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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻10号

2006年09月発行

文献概要

鏡下咡語

はなのはなし

著者: 坂倉康夫1

所属機関: 1鈴鹿回生病院附属クリニック耳鼻咽喉科・アレルギー科

ページ範囲:P.789 - P.792

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 夢野久作がいうように―鼻ってものはどうしてこんなに高くなっているのかしらん―何故こんな格好をしているのであろう―ものを嗅いだり呼吸をしたりするほかに何の役にも立たないのか知らん。口はものをいい,目は口ほどにものをいい,額は皺を寄せ,眉は顰め,頰はせばめる,膨らますなど,顔の他の部分はそれぞれ豊かな動的表現をすることができる。しかし,鼻についての動的表現はきわめて少ない。一方,鼻が高い,鼻であしらう,鼻につくなど,鼻の表現には人の人格や性情などの表現が多く,特に嫌悪,反感,軽蔑の意味の表現が目立つ。日本の歴史上高い鼻をもった支配階級に対する庶民の反感が込められているのであろう。鼻にはこのような動的表現があるので,容貌の決定的因子となる。

 鼻を重視し鼻で容貌の美しさを表現したのが有名なパスカルのパンセ中の,クレオパトラの鼻がもう少し低かったら歴史は変わっていただろう,である。英文訳では“Cleopatra's nose:had it been shorter, the whole aspect of the world would have been altered. ”とある。この鼻が低い,世界の歴史という名訳とは異なって,英訳ではあるが原文ではクレオパトラの鼻は低くなく,短かったらとある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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