icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻4号

2006年04月発行

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

②特発性顔面神経麻痺

著者: 渡邉暢浩1 村上信五1

所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科耳鼻神経感覚医学教室

ページ範囲:P.331 - P.335

文献概要

Ⅰ はじめに

 わが国では2003年から特定機能病院の入院診療においてDPC(diagnosis procedure combination)が導入され,その後,一部の公私病院に広がりつつある。こうした包括医療には大きく2つの意味合いがあり,1つは高齢化社会を反映し1人の患者が多くの疾患を抱えるようになって総合的に医療を施す必要性を指し,もう1つは支払い方式が出来高ではなくいわゆる丸めとされ,疾患ごとに診療報酬が固定されることを意味する1)。今日的には後者の意味合いが特に強く,すでに多くの国公立大学が独立法人化しており,大学病院も費用対効果を常に念頭に置いた診療を求められている。こうした背景もあり,クリニカルパス(clinical path:以下,パス)が導入されている施設も多くなっている。大学病院は比較的若い医療従事者が多いこと,組織が大きく複雑であること,医師に関していえば勤務交代が多いことなどからパスを導入することの意義は大きいとされている2,3)

 特発性末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺)に対する治療は,原則ステロイド薬や抗ウイルス薬による保存的治療でありHunt症候群に比べると治癒することが多いため,当科では外来治療を中心に行っている4)。ただし,Bell麻痺といっても皮疹が出現しないzoster sine herpeteが含まれていることがあり,重症例もみられ対象となる症例は少ないが顔面神経減荷術を行うこともある5)。こうした症例に対する顔面神経減荷術は,術後比較的一定の経過が予測されるため全例パスの適応として導入可能である6)

 以下に筆者らの特発性顔面神経麻痺に対する治療方針と,顔面神経減荷術に作成・導入しているパスの一部を紹介し概略を述べるとともに,有用性や問題点などを挙げる。

参考文献

1)長谷川敏彦:包括医療下でのクリティカルパスの意義.外科治療92:512-516,2005
2)関戸 仁・他:大学病院におけるクリニカルパス.外科治療92:938-942,2005
3)田口享秀・他:大学病院におけるクリニカルパス導入の試み.癌と化学療法29:36-44,2002
4)村上信五・他:顔面神経麻痺.ENTONI 3:14-18,2001
5)村上信五:Bell麻痺と単純ヘルペスウィルス.耳鼻臨床94:857-868,2001
6)渡邉暢浩・他:耳鼻咽喉科・頭頸部外科とクリニカルパス―顔面神経減荷術.JOHNS 20:1069-1073,2004
7)山口俊晴:クリニカルパス導入により外科医療は変わったか.外科治療92:507-511,2005
8)畝村泰樹・他:簡便に導入可能なクリニカルパスシステムによる業務軽減化.臨床外科58:979-983,2003
9)井川澄人:電子カルテシステムとクリニカルパス.外科治療92:928-937,2005
10)中山健吾・他:クリニカルパスと電子化.成人病と生活習慣病33:661-666,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら