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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科76巻12号

2004年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

小児重度睡眠時無呼吸例に対するマイクロデブリッダーによる咽頭扁桃切除

著者: 森田武志 ,   藤田修治 ,   森田直子 ,   北英夫 ,   田村哲也

ページ範囲:P.834 - P.835

 睡眠時無呼吸低呼吸症候群は,小児では口蓋扁桃の肥大・咽頭扁桃の増殖による閉塞性(obstructive sleep apnea hypopnea syndrome:以下,OSAHSと略)のものが多いとされ,外科的治療の高い効果が確認されている1~3)

 今回,陥没呼吸を示す重度OSAHS例に対して,内視鏡下にマイクロデブリッダーを用いて咽頭扁桃切除を行った。

Current Article

内耳プロテオーム解析とCOCH遺伝子アイソフォーム―基礎研究の臨床応用をめざして―

著者: 池園哲郎

ページ範囲:P.838 - P.849

I.プロテオーム解析とは

 ヒトゲノムの配列の解読がほぼ終了し,今後の研究の興味はゲノムから得られる情報を使い,それの意味を知ることに変わりつつある。ゲノム解析の結果,ヒト遺伝子の数は以前予想されていた10万個ではなく,それよりかなり少ない3.5万個程度であることが明らかになった。この遺伝子の数は,ヒトという生物の機能の多様性を説明するには少な過ぎると考えられている。このギャップは遺伝子が転写,翻訳される際の多様性にあることが推測されており,これを解明する手段として注目されているのがプロテオーム解析である。この概念は1996年にオーストラリアのWilkinsら1)によって提唱された。

 プロテオーム(proteome)は,細胞や組織において発現している蛋白質の全体像を指す。DNAに書き込まれた情報はRNAを介して蛋白質へ翻訳される。近年の研究によると,RNAの発現プロファイルと蛋白質の発現プロファイルは必ずしも一致するわけではなく,その相関は50%以下であるともいわれている。そこで,蛋白質の網羅的解析,すなわちプロテオーム解析を行うことが重要とされている(表1)。

原著

両側同時性急性感音難聴として発症した小脳・脳幹多発梗塞の1症例

著者: 堀容子 ,   大島猛史 ,   小倉正樹 ,   須納瀬弘 ,   小林俊光

ページ範囲:P.851 - P.855

I.はじめに

 急性高度感音難聴は日常診療で頻繁に遭遇し,その多くは突発性難聴として扱われる。しかし,感音難聴は蝸牛から中枢に至る聴覚路のいずれの部位が障害されても起こるため,中枢性疾患など生命を脅かす重篤な疾患の部分症である可能性を常に念頭に置き,病歴や神経学的所見に注意を払って診察を進める必要がある。

 今回われわれは,両側同時性の急性感音難聴として発症した小脳・脳幹多発梗塞の1症例を経験したので報告する。

回転性めまいで発症した延髄梗塞例

著者: 渡邉一正 ,   若島純一 ,   小澤貴行

ページ範囲:P.857 - P.859

I.はじめに

 めまいのみを訴える患者の中で脳梗塞が占める頻度は数%程度といわれ,しかもその大半の予後は良好といわれている1)。しかし,重大な結果を招いた例も存在するため1),めまい患者を診察する際にはたとえめまい以外の訴えがなくても中枢疾患を念頭におく必要がある。

 今回われわれは,回転性めまいと嘔吐を訴えて来院し,初診時水平回旋混合性眼振以外の神経徴候がはっきりしなかったため,前庭神経炎として治療を開始したが,のちに延髄外側梗塞と判明した1例を経験したので報告する。

側頭骨内顔面神経鞘腫4症例の検討

著者: 吉野貴彦 ,   曾根三千彦 ,   藤本保志 ,   安藤篤 ,   斎藤清 ,   中島務

ページ範囲:P.861 - P.864

I.はじめに

 顔面神経鞘腫は末梢性顔神麻痺の原因の約5%を占めるといわれている1)。近年の画像検査の進歩に伴いその報告も増えており2~5),無症候性のもので,剖検にて初めて診断されたという報告もある6)。しかし,本疾患は進行が比較的緩徐であることから,症状が発現し診断がつくころには広範囲に進展して,侵襲の大きな手術が必要となることがある。

 今回われわれも,顔神麻痺が発現して1年以上経ってから,顔面神経鞘腫と診断され手術を行った症例を経験したので,当院で過去6年間に経験した他の3例と合わせて検討するとともに,若干の文献的考察を加えた。

下垂体腫瘍摘出術後に脳膿瘍を形成した蝶形骨洞篩骨洞囊胞の1例

著者: 藤岡正人 ,   五島史行 ,   國弘幸伸 ,   荒木康智 ,   深谷和正 ,   小川郁

ページ範囲:P.867 - P.870

I.はじめに

 経蝶形骨洞下垂体手術後には蝶形骨洞内に囊胞が生じる可能性がある。しかし,実際に蝶形骨洞内に囊胞が生じ外科的対応が必要となることは稀である1)

 今回われわれは,経蝶形骨洞下垂体手術23年後に視力障害で発症し,脳膿瘍の形成が認められた巨大な蝶形骨洞篩骨洞囊胞の1例を経験したので報告する。

眼窩尖端症候群を呈した副鼻腔真菌症の1例

著者: 福田宏治 ,   阿部俊彦 ,   小野寺毅 ,   小林正樹 ,   田口雅海 ,   金田裕治 ,   菅井有 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.877 - P.880

I.はじめに

 副鼻腔真菌症は,日常診療においてたびたび遭遇する疾患であるが,ときに眼合併症や致死率の高い頭蓋内合併症などの重篤な合併症を伴うことがあり,的確な診断を行い,それに基づいて適切な対応を行うことが必要である。副鼻腔アスペルギルス症の眼窩内症状の発現頻度は4.3%で1),眼窩に浸潤したアスペルギルス症の眼窩尖端症候群をきたす頻度は2%と低く2),本邦における過去10年間で眼窩尖端症候群をきたしたという報告例は5例3~7)に過ぎず,比較的稀であるが,そのうち2例は頭蓋内浸潤が原因で死亡しており注意を要する疾患である。

 今回われわれは,眼窩尖端症候群をきたした副鼻腔アスペルギルス症の1例を経験したので,臨床経過と若干の文献的考察を加え報告する。

診断に苦慮した鼻腔NK/T細胞リンパ腫の1例

著者: 織田潔 ,   小倉正樹 ,   工藤貴之 ,   堀容子 ,   大島猛史 ,   齋敏明 ,   浅野重之

ページ範囲:P.881 - P.884

I.はじめに

 鼻腔NK/T細胞リンパ腫は,臨床的には顔面正中部に沿って進行する壊死性肉芽腫性病変を主体とする疾患で,病理組織学的に高度の壊死像と細胞浸潤のためしばしば確定診断がつきにくい特徴がある1)

 今回われわれは,確定診断がつくまでに他院での施行を含めて3回の生検を施行し,5クールのCHOP療法,放射線照射でCRとなった後に再発を認めた症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

口腔底類皮囊胞の2症例

著者: 宮丸悟 ,   緒方憲久 ,   竹村考史 ,   湯本英二

ページ範囲:P.887 - P.892

I.はじめに

 類皮囊胞は身体各部に発生し,頭頸部領域の発生率は全体の約6.9%であるが1),口腔底に発生するものは,そのうちの約23%と比較的多い。

 われわれは,口腔底に発生した巨大な類皮囊胞の2症例を経験した。いずれも口内法単独で,囊胞壁を破ることなく一塊として摘出することができた。本稿では,われわれの経験した2症例の概要を述べ,併せて口腔底に発生した類皮囊胞について,摘出方法を中心に検討したので報告する。

長期間嵌在し頸部蜂窩織炎をきたした内側翼突筋内魚骨の1例

著者: 折田左枝子 ,   小坂道也 ,   前田学 ,   銅前崇平 ,   折田頼尚 ,   岡野光博 ,   西﨑和則

ページ範囲:P.893 - P.896

I.はじめに

 咽頭の魚骨異物は,日常診療においてしばしば遭遇する疾患であり,口蓋扁桃や舌根扁桃に刺入しているのが確認され経口的に摘出されることが多い。しかし粘膜下や,さらに深部に刺入した魚骨などについてはその存在の有無,部位の診断が困難となる。

 今回われわれは,内側翼突筋内に長期にわたり埋没し膿瘍を形成した魚骨異物の1症例を経験したので,若干の文献を加え報告する。

頸部に発生したlow-grade fibromyxoid sarcomaの1例

著者: 干谷安彦 ,   平山裕次 ,   長谷川稔文 ,   雲井一夫

ページ範囲:P.899 - P.902

I.はじめに

 低悪性線維粘液肉腫(low-grade fibromyxoid sarcoma:以下,LGFMSと略す)は1987年にEvans1)により報告された新しい疾患概念である。一見,良性の線維腫様の組織像を示すが,肺転移や局所再発をきたし悪性の経過をたどることもある軟部組織腫瘍である。本邦での頭頸部領域におけるLGFMSの報告は2003年までに渉猟し得た限り2例に過ぎない2,3)

 今回われわれは,左頸部に発生したLGFMSの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

⑪甲状腺良性腫瘍に対する内視鏡下手術

著者: 片岡英幸 ,   北野博也

ページ範囲:P.905 - P.908

I.はじめに

 頸部外切開による甲状腺手術の問題点として,頸部の拘縮,それに伴うひきつれ感,前頸部の術後瘢痕などが挙げられる。特に甲状腺腫瘍は女性に多い疾患であるので,頸部の手術痕が与える精神的影響は少なくない。内視鏡下甲状腺手術は美容上の利点のみならず低侵襲という点で大いに期待され,短期入院の対象となってくる可能性がある。甲状腺手術で最も問題となる術後合併症には術後後出血とそれに伴う喉頭浮腫,気道閉塞があるので日帰り手術は難しい。短期入院については,ドレーンが抜け次第,通院が可能であればドレーンをつけたままでも退院する時代が訪れるかもしれない。内視鏡下手術の場合皮膚切開が小さいため埋没縫合し,抜糸を省略することでより早期に退院が可能となる。現状では短期入院について了承が得られたときに3~4日で退院としている。

鏡下咡語

Thomas Hodgkinを巡る人々

著者: 倉石安庸

ページ範囲:P.874 - P.876

 悪性リンパ腫はHodgkin's disease(最近のWHO分類ではHodgkin lymphoma)とnon-Hodgkin's lymphomaに大別される。すなわち,どちらにもHodgkinという人の名前がついている。そして,この名前は悪性リンパ腫の診断および治療を専門にしているわれわれのみならず,医療関係の仕事に携わっている多くの人々にとっては親しみ深い名前であると言ってよいであろう。ただ,この人物については自分もそうであったように,多くの人々は“ホジキン病”という疾患を記載した人物であることと,英国のゴードン博物館に掲げられている有名な肖像画以外にはあまり知らないと思われる(図1)。自分がこの人物に興味をもつきっかけとなったのは,わが国を代表する血液病理学者であり,なおかつThomas Hodgkinそのものの研究者でもある広島大学総合科学部の難波紘二氏が,1983年に日本網内系学会誌に著した「ホジキン病―その発見と再発見に関するノート」に接したことであった。難波氏はそのほかにもHodgkinについて数々の興味深い論文や訳書を著されているが,自分はこの「ノート」で引用された文献を暇を見つけては一つ一つ集めて読んでみるという楽しい作業をやってみた。したがって,このエッセーもどうしても氏の「ノート」に沿ったものになってしまっていることをあらかじめお断りしておかなければならない。

 Thomas Hodgkinは1798年にロンドンの北,ペントビルで生まれ,1866年,彼の最後の旅行中にエルサレム近郊のジャッファで病死している。わが国で言えば江戸幕府が蝦夷地調査隊を編成した寛政10年に生まれ,坂本龍馬の獅子奮迅の努力により西郷隆盛と木戸孝允とによる薩長秘密同盟が結ばれた慶応2年に亡くなっていることになる。その少年時代に,のちに偉大な哲学者であり経済学者となるジョン・ステイアート・ミルと遊び友達であったという記録は興味深いが,1820年にエジンバラ大学医学部に入学し,1821年10月~1822年9月までパリに滞在している。パリではシャリテ病院とネッカー病院の講義に出席し,聴診器の発明者であるレンネック教授の指導を受けている。そのためHodgkinは英国に最初に聴診器を持ち込むことになる(図2)。1823年に卒業論文を完成後,イタリア,そして再びパリに滞在している。帰国後の1826年にガイ病院医学校の病理解剖学講師および解剖学博物館主任となり,多くの剖検を手がけるとともに標本の収集,整理を行っている。そして1832年に,問題の“On some morbid appearances of the absorbent glands and spleen”(図3)という論文がロンドンの内科外科会でRobert Ree博士によって代読されている(Hodgkinはこの学会の会員でなかったため)。この論文でリンパ節腫脹と脾臓の腫大をきたした7例の剖検例を報告しており,うち6例はガイ病院で剖検され,5例はHodgkin自身が剖検を行っているが,1例はロンドンに新設された医学校の病理学教授となったRobert Carswellがパリのサン・ルイ病院の剖検所見をスケッチし,プロトコールを写しとってきたものをCarswellの同意を得たうえで加えた症例である。誌面の都合上,各症例の詳細に触れることはできないが,Hodgkinは3つの重要なことを述べている。それは,1)この疾患はリンパ節の原発的な侵襲であり,2)そして,それは炎症ではないこと,さらに,3)リンパ節と脾臓とは密接に関連があることに触れている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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