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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科76巻10号

2004年09月発行

雑誌目次

特集 頭頸部癌の治療指針―私たちはこうしている― 7.上顎癌T3~T4症例の治療指針

1)拡大根治術

著者: 西川邦男

ページ範囲:P.677 - P.683

I.はじめに

 四国がんセンターでは上顎癌T3~T4症例に対して,手術療法を中心に,組織型に応じて術前放射線照射,化学療法を補助療法として用いている。これらT3~T4上顎進行癌に対するアプローチ法,切除術式,眼球温存,頭蓋底切除,硬性再建についてわれわれの術式を述べる。

2)少線量放射線療法

著者: 八尾和雄

ページ範囲:P.685 - P.691

I.はじめに

 上顎洞癌のわれわれの治療方法は,教室の高橋ら1~3)が,佐藤ら4~6)の集学治療である三者併用療法を継承し,思案を重ね,画一化した北里方式である。この方法の手術に関しては,腫瘍をその進展に沿って摘出する減量手術であるため,慢性副鼻腔炎の手術ができる者なら手術が可能な方法である。また放射線量,化学療法剤の使用量も,腫瘍の進行度,病理組織学的違いに関係なく,一定のやり方で治療する。この治療の結果は,顔面の醜形と構音,咀嚼,嚥下機能の障害が極めて少なく,治癒後の創部の痂皮の付着,悪臭など日常生活に支障をきたすことも少ない。したがって早期に社会復帰が可能となり,大きな利点である。さらに,臨床成績は従来のen-blockに摘出し,過大な放射線量,化学療法剤使用量で治療した報告7~9)より優れている。

 本稿では,この北里方式で治療した上顎洞癌に関して報告する。使用したTNM分類は,1997年のUICC分類である。

3)三者(手術,放射線,化学)併用療法

著者: 藤枝重治 ,   意元義政

ページ範囲:P.693 - P.698

I.はじめに

 上顎癌治療は,その過酷さ,美容面への計り知れない影響,嚥下・咀嚼機能,発声などの機能障害のため,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医としても最も患いたくない癌の代表であるとまでいわれている。しかし,上顎癌の組織型は約80~90%が放射線感受性の高い扁平上皮癌であり,抗癌剤との併用でかなりの相乗効果が認められることが救いである。このことから,少しでも形態と機能を保存しつつ,良好な治療成績を得ることを目的として,手術,放射線,化学療法の併用による三者併用療法の概念が生まれた。

 1960年代,上顎癌に対するオリジナルの三者併用療法が提唱された。まず鼻腔内の腫瘍を,もしくは犬歯窩から上顎洞を開洞して腫瘍を生検する。病理組織を確定後,10 Gy前後の少量の放射線治療を行う。耳介前部から浅側頭動脈経由で顎動脈にカテーテルを留置し,動注化学療法を施行する。続いて犬歯窩アプローチにて壊死した腫瘍のほとんどを摘出する。さらに放射線治療を10~20 Gy行い(計20~30 Gy),動注化学療法を数回併用する。上顎洞の壊死した腫瘍を適宜(週1回など)necrotomyすることによって完全に腫瘍を摘出し,少しでも機能を温存して治癒しようと試みた1)

 現在,本邦で行われている上顎洞癌治療における三者併用療法は,各施設が独自の放射線量・期間・時期,化学療法のアプローチと薬剤,手術の方法と時期,necrotomyの有無を決定している。しかし,再建外科の発達によりen-bloc手術を中心に考える施設も増えてきた2)。さらに時代の流れもあり,10年前に行っていたnecrotomyを病棟のユニットに座らせ,涙ながらに必死に痛みを耐えさせて行うことも到底できなくなってきている。それぞれの施設がそれぞれの症例ごとに考え,ベストだと思われる治療を行っているのが現状であろう。

目でみる耳鼻咽喉科

内頸静脈に浸潤し,腫瘍塞栓を形成した甲状腺濾胞癌症例

著者: 鈴木真輔 ,   米谷博秀 ,   石川和夫 ,   南條博

ページ範囲:P.674 - P.675

 甲状腺濾胞癌は臨床的に遠隔転移が特徴であるが,これには腫瘍の周辺組織への浸潤状態が関係するとされ重要な所見である1)

 最近われわれは,周辺組織へ浸潤し,さらに内頸静脈に腫瘍塞栓の形で増殖する甲状腺濾胞癌症例を経験したので報告する。

原著

良性発作性頭位めまい症に対する同一日内の頭位変換療法反復施行の検討

著者: 藤井守

ページ範囲:P.705 - P.707

I.はじめに

 良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:以下,BPPVと略す)に対しては,その原因と推測される半規管内の耳石片を卵形囊へ戻す頭位変換療法(canalith repositioning procedure:以下,CRPと略す)が第1選択の治療法となっている。当科での初回治療時の有効率は約70%1)であり,Epleyら提唱者自身の報告2~6)に比較すると低い有効率であった。

 そこで,CRP施行中の眼振方向の変化を観察し,その結果によってはCRPを反復することで,有効率の向上が得られるか否かを検討した。

上眼瞼原発の外毛根鞘癌再発例に対する外科的治療

著者: 冨藤雅之 ,   行木英生 ,   今西順久 ,   行木一郎太 ,   荒木康智 ,   鈴木隆史

ページ範囲:P.709 - P.713

I.はじめに

 外毛根鞘癌(trichilemmal carcinoma:以下,TLCと略す)は毛包の外毛根鞘由来と考えられる皮膚悪性腫瘍で,1976年にHeadington1)により提唱された。本邦においては森岡ら2)によってmalignant trichilemmomaとして初めて記載された。本腫瘍は高齢者の日光曝露部位に好発するとされており,頭頸部は好発部位の1つであるが,近年本邦においては皮膚科領域を中心に年に十数例が報告されている3~5)。しかし,眼瞼における本腫瘍の報告例は極めて少なく,国内外の文献を合わせても数例みられるのみである6~10)

 今回われわれは,上眼瞼原発の外毛根鞘癌が眼窩内に浸潤した再発例の外科的治療を経験したので報告する。

自然排出した巨大な耳下腺唾石の1症例

著者: 長谷川武 ,   竹腰英樹 ,   青木大輔 ,   大野俊哉 ,   菊地茂

ページ範囲:P.715 - P.718

I.はじめに

 唾石症は日常臨床においてよく遭遇する疾患である。顎下腺に好発し,次いで耳下腺,舌下腺の順に報告されている1)。全唾石症のうち耳下腺唾石症の割合は,本邦では0.6~10.5%,欧米では0.6~20.6%と報告されている2~4)。治療は唾石の存在部位によるが,保存的に自然排出を期待する症例や,また口内法もしくは外切開により摘出術を施行する症例がある。

 今回われわれは,自然排出した巨大な耳下腺唾石症を経験したので文献的考察を加えて報告する。

急性喉頭蓋炎の臨床的検討

著者: 香取秀明 ,   佃守 ,   田口享秀 ,   石戸谷淳一 ,   池田陽一 ,   木村真知子 ,   廣瀬正二 ,   佐久間康徳 ,   山本馨

ページ範囲:P.721 - P.724

I.はじめに

 急性喉頭蓋炎は声門上部に発症する急性感染症で,炎症は喉頭蓋から披裂部に及ぶ。ときとして急激に上気道閉塞をきたし,気管切開が必要となり,臨床上,注意が必要である。

 今回われわれは,横浜市立大学医学部附属病院と横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター耳鼻咽喉科で加療をした急性喉頭蓋炎症例96例の背景因子,臨床症状などを検討した。本疾患の特性を再認識し,また,気管切開を施行するに当たって診断基準の一助となる因子をretrospectiveに検索し,その有用性を検討した。

六君子湯(R)が有効であった非特異的喉頭肉芽腫の3症例

著者: 中村毅 ,   三枝英人 ,   粉川隆行 ,   愛野威一郎 ,   岩崎智治 ,   八木聰明

ページ範囲:P.727 - P.731

I.はじめに

 声門後部,特に披裂軟骨声帯突起付近に好発する非特異的喉頭肉芽腫は,種々の治療にもかかわらず再発を繰り返し,治療に難渋することが多い。近年,プロトンポンプ阻害薬(以下,PPIと略す)の有効性も報告されているが1~4),なお抵抗性のものが存在する。

 今回,われわれは種々の治療に抵抗した非特異的喉頭肉芽腫の3症例に対して,漢方製剤である六君子湯(R)を投与したところ,肉芽腫の消失を認めたので,若干の文献的考察を含めて報告する。

有茎性腫瘤の喉頭内嵌頓によって呼吸困難をきたした下咽頭「いわゆる癌肉腫」症例

著者: 鷲頭洋三 ,   中谷宏章 ,   竹内俊二 ,   中平光彦 ,   竹田泰三 ,   森木利昭

ページ範囲:P.733 - P.737

I.はじめに

 「いわゆる癌肉腫」(so-called carcinosarcoma)は癌組織が脱分化を起こし,一見肉腫様の間質を有するようになった腫瘍である。特徴として有茎性腫瘤を呈することが挙げられる。

 今回われわれは,「いわゆる癌肉腫」の症例で梨状陥凹深部に存在していた有茎性腫瘤が喉頭内に嵌頓をきたし,突然の呼吸困難を呈した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

⑨甲状腺良性腫瘍摘出術―外切開法―

著者: 山田弘之

ページ範囲:P.739 - P.743

I.はじめに

 甲状腺手術は施設によって手術適応が異なり,また癌の場合の甲状腺切除範囲,リンパ節郭清範囲も施設間の隔たりは大きいと思われる。当科では穿刺吸引細胞診の結果を最重要視して,良性疾患の手術を回避することを原則としている1)。したがって,今回の対象疾患である良性腫瘍に限定すると,その対象数は非常に少ない。対象をバセドウ病なども含めた良性疾患,側頸部の郭清を必要としない分化癌まで広げて,当科で行っている入院治療について紹介する。

鏡下咡語

新設杏林大学耳鼻咽喉科発足からの裏話

著者: 堤昌己

ページ範囲:P.702 - P.703

プロローグ

 昭和45年(1970年)のある日,私は学長室に呼ばれた。「都内の三鷹市に新しい大学が出来ることになった。慈恵からもスタッフを出して設立の企画の段階から応援することにした。君が耳鼻科のスタッフとして参加するように」と。当時,慈恵医大の樋口一成学長は私学審議委員会の委員長で医科大学新設認可に深く関与していた。突然のことで私は勿論,主任の高橋良教授も大変驚かれた。文部省への人事申請には,教授城所信五郎,助教授が私,以下慈恵医大の医局員が講師,助手として名を連ねていた。設立が軌道にのった時点で私は再び慈恵医大に復帰できるとのことであったものが,幸か不幸か,それから25年間杏林大学の人となってしまった。これが私の人生の大きな転機でもあった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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