文献詳細
手術・手技
Subcutaneous mandibulotomyによる副咽頭間隙腫瘍摘出術
著者: 冨田俊樹1 小川郁1 田川崇正1 山口寛1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.665 - P.669
文献概要
副咽頭間隙腫瘍の多くは良性の唾液腺腫瘍と神経原性腫瘍であり,外科的アプローチが困難で合併症や後遺症が懸念されるような症例では,経過観察の方針がとられることもある。しかし,摘出標本の病理診断で悪性と判明する症例や良性腫瘍でも徐々に増大し頭蓋内に進展する症例などもあり,一概に経過観察の方針がよいとは限らない。
腫瘍が大きい場合や頭蓋底に近い高位に存在する場合は,下顎骨が障害となって術野を確保することが難しく,神経や血管を損傷する危険性も高くなる。また,腫瘍の被膜を損傷せずに摘出することは,特に唾液腺腫瘍において重要であるため,適切なアプローチ法を選択し良好な術野を確保する必要がある。
副咽頭間隙へのアプローチ法としては,口内法,経耳下腺法,経顎下部法,経側頭下窩法,下顎離断法などがある1)。また,下顎離断法には正中離断法と側方離断法がある。下顎骨を正中で切断すると下口唇とオトガイ皮膚に手術痕が残り,側方で切断すると下歯槽神経麻痺による知覚麻痺が生じる。
2003年にTengら2)により報告されたsubcutaneous mandibulotomyは,顔面を切開せず下歯槽神経も切断しない下顎正中離断法である。本法により,副咽頭間隙多形腺腫を摘出する経験を得たのでその手技を解説し,副咽頭間隙腫瘍に対する本法の適応を中心に考察する。
参考文献
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