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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻2号

2006年02月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科領域の疼痛

1.耳痛

著者: 森望

ページ範囲:P.101 - P.105

Ⅰ.はじめに

 耳痛(otalgia)には,外耳,中耳に病変があって起こる耳痛と,離れた部位での病態からの放散による耳痛(関連痛,referred pain)1)があり,また神経痛,心理的原因による痛みがある。関連痛による耳痛は約50%を占めるとされる2)

2.鼻副鼻腔疾患と痛み

著者: 遠藤周一郎 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.107 - P.111

Ⅰ.はじめに

 固有鼻腔,副鼻腔の知覚は,すべて三叉神経が支配している。第Ⅰ枝眼神経の分枝である眼窩上神経は前頭洞を,鼻毛様体神経はさらに前・後篩骨神経に分かれ,鼻腔前部,前篩骨洞,後篩骨洞,蝶形洞を支配する。第Ⅱ枝上顎神経の分枝である後上歯神経,眼窩下神経,翼口蓋神経節からの枝は上顎洞,鼻腔後部の知覚を支配する(図1,2)。これら三叉神経の分枝は前後して脳硬膜,眼窩,歯,および歯槽にも走行する。したがって,鼻副鼻腔疾患に基づく痛みは通常顔面痛として出現するが,時には歯痛,眼痛,頭痛として現れることもある。

 痛みを伴う鼻副鼻腔疾患を表1にまとめた。本稿では,これらの疾患について痛みを中心に解説を行い,さらに顔面痛として鑑別しなければならない三叉神経痛,頭痛とともに鼻症状を伴う群発頭痛についても詳しく述べる。

3.口腔咽頭の痛み

著者: 氷見徹夫

ページ範囲:P.113 - P.118

Ⅰ.はじめに

 口腔・咽頭痛を診断するためには,まず視診・触診で異常があるかないかによって鑑別診断が始まる。疾患頻度としては,炎症によるものがほとんどを占めるが,その炎症の原因を正確に鑑別することは意外に難しい。例えば,「咽頭炎」という診断をつけることは容易だが,原因が多彩であると同時に口腔咽頭は各種の常在細菌や外来抗原にさらされ二次的に炎症が修飾されるため,視診による診断が困難になる。さらに,組織学的な病理診断でさえ主な原因を特定することが難しい。

 本稿では,痛みの起源となる神経機構につき記述し,さらに診断の進め方,落とし穴などについてできるだけ実践的な外来診療に役立つ点を中心に述べることにする。

4.頸部の痛み

著者: 平林秀樹

ページ範囲:P.121 - P.126

Ⅰ.はじめに

 頸部痛を主訴に来院する患者は,耳鼻咽喉科領域にとどまらず,整形外科,脳外科,内科などさまざまな領域の疾患を含む。われわれ耳鼻咽喉科医は,関連する領域をふまえて診療に当たらなければならない。頸部は,大きく分けて前頸部と後頸部に分けられる。前頸部は,咽喉頭疾患,唾液腺疾患,気管・食道疾患,甲状腺疾患など耳鼻咽喉科領域が多い。一方,後頸部は,頸椎症,脊椎疾患など,整形外科・脳外科領域疾患が多い。

 診療においては,病歴の聴取,視診,触診が基本であり,さらに内視鏡,およびCT,MRなどの画像診断,超音波などを駆使して行う。病歴の聴取については,痛みの発生時期,範囲のほか,嚥下痛,放散痛や嚥下困難嗄声の有無なども確認する。視診では,腫脹や皮膚の発赤,喉頭の変位の有無を確認する。触診では,患者の前後から行うことが有効である。甲状腺部の触診は,患者にカラ嚥下をさせて行うのがよい。胸鎖乳突筋の裏面も十分に行い,痛みを訴える部位から離れたところから触診する。本稿では,耳鼻咽喉科で多く用いられている頸部三角別(図1)に代表的疾患の診断・治療を紹介する。

5.唾液腺の痛み

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.129 - P.132

Ⅰ.はじめに

 唾液腺の痛みはさまざまな疾患により出現するが,唾液腺自体の疾患によるものと,唾液腺周辺の痛みとしてリンパ節など唾液腺内,周囲の組織の障害で生ずることがある。本稿では,大唾液腺のうち,耳下腺,顎下腺を中心にその原因と対応について述べたい。

目でみる耳鼻咽喉科

甲状舌管遺残組織から発生した乳頭癌症例

著者: 海山智九 ,   渡邊荘 ,   難波真由美 ,   難波玄 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.90 - P.91

甲状舌管は,発生の過程で萎縮し消失する。通常,消失するはずの甲状舌管が遺残したものが甲状舌管遺残組織である。この甲状舌管遺残組織から発生する良性の先天性前頸部腫瘤は甲状舌管囊胞であり,正中頸囊胞として広く知られている。甲状舌管遺残組織に癌が発生することは稀であり,また,その報告は多くない。今回,甲状舌管遺残組織由来と考えられる乳頭癌の症例を経験したので報告する。

Current Article

嗅覚障害の診断と治療―課題と今後の展望

著者: 三輪高喜

ページ範囲:P.93 - P.100

Ⅰ はじめに

 筆者は,本誌77巻3号の特集「味覚・嗅覚障害」で,「嗅覚障害の診断と治療」と題して嗅覚障害診療における現状を報告した。今回はその続編として,いまだ解決されていない問題や疑問を抽出し,それらが現在どこまで解決されているか,今後,どのような展開をたどる可能性があるかについて私見として述べる。抽出した問題点について解説していく形をとるため,全体としてのつながりに欠ける内容になることをご容赦いただきたい。逆にいえば,興味のある部分だけを拾い読みしていただいても差し支えない。

原著

舌腫瘤が初発症状であった多発性骨髄腫の1例

著者: 馬場美雪 ,   矢部多加夫 ,   中西重夫 ,   藤本千里

ページ範囲:P.139 - P.142

I.はじめに

 多発性骨髄腫は,骨髄において形質細胞が腫瘍性増殖し,さまざまな症状を呈する疾患である。一般に,骨破壊に伴う疼痛,高カルシウム血症による症状,貧血症状などが特徴的であり,口腔病変が初発であることは少ない。今回,われわれは舌腫瘤が初発症状であった舌アミロイドーシスを呈した多発性骨髄腫症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

乳幼児深頸部膿瘍の1症例

著者: 木村美和子 ,   中嶋正人 ,   渡部雅勝 ,   二藤隆春 ,   田山二朗

ページ範囲:P.143 - P.146

I.はじめに

 頭頸部の重要な血管や神経,および筋肉の周囲には疎な結合組織からなる多くの間隙が存在し,これらの間隙にほかの部位からの感染が波及し蜂窩織炎や膿瘍を形成すると,急速かつ広範に病変が進展することがある。近年,深頸部感染症の報告は増加傾向にあり1),抗菌薬投与や外科的治療など適切で迅速な治療の必要性が強調されている。特に,本症例のように乳幼児では,症状の訴えが不明瞭であり診断が確定するまでに時間を要する場合もある2,3)

 今回,われわれは,特に基礎疾患のない乳幼児に発生した深頸部膿瘍の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

外転神経麻痺を呈した蝶形骨洞囊胞の1例

著者: 村下秀和 ,   伊東善哉 ,   佐藤裕理

ページ範囲:P.147 - P.150

I.はじめに

 蝶形骨洞囊胞は比較的稀な疾患で,種々の眼症状を呈することが知られている1。眼症状のうち最も多いのが視力障害であり,外転神経麻痺のみを認めるものは稀である。今回,視力障害を伴わない外転神経麻痺を呈した蝶形骨洞囊胞の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

経鼻胃管チューブ挿入時に発症した頸部皮下気腫・縦隔気腫例

著者: 中尾芳雄 ,   岡崎英登 ,   渡部浩 ,   中川嘉隆

ページ範囲:P.151 - P.154

I.はじめに

 頭頸部癌の周術期や,放射線治療中の粘膜炎による経口摂取困難時に経鼻胃管チューブによる代替栄養は日常的に行われる方法である。今回われわれは,経鼻胃管チューブ挿入時に頸部皮下気腫と縦隔気腫をきたした症例を経験したので報告する。

シリーズ 難治性疾患への対応

⑬誤嚥

著者: 湯本英二 ,   松吉秀武

ページ範囲:P.157 - P.163

Ⅰ はじめに

 嚥下障害を起こす原因疾患,あるいは基礎疾患は,呼吸器疾患,神経疾患,腫瘍性疾患などきわめて多岐にわたる。また,加齢による機能低下が嚥下障害の発症を促進する。嚥下障害を訴える患者を前にして,障害の程度をどのように把握するか,正常嚥下機構のどの部分がどのように障害されているのか,どのように治療を進めていくべきか,原因疾患,あるいは基礎疾患(多くは他科領域でなじみがない)の治療とどのように調整するか,などに関して一定の方式は確立されていない。病態によって,あるいは基礎疾患によっては適切な治療法をみいだせないことも稀ではない。嚥下を「摂食を含めた一連の動作」と考えると,認知期,捕食・咀嚼期,口腔期,咽頭期,食道期に分けられる。なかでも,口腔期と咽頭期の過程が重要である。嚥下に関与する器官を担当すること,嚥下障害の手術治療を行えることから,耳鼻咽喉科医が嚥下障害を訴える患者の診療に果たす役割はきわめて大きいといえる。

 本稿では,まず正常嚥下機構を簡単に説明し,続いてその破綻をきたした状態(嚥下障害,誤嚥)と診断・治療にどのように取り組むべきかについて述べる。

鏡下咡語

本との出会いと別れ

著者: 飯沼壽孝

ページ範囲:P.134 - P.135

ある時,古くからの患者さんで古書店を経営している方が,小生のカルテの記載に,同じ書き癖の署名がある本がでたといいだしたのである。小生には昔から,本を購入するとその裏扉の左上に署名と購入した日と購入地点を小さく記入する癖があった。これも古い話であるが,40年ほど前に渡米するに際してわずかばかりの蔵書を処分したことがあった。学生時代に集めた明治から昭和の初期の文学書が主なものである。特に,同じ経歴の森鷗外の書物に重点を置いていた。今でもあるらしいが,古書会館で古書の市が開かれて個人も参加できたのである。学生時代には,暇があるとこの古書市に足を運びあれこれ集めていたのである。小生のカルテの書き癖を見抜いた書店主は,裏扉の署名からその本達が小生の旧蔵本であると推定したのである。信じられないことなので,次回の診察日に数冊のその本達を持参していただいた。さらに感激したことには,そのなかの1冊が「1961年5月15日購入」とある。今でも覚えているが,この日は小生の35回目の誕生日で,当時の状況では随分と思案して購入したものであった。古書店の主人が,これらを進呈するといってくれたので,辞退はしたもののつい手がでてしまう始末で,これらの本達は34年ぶりで旧所有者にもどったのである。

 次はコピーを手にいれたことである。これも昔のことで30年ほど前のことであるが,Grazの故Messerklinger教授の教室に手術の見学のために2週間ほど滞在した折りのことである。教室の書庫には,19世紀から20世紀初頭の書物が目が眩むほどに収蔵されてあった。この書物庫には,長い間,みたくてもみられなかった本が沢山あり,そのなかの1冊にZuckerkandlの哺乳類の顔面の比較解剖書があった。随分と大きな本であったが無事にコピーできた。いまだに探しているが,現物は古本市にはでてこない。

書評

口蓋裂の言語臨床 第2版

著者: 澤島政行

ページ範囲:P.136 - P.136

本書は,1997年に出版された第1版の改訂版である。第1版は口蓋裂の言語臨床家として実績を積み上げた著者たちが口蓋裂言語に関する諸問題を包括整理し,臨床経験と併せて世に出したものである。その後8年の時を経て著者等の実績にも,臨床に加えて若い臨床家や学生の指導教育活動が増えてきている。

 第2版では最近8年の新しい知見を加えると共に,後進の育成という意味を含めて新しい著者数名が加わっている。第2版の構成も初版と同じ11章から成る。すなわち「1章.口蓋裂治療における言語臨床家の役割」,「2章.口蓋裂の言語治療に必要な基礎知識」,「3章.口蓋裂言語」,「4章.口蓋裂の言語臨床における評価」,「5章.口蓋裂の言語臨床における治療」,「6章.乳児期の言語臨床」,「7章.幼児期の言語臨床」,「8章.学童期の言語臨床」,「9章.思春期・成人期の言語臨床」,「10章.特別な問題を持った症例」,「11章.口蓋裂の言語臨床における今後の課題」,である。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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