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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科77巻11号

2005年10月発行

Current Article

蝸電図検査―臨床的価値と将来展望

著者: 麻生伸1

所属機関: 1富山医科薬科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.783 - P.794

文献概要

Ⅰ はじめに

 蝸電図(ECochG:electrocochleography)が臨床応用されたのは1967年で,Yoshieら1),Portmanら2)によって初めて非手術的な手技によってヒトから導出した内耳電位に関する報告がなされた。これは,同時期にこの分野においてコンピュータによる加算平均法が導入され,微弱電位を雑音から選り分けて測定することを可能とした医用工学の進歩が寄与した面も大きい。現在使用している意味で蝸電図という用語を初めて提唱したのは,1968年のPortmannら3)であるとされている。その後,臨床的にはメニエール病に対する蝸電図応用の論文が数多くみられるようになった。しかし,1990年代以後は,国内外を問わずその報告は減少してきている感は否めない。その原因は,ほかの誘発反応と比較して,医師が直接,電極設置にかかわる必要があるという煩雑さであろうと推測される。しかし,逆に医師が関与しなくとも測定可能なほかの誘発電位は,その応用範囲が拡大し,新生児聴覚スクリーニングを例にとるまでもなく,もはや耳鼻咽喉科医だけのものではなくなりつつある。一方,auditory neuropathy(以下,AN)の細別診断に有用であることなどから,この数年は再び蝸電図が注目を集めるに至っている。特に小児人工内耳の術前検査としての役割も増しており,さらに新たな動きとして内耳,中耳の術中モニタリングとしての使用方法の報告もみられるようになってきた。本稿では,蝸電図検査の対象となる疾患別に,得られる情報に関する過去の報告をレビューし,さらに将来展望について述べる。外来における測定方法と手技に関しては先人の優れた成書4~6)において詳細に述べられており,それらを参考にしていただくこととして,本稿では省略する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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