icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻13号

2006年12月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―手術手技とコツ

1.鼓膜チューブ留置術のコツ

著者: 高橋晴雄

ページ範囲:P.1021 - P.1028

Ⅰ はじめに

 鼓膜チューブ留置術は滲出性中耳炎に対する最も信頼性のある治療法であり,また非常に侵襲も小さく行えるために,近年は病院ばかりでなく多くの開業医院でも行われている。このように本手術はすでに耳鼻咽喉科の日常診療のなかに定着しており,耳鼻咽喉科専門医には問題なく施行できることが求められている手技といえる。

 本稿では,鼓膜チューブ留置術を専門医としてマスターしてもらうために,滲出性中耳炎の病態からその適応をまず解説し,次いでチューブの種類,留置術の手技,術後管理,合併症などを解説する。

2.アデノイド・口蓋扁桃摘出術

著者: 桑畑直史 ,   大森孝一

ページ範囲:P.1029 - P.1035

Ⅰ.はじめに

 アデノイド切除術および口蓋扁桃摘出術の症例は豊富で,また手技は複雑ではなく,解剖学的に要求される危険部位も少ないことから,耳鼻咽喉科研修の比較的早期に行われてきた。しかしながら,手術部位は気道の一部であること,また術後出血が比較的高い確率で起こる手術であり1~3),一度合併症を引き起こせば致命的となりうる手術でもある。このため手術適応の決定と危険性の説明と同意,確実な手術手技と術前・術後の慎重な管理が要求される。さらに施設や術者ごとに手術手技が異なるうえ,近年では高周波凝固器械などが応用されているため,手術手技は多様を極めている。本稿では当施設で行っている結紮止血を基本とした手術方法について記述する。

3.ラリンゴマイクロサージェリー

著者: 倉富勇一郎

ページ範囲:P.1037 - P.1042

Ⅰ.はじめに

 ラリンゴマイクロサージェリー(喉頭微細手術,喉頭顕微鏡下手術)は喉頭,特に声帯病変に対して行われる最も基本的な手術の1つである。わが国では1966年の斉藤ら1)の報告に始まり40年が経過している。全身麻酔下に喉頭直達鏡で喉頭を展開して声帯を明視下に置き,手術用顕微鏡で拡大して手術操作を行うという基本的手技が確立し,普遍的となっている。その方法は多くの成書,手術書などに述べられているが,本稿では耳鼻咽喉科専門研修を始める医師に対してラリンゴマイクロサージェリーの準備やセッティングを含めて解説し,本手術のコツや基本的考え方を中心に述べることにする。

4.鼻骨骨折整復術

著者: 鈴木正志 ,   吉田和秀

ページ範囲:P.1043 - P.1048

Ⅰ.はじめに

 鼻骨は顔面から突出しており,比較的外力の影響を受けやすく,顔面骨のなかでも構造的に弱い1)。ゆえに,顔面骨骨折のなかで日常診療において最も頻繁に遭遇する。原因としてはけんか,交通事故,スポーツ,転倒・転落などが挙げられ,その結果10~20歳代の男性に多い。また,腫脹,変形の目立つ部位でもあり受傷の直後に急患として受診することが多く,診断・治療に難渋する症例も少なくない。そのため,実地耳鼻咽喉科医としては常に迅速かつ適切な対応ができるように日ごろから本疾患の診断・治療に習熟しておくことが望まれる。

 本稿では鼻骨骨折について,われわれの考えや手術手技について紹介する。

5.気管切開術

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.1049 - P.1053

Ⅰ.はじめに

 気管切開は耳鼻咽喉科医が他科の医師からその技量を最も問われる手技であり,時には一瞬の猶予もない緊張した局面で,その技術を十分に発揮しなければならないこともある。そのようなことから,耳鼻咽喉科専門医にとっては場所と時を選ばず行わなければならない重要な手術技量であるため,その適応,確実な手技,的確な術後管理については熟知しておく必要がある。

 今回,その適応,手技,術後管理について,これから耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師が経験を積んでいくのに役立つようなものとなるよう述べることにする。手技については,新生児で若干対応が異なるので,その相違についても紹介する1,2)

目でみる耳鼻咽喉科

頭蓋内に進展した中耳コレステリン肉芽腫

著者: 森田武志 ,   高木明 ,   山田耕作 ,   谷口美玲 ,   小島正継

ページ範囲:P.1008 - P.1009

 中耳コレステリン肉芽腫はしばしば遭遇する疾患であるが,頭蓋内に進展することは稀である。今回,頭蓋内進展例に対して経乳突洞ドレナージ手術を行った。その術中所見を中心に報告する。

症例

 患者:17歳,男性

 主訴:左耳後部痛

 既往歴:幼少時に数度の中耳炎。明らかな頭部外傷歴はなし。

 現病歴:主訴で近医脳外科を受診した際,CTから左錐体腫瘍を疑われて某センター脳外科を紹介された。同センター耳鼻科で中耳疾患を疑われ,当院を紹介された。

Current Article

鼻・副鼻腔線維芽細胞の特殊性と慢性副鼻腔炎病態形成への関与

著者: 野中学

ページ範囲:P.1011 - P.1019

Ⅰ はじめに

 線維芽細胞は組織や粘膜の支持細胞の1つである。細胞外マトリックス(ECM)産生やMMP,TIMPの産生制御により慢性炎症に伴う線維化の過程に必須の細胞であることは,以前よりよく知られている。近年,線維芽細胞はサイトカインやケモカインを産生することが証明され,上皮細胞と同様に炎症反応に深くかかわっていることがわかっている。線維芽細胞の産生するケモカインの中に好酸球遊走作用をもつRANTES,eotaxin,MCP-4などがある1~3)。線維芽細胞の好酸球遊走因子の産生量は他の細胞と比較して多く,好酸球性炎症における好酸球遊走に関与している可能性がある。

 また線維芽細胞はケモカインを相乗的に産生する能力をもっており,ある2つの刺激を受けた場合,2つの刺激それぞれ単独では産生量は少ないが,2つの刺激を同時に受けると非常に大量のケモカインを産生することがある。例えば,線維芽細胞をIL-4とTNF-α,あるいはIL-13とTNF-αで刺激すると単独刺激より数倍から数十倍のeotaxinを産生する3,4)。したがって,線維芽細胞は線維化の過程に寄与するだけでなく,eotaxinの相乗的産生を含めたケモカイン産生を通して好酸球遊走においても重要な働きをしていると考えられる。実際,われわれ耳鼻咽喉科医が治療にあたる上気道の慢性炎症である慢性副鼻腔炎の副鼻腔粘膜においては,好酸球浸潤が頻繁に認められる。

 また線維芽細胞は人間の身体の部位により特性がある5)。このことは,同じ線維芽細胞でも炎症の起こる部位により線維芽細胞の炎症へのかかわり方が異なっていることを意味している。鼻・副鼻腔線維芽細胞の役割を解明するために,鼻・副鼻腔線維芽細胞と他の部位の線維芽細胞(特に肺線維芽細胞)を比較して実験を行い,これまでにいくつかの鼻・副鼻腔線維芽細胞の特徴が明らかになった。鼻・副鼻腔線維芽細胞の特性を解説し,鼻・副鼻腔慢性疾患,特に慢性副鼻腔炎における線維芽細胞の役割について述べる。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

⑩耳硬化症

著者: 宗英吾 ,   高橋晴雄

ページ範囲:P.1059 - P.1066

Ⅰ はじめに
 クリニカルパス(以下,CP)とは元来アメリカ工業界で生産性向上のため導入されたもので,クリティカルパスという名称で使われていた。その後アメリカ医療界に1985年に経営手法として導入され,わが国では1990年代半ばから使用され始めた1)。またわが国では2003年4月より,特定機能病院において,診療報酬が従来の出来高払いによる支払い制からDPC(diagnosis-procedure-combination)と称される診断群別の1日定額料金支払い制に代わった2)。DPCが導入された医療機関においてはより一層のコスト管理を行う必要があり,入院期間を短縮して医療の生産性を向上するとともに,提供する医療の質をも向上し,医療を標準化することを目的3)とするCPの役割が重要となってくる。

 本稿では当科での耳硬化症に対するアブミ骨手術のCPを紹介する。

⑩耳硬化症

著者: 新藤晋 ,   池園哲郎

ページ範囲:P.1067 - P.1076

Ⅰ はじめに
 当院では,2003年より診断群分類(diagnosis procedure combination:以下,DPC)による包括的診療報酬制度が導入されている。DPCの導入に伴い当科でも,在院日数の短縮,インフォームド・コンセントの充実,質の向上,ケアの標準化,医療資源の効率化を図る目的でクリニカルパス(以下,CP)を採用し,3年あまりが経過した。

 今回われわれは,アブミ骨手術を目的に入院した耳硬化症患者におけるCPの使用状況を紹介するとともに,使用中に生じた問題点やその改善方法について述べる。

原著

深頸部膿瘍を合併した急性喉頭蓋炎の1例

著者: 中野宏 ,   永尾光 ,   芝野忠寿 ,   大岡正人 ,   馬場均 ,   久育男

ページ範囲:P.1077 - P.1080

Ⅰ.はじめに

 頭頸部の感染症が頸部の間隙に波及して生じる深頸部膿瘍は縦隔洞炎や膿胸をきたし致死的となることもあり,外科的処置を要した症例が多く報告されている1~9)。また,急性喉頭蓋炎は重症度によっては,時に上気道閉塞をきたし気道確保を必要とする。しかし,急性喉頭蓋炎から深頸部膿瘍を合併する症例は比較的稀である。

 今回われわれは,急性喉頭蓋炎を初感染巣とし,深頸部膿瘍を合併して外科的処置を要した1例を経験したので報告する。

頸部膿瘍を契機に発見された副咽頭間隙基底細胞腺腫の1症例

著者: 馬場信太郎 ,   馬場美雪 ,   岡田和也 ,   中嶋正人 ,   田山二朗

ページ範囲:P.1081 - P.1084

Ⅰ.はじめに

 基底細胞腺腫(basal cell adenoma)は基底細胞類似構造を示す腺腫の一種で,その発生頻度は唾液腺腫瘍の2%程度とされている1)。本腫瘍で耳下腺由来のものは若干症例数が多いが,副咽頭間隙に発生したとの報告はほとんどない。今回われわれは,頸部膿瘍を契機に偶然に発見された副咽頭間隙発生の基底細胞腺腫の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

喉摘後の音声再建術―VOICE PROSTHESIS with TRACHEOESOPHAGEAL(TE)PUNCTUREの誕生―

著者: 天津睦郎

ページ範囲:P.1055 - P.1058

 近年,喉頭全摘例(喉摘)が減少していることが,いろいろな報告ではっきりしており,まことに好ましいことといえる。

 しかしながら喉摘が絶無になったわけではなく,ひとたび喉頭が摘出されると,数々の不都合が生じる。なかでも,一旦は発声が不能に陥ることは患者にとって耐えがたいことに違いない。何らかの方法で発声機能を取り戻したとしても,決して満足の行くものではない。何らかの方法として,食道発声,人工喉頭の使用の他に,第3の方法として手術的に音声を再建しようとするものがある。周知の通り,Jone J. Conley(1958)1),浅井良三(1965)2)の手術法が有名である。詳細は避けるが,何れも呼気を手術的に造設した瘻孔を通じて,食道または咽頭に導こうとするものである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?