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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科76巻3号

2004年03月発行

文献概要

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

③鼓膜形成術―接着法―

著者: 氷見徹夫1

所属機関: 1札幌医科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.233 - P.236

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I.はじめに

 社会的な要請や医療費の抑制,保険制度の改革などの理由から,デイサージャリーの導入や入院期間の短縮の必要性に迫られている。耳鼻咽喉科領域でも例外でなく,耳科手術でも様々な工夫により外来手術の可能性の模索や入院期間短縮のための手術法,周術期の改革が行われている。

 その最も典型例が,鼓膜形成術あるいは鼓膜閉鎖術の手術法の改善であり,特にフィブリン糊を用いた接着法は広く行われているデイサージャリーの典型といえる。1988年にフィブリン糊が発売されてから,この製剤を用いた鼓膜閉鎖術が湯浅ら1),新川ら2)により報告され,外来での簡便な手技にもかかわらず,手術成績が高いことから広く普及している。

 鼓膜穿孔を認める疾患には,慢性穿孔性中耳炎や遷延化する外傷性鼓膜穿孔,さらに換気チューブ留置に伴う穿孔の残存などが含まれる。慢性穿孔性中耳炎では,中耳腔および乳突腔の除去,乳突腔と鼓室形成術との換気を十分につけ,伝音系の再建も要することが必要である。しかし,中耳病変が治癒あるいは軽度であり,鼓膜穿孔のみが残存している症例や,鼓膜穿孔を閉鎖することで中耳病変の事情効果が期待できる症例もある。このような症例では鼓膜形成術のよい適応となる。

 どの施設でも鼓膜形成術は入院が原則であり,手術の必要性は認識しているが,入院に躊躇する症例も多い。このような観点から,日帰り手術としての接着法は適応を誤らずに確実な手技を取得していれば,有用な手術法であると考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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