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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻12号

2006年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

磁気治療器による鼻腔異物症例

著者: 森川敬之 ,   吉原俊雄 ,   高山幹子 ,   藤多恒子

ページ範囲:P.916 - P.917

 小児における鼻腔異物症例は日常診療においてしばしば遭遇する。しかし,磁気治療器による鼻腔異物はわが国において1例報告されているのみである1)。今回われわれは,外来診療にて偶然発見された両側に存在した稀な鼻腔内磁気治療器異物1例について報告する。

症例

 患者:11歳,女児

 主訴:右鼻内異物(外来にて偶然発見)

 現病歴:鼻アレルギーにて近医に鼻処置のため通院していたところ,2000年4月の処置中,右鼻腔内に金属性と思われる硬性の異物が認められた。2日間にわたり除去を試みたが摘出不可能であったため,同日当科を紹介され受診した。

Current Article

聴神経腫瘍の発症に関する分子生物学的研究

著者: 原田勇彦

ページ範囲:P.919 - P.928

Ⅰ はじめに

 1953年,英国ケンブリッジにおいてWatson & CrickによりDNAの2重螺旋構造が解明されたのを契機として,分子生物学はめざましい発展を遂げることになった。そしてこの発展の基礎となったのが1980年代半ばに開発されたpolymerase chain reaction(PCR)の登場で,これを利用して数多くの新しい技法が導入され,以来分子生物学の研究は飛躍的な進歩を遂げてきた。最近ではこの領域はまさに日進月歩で,毎日のごとく新しい研究成果が種々の雑誌に発表されているのが現状である。特に2001年にヒトゲノムがほぼ解読されたのを受けて,今後もさらなる発展が期待されるところとなっている。耳鼻咽喉科領域も例外ではなく,難聴遺伝子の同定,単離を始めとして,分子生物学的手法を利用した研究による種々の成果が報告されるようになってきた。

 筆者は1993年から1997年までWatson & Crickが研究を行った英国ケンブリッジに滞在した際に(もっともWatson & Crickとは全く異なる研究施設ではあるが),くしくも聴神経腫瘍組織を材料とした分子生物学的研究を行う機会を得た。最近の分子生物学のすさまじいまでの発展からみると,もうずいぶん古い時代の研究なので,本稿のテーマであるCurrent Articleには少々そぐわない内容とは思われるものの,筆者らの研究以来このテーマに関連した研究成果がやや乏しいようにも見受けられるので,ここにあえて当時筆者らが行った研究を改めて報告さていただくことにした。

 また本稿における研究に関連して,この領域における分子生物学の一般的知識の解説も一部合わせて行いたいと思う。

原著

突発性難聴の治療経過中に小脳梗塞が判明した症例

著者: 丹羽正夫 ,   都築建三

ページ範囲:P.929 - P.932

I.はじめに

 難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状は,内耳性疾患が予測されるが,しばしば脳血管障害などの中枢性疾患の初発症状であることがある。特に,小脳梗塞は初診時に第Ⅷ脳神経以外には神経症候が乏しい場合があり鑑別に注意を要する1~3)

 われわれは聴覚症状が主訴で突発性難聴と診断し,その治療経過中に小脳梗塞が判明した症例を経験した。本稿では症例を呈示し,その難聴と小脳梗塞との関連,難聴の治療前の中枢性疾患の除外診断の重要性を検討する。

めまい患者における不安についての検討―STAI検査を用いて

著者: 高橋直一 ,   新井基洋

ページ範囲:P.933 - P.936

I.はじめに

 めまい患者と不安の関係については以前よりさまざまな報告がされている1~9)。今回は入院めまい患者に対して,40項目のアンケート形式で不安を状態不安(測定時点での不安の強さ)と特性不安(性格特性としての不安になりやすさ)に区別して評価するState-Trait Anxiety Inventory(STAI)検査を施行し,めまいと不安の関係についていくつかの知見が得られたため報告する。

振子様扁桃の1症例

著者: 渡邊健一 ,   山内陽子 ,   山岸茂夫 ,   木村まき ,   山口智 ,   青木秀治 ,   松本光司

ページ範囲:P.937 - P.939

I.はじめに

 振子様扁桃は,1885年Jurasz1)によって鼻声を主訴とする18歳男性の症例が最初に報告され,1898年にFinder2)が振子様扁桃と命名した。以来,さまざまな報告がなされ1~13),現在では3型に分類されている3,4)。1型は扁桃自体が振子様に突出しており,真性振子様扁桃と呼ばれている。2型は口蓋扁桃から扁桃組織の一部が有茎性に突出しており,扁桃腺と同様の組織を有している。これらに対し,3型は扁桃とは異なった組織が突出しているものである。今回,われわれは喉頭蓋に達し,組織学的に線維腫と診断された振子様扁桃の1症例を経験したので報告する。

神経線維腫症が疑われた舌筋線維腫の1症例

著者: 大竹里可 ,   鈴木光也 ,   鈴木恒道 ,   横山宗伯

ページ範囲:P.941 - P.945

I.はじめに

 神経線維腫と筋線維腫はともに時間的および空間的多発性をきたす比較的稀な疾患であり,臨床的に両者を区別することは困難である。今回われわれは複数回の腫瘤の摘出術を受け,神経線維腫として診断された既往を有し,術前診断に苦慮した舌の筋線維腫の1例を経験した。本症例を報告するとともに両疾患の臨床的・病理学的類似点に対する文献的考察を加えて報告する。

喉頭全摘後の再発癌に対して遊離空腸とDP皮弁で再建を行った1例

著者: 舘一史 ,   中川雅裕 ,   飯田拓也 ,   福島千尋 ,   鬼塚哲郎 ,   海老原充 ,   飯田善幸 ,   瀧澤義徳 ,   石木寛人 ,   坪佐恭宏 ,   佐藤弘

ページ範囲:P.947 - P.950

I.はじめに

 DP皮弁(deltopectoral flap)は頭頸部外科領域の再建に広く用いられている皮弁で,頭頸部癌の頸部皮膚合併切除の再建や術後に生じた瘻孔の閉鎖に使用されることが多い1)。一方,遊離空腸移植は現在では主に咽頭・喉頭・頸部食道摘出術に対して用いられ,標準的再建方法の1つとなっている。咽頭・喉頭・頸部食道に加えて頸部皮膚も切除される症例で遊離空腸とDP皮弁を組み合わせることにより一期的に再建した報告は比較的少ない2)。今回,喉頭癌の喉頭全摘後に皮下に再発を認め,下咽頭,頸部食道,皮膚を合併切除した症例に対して遊離空腸とDP皮弁を組み合わせて再建を行い,良好な結果を得ることができたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

咬筋内血管腫の2例

著者: 谷口昌史 ,   佐伯忠彦 ,   川上美由紀

ページ範囲:P.951 - P.954

I.はじめに

 血管腫は頭頸部領域において口唇,舌,頰粘膜などに好発する疾患であるが,筋肉内に発生するのは全血管腫のうち0.8%1)と稀である。今回われわれは咬筋内血管腫の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部膿瘍を併発した抗甲状腺薬による無顆粒球症の1例

著者: 中村哲 ,   石田良治 ,   福家智仁 ,   富岡利文 ,   山田弘之

ページ範囲:P.955 - P.958

I.はじめに

 バセドウ病に対する治療には,薬物療法,手術,アイソトープ治療があるが,わが国では,初回治療に抗甲状腺薬による薬物治療が試みられることが多い。抗甲状腺薬による最も注意すべき副作用の1つに無顆粒球症がある。無顆粒球症を発症した場合,抗甲状腺薬の再投与は危険であり,無顆粒球症に対する治療の後,手術またはアイソトープ治療のいずれかを行うことになる。今回われわれは,頸部膿瘍を併発した無顆粒球症の治療後,無機ヨード,βブロッカー,ステロイドホルモンを用いて甲状腺機能をコントロールしたうえで,甲状腺全摘術を行った症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

甲状腺癌取扱い規約第6版による分化癌の予後評価と最適治療に関する検討

著者: 坂下智博 ,   赤澤茂 ,   飯塚桂司

ページ範囲:P.959 - P.964

I.はじめに

 2002年にUICCのTNM分類が第6版に変更され,その内容が大きく一新されたが,それに伴い,わが国においても2005年9月に甲状腺癌取扱い規約が第6版に変更された。この変更はおおむねUICCの定めるものに従ったものであったが,大きな変更点は甲状腺外浸潤を示すものでも微細なものはT4からT3に変更となった点や,N分類についても患側のみ・両側の別で分けるのではなく頸部中央区域リンパ節転移のみのものをN1aとし,頸部外側区域リンパ節・縦隔への転移があるものをN1bと定めるなどの変更点がみられた1)。当科において手術治療を行った甲状腺分化癌180例について,甲状腺癌取扱い規約第5版(以下,旧規約)と同第6版(以下,新規約)にそれぞれ分類し比較することで,その差異を明確にし,予後因子を再検討することで適切な手術治療とはいかなるものか,特にリンパ節郭清範囲の決定について考察をしたので報告する。

頸部脂肪肉腫の1例

著者: 大淵豊明 ,   宇高毅 ,   塩盛輝夫 ,   坂部亜希子 ,   北村拓朗 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.965 - P.968

I.はじめに

 脂肪肉腫は1857年にVirchow1)によって初めて報告された脂肪組織由来の悪性腫瘍である。成人の悪性軟部腫瘍のなかで悪性線維性組織球腫(MFH)に次いで多く,その発生頻度は全悪性軟部腫瘍の10~18%と報告されている2,3)。本腫瘍の好発部位は下肢や後腹膜とされており,頭頸部領域に発生することは1~4%と比較的稀である4~6)。本腫瘍は多彩な組織像を呈し,その悪性度は組織型によってさまざまであることから,術前に組織型を確定することは治療を行ううえで重要である4,7~11)。しかし多くの症例で,術前に組織型まで診断に至ることはほとんどなく,通常の脂肪腫との鑑別が困難となる症例も少なくない。今回われわれは,後頸部に発生し,特徴的な画像所見を呈した高分化型脂肪肉腫症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

⑨人工内耳埋め込み術

著者: 三浦誠

ページ範囲:P.975 - P.982

Ⅰ はじめに

 2003年度から全国82の特定機能病院の入院病床においてdiagnosis procedure combination(DPC)による包括的診療報酬制度が導入されたが,その後,試行的適応病院62施設,DPC包括払い希望の調査協力病院216施設にも広がりをみせ,2006年6月現在合計360施設がDPC対象病院となっている1)。DPCの大きな特徴は包括評価であることおよび入院期間に応じた報酬が特に入院の初期に重点的に評価されている点にある。

 したがって,DPC対象の病院では必要な医療をできるだけ効率的に提供し,漫然とした長期入院をなくすことが求められ,クリニカルパス(以下,パスと略す)の重要性が大きい。パスの活用によりどの段階で,どのような治療や検査が行われ,どの薬剤や材料が使用されるかが明確になり,適切な医療の提供のための必要なコスト管理・分析が容易になると考えられている1)

 本稿では当科で施行されている人工内耳埋め込み術のパスを紹介し,その有用性と問題点,DPCとの関連について述べる。

⑨人工内耳埋め込み術

著者: 河野淳 ,   萩原晃 ,   山口太郎 ,   坂本典子 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.984 - P.992

Ⅰ はじめに

 昨今の医療状況の変化には著しいものがあり,医療費の適正などを目的に診断群分類(diagnosis procedure combination:DPC)1)による包括的診療報酬制度が導入され,多くの病院に広がっている。人工内耳埋め込み術は高度難聴者への治療法として確立された治療法であり,日本全国で約90施設,年間400~500例の手術がなされている2)。人工内耳埋め込み術は,一般的な耳科手術である鼓室形成術に比べて特に難しいということはないが,内耳を開窓するという意味で特殊といえる3)。世界には大きい3つのメーカーがあり,時代の経過に伴い機種も進歩しており,しばしば手術方法が変化して機種による多少の差異はあるもののその概要は基本的に同じである。その詳細は手術書3)を参考にしていただくとして,本手術においては術後経過や注意点がはっきりしているので,クリニカルパス(以下,パスと略す)の導入に当たっては比較的施行しやすいと思われる。

 われわれの病院では,一時期鼻科手術, へん桃手術においてパスを使用した経験があるが,比較的バリアンスが多いため,かえって現場での指示出しが多くなり現在パスは使用していない。この点,耳科手術,特に人工内耳埋め込み術においては,医療内容の明確化,医療の標準化,業務の効率化,医療の質の向上などを目的としたパスの導入4)は,バリアンスが少なく比較的容易と考えられ,症例を通した臨床医,現場サイドの立場からここに紹介する。

鏡下咡語

ゼロからの病院運営にかかわってみえた日本の医療

著者: 神崎仁

ページ範囲:P.971 - P.973

 私は現職中に院長,副院長を各4年間勤めさせていただきましたが,定年後の院長の経験はいままでとは全く違うものでした。

 新しい大学附属病院の開院からの運営にかかわった人は少ないと思うので,その経験からみえた日本の医療の現状について述べてみようと思います。耳鼻咽喉科医で病院長をやられた方は沢山おられますが,通常は歴史がある病院の一時期の院長で,それなりに苦労はありますが,組織はすでにできているので,大体は業務を継続すればよいのだと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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