文献詳細
文献概要
シリーズ 難治性疾患への対応
⑨頸部膿瘍
著者: 西元謙吾1 黒野祐一1
所属機関: 1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科聴覚頭頸部疾患学
ページ範囲:P.855 - P.860
文献購入ページに移動Ⅰ はじめに
今日では抗生物質の発達により,頸部の重篤な感染症は以前よりはるかに減少している。しかし,感染がひとたび深部に波及し,頸部の筋膜間隙で膿瘍をつくると,急速かつ広範囲に病変が進展することが多い。このような感染状態が解消されず,さらに進展,重篤化すると,敗血症やDICなどの全身的かつ致死的合併症を引き起こし,治療に難渋することもある。また,最近では重篤な頸部膿瘍を診察,治療する機会が少なくなっており,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門医でも診断・治療に迷うことがある。
頸部膿瘍のうち臨床的に問題となるのは,筋膜間隙と呼ばれる頸部の筋膜と筋膜の間の疎性結合織に生じる深頸部膿瘍で,これは元からあった組織間隙や組織崩壊によって生じた空洞に限局的に膿が貯留したものである。深頸部膿瘍に対しては正確な診断と全身管理,原因究明を素早く行い,抗菌療法だけでなく穿刺,切開排膿といった観血的な治療が必要となってくる。
本稿では,比較的発症頻度が高く治療が奏効しやすい扁桃周囲膿瘍を除き,主に重症例の深頸部膿瘍の症状と診断について述べ,治療の基本的な考え方を説明する。
今日では抗生物質の発達により,頸部の重篤な感染症は以前よりはるかに減少している。しかし,感染がひとたび深部に波及し,頸部の筋膜間隙で膿瘍をつくると,急速かつ広範囲に病変が進展することが多い。このような感染状態が解消されず,さらに進展,重篤化すると,敗血症やDICなどの全身的かつ致死的合併症を引き起こし,治療に難渋することもある。また,最近では重篤な頸部膿瘍を診察,治療する機会が少なくなっており,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門医でも診断・治療に迷うことがある。
頸部膿瘍のうち臨床的に問題となるのは,筋膜間隙と呼ばれる頸部の筋膜と筋膜の間の疎性結合織に生じる深頸部膿瘍で,これは元からあった組織間隙や組織崩壊によって生じた空洞に限局的に膿が貯留したものである。深頸部膿瘍に対しては正確な診断と全身管理,原因究明を素早く行い,抗菌療法だけでなく穿刺,切開排膿といった観血的な治療が必要となってくる。
本稿では,比較的発症頻度が高く治療が奏効しやすい扁桃周囲膿瘍を除き,主に重症例の深頸部膿瘍の症状と診断について述べ,治療の基本的な考え方を説明する。
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