想ではなく,疾患の背景や異なる病態を考慮したうえで治療していく姿勢が必要である。

鏡下咡語

新大阪発 午前7時33分

著者: 天津睦郎

ページ範囲:P.50 - P.51

 新大阪午前7時33分発東京行ひかり208号は既に24番線に停車していた。進行方向から8号車に乗り込んだ。始発列車でもあり,車内は一見して閑散としている。8号車には17列あって,東京側を先頭に通路を挟んで右側にA,B 2席,左側にC,D 2席計4席が1列となって,大きい番号から順に並んでいる。入り口から2列目の16番D席に,六十代半ばの紳士が着席して何かに目を通していた。高校時代の同級生で弁護士のK君ではないか。話は後でゆっくりできる筈だ。いつもと同様,禁煙車両のなかほどのD席を予約しておいた。今回はたまたま12番のD席,東京に向かって左手の窓側である。12番までは彼以外まだ誰も座っていない。生まれた時から今日まで,12という数字と妙に縁が深い。縁起を担ぐわけではないが,小生にとってはラッキーナンバーである。きっと今日は運がつくのだろう。今日はまず,午前11時から学会事務局で明日から2日間行われる第15回専門医認定試験の準備として,問題用紙の袋詰めをしなければならない。午後6時からは打ち合わせ会もある。結構忙しい1日である。

 自席にたどりつき,バッグを上の棚に上げ,お茶の入ったペットボトルを窓枠に置く,上着は左前方の窓枠の洋服掛にぶら下げる。座席前の網袋には,新幹線車内誌「WEDGE」と「ひととき」がある。これに目を通してひとときを過ごす。通いなれた道中で,永い間に身についてしまった手順である。車掌が検札に来た。いつのまにか新大阪を発車していたようだ。あまり下を向いていると首が疲れるので,時々頭を上げ左前方の車外をみることにする。これも既にしっかりと身についている。どうやら直前の席13番D席にも人がいるようだ。きっと発車間際に駆け込んだに違いない。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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