手術・手技
頭頸部囊胞性疾患に対する経皮的エタノール注入療法の治療経験
著者:
松田太志
,
植田恭弘
,
宮本浩行
,
佐藤雄二
,
長島渉
,
維田史郎
,
櫛田嘉代子
,
若田鋭樹
,
村上信五
ページ範囲:P.813 - P.817
I.はじめに
経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy:以下,PEITと略す)は,1981年Bean1)が腎囊胞の治療として報告して以来,肝,子宮などの囊胞性疾患や肝癌などの悪性腫瘍などで広く用いられている2,3)。頭頸部領域では既に甲状腺囊胞において用いられており,2002年4月からは保険適用となった4)。頭頸部には,甲状腺以外にも正中頸囊胞,側頸囊胞などの囊胞性疾患があり,これらの囊胞性疾患の治療は従来手術的治療が中心であった。手術治療は頸部に外切開が必要であり,審美的な面から手術治療を敬遠する症例も少なくない。また,全身麻酔での手術治療は,入院期間や費用の面でも大きな負担となる(表1)。頸部囊胞性疾患に対するPEITの報告は家根ら5),宮原ら6)が最近報告しているが,渉猟し得た限りまとまった報告は家根ら5)の8例の報告のみであった。また,正中頸囊胞にPEITを施行した報告はない。
今回筆者らは,正中頸囊胞,側頸囊胞などの頸部囊胞性疾患症例のうち手術治療を希望しない症例に対してPEITを施行し,良好な結果を得たので報告する。