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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科77巻12号

2005年11月発行

文献概要

鏡下咡語

ヒト側頭骨病理―この地味な研究,されど……

著者: 大谷巌1

所属機関: 1福島労災病院 2福島県立医科大学

ページ範囲:P.921 - P.924

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1.なぜ側頭骨病理か―耳科学における機能と形態の重要性

 病態解明には,常に機能と形態の両面からのアプローチが必要であることは身体のどの器官でもいえることですが,聴器においては,生前に形態(病理)を明らかにすることはできませんので,耳疾患の病態解明には,側頭骨病理からのアプローチが不可欠になります。

 これまでの私の主な研究対象であった耳毒性薬剤の研究が一段落したのを機会に,恩師の大内仁教授の勧めもあり,側頭骨病理の研究を始めることにしました。まず,標本作製法を習得しなければなりませんでしたが,幸い村上嘉彦先生の推薦をいただき,Harvard大学(Massachusetts眼耳病院)のSchuknecht教授のもとに留学する機会を得ることができました。1982年のことです。私よりも以前に,Schuknecht教授のもとには,日本から12名の方々が留学されていましたが,これまで標本作製法の習得を目的に来た人はいらっしゃらないとのことでした。標本作製法をtechnician達から懇切丁寧に教えてもらうことができましたが,休日にまで出勤して準備をしてくださるなど,その親切さに頭の下がる思いでした。しかし,これまでのresearch fellowと違って,論文を書く気配のない様子に,technician達も気になるらしく,またSchuknecht教授からも,Bostonに留学した証拠もつくりなさいとよくいわれました。幸い周囲のお膳立てに助けられ,2編の論文を完成させることができました。Schuknecht教授の校閲では,discussionについての厳しい指摘や,共著者に自分の名前を削除してtechnicianの名前を入れるなど,Schuknecht教授の学問の対する厳しさと,優しい思いやりに感動したのを懐かしく思い出します。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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