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Ⅰ はじめに
日本において鼻・副鼻腔悪性腫瘍は全悪性腫瘍の1%であり,この鼻・副鼻腔悪性腫瘍の80%を上顎洞悪性腫瘍が占める1)。上顎洞癌はこのように頻度が高い癌ではないが,治療方法の議論が盛んにされてきた。その理由として,進行上顎洞癌の切除において,眼窩内容摘出術や顔面皮膚および口蓋の合併切除に至ることが多々あったことが挙げられる。
再建手術の発達していなかった過去においては,手術後の顔面形態の醜悪や日常生活への支障が多大であった。ましてや上顎洞癌は早期の状態で受診することは少なく,進行した状態で受診することが多いのである。そのような背景のなかで機能・形態保存を目的とした上顎洞癌に対する集学治療が工夫されてきた。それは小線量の放射線照射および抗癌薬の動注と安全域の狭い切除術を行う集学的治療体系であり,別名三者併用療法とも呼ばれてきた。基本概念は同じであるが,手術方法とその時期,放射線照射線量,動注の回数などは各施設により異なる2~5)。
本稿では自治医科大学医学部耳鼻咽喉科で現在行われている上顎洞癌に対する三者併用療法の適応と方法を述べる4)。また遊離自家組織移植の再建外科が発達してきた今日,この三者併用療法と再建外科を組み合わせ,治療体系をさらに改善すべきとも思われる。
日本において鼻・副鼻腔悪性腫瘍は全悪性腫瘍の1%であり,この鼻・副鼻腔悪性腫瘍の80%を上顎洞悪性腫瘍が占める1)。上顎洞癌はこのように頻度が高い癌ではないが,治療方法の議論が盛んにされてきた。その理由として,進行上顎洞癌の切除において,眼窩内容摘出術や顔面皮膚および口蓋の合併切除に至ることが多々あったことが挙げられる。
再建手術の発達していなかった過去においては,手術後の顔面形態の醜悪や日常生活への支障が多大であった。ましてや上顎洞癌は早期の状態で受診することは少なく,進行した状態で受診することが多いのである。そのような背景のなかで機能・形態保存を目的とした上顎洞癌に対する集学治療が工夫されてきた。それは小線量の放射線照射および抗癌薬の動注と安全域の狭い切除術を行う集学的治療体系であり,別名三者併用療法とも呼ばれてきた。基本概念は同じであるが,手術方法とその時期,放射線照射線量,動注の回数などは各施設により異なる2~5)。
本稿では自治医科大学医学部耳鼻咽喉科で現在行われている上顎洞癌に対する三者併用療法の適応と方法を述べる4)。また遊離自家組織移植の再建外科が発達してきた今日,この三者併用療法と再建外科を組み合わせ,治療体系をさらに改善すべきとも思われる。
参考文献
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