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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科76巻4号

2004年04月発行

雑誌目次

特集 画像・動画の保存とプレゼンテーション

1.スライドなどの画像保存(アナログからデジタルへ)

著者: 加納滋

ページ範囲:P.249 - P.255

I.はじめに

 学会発表の口演に使用するスライド,ポスターセッションに使用する掲示物,日常診療では聴力検査結果や院内掲示物など,記録保存する場合に静止画像として扱われる種類の書類は非常に多い。病院内業務ではさらにX線写真,CT,MRIなどの画像があり,これに関しては院内での閲覧,画像転送,診断/参照画像などの観点からimage save and carryとしてのシステムが存在するが,一般ユーザーが日常使用するものではないため,ここでは除外する。

 画像を扱う業種について考えてみると,グラフィックデザイナー,映像作成者,カタログやインターネットを用いた通信販売など 医療関係以外でも多岐にわたっていることがわかる。短時間に大規模の画像データベースから効率よく必要な書類を選ぶことは作業の効率化に直結する。そのためにもデジタル化は必要な基本技術となり,さらにデジタル保存された資産をいかに運用するかという分野がここ10年間で急速に発達し,現在ではDAM(digital asset management,デジタル化された資産の運用)と呼ばれるようになっている。

2.ポスターの効果的作成法

著者: 平海晴一 ,   内藤泰

ページ範囲:P.257 - P.262

I.はじめに

 現在,耳鼻咽喉科頭頸部外科領域を初め臨床系学会における発表形態は,スライドによる口演が大部分を占めている。しかし,スライド口演は多くの時間を要するため,発表演題数が増加すると会場が多数に分かれてしまい聴けない演題ができてしまう。海外の大規模な医学会ではポスター発表が主流であるが,本邦でもポスター発表の機会が増えつつある。ポスター演題は基礎的研究の発表だけでなく,臨床的演題でも優れた内容であれば口演以上に活発な議論をみることができる。

 ポスター作成法は,本邦ではまだまだ文献も少ないものの1),海外ではインターネット上でもそのコツを記したホームページを多数認める2,3)

 本稿では,これらを参考にポスターの効果的作成法について述べる。

3.ビデオ作成(アナログからDVへ)

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.265 - P.271

I.はじめに

 鼻・副鼻腔の内視鏡手術や中耳・内耳の顕微鏡下の手術,あるいは咽喉頭の動的所見などは動画として記録し,教育用や学会発表などに使用する。これまで動画の記録媒体は,16ミリや8ミリフィルムに始まりU-maticを経て,(S-)VHSやHi-8などアナログ方式のビデオテープが主体であった。現在でも学会でのビデオ演題は,ほとんど(S-)VHSの使用が指定されている。当教室でも1990年頃より主にHi-8が動画の録画目的で使用され,鮮明な画像が記録されてきた。しかし,(S-)VHSやHi-8はテープという形で保存するため,たびたびの再生や録画してからの時間の経過に伴い,テープの劣化やカビの付着などいくつか問題点があった。また学会プレゼンテーション用ビデオを作成する際,編集上どうしても何度かはダビング作業を重ねる必要があり,そのつどテープの画質や色調が劣化するという欠点があった。

 このような状況の中,一般社会ではカメラ付き携帯電話,衛星や地上波によるデジタル放送など情報のデジタル化が急速に進み,画像や音声情報が適切に圧縮され効率的に送信できるため,画質や音質が飛躍的に高まった。一方,医学の世界でも日常診療における電子カルテの導入やデジタルカメラによる静止画像の記録保存など,様々なことがデジタル化されてきている。最近,学会の発表形式もスライドを用いたアナログ的な発表形式からパソコンを用いたプレゼンテーションへと変化してきているが,それに伴い今後は,動画のプレゼンテーションもアナログ形式からデジタル形式へ移行すると考える。

 本稿では,主に学会発表用デジタルビデオ(DV)の作成に必要な基礎知識と実際の方法を中心に述べる。

4.効果的コンピュータプレゼンテーション

著者: 小松一祐

ページ範囲:P.273 - P.279

I.はじめに

 学会発表やセミナーなどでのプレゼンテーションツールはOHPやスライドからマルチメディアプロジェクタ(以下,プロジェクタと略)へと変化してきている。今後,プロジェクタはますます普及し,プレゼンテーションツールの代表格となるといってよいだろう。それを使用したプレゼンテーションは,パソコンと直接接続されて用いられオンラインプレゼンテーションと呼ばれる。

 本稿では,オンラインプレゼンテーションを行う際の効果的なプレゼンテーション技法について述べる。

5.PowerPointを用いた動画プレゼンテーション

著者: 村上信五

ページ範囲:P.282 - P.287

I.はじめに

 最近の学会や研究会では,一般演題でもノートパソコンを用いて発表できる機会が多くなっている。パソコンによるプレゼンテーションでは,デジタル化した動画をスライド画面上で再生することが可能である。手術手技や顔面の表情,患者との会話など,動きや音声のあるシーンを動画で表現すれば静止画よりはるかにわかりやすく,インパクトのあるプレゼンテーションができる。パソコンによるプレゼンテーションはPersuationやPowerPoint,Keynoteなどのソフトウエアで可能であるが,本稿では最もポピュラーなPowerPointを用いた動画プレゼンテーションについて紹介する。

目でみる耳鼻咽喉科

Superolateral thyrotomyにて摘出した喉頭神経鞘腫の1例

著者: 瀧重成 ,   本間明宏 ,   山田和之 ,   福田諭

ページ範囲:P.246 - P.247

 神経鞘腫は,頭頸部領域に比較的多くみられる良性腫瘍であるが,喉頭に発生するのは稀である。今回,喉頭に発生した神経鞘腫をsuperolateral thyrotomyにより摘出した例を経験したので報告する。

原著

巨大な切歯管囊胞の1症例

著者: 長谷川武 ,   菊地茂 ,   竹腰英樹 ,   大野俊哉 ,   青木大輔 ,   善浪弘善 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.295 - P.299

I.はじめに

 上顎に囊胞を形成し,頬部,鼻前庭,口蓋などに腫脹をきたす疾患は多数存在する。これらの中に胎生期に存在し生後1年以内に消退するとされる鼻口蓋管(切歯管)の遺残上皮により形成され非歯原性囊胞である切歯管囊胞は,比較的稀なものである1~3)

 今回われわれは,31歳の男性で硬口蓋および鼻前庭に著明な膨隆をきたし,巨大な切歯管囊胞と考えられた1症例を経験し,内視鏡下鼻内手術により囊胞を開放したので文献的考察を加えて報告する。

眼窩内転移で発見された乳癌症例

著者: 川鍋わか子 ,   千原康裕 ,   前田陽一郎 ,   深谷卓

ページ範囲:P.301 - P.304

I.はじめに

 眼窩腫瘍に占める転移性腫瘍の頻度は3~8%であり1),比較的少ない疾患である。悪性腫瘍の既往がなく,画像所見上眼窩周囲の骨破壊が認められない場合,悪性腫瘍と他の炎症性疾患との鑑別は困難であり生検が不可欠となる。

 われわれは,右眼瞼腫脹で初発し,鼻内内視鏡手術(endoscopic sinus surgery:以下ESSと略)で生検を行い乳癌の眼窩転移と診断し得た症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

真珠腫性中耳炎の術後に合併した脳膿瘍

著者: 山田弘之 ,   石田良治 ,   丹羽恵彦

ページ範囲:P.305 - P.308

I.はじめに

 耳疾患が原因となる頭蓋内合併症は,抗生物質が発達し,CTなどの画像診断が普及した今日では稀と考えられている。しかし,いったん合併すればその症状は重篤で,見逃すことは許されず,常に念頭に置くべきである。これまで耳性頭蓋内合併症の報告は決して少なくないが,そのほとんどは中耳炎が直接波及した場合である。

 今回,真珠腫性中耳炎の手術後に発生した脳膿瘍の1例を経験した。この症例は真珠腫性中耳炎の術前・術中に直接波及している所見を有さず,脳膿瘍の発症が遅発性であったことから,その発生機序,感染経路を中心に文献的考察を行った。

Zenker憩室の2症例

著者: 足立光朗 ,   藤田祐一 ,   間島雄一

ページ範囲:P.311 - P.314

I.はじめに

 Zenker憩室は食道に生じる圧出性の憩室で,欧米では数多くの症例があり,種々の治療法が報告されているが1,2),本邦では比較的稀な疾患である。

 今回われわれは,Zenker憩室の2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

シリーズ 耳鼻咽喉科における日帰り手術・短期入院手術

④鼓膜形成術―サンドイッチ法―

著者: 名倉三津佳 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.317 - P.319

I.はじめに

 近年,医療技術の進歩,ライフスタイルの変化による患者のニーズなどにより,慢性中耳炎を初めとする伝音難聴の治療は,入院治療から外来治療へ,また,より短期の入院治療へと変化してきている1,2)。日帰りおよび短期入院による鼓膜形成術としては接着法によるものがイメージされることが多く,本シリーズでも別稿にて詳述されている。しかし,サンドイッチ法による鼓膜形成術もその侵襲度からみれば十分に日帰り手術・短期入院手術のカテゴリーに入るものと思われる。また,その穿孔閉鎖率の高さ,応用範囲の広さより,耳科手術の基本として耳鼻咽喉科医が習熟すべき手術手技と思われ,今後日帰り手術および短期入院手術として通用するよう成功率を100%に近づけ,上皮化までの日数および術後トラブルを最小限とする一助となるよう本稿を記した。

鏡下咡語

手軽に育ついやし系野草

著者: 中野雄一

ページ範囲:P.290 - P.292

 いやし系という定まった草花があるわけではない。私が勝手にそう呼んでいるだけである。考えてみれば,草花は見る人によって,それはすべていやし系となる。そんな中から手軽に育てられ,長く花を楽しむことができる野草と草花を選んでみた。すべて鉢植えで育てることができ,身近に置くことのできる品種である。それはコマクサ,フウロソウ,ベコニアの3種である。

 コマクサは高山植物で,最初にこの花を見たのは蔵王山であった。たしか山頂近くの荒涼とした砂礫地で付近には緑が何もなかったように思われる。印象に残ったのはやはり花の形で,その姿にびっくりしたが,紅色のほどの良さに魅せられた。その姿とは,花が馬の鼻面に似ていることで,この花の蕾が子馬の顔に似ていることからコマクサ(駒草)と名づけられたという。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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