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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科77巻9号

2005年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

腕神経叢に発生した神経鞘腫の1例

著者: 鈴木輝久 ,   松塚崇 ,   鹿野真人 ,   大森孝一

ページ範囲:P.606 - P.607

末梢神経の神経鞘由来の腫瘍は,ほとんどは良性で,頭頸部領域に比較的多く存在するが,そのなかで腕神経叢由来のものは数少ない。腕神経叢由来の神経鞘腫は,術前の神経症状はないか軽度な場合が多い。しかし,摘出術後に起源神経の脱落症状をきたすことがあり,治療上の問題点でもある。今回われわれは,腕神経叢由来の神経鞘腫を経験し,被膜下摘出により,神経脱落症状をきたさなかった1例を経験した。

 症例:31歳,女性

 主訴:左頸部腫瘤

 家族歴・既往歴:特記すべきことなし。

 現病歴:1年前より左頸部に腫瘤を自覚したが,痛みなどがなかったため放置していた。家人の勧めがあり,当科を受診した。

Current Article

小児の中耳疾患

著者: 小林一女

ページ範囲:P.609 - P.617

Ⅰ はじめに

 急性中耳炎,滲出性中耳炎は耳鼻咽喉科医にとっては最もよく遭遇する疾患である。耐性菌の出現,小児を取り巻く環境の変化などが関与し中耳炎の病態も変化している。本稿では小児の中耳炎の特徴について解説する。

原著

耳後部島状有茎皮弁による耳甲介部再建

著者: 西平茂樹 ,   田中俊彦

ページ範囲:P.619 - P.622

I.はじめに

 耳甲介腔の軟骨を含む組織欠損を植皮のみで修復した場合,移植片の大半は色素沈着と中心性拘縮を生じ,再建耳甲介腔は浅く狭くなり,やがて消失し耳介全体が縮小する1,2)。今回われわれは,右側耳甲介腔から対耳輪を越え耳輪に迫る母指頭大の扁平上皮癌切除後の組織欠損を,耳後部島状有茎皮弁3,4,5)により再建する機会を得た。症例を報告し,若干の考察を加えた。

鼻性頭蓋内合併症の2症例

著者: 宮丸悟 ,   隈元友紀子 ,   木下澄仁

ページ範囲:P.625 - P.629

I.はじめに

 鼻性頭蓋内合併症は,副鼻腔に感染源があり,それにより頭蓋内に感染をきたすものである。抗菌薬の進歩した現在では発生頻度は低下してきているものの,いったん発症すれば重篤な経過をたどることがあり,死亡率は10%前後とされている1~6)。また,感染源である副鼻腔炎の処置が不十分なまま頭蓋内病変が遷延すると,片麻痺や失語症などの神経学的な後遺症を残すこともある7)。このため早期に診断し,原発巣に対する迅速で適切な治療を行い,その後も頭蓋内病変に対する厳重な経過観察が必要となる。

 今回われわれは鼻性頭蓋内合併症の2症例を経験し,後遺症を残すことなく治癒させることができたので,その経過と治療法の概要を述べ,若干の文献的考察を加えて報告する。

オスラー病に脳硬膜動静脈瘻を合併した難治性鼻出血の1例

著者: 後藤享也 ,   清水隆 ,   工藤香児 ,   藤村武之 ,   山本英永 ,   武田宏之 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.631 - P.635

I.はじめに

 オスラー病(Rendu-Osler-Weber病)は,1896年にRenduが初めて報告した常染色体優性遺伝性疾患であり1),遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:以下,HHT)とも呼ばれている。鼻出血,毛細血管拡張,内臓血管異常,遺伝性を主徴とする疾患であり,初発症状が鼻出血であることが多い。今回われわれは,脳硬膜動静脈瘻を伴い,鼻出血のコントロールに難渋したオスラー病の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

診断に苦慮した上顎明細胞型粘表皮癌の1例

著者: 呉明美 ,   荒木倫利 ,   藤山吉更 ,   西川周治 ,   櫻井幹士 ,   服部康人 ,   河田了 ,   藤枝重治 ,   竹中洋

ページ範囲:P.637 - P.640

I.はじめに

 鼻,副鼻腔に発生する上皮性悪性腫瘍は扁平上皮癌が60%1)~80%2)で,粘表皮癌は約1%といわれている3~5)。一般に上顎粘表皮癌は術前診断が困難なことが多く,本邦では術前診断が扁平上皮癌であったという報告が多い4)。また,粘表皮癌は唾液腺に好発し,唾液腺のない上顎洞内に発生することは稀である。上顎洞に腫瘍が認められる場合,ほとんどが進行して鼻腔内に広がったり,上顎骨を破壊した状態で発見されるため,上顎洞内に原発したものかどうか確定することは困難なことが多い6)

 今回われわれは,上顎粘表皮癌に含まれる稀な明細胞型の1例を経験したので報告する。

下咽頭に限局した血管腫の1例

著者: 中島淳治 ,   川浦光弘 ,   吉原重光 ,   渡辺麗子

ページ範囲:P.645 - P.648

I.はじめに

 下咽頭に限局した血管腫は稀な疾患であり,その治療法としてさまざまな方法が報告されている。今回われわれは,左披裂部に発生した血管腫を経験し,KTP(postassium tinanyl phosphate)レーザーを併用した外科的摘出で良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する。

G-CSF産生耳下腺粘表皮癌の1例

著者: 山本英永 ,   清水隆 ,   藤村武之 ,   北村拓朗 ,   宇高毅 ,   橋田光一 ,   後藤享也 ,   坂部亜希子 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.651 - P.656

I.はじめに

 Granulocyte colony-stimulating factor(以下,G-CSF)は,好中球系造血にほぼ特異的に作用する造血因子で,好中球前駆細胞の増殖と分化を促し,好中球を増加させる作用を有する1,2)。G-CSF産生腫瘍は肺,膀胱,卵巣などでの報告は多くみられるが,頭頸部領域での報告は少ない。今回われわれは,G-CSF産生耳下腺粘表皮癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

耳下腺原発基底細胞腺癌の1例

著者: 福田宏治 ,   山崎一春 ,   石島健 ,   西條博之 ,   佐藤宏昭 ,   本庄政美 ,   菅井有 ,   上杉憲幸 ,   中村眞一

ページ範囲:P.659 - P.662

I.はじめに

 基底細胞腺癌は組織学的には低悪性度の腫瘍とされ,予後は比較良好であるが術前診断が困難で,適切な治療を選択しにくい腫瘍の1つである。全唾液腺悪性腫瘍のうち基底細胞腺癌の発生頻度は約0.6%と低く1),本邦における耳下腺原発基底細胞腺癌の報告例は5例2~6)にすぎない(表1)。今回われわれは,耳下腺に発生した基底細胞腺癌の1例を治療する機会を得たので,若干の文献的考察を含め報告する。

書評

画像診断ポケットガイド 頭頸部TOP100診断

著者: 岸本誠司

ページ範囲:P.657 - P.657

これまで耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の画像診断の成書は数多く出版されているが,本書はPocket Radiologistシリーズの一環として,従来の書とは全く異なるユニークなスタイルのハンドブックとして刊行された。

 その第1の特徴は,「頭頸部」の代表的な100の疾患(病態)を取り上げて,それぞれ典型的な画像とその所見の呈示にはじまり,その疾患についての「基本事項」,「画像所見」,「鑑別診断」,「病理」,「臨床」,さらに「参考文献」まで網羅されていることである。その情報量は大変多いにもかかわらず,各疾患とも無駄な記述を省いて箇条書きで簡潔に,しかも3頁の中に同じスタイルでまとめられているため,読者にとって読みやすいものとなっている。画像診断だけでなく疾患の実用的な解説書としても十分に役に立つ。

手術・手技

Subcutaneous mandibulotomyによる副咽頭間隙腫瘍摘出術

著者: 冨田俊樹 ,   小川郁 ,   田川崇正 ,   山口寛

ページ範囲:P.665 - P.669

Ⅰ.はじめに

 副咽頭間隙腫瘍の多くは良性の唾液腺腫瘍と神経原性腫瘍であり,外科的アプローチが困難で合併症や後遺症が懸念されるような症例では,経過観察の方針がとられることもある。しかし,摘出標本の病理診断で悪性と判明する症例や良性腫瘍でも徐々に増大し頭蓋内に進展する症例などもあり,一概に経過観察の方針がよいとは限らない。

 腫瘍が大きい場合や頭蓋底に近い高位に存在する場合は,下顎骨が障害となって術野を確保することが難しく,神経や血管を損傷する危険性も高くなる。また,腫瘍の被膜を損傷せずに摘出することは,特に唾液腺腫瘍において重要であるため,適切なアプローチ法を選択し良好な術野を確保する必要がある。

 副咽頭間隙へのアプローチ法としては,口内法,経耳下腺法,経顎下部法,経側頭下窩法,下顎離断法などがある1)。また,下顎離断法には正中離断法と側方離断法がある。下顎骨を正中で切断すると下口唇とオトガイ皮膚に手術痕が残り,側方で切断すると下歯槽神経麻痺による知覚麻痺が生じる。

 2003年にTengら2)により報告されたsubcutaneous mandibulotomyは,顔面を切開せず下歯槽神経も切断しない下顎正中離断法である。本法により,副咽頭間隙多形腺腫を摘出する経験を得たのでその手技を解説し,副咽頭間隙腫瘍に対する本法の適応を中心に考察する。

シリーズ 難治性疾患への対応

⑦口内乾燥症

著者: 高橋光明

ページ範囲:P.671 - P.674

Ⅰ はじめに

 日常診療では口内乾燥感を訴えて来院する患者をしばしば経験するが,その診断や治療に難渋する場合も多い。口内乾燥症は1868年にBarltley1)が初めて記載し,“xerostomia”の用語は1888年にHutchinsonとHaddenが使用したとされる。以来,数多くの報告がなされている。口内乾燥症は1つの症状または症候名であり,その程度と病状はさまざまであるが,患者に苦痛を与える口内乾燥感が治療の対象となる。

 口内乾燥症の原因は,大きく分けて以下の4つが考えられるが,原因疾患は多岐にわたる。(1)睡液分泌中枢の障害,(2)導管の通過障害および末梢神経性,(3)腺機能減退,(4)体液,電解質バランスの変化。本稿では,まず唾液の役割と唾液量の問題を概説し,口内乾燥症について症例を呈示しながら,その対応について述べたい。

鏡下咡語

補聴器残念録終章

著者: 大和田健次郎

ページ範囲:P.642 - P.643

1.はじめに

 長期間にわたり補聴器に関与してきた。補聴器の供給や販売方法に多くの疑問を持った。その改善にはほど遠いと思われ,補聴器残念録を2回記述した。いつまでも残念ではいたしかたないので,締括りにこれまでの経験を基に補聴器将来の方向について,私見を述べることにする。

 補聴器のフィッティングとは,難聴による言葉の聞き取りの悪さを改善するように補聴器を選び調整する。これは,概念的表現で具体的方法になると極めて難かしい。フィッティングには,まず聴覚を測定し,その結果から何を補うかを決めて補聴器を準備する。難聴者がそれを使用して不満のないように再調整する。これが概略であるが,よく考えてみると多くの矛盾がある。それを述べるが,解決は容易でない。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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