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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科77巻11号

2005年10月発行

雑誌目次

特集 副鼻腔炎

1.副鼻腔炎のガイドライン

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.795 - P.798

Ⅰ.はじめに

 40年ほど前に,学校健診を中心に副鼻腔炎は国民病といわれた時期があった。その後,成人におけるスギ花粉症の猛威が報告され,ここ4半世紀については増加するアレルギー性鼻炎の実態が疫学でも明らかにされ,鼻副鼻腔疾患の世代交代が進んだかに見える。しかし,内視鏡下鼻内手術の導入や高齢者のQOL意識の高まりで,手術件数は増加傾向にある。保存的治療ではマクロライド療法が提唱され20年が経過するが,薬剤抵抗性の副鼻腔炎の存在が明らかになってきた。特に好酸球浸潤と嗅覚障害を主症状とするいわゆる好酸球性副鼻腔炎は,診断と治療に新たな問題を提起している。

 一方,外来診療と手術を主とする治療法の選択についてのゴールドスタンダードはなく,保存的治療で軽症化をはかることができない症例やQOLが改善しない場合に,手術が選択されることが多いようである。現状では病気や病態から患者本位の治療が選ばれているか,あるいは治療法ごとの評価が試行されているかは定かではない。

 一般にガイドラインは,種々の観点から診断と治療の妥当性ならびに蓋然性を論じるものである。したがって,観点が明確にされなければ,ガイドラインの意義も大きく異なるものとなる。しかし,引用される文献や治療成績のレベルがガイドラインごとに異なることはない。現在,日本鼻科学会で副鼻腔炎のガイドラインを作成中で,筆者も委員の1人である。この点を考慮しながら,副鼻腔炎のガイドラインについての問題点とその対応をまとめたいと考える。

2.副鼻腔の形態と機能

著者: 平川勝洋 ,   石野岳志

ページ範囲:P.799 - P.804

Ⅰ.はじめに

 副鼻腔は,頭蓋構成骨である前頭骨,上顎骨,篩骨,蝶形骨の骨髄腔に相当する部位に生じた含気腔の総称であり,それぞれ前頭洞,上顎洞,前部および後部篩骨蜂巣,蝶形骨洞と呼ばれている。副鼻腔は固有鼻腔と連続して存在し,組織学的には表層から粘液層,線毛細胞,杯細胞,基底細胞からなる多列線毛円柱上皮,基底膜,結合組織,骨膜,骨組織と並んでいる。粘膜が骨膜に直接接触する構造のため,臨床的には粘膜から骨膜までの構造を粘骨膜と称して一塊のものとみなすことがあり,気道において固有鼻腔と同様に特異な組織構成をとる部位である。

3.副鼻腔炎の診断

著者: 洲崎春海

ページ範囲:P.805 - P.809

Ⅰ.はじめに

 副鼻腔炎は,副鼻腔の骨病変も含むが,主として副鼻腔粘膜の炎症疾患である。副鼻腔炎は,古くは細菌による炎症と考えられてきたが,今日ではさまざまな原因が存在することが認識されている。特に,慢性副鼻腔炎の病態形成には種々の因子が関係していると考えられているが,いまだ不明な点も少なくない。副鼻腔炎の多くは,鼻炎に引き続き生じるので,欧米では副鼻腔炎(sinusitis)よりも鼻副鼻腔炎(rhinosinusitis)の用語のほうが適切であるとの考えがあり,鼻副鼻腔炎と呼ばれることが多い。しかしながら,副鼻腔炎には歯性上顎洞炎などのように鼻腔を経由しない感染経路もあり,鼻炎症例で副鼻腔に炎症がない例も多い。本稿では,わが国で従来から用いられている副鼻腔炎の呼称を採用することとする。

 副鼻腔炎を診断するに当たっては,急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎の定義の問題,亜急性副鼻腔炎や反復性副鼻腔炎の取り扱い,ウイルス性副鼻腔炎と細菌性副鼻腔炎の区別など整理しなければならない問題もある。また,最近ではアレルギー性副鼻腔炎1),アレルギー性真菌性副鼻腔炎2),好酸球性副鼻腔炎3)といった病態が提唱されているが,その病態や定義は不明な点が少なくない。したがって,本稿では,これらの病態の診断には触れないこととする。本稿では,今までわが国においてある程度のコンセンサスが得られている副鼻腔炎の診断事項について述べる。

4.副鼻腔炎の保存的治療

著者: 川内秀之

ページ範囲:P.811 - P.815

Ⅰ.副鼻腔炎の定義と病態

 副鼻腔炎は,発症の時期・症状・病態の違いにより,急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に区別されている。急性副鼻腔炎は,通常,ウイルスや細菌の感染による急性上気道炎に続発する副鼻腔の急性炎症である(4週間以内の経過)。慢性副鼻腔炎は,急性副鼻腔炎の治癒過程が遷延化して慢性炎症に移行したものである(3か月以上の経過)。その要因には,急性炎症の反復のほかに,副鼻腔自然口の状態,鼻中隔彎曲,鼻甲介粘膜腫脹,齲歯など歯牙との関連など局所解剖学的条件や,アレルギー性炎症の関与などの要因が複雑に絡んで,慢性化するものと理解されている。

 一方,鼻副鼻腔粘膜は,外界からの異物侵入の最初の門戸であり,細菌やウイルスといった微生物やアレルゲンなど種々の抗原刺激にさらされていると同時に,生体における異物排除のための第一の防御線として,種々の非特異的,あるいは特異的防御機構を有している。非特異的防御機構のなかで,線毛運動輸送機能と貪食細胞による異物排除は重要なものであり,下気道である気管・気管支粘膜だけでなく,鼻副鼻腔粘膜にもこうした線毛運動輸送機能が備わっていることはすでに周知のとおりである。さらにマクロファージや好中球は,炎症局所に動員されscavenger cellとして異物排除にあたっているが,オプソニン作用を有する補体や特異抗体を介して効率的な排除を行っている。一方,特異的防御機構として働く免疫応答は,外界から侵入する種々の異物を抗原ペプチドとして極めて巧妙に認識し,抗原特異的な反応を誘導しその応答を効率的に行い,上気道の恒常性を維持している。そのなかには,人間の体表面での防御において重要な役割を演じている分泌型IgAを中心とした粘膜免疫と,循環血液中を中心としてIgGやIgMなどの液性抗体が各組織に移行していく液性免疫,さらに細胞性免疫がある。

5.副鼻腔炎の外科的治療

著者: 田村学

ページ範囲:P.817 - P.822

Ⅰ.はじめに

 慢性副鼻腔炎の治療としては,マクロライド抗菌薬による保存的治療により改善しない場合に,外科的治療を行う。従来,用いられていたCaldwell-Luc手術,Killian手術などは手術侵襲が大きく,術後性囊胞を生ずることがあるため今日ではほとんど行われず,副鼻腔炎の外科的治療といえば内視鏡下鼻副鼻腔手術が主流となっているため,本稿においても内視鏡下鼻副鼻腔手術について論じる。

6.難治性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)

著者: 春名眞一

ページ範囲:P.823 - P.828

Ⅰ.はじめに

 好酸球性副鼻腔炎とは,副鼻腔粘膜に著明な活性好酸球の浸潤が認められるものとされている1)。好酸球性副鼻腔炎は,以前の中鼻道自然口ルート(ostiometal complex:以下,OMC)を病変の主体とする副鼻腔炎とは臨床的に多くの異なる特徴を有し,特に内視鏡下鼻内副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:以下,ESS)をしても経過不良となる割合が多く,現在,代表的な難治性副鼻腔炎と考えられている。

目でみる耳鼻咽喉科

頭蓋外三叉神経しょう腫に対する経頸部アプローチによる顕微鏡下摘出術の試み

著者: 崎浜教之 ,   高崎賢治 ,   田中藤信 ,   風間恭輔 ,   桂資泰 ,   高橋晴雄

ページ範囲:P.780 - P.781

患者:56歳,男性

 主訴:右顎関節痛

 既往歴:脳出血(1978年,内服治療中,日常生活は問題なし)。

 現病歴:1年前より出現した間欠的な右顎関節周囲の疼痛が咬合により増強し近医歯科でマウスピースを作製したが変化がないため当院歯学部にてMRI検査を施行した。画像上,右側頭下窩神経鞘腫疑いの診断のもと(図1),当科を紹介された。

 現症:右顔面三叉神経第2,3枝領域の知覚低下以外は,耳鼻咽喉科領域に異常所見は認めなかった。

 経過:臨床症状,画像所見にて,側頭窩下三叉神経鞘腫と診断し,患者および家族への十分な説明,同意後に,2004年9月下旬に全身麻酔下にて経頸部アプローチによる顕微鏡下腫瘍摘出術を施行した(図2)。

 手術所見:皮膚切開後(図3),浅頸筋膜皮弁を挙上,胸鎖乳突筋前縁で内頸静脈,総頸動脈を上方へ剥離した。耳下腺後下極を上方に剥離,挙上し,下顎靱帯,顎二腹筋後腹を切断後,副咽頭間隙へ入り,内頸動脈,舌下神経,迷走神経を同定,温存した。茎状突起筋群を切断すると,被膜に包まれた嚢胞状の腫瘍下極が露出した(図3,4)。この段階で顕微鏡を導入し,腫瘍と周囲結合組織とを慎重に剥離した(図5,6)。腫瘍は卵円孔まで達していた。迅速病理で神経鞘腫の診断を得たのち,被膜外に摘出した。顕微鏡下に残存組織,出血などがないことを確認し,深部にペンローズドレーンを留置,顎二腹筋,茎突筋群,皮下,皮膚を縫合して終了した。

 経過:右顔面三叉神経第2,3枝領域の知覚低下以外は合併症はなく,咬合時顎関節痛は軽減し10月上旬に退院した。2005年3月中旬現在,外来にて経過観察中である(図7)。

 考察

 三叉神経鞘腫は比較的頻度の低い脳腫瘍で,その中でも頭蓋外のみに存在するタイプは約5%である1)。進行が緩徐なため,無症状あるいは軽症なまま経過し,発見時は大腫瘤を形成している症例が多い。治療の選択としては,無治療のまま経過観察,手術,放射線治療などがある2)。耳鼻咽喉科頭頸部外科医が日常外来にて経験する機会は少ないが,頭蓋外腫瘍で若年者の場合は,その後の長期の経過中に神経症状が出現する可能性もあり,われわれが関与する手術が必要と考えている。

 この場合の腫瘍摘出法は,経上顎洞法,facial translocation法,Le Fort 1型骨切り法,経翼突法,infratemporal fossa approach,subtemporal approachなどがあるが3),手術侵襲が大きいため,われわれは頸部よりアプローチし頭蓋底部処理を顕微鏡下で行う比較的低侵襲な手術を試みた。この術式は,頭蓋底(最深部)までの十分な視野で,微細な構造物を判別できるという利点があるが,手術操作範囲が狭く,既存の開創器あるいは剥離器具では不十分であり,また術者の手術手技の熟練も必要である。

 頭頸部領域神経鞘腫が,MRI検査により術前診断が比較的容易になり,被膜内摘出術でも再発は稀であるが4),今回は腫瘍周囲の癒着が強く被膜外摘出を選択した。現時点では経過良好だが,神経鞘腫術後の再発や悪性化の報告もあり,十分な経過観察が必要と考えている。

Current Article

蝸電図検査―臨床的価値と将来展望

著者: 麻生伸

ページ範囲:P.783 - P.794

Ⅰ はじめに

 蝸電図(ECochG:electrocochleography)が臨床応用されたのは1967年で,Yoshieら1),Portmanら2)によって初めて非手術的な手技によってヒトから導出した内耳電位に関する報告がなされた。これは,同時期にこの分野においてコンピュータによる加算平均法が導入され,微弱電位を雑音から選り分けて測定することを可能とした医用工学の進歩が寄与した面も大きい。現在使用している意味で蝸電図という用語を初めて提唱したのは,1968年のPortmannら3)であるとされている。その後,臨床的にはメニエール病に対する蝸電図応用の論文が数多くみられるようになった。しかし,1990年代以後は,国内外を問わずその報告は減少してきている感は否めない。その原因は,ほかの誘発反応と比較して,医師が直接,電極設置にかかわる必要があるという煩雑さであろうと推測される。しかし,逆に医師が関与しなくとも測定可能なほかの誘発電位は,その応用範囲が拡大し,新生児聴覚スクリーニングを例にとるまでもなく,もはや耳鼻咽喉科医だけのものではなくなりつつある。一方,auditory neuropathy(以下,AN)の細別診断に有用であることなどから,この数年は再び蝸電図が注目を集めるに至っている。特に小児人工内耳の術前検査としての役割も増しており,さらに新たな動きとして内耳,中耳の術中モニタリングとしての使用方法の報告もみられるようになってきた。本稿では,蝸電図検査の対象となる疾患別に,得られる情報に関する過去の報告をレビューし,さらに将来展望について述べる。外来における測定方法と手技に関しては先人の優れた成書4~6)において詳細に述べられており,それらを参考にしていただくこととして,本稿では省略する。

原著

ABRでⅢ波以降が消失しながら,良好な聴力像を呈したPelizaeus-Merzbacher病の2例

著者: 齊藤祐毅 ,   石本晋一 ,   加我君孝

ページ範囲:P.833 - P.838

I.はじめに

 Pelizaeus-Merzbacher病(以下,PM病)は,Pelizaeus1)やMerzbacher2)によって報告された遺伝性疾患で,中枢神経系の髄しょう形成不全をきたす症候群である。現在では,主に伴性劣性遺伝により,Xq22染色体のPLP遺伝子の変異や欠損により生じるといわれている3)。新生児期から白質の髄しょう化がほとんど進行しない予後不良な重篤な疾患で,神経耳科的な検索はほとんどなされていない。幼少時期から神経発達遅滞や運動神経障害を伴うため,純音聴力検査,語音聴力検査などの聴覚機能の評価を正確に行うことができなくauditory brainstem response(以下,ABR)での検索が行われているにすぎない。加我ら4)によるPM病の症例では,ABRでⅠ,Ⅱ波のみを示し,Ⅲ波以降が消失するとしている。一般にABRでⅠ,Ⅱ波のみを示す場合,聴神経腫瘍,小脳橋角部腫瘍,橋部の腫瘍や出血,変性疾患,さらには意識障害の脳死に近い時期などに認められる5)。このようなⅠ,Ⅱ波のみを示す後迷路性難聴の症例では,純音聴力閾値に比べて言語理解が乏しいのが特徴である。

 今回,われわれは,中枢神経の髄しょう化障害で白質変性症であるPM病の2例に神経耳科学的検査を施行し,PM病の聴力機能を評価した。PM病では,ABRの結果だけでは聴覚機能を正確に示すことができないことが示唆された。原疾患の病態と聴力像の因果関係について,考察したので報告する。

経蝶形骨洞アプローチによる開放術を行った錐体尖コレステリン肉芽腫の1例

著者: 新藤晋 ,   池園哲郎 ,   田原重志 ,   足立好司 ,   八木聰明

ページ範囲:P.839 - P.843

I.はじめに

 錐体尖コレステリン肉芽腫の治療はドレナージによる含気化の回復1~6),8,11),もしくは完全摘出7)が行われている。しかし,錐体尖は内耳の内方に位置するアプローチの困難な部位であり,病変の位置と大きさ,進展方向,周囲組織との関係から考えられたいくつかの手術的アプローチが存在する。その1つに,経蝶形骨洞アプローチによるドレナージ手術1~5)がある。経蝶形骨洞アプローチによるドレナージ手術は,侵襲が小さい優れた手術アプローチであるが,世界的にみても報告は少ない。

 今回われわれは,顔面知覚異常を初発症状として発見され,画像検査から経蝶形骨洞アプローチが最適と判断し,手術治療を行った錐体尖コレステリン肉芽腫症例を経験したので報告する。

小児声帯結節の臨床経過

著者: 早坂修 ,   山本裕 ,   佐藤克郎 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.845 - P.849

I.はじめに

 小児における嗄声の原因疾患のうち,最も頻度の高い声帯結節は男児に多く,変声に伴って治癒することが多いといわれているが1),症例を経時的に観察して自然経過を検討した報告は少ない。今回われわれは,当科音声外来で長期にわたり経過観察し得た小児声帯結節症例26例について,内視鏡所見,聴覚印象,呼気流率の推移を経時的に観察して検討したので報告する。

苛性ソーダによる咽喉頭化学熱傷の2症例

著者: 中山雅博 ,   田渕経司 ,   瀬成田雅光 ,   村下秀和 ,   辻茂希 ,   高橋和彦 ,   和田哲郎 ,   湯沢賢治 ,   原晃

ページ範囲:P.851 - P.853

I.はじめに

 化学薬品による熱傷は化学熱傷と呼ばれ,一般的な熱傷とは異なった臨床症状や経過を呈する。アルカリ・酸などの組織障害性の強い薬剤の服用は,自殺企図や誤飲によるものがほとんどであり,ことにアルカリによる腐食性損傷は保存的に軽快する症例もあるが,瘢痕狭窄による重度の通過障害を呈する症例も認められる1)。今回,われわれは,自殺企図にて苛性ソーダを服用し,咽喉頭より食道,胃まで及ぶ広範な瘢痕狭窄を認めた1例と,苛性ソーダ誤飲による一過性の喉頭浮腫をきたした1例を経験したので,それぞれの咽喉頭所見を呈示し,文献的考察を加え報告する。

シリーズ 難治性疾患への対応

⑨頸部膿瘍

著者: 西元謙吾 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.855 - P.860

Ⅰ はじめに

 今日では抗生物質の発達により,頸部の重篤な感染症は以前よりはるかに減少している。しかし,感染がひとたび深部に波及し,頸部の筋膜間隙で膿瘍をつくると,急速かつ広範囲に病変が進展することが多い。このような感染状態が解消されず,さらに進展,重篤化すると,敗血症やDICなどの全身的かつ致死的合併症を引き起こし,治療に難渋することもある。また,最近では重篤な頸部膿瘍を診察,治療する機会が少なくなっており,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門医でも診断・治療に迷うことがある。

 頸部膿瘍のうち臨床的に問題となるのは,筋膜間隙と呼ばれる頸部の筋膜と筋膜の間の疎性結合織に生じる深頸部膿瘍で,これは元からあった組織間隙や組織崩壊によって生じた空洞に限局的に膿が貯留したものである。深頸部膿瘍に対しては正確な診断と全身管理,原因究明を素早く行い,抗菌療法だけでなく穿刺,切開排膿といった観血的な治療が必要となってくる。

 本稿では,比較的発症頻度が高く治療が奏効しやすい扁桃周囲膿瘍を除き,主に重症例の深頸部膿瘍の症状と診断について述べ,治療の基本的な考え方を説明する。

鏡下咡語

医学図書館の今

著者: 高山幹子

ページ範囲:P.830 - P.832

1.はじめに

 「京大に20億円の寄付により4階建の新図書館が建設される」というニュースがつい先頃,報道されました。一方,今日の医学図書館を取り巻く環境は,毎年,高騰を続ける外国雑誌の問題をはじめ,学術情報のデジタル化の加速,急速なオンライン・ジャーナルの普及などで大きく変化してきています。また,情報公開や大学評価などに応えていくためには,図書館は何をなし,どのようにあるべきか難しい問題も抱えております。

 東京女子医科大学図書館の図書館長に就任した2001年4月から2005年3月までの4年間の経験を踏まえ,医学図書館の現状と近い将来のあるべき姿を展望してみたいと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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