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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻11号

2006年10月発行

雑誌目次

特集 スポーツと耳鼻咽喉科疾患

1.耳介,外耳道,中耳

著者: 和田匡史 ,   山本裕 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.835 - P.840

Ⅰ.はじめに

 耳鼻咽喉科の日常診療においては,スポーツに起因する耳介・外耳道・中耳疾患にしばしば遭遇する機会があり,治療に難渋する症例も少なくない。また治療法の選択は,症例によって,担当医によって一定しないのが現状である。

 本稿ではスポーツに起因する耳介・外耳道・中耳疾患の代表的なものとして,耳介血腫,カリフラワー耳,サーファーズイア,外傷性鼓膜穿孔を取り上げ,それらの成因,診断,治療,予防法を中心に解説する。

2.スポーツと内耳障害

著者: 杉浦真 ,   中島務

ページ範囲:P.841 - P.847

Ⅰ.はじめに

 近年,スポーツ活動が盛んになり,その種類も多様化して従来では考えられなかったような損傷や障害がみられるようになった。本来は楽しむべきスポーツ活動において,事故などが生じることで損傷や障害をきたすことがある。そうしたスポーツ活動による損傷や障害に対する診断と治療,さらには事故発生の予防などの適切な医学的な対応が,今後よりいっそう臨床医学に携わる専門医に求められるようになってきている。本稿では,この観点から内耳障害について述べる。

3.鼻・副鼻腔

著者: 松根彰志 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.849 - P.852

Ⅰ.はじめに

 近年わが国では,老若男女を問わず多くの国民の間で健康への関心がきわめて高く,日常生活のなかで何らかのスポーツを行っている『スポーツ人口』は増加しており,さらに地域の小児を対象としてスイミングスクールをはじめ,種々のスポーツチームの結成などにもみられるように低年齢化も認められる。試合をする以上,やはり心身の鍛錬法としての効用のみならず,『勝つこと』へのこだわりがある。その結果ハードな練習や試合中にけがをすることも多く,患者が耳鼻咽喉科外来を受診する機会も少なくない。そこで,本稿では,鼻・副鼻腔領域で最も代表的かつ頻度の高い,『アレルギー性鼻炎』と『顔面外傷』について,それぞれ水泳やその他のスポーツとの関連性について概説する。

4.喉頭

著者: 三枝英人

ページ範囲:P.853 - P.858

Ⅰ.スポーツと喉頭の関係

 余暇としての運動は,例えば兄弟で戯れる犬や猫など広く哺乳類で認められるものである。スポーツとはヒトにおいてさらにそれを意識的に『運動を行うことを目的として行うもの』と定義することができよう。しかし,おそらく,原始共同体社会には,スポーツという概念はなかったものと推察される。スポーツの萌芽は農耕を始めとした生産性社会の発達1)とともに,競技として,みせるために,みるためにという要素をもちつつ,真に“culture”として発展してきたものと考えられる。

 現在では,その“culture”の発展とともに,単に競技というものから,自らの身体の,さらには精神の鍛錬や健康のためにと意識的にあちらこちらでさまざまなスポーツが行われるようになっている。生産性社会の発展,いうなれば食の分化の発展とともにスポーツが変遷してきたともいえるわけであるが,一方で同じく生物として欠くことのできない『呼吸』とはどのような関係を有しているのであろうか?

5.頸部

著者: 市村恵一

ページ範囲:P.859 - P.862

Ⅰ.はじめに

 スポーツと耳鼻咽喉科疾患という題が与えられたが,そうなるとスポーツによる頭頸部領域の外傷・損傷と,スポーツを行うに当たり注意の必要な耳鼻咽喉科疾患を扱うことになる。このどちらの項目においても,対象となる臓器は重症度,後遺症などの観点からみて頸椎,頸髄が中心となり,その担当は整形外科となる。実際に耳鼻咽喉科医が頸部病変で担当するのは気道・食道系である中・下咽頭,喉頭や頸部大血管の病変が主の場合に限られてしまう。それも大血管の開放創なら救急部レベルで処理されてしまい,耳鼻咽喉科に回ってくるのは挫傷による血腫レベルのものである。また,頸部の鈍的外傷で頸椎に問題のない場合は喉頭や気管の損傷が中心となる。しかし,本特集では別に喉頭の項目があるのでこれも除くと扱う内容はきわめて制限される。本稿では整形外科領域の疾患が中心となるが,スポーツによる頸部の外傷を概説し,一次処置の方法にも触れることとする。

目でみる耳鼻咽喉科

顔面神経麻痺を合併した伝染性単核球症の1例

著者: 村下秀和 ,   加藤修 ,   小野多知夫 ,   原晃

ページ範囲:P.822 - P.823

 伝染性単核球症はヘルペス型ウイルスに属するEBウイルスが病因として知られており,神経親和性が強く,さまざまな神経合併症を起こすことが知られている1)。今回われわれは神経系合併症のなかでも比較的稀な片側性顔面神経麻痺を合併した1例を経験したので報告する。

症例

 患者:18歳男性

 主訴:咽頭痛,左顔面神経麻痺

 既往歴・家族歴:特記すべきことなし。

 現病歴:1999年2月中旬より,咽頭痛,37℃台の発熱を認め,4日後に近医耳鼻咽喉科を受診した。ABPC/SBT点滴加療を受けたが改善せず,同日より左顔面神経麻痺を認めた。また3月上旬より発疹の出現も認めたため,翌日当科を紹介された。

Current Article

上顎洞癌の集学治療

著者: 西野宏

ページ範囲:P.825 - P.833

Ⅰ はじめに

 日本において鼻・副鼻腔悪性腫瘍は全悪性腫瘍の1%であり,この鼻・副鼻腔悪性腫瘍の80%を上顎洞悪性腫瘍が占める1)。上顎洞癌はこのように頻度が高い癌ではないが,治療方法の議論が盛んにされてきた。その理由として,進行上顎洞癌の切除において,眼窩内容摘出術や顔面皮膚および口蓋の合併切除に至ることが多々あったことが挙げられる。

 再建手術の発達していなかった過去においては,手術後の顔面形態の醜悪や日常生活への支障が多大であった。ましてや上顎洞癌は早期の状態で受診することは少なく,進行した状態で受診することが多いのである。そのような背景のなかで機能・形態保存を目的とした上顎洞癌に対する集学治療が工夫されてきた。それは小線量の放射線照射および抗癌薬の動注と安全域の狭い切除術を行う集学的治療体系であり,別名三者併用療法とも呼ばれてきた。基本概念は同じであるが,手術方法とその時期,放射線照射線量,動注の回数などは各施設により異なる2~5)

 本稿では自治医科大学医学部耳鼻咽喉科で現在行われている上顎洞癌に対する三者併用療法の適応と方法を述べる4)。また遊離自家組織移植の再建外科が発達してきた今日,この三者併用療法と再建外科を組み合わせ,治療体系をさらに改善すべきとも思われる。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

⑧鼓膜形成術

著者: 木村忠司 ,   磯野道夫 ,   村田清高

ページ範囲:P.869 - P.874

Ⅰ はじめに

 現在,医療社会において医療の標準化や医療コストの削減,インフォームド・コンセントのさらなる向上が高まるにつれ,全国的にクリニカルパス(以下,パス)の導入が進みつつある1)。さらに2003年より特定機能病院において包括医療(DPC)が開始され,また医療のIT化が進むにつれて今後もパスの導入が加速するものと思われる。

 鼓膜形成術は全身的侵襲が小さく,術後は比較的一定の経過をたどるためパスの導入に適した疾患であるといえる。当院における鼓膜形成術の治療方針は,湯浅法2)や鼓膜穿孔縁より上皮のみを剝離し,上皮と固有層との間に移植片を挿入してサンドイッチ法に近い形として行う場合3)は外来手術とし,通常のサンドイッチ法については,全身麻酔下に耳後部切開によるアプローチで行い,原則的にコントロールホールを開放している。ゆえに当院での鼓膜形成術におけるパスは,サンドイッチ法でのパスとなる。

 パスの作成はまずアウトカム(ケアが不要になり,安全に退院できると予期される状態)の設定から始まる。われわれの施設で用いている鼓膜形成術におけるパスのアウトカムは,後の通院が1~2週間に1回程度の来院でフォローが可能な状態,すなわち創部の状態が良好であり,再建鼓膜がほぼ乾いた状態と設定した。またDPCにおいては,包括医療となる入院期間があらかじめ決められており,鼓膜形成術は14日までが包括医療の対象となり,それ以降は出来高払いとなる。ゆえに,DPCに対応したクリニカルパスは,この点も考慮に入れた設定が必要となる。

⑧鼓膜形成術

著者: 山本裕 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.875 - P.879

Ⅰ はじめに

 近年,慢性中耳炎をはじめとする鼓膜穿孔症に対して,接着法による鼓膜形成術が盛んに行われている。本手術はきわめて低侵襲でかつ安定した成績が得られるため,耳鼻咽喉科領域で行われている小手術のなかで最もポピュラーなものの1つとなっている。

 本手術は入院加療を要さない外来手術として行われる場合も多い。しかし,手術中の疼痛が局所麻酔で制御できない可能性がある場合,幼・小児例などで体動が予想される場合,大きな穿孔症例や外耳道の視野が得られにくい場合などでは,入院のうえ全身麻酔下で施行されることも多い。

 鼓膜形成術をはじめとする中耳手術は術後合併症が比較的少なくバリアンスが生じにくいため,一連の入院医療行為を標準化しやすく,クリニカルパス(以下,パス)の良い適応となる。われわれも2001年以来,入院下で行う中耳手術に対して3種類のパスの活用を開始している1)。その後,2002年から当院ではDPCが導入されたが,医療の標準化,在院日数短縮を目標とするDPCに,このパスは大きく寄与しているものと考えている。

 本稿ではDPC施行下で行われる鼓膜形成術にわれわれが活用しているパスを紹介し,その意義や問題点を考察する。

原著

喉頭原発の悪性筋上皮腫の1例

著者: 亀倉隆太 ,   浅野勝士 ,   平尾元康 ,   今野信宏 ,   氷見徹夫

ページ範囲:P.881 - P.886

I.はじめに

 筋上皮腫は腺組織に存在する筋上皮細胞由来で,全唾液腺腫瘍の1%以下の頻度とされる稀な腫瘍であり,悪性例となるとさらに少ない1)。発生部位としては口腔内の小唾液腺や耳下腺からの報告例が多いが,喉頭原発症例はきわめて稀である1)。われわれが渉猟し得た限りでは喉頭原発の悪性筋上皮腫は海外で1例の報告2)があるのみで,わが国での報告例は存在しなかった。今回われわれは喉頭原発の悪性筋上皮腫症例を経験したので,症例を呈示し診断および治療方針について文献的考察を加えて報告する。

一側声帯麻痺をきたしたKennedy-Alter-Sung症候群の1症例とその筋電図所見

著者: 中村毅 ,   三枝英人 ,   愛野威一郎 ,   松岡智治 ,   新美成二 ,   八木聰明

ページ範囲:P.887 - P.890

I.はじめに

 Kennedy-Alter-Sung症候群(球脊髄性筋萎縮症:以下,KAS)は,30~50歳頃に発症し,緩徐に進行する伴性劣性遺伝の下位運動ニューロン疾患である1)。アンドロゲン受容体遺伝子第1エクソン内のCAGリピートの異常伸張がその原因であるとされている1)。その臨床的特徴は左右対称性に,かつ,びまん性に近位筋優位の筋萎縮が進行するというもので,ほかにアンドロゲン受容体遺伝子異常に伴う女性化乳房や睾丸萎縮2),陰萎3),無精子症3)といった内分泌系の症候が合併する4)。しかし,ときに左右非対称性に症候が出現する場合のあることが知られている5~8)。今回,われわれはKASによると考えられた一側声帯麻痺症例を経験したので報告する。

頸部腫瘤を初発症状とした小児咽後膿瘍の1例

著者: 上田大 ,   上野たまき ,   石割康平

ページ範囲:P.891 - P.895

I.はじめに

 咽後膿瘍は咽頭後壁と椎体前面の咽頭後間隙に形成される膿瘍である。抗菌薬の早期使用により1960年代以降は比較的稀な疾患となっているが,診断が遅れると呼吸困難や縦隔内進展により致命的になりかねない疾患の1つである。今回,われわれは頸部腫瘤を初発症状とした小児咽後膿瘍の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

抗アレルギー薬のアレルギー性鼻炎の鼻閉に対する効果と評価法の探索的試験

著者: 遠藤朝彦 ,   橋口一弘 ,   浜田はつみ ,   藤田雅巳

ページ範囲:P.897 - P.902

I.はじめに

 アレルギー性鼻炎は発作性,反復性のくしゃみ,水様性鼻汁,鼻閉を主症状とする鼻疾患である。症状発現には,ハウスダストなどの抗原に対するアレルギー反応が関与し,肥満細胞,リンパ球,好酸球などの顆粒球から遊離される種々のメディエーターが重要な役割を担っている。しかし,発症および重症度には鼻腔形態や鼻粘膜の機能,神経系の機能も関与するため,発症に至るメカニズムはきわめて複雑である。そのため,本疾患に対する薬剤の有効性の評価は必ずしも単純・容易ではない。

 これまでは単独な検査手法で的確かつ客観的に評価できる方法がなく,患者の訴えや症状日誌の記載内容から症状をスコア化し,そのスコアから評価せざるをえなかった。しかしながら,これらは患者の主観的評価であり,客観性に乏しいことは否めない。とりわけ鼻閉はくしゃみ,鼻汁と比較してスコア化が困難なために客観的評価が難しく,より客観的で的確な評価法の開発が望まれている。

 通年性アレルギー性鼻炎における鼻閉では,鼻腔抵抗の増加に伴い吸気障害を訴える患者が多いため,治療薬剤の有効性の評価には,吸気障害を定量的に捉えることが重要と考えられる。今回,われわれはハウスダストによる鼻粘膜誘発テスト陽性者を対象に,塩酸フェキソフェナジン,塩酸オロパタジンおよびプラセボを用いた3群7日間投与による比較試験を盲検下で実施し,薬剤の影響を鼻粘膜誘発テスト後の鼻吸気流量の変化を用いて検討したので,その成績を報告する。

鏡下咡語

Tympanic isthmus(鼓室峡部)研究の思い出

著者: 本多芳男

ページ範囲:P.866 - P.867

 Tympanic isthmusをここに持ち出した理由は,私の真珠腫研究がisthmusから出発したばかりでなく,isthmusの研究には新鮮な側頭骨標本を使用するので,本研究にも多数の新鮮側頭骨を用いている,したがって,今後このような研究の実施は困難であろうと思いここに持ち出したわけである。そのほか,老人の側頭骨標本においても気胞化が抑制された例では,上鼓室に幼・小児時代に罹患したと思われる慢性炎症の名残の病変が認められるなどの興味ある所見を記録している点でも貴重な研究だと考えここに持ち出した……。

 “馬鹿な! 真珠腫を研究するなんて,泥沼に足を突っ込むようになりますよ,やめなさい!”

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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