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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科77巻10号

2005年09月発行

シリーズ 難治性疾患への対応

⑧滲出性中耳炎,好酸球性中耳炎

著者: 松谷幸子1

所属機関: 1仙台赤十字病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.763 - P.768

文献概要

Ⅰ はじめに

 無痛性に慢性的に中耳貯留液がみられる主な疾患は滲出性中耳炎であるが,全身疾患の一部として滲出性中耳炎と類似の中耳病変が起きる場合がある。

 滲出性中耳炎の成因として,経耳管の感染と中耳の換気不全が考えられ,後者には耳管機能と中耳腔~乳突蜂巣の粘膜を介したガス交換が関与している。したがって,(1)中耳および周辺臓器(上咽頭細菌叢,アデノイド,鼻・副鼻腔など)の炎症のコントロールが不十分な場合,(2)耳管機能不全が解消されにくい場合,(3)中耳腔~乳突蜂巣粘膜のガス交換が障害される場合には滲出性中耳炎は難治な経過をとる。

 一方,全身疾患の一部として中耳病変が起きる場合には,(1)好酸球性中耳炎,(2)アレルギー性肉芽腫性血管炎,Churg-Strauss症候群,(3)Wegener肉芽腫などがある。好酸球性中耳炎は高率に鼻・副鼻腔炎,気管支喘息の合併があり,中耳,鼻・副鼻腔,気管支をone way one diseaseとして捉えることができる。また,Churg-Strauss症候群やWegener肉芽腫では一般に全身症状を伴うが,時に中耳にのみ限局した病変を生じる場合があり,滲出性中耳炎との鑑別が難しい。これらの疾患は病態が異なるため,一般の滲出性中耳炎の治療では治癒に至らず,難治の経過をとる。予後不良とされたWegener肉芽腫をはじめ,好酸球性中耳炎,Churg-Strauss症候群のいずれもが早期に治療するほど進行を防止できる可能性がある。通常の治療では治らない滲出性中耳炎の場合,これらの疾患を念頭に置き,早期に鑑別しておく必要がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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