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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻5号

2006年04月発行

雑誌目次

症候群事典

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.13 - P.13

 耳鼻咽喉科の日常診療において遭遇する症候群としてはSjögren症候群,Frey症候群,頸静脈症候群,睡眠時無呼吸症候群,Ramsay Hunt症候群,Kartagener症候群をはじめとして,そのほかさまざまな先天性の症候群がすぐに思い浮かびます。しかし一方では,内科,小児科などの他科の症候群について問われた際に即座に理解できないことも多々あります。また,そのような症候群の多くには耳鼻咽喉科領域の奇形や難聴をはじめとする耳疾患,鼻・口腔・咽喉頭の疾患や機能障害を伴っているのも事実です。新しい概念の症候群の追加や,逆に最近はすでに使用する頻度の低い症候群などが出てきましたため,一度整理する必要がありました。

 さて,症候群事典としては,これまで内科系の書物として豊富な症候群を含むものが出版されており,また耳鼻咽喉科領域についても1992年に医学書院より「耳鼻咽喉科・頭頸部外科 症候群事典」として発行され大変好評を博しました。そして症候群の数をさらに増やし,特に耳鼻咽喉科に関連する疾患を含み,より詳しい内容の充実した事典の発刊がこれまで切望されていましたが,なかなか実現しませんでした。このたび,われわれ耳鼻咽喉科医の日常臨床の場で役立つ症候群事典を第一の目的として,必要な症候群をピックアップし,全国多数の先生方に執筆をお願いいたしました。

A

Aarskog syndrome

著者: 福田諭

ページ範囲:P.15 - P.15

定義・概念

 1970年にノルウェーの小児科医Dagfinn Charles Aarskogが報告した特異な顔貌,低身長,手足の奇形,外性器奇形を特徴とする,男性のみにみられる奇形症候群である。

acute respiratory distress syndrome(ARDS)(急性呼吸窮迫syndrome)

著者: 丸屋信一郎 ,   新川秀一

ページ範囲:P.16 - P.16

定義・概念

 ARDS(acute respiratory distress syndrome:急性呼吸窮迫症候群)は肺の炎症と血管透過性亢進による透過性肺水腫を特徴とする症候群で,臨床像としては,急性発症,低酸素血症,胸部X線所見上の両側性の浸潤影,また以上の所見が左房圧または肺毛細血管圧の上昇によるものではないものと定義されている。病理組織学的には血管内皮細胞の膨化,基底膜の断裂が認められる1)

Addison disease(原発性副腎機能低下症)

著者: 福田諭

ページ範囲:P.17 - P.17

定義・概念

 イギリスの医師Thomas Addisonによって,1855年に初めて記載された病態で,原発性慢性副腎皮質機能低下症(primary chronic adrenal insufficiency)である。

 先天性と後天性に大別される。前者には先天性副腎皮質低形成,ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)不応症,先天性副腎皮質過形成,副腎白質ジストロフィなどがあり,後者には特発性副腎萎縮,結核,副腎への癌転移,真菌性,サルコイドーシス,アミロイドーシス,AIDS(エイズ),副腎摘出,出血,梗塞,薬剤などによるものがある。

Alagille syndrome

著者: 福田諭

ページ範囲:P.18 - P.18

定義・概念

 1975年にフランスの小児科医Daniel Alagilleらは,いわゆる肝内胆道低形成の30例のなかに,特徴的な顔貌,末梢性肺動脈狭窄を主体とする先天性心疾患,椎骨前弓の異常,生育不良,精神発達遅延,性腺機能不全などを伴う15例を見いだし症候群として報告した。

病因・病態生理・疫学

 常染色体優生遺伝で浸透率は95%である。本症候群の責任遺伝子は20p12に位置し,Jagged 1(JAG1)遺伝子をコードしていることが明らかにされた。本症候群の約7割の患者で変異が認められる。この遺伝子は,膜透過性レセプターNOTCH 1のリガンドをコードする。

 発生頻度は,7万生産児に1人とされる。

Alice in Wonderland syndrome(不思議の国のアリスsyndrome)

著者: 氷見徹夫 ,   関伸彦

ページ範囲:P.19 - P.19

定義・概念

 不思議の国のアリス症候群は,syndrome of distortion of body imageともいわれ,多くは片頭痛を伴って自己と周辺環境との間に大きさの乖離がみられる疾患である。広義の定義として,時間の速度に関する感覚などさまざまな感覚の乖離が含まれるが,狭義の定義であるdistortion of body imageとして使われることが多い。

allergic tension-fatigue syndrome(ATFS)(アレルギー性緊張弛緩syndrome)

著者: 氷見徹夫

ページ範囲:P.20 - P.20

定義・概念

 過敏食物摂取や吸入抗原の曝露によるアレルギー反応によって,緊張症状や弛緩症状に加え,精神神経症状を含むさまざまな随伴症状を呈する症候群1)である。

Alport syndrome(アルポートsyndrome)

著者: 氷見徹夫

ページ範囲:P.21 - P.21

定義・概念

 アルポート症候群は,感音性難聴,血尿,眼症状を伴う遺伝性進行性腎炎であり,1927年にAlport1)により報告された。

Alström syndrome

著者: 安部裕介 ,   原渕保明

ページ範囲:P.22 - P.22

定義・概念

 Alström1)が1959年に報告した網膜色素変性症,肥満,糖尿病,難聴,進行性腎障害を主要症状とする遺伝疾患である。

Angelman syndrome

著者: 安部裕介 ,   原渕保明

ページ範囲:P.23 - P.23

定義・概念

 1965年にAngelman1)が報告した特徴的な神経症状,特異的な顔貌をきたす先天性疾患である。別名,happy puppet(幸せな操り人形)ともいわれる。

Antley-Bixler syndrome

著者: 安部裕介 ,   原渕保明

ページ範囲:P.24 - P.24

定義・概念

 AntleyとBixler1)が1975年に報告した頭蓋骨縫合早期癒合を含む,多発性の骨形成異常,関節拘縮,顔面正中低形成などを主徴とする奇形症候群である。

aortitis syndrome(大動脈炎syndrome)

著者: 丸屋信一郎 ,   新川秀一

ページ範囲:P.25 - P.25

定義・概念

 大動脈炎症候群(高安動脈炎)は,肺動脈などの大動脈およびその主要分枝の非特異的な慢性の大型血管炎により多様な症候を呈する症候群である。組織学的には,炎症に伴って内膜の肥厚により狭窄性病変を形成し,炎症が高度となると中膜から外膜にかけての組織の破壊により拡張性病変や動脈瘤様の病変を形成する。

Apert syndrome

著者: 丸屋信一郎 ,   新川秀一

ページ範囲:P.26 - P.26

定義・概念

 Apert症候群は1906年にApertにより尖頭合指症(acrocephalosyndactyly)として報告され,特有な短尖頭,高くそびえる前額,両眼隔離,眼球突出および上顎部の発育障害による顎顔面の異常形態と指趾の合指症を主徴とする稀な症候群である。

Arnold-Chiari syndrome(malformation)

著者: 石川和夫 ,   殷敏

ページ範囲:P.27 - P.27

定義・概念

 小脳あるいは下部脳幹が大後頭孔を通って脊柱管内に嵌入した奇形であり,4型に分類される1)。すなわち,Ⅰ型は小脳扁桃および小脳下葉内側部が下方に延長し,脊柱管に入り込んで延髄を覆っているもの,Ⅱ型は小脳扁桃と虫部下部,橋,延髄および第四脳室が下方に延長して脊柱管に入り込んでいるもの,Ⅲ型は頸椎二分脊椎があり,ここに水頭症を伴った小脳全体が脱出しているもの,Ⅳ型は小脳形成不全のみで,小脳の脊柱管への下方偏位がないものである。

病因・病態生理・疫学

 発生機序は明確にされていない。牽引説,水頭症説や発生障害説がある1,2)。Ⅰ型の50~70%に脊髄空洞症がみられるほか,扁平頭蓋底,軟骨形成異常,Klippel-Feil症候群,水頭症などを伴うことがある。Ⅱ型の90%に水頭症,80~90%に髄膜脊髄瘤がみられるほか,裂孔頭蓋,大後頭孔拡大,大脳鎌形成不全,延髄・頸髄移行部の折れ曲がり,中脳水道の狭窄などが伴うこともある。Ⅲ型の合併異常は,Ⅱ型とほぼ同様である。Ⅳ型に髄膜脊髄瘤は伴わない。

ataxia telangiectasia(AT)(毛細血管拡張性運動失調)

著者: 石川和夫 ,   郎軍添

ページ範囲:P.28 - P.28

定義・概念

 進行性の小脳性運動失調,皮膚と眼球結膜の毛細血管拡張,高い発癌性と免疫不全などを臨床的特徴とする常染色体劣性の遺伝性疾患である。Louis-Bar症候群とも呼ばれる。

ATR-X(X連鎖α-サラセミア,精神遅滞syndrome)

著者: 石川和夫 ,   殷敏

ページ範囲:P.29 - P.29

定義・概念

 特異的顔貌,重度精神遅滞,外性器異常,およびα-サラセミアの合併を特徴とするX連鎖性精神遅滞症候群の1つである。

atypical pneumonia(異型肺炎)

著者: 西村幸司 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.30 - P.30

定義・概念

 Atypical pneumonia(異型肺炎)とは,肺炎の原因となる定型的細菌以外の病原微生物を原因とする肺炎である。

病因・疫学・症状

 原因微生物として,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,Q熱コクシエラ,レジオネラ・ニューモフィラが挙げられる。

Austin syndrome

著者: 嶋本記里人 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.31 - P.31

定義・概念

 異染性脳白質変性症の特殊型で,Arylsulphatase A以外の数種類のsulphataseも同時に欠損する。

Avellis syndrome

著者: 佐藤宏昭

ページ範囲:P.32 - P.32

定義・概念

 一側の軟口蓋・咽頭筋麻痺および声帯麻痺をきたす症候群1)で,反対側の頸部以下の温痛覚鈍麻,Horner症候群を伴うことがある。

Axenfeld-Schurenberg syndrome(周期性動眼神経麻痺)

著者: 青柳優

ページ範囲:P.33 - P.33

定義・概念

 一定の規則的周期で起こる動眼神経麻痺で,一側眼が数分間周期的に麻痺をきたす疾患である1)。Rampoldi(1884)が最初に報告し,命名はAxenfeldとSchurenberg(1901)の報告による。症候名のcyclic oculomotor paralysis(周期性動眼神経麻痺)のほか,cyclic oculomotor spasmやoculomotor paresis with cyclic spasmなど,より症状に則した病名を用いることもある。

B

Barré-Liéou syndrome

著者: 青柳優

ページ範囲:P.34 - P.34

定義・概念

 後頸部交感神経,特に椎骨神経の刺激により生じる症候群で,頸部外傷後に多いが,外傷の既往がなくても発症することがある。Barré(1925)が「後頸部交感神経刺激による症候群とその主原因としての頸椎症」として発表し,Liéou(1928)が追加報告をしたことからBarré-Liéou症候群と呼ばれる1)

basal cell nevus syndrome(基底細胞母斑syndrome,Gorlin syndrome)

著者: 青柳優

ページ範囲:P.35 - P.35

定義・概念

 Basal cell nevus syndrome(BCNS:Gorlin症候群)は,1960年にGorlin RJが報告した常染色体優性遺伝性疾患で,種々の先天奇形や多発性基底細胞母斑(基底細胞癌),顎骨の歯原性角化囊胞を特徴とする1,2)

Beals syndrome(先天性拘縮性クモ指趾症)

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.36 - P.36

定義・概念

 BealsとHecht1)が1971年に確立した症候群で,先天性拘縮性クモ状指趾症ともいわれる。Marfan様体型,四肢の先天性関節拘縮(左右対称,多発性),クモ状指趾,耳介奇形(crumpled ear:耳介低形成,突出した対耳輪)を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である。一般的に眼科的異常,心血管系異常を認めず,関節拘縮,耳介奇形を伴う点でMarfan症候群とは鑑別される。

Beckwith-Wiedemann syndrome

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.37 - P.37

定義・概念

 Wiedemann1)が1964年に臍ヘルニア(当初はumbilical hernia,後にexomphalos)と巨舌(macroglossia)を合併した家族性の症候群を報告したのが始まりである。その後,巨体(gigantism)もあることから,これら三主徴の頭文字を取りEMG症候群と呼ばれたり,Beckwith-Wiedemann症候群(以下,BWS)と呼ばれるようになった。

Behçet syndrome

著者: 大嶋章裕 ,   出島健司

ページ範囲:P.38 - P.39

定義・概念

 トルコの医師,Hulusi Behçetが1937年に最初に報告した,口腔内アフタ性潰瘍,皮膚結節性紅斑,ブドウ膜炎,外陰部潰瘍を主症状とする慢性の再発性難治性炎症疾患である。

Binder syndrome

著者: 桑畑直史 ,   大森孝一

ページ範囲:P.40 - P.40

定義・概念

 低鼻,上顎骨の低形成,前鼻棘の欠損などを特徴とする骨系統疾患1)である。Binder症候群,上顎鼻異形成・Binder型(maxillonasal dysplasia,Binder type)とも称する。

Björnstad syndrome

著者: 桑畑直史 ,   大森孝一

ページ範囲:P.41 - P.41

定義・概念

 1965年にBjörnstadにより提唱された捻転毛(ねじれ毛)と感音難聴を伴う遺伝性疾患1)である。

Bloch-Sulzberger syndrome(色素失調症)

著者: 桑畑直史 ,   大森孝一

ページ範囲:P.42 - P.42

定義・概念

 出生後からみられる紅斑・水疱,疣状丘疹に続発する特異な色素斑を特徴として,眼や歯の異常,中枢神経症状など種々の合併症を随伴する遺伝性疾患1)である。色素失調症,Incontinentia Pigmentiと同義である。

Bloom syndrome

著者: 山村幸江 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.43 - P.43

定義・概念

 1954年にBloomらにより独立した症候群として提唱された疾患で,特徴的な症候は発達遅滞,日光過敏性血管拡張性紅斑,若年から多発する悪性腫瘍である。患者の血液や皮膚由来の培養細胞では染色体断裂や姉妹染色分体交換が高頻度にみられ,染色体不安定症候群もしくは染色体切断症候群と呼ばれる一群の遺伝性疾患群の1つに分類されている。

BO, BOR syndrome

著者: 樋上訓子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.44 - P.44

定義・概念

 1975年にMelnickらにより報告された鰓原性奇形(branchiogenic dysplasia:側頸瘻,耳瘻孔,外耳奇形など),難聴(otodysplasia:内耳奇形,中耳奇形など),腎形成不全(renal dysplasia)を特徴とする症候群である。本症候群の亜型として腎形成不全を伴わないものをbranchio-oto(BO)syndromeと呼ぶ。

Bouillaud syndrome

著者: 西嶋文美 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.45 - P.46

定義・概念

 A群連鎖球菌(以下,GAS)により続発する全身性炎症性疾患で,リウマチ熱(以下,RF)と同義語である。最初の報告例がフランスの内科医Bouillaudによる高熱を伴う多関節炎と心炎の合併例であったためこの名称があるが,現在,フランス語圏でも用いていない1)

Brusa-Torricelli syndrome

著者: 須納瀬弘 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.47 - P.47

定義・概念

 腎芽細胞腫(Wilms腫瘍)に無虹彩症(aniridia)を合併する1)。尿生殖器奇形(genitourinary malformation),精神発達遅滞(retardation)を合併する頻度が高く,近年はWAGR症候群と称されることが多い。ほかにaniridia-Wilms' tumor症候群などの呼称がある。

C

campomelic dysplasia

著者: 鎌田英男 ,   古屋信彦

ページ範囲:P.48 - P.48

定義・概念

 “campomelic”とは,彎曲した四肢を持つという意味で,1971年にMaroteuxら1)により報告された,ほとんどが新生児期または乳児期に死亡する致死性四肢短縮型小人症の一型と考えられている疾患である2)

cardiofacial syndrome(心顔syndrome)

著者: 鎌田英男 ,   古屋信彦

ページ範囲:P.49 - P.49

定義・概念

 先天性心疾患と片側の口角口輪筋低形成または欠損を伴う症候群である。

Carnevale syndrome

著者: 鎌田英男 ,   古屋信彦

ページ範囲:P.50 - P.50

定義・概念

 Carnevaleが1989年に血族結婚間の兄弟を報告したのが最初である。眼瞼下垂,輻輳斜視,鞍鼻,耳介・外耳奇形,顔面の奇形,腹直筋欠損,股関節の形成異常,停留睾丸,発育障害を持つ。

Carney syndrome(Carney複合)

著者: 市村恵一

ページ範囲:P.51 - P.51

定義・概念

 1985年にCarney1)が粘液腫,点状色素沈着,ホルモン過分泌の組み合わせを報告したもので,家族性に腫瘍(内分泌性,非内分泌性)と黒子が多発する症候群である。

Carpenter syndrome

著者: 市村恵一

ページ範囲:P.52 - P.52

定義・概念

 常染色体劣性遺伝形式をとる尖頭多合指趾症の症候群である。1901年にCarpenter1)が最初の記載を行い,1966年にTemtamy2)がそれまでの報告を整理し,症候群として提唱した。尖頭多合指趾症(acrocephalopolysyndactyly)の2型である。

Castleman syndrome

著者: 市村恵一

ページ範囲:P.53 - P.53

定義・概念

 1954年と1956年にCastlemanらが報告1,2)して以来,原因不明の過剰発育リンパ節腫大を特徴とするpolyclonalなリンパ増殖性疾患を指す。Kellerらが組織学的にhyaline-vascular typeとplasma cell typeの2種類に分類し,のちにmixed cellularity typeも加わった。一方,臨床的には限局型(90%)と多中心型(10%)がある。当初はhyaline-vascular typeは限局型で,plasma cell typeやmixed typeは多中心型をとると考えられていたが,症例の集積から限局型はhyaline-vascular typeであるが,多中心型はどの組織型もあることがわかった。Angiofollicular hyperplasia, giant lymphnode hyperplasiaとも呼ばれる。

cat cry syndrome(猫なきsyndrome)

著者: 盛川宏 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.54 - P.54

定義・概念

 5番染色体短腕(5p)の部分欠失により,新生児期の子猫のような甲高いなき声,特異な顔貌,身体発育遅延,精神発達遅延を特徴とする染色体異常による症候群である1)

CATCH22(22番染色体長腕部欠失syndrome)

著者: 盛川宏 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.55 - P.55

定義・概念

 先天性副甲状腺機能低下症,先天性胸腺欠損に伴う細胞性免疫欠損症と心疾患の合併はDiGeorge症候群として確立されており,木内らが心臓流出路の奇形と特異な顔貌を認める疾患を円錐動脈幹異常顔貌症候群(conotruncal anatomy face syndrome:以下,CAFS)として提唱した1)。これらの疾患には,染色体22q11.2領域の微細欠損が共通して認められることから22番染色体長腕部欠失症候群と呼ばれている。臨床症状の頭文字からCATCH22(cardiac defect, abnormal facies, thymic hypoplasia, cleft palate, hypocalcemia, 22 q11 deletion)と呼ばれたが,現在では22q11.2欠失症候群といわれる2)

cavernous sinus syndrome(海綿静脈洞syndrome)

著者: 盛川宏 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.56 - P.56

定義・概念

 海綿静脈洞に炎症が及び血栓が形成されることにより,さまざまな脳神経症状や疼痛が惹起される症候群のこと。

CHARGE association

著者: 盛川宏 ,   馬場廣太郎

ページ範囲:P.57 - P.57

定義・概念

 CHARGEの名前は本症にみられる症候の頭文字を表している。多彩な臨床症状を示す1)

Charlin syndrome(鼻毛様体神経痛)

著者: 和田哲郎 ,   原晃

ページ範囲:P.58 - P.58

定義・概念

 鼻毛様体神経および毛様体神経節の支配領域の神経痛である。

chiasmal syndrome(視交叉syndrome)

著者: 原晃

ページ範囲:P.59 - P.59

定義・概念

 視交叉症候群とは,視交叉部障害による両耳側視野欠損と視神経萎縮を特徴とする症候群である1)

病因・病態生理・疫学

chondrodysplasia punctata(点状軟骨異形成症)

著者: 原晃

ページ範囲:P.60 - P.60

定義・概念

 点状軟骨異形成症とは,放射線画像上,小児期に長管骨骨端部点状陰影を示す骨格異形成の一連の疾患を包含する。したがって,ある1つの疾患を指すのではなく,遺伝子あるいは遺伝子異常によって惹起される放射線画像上の特長を持った疾患群といえる。

 1914年に報告され1),その後X-linked dominant type(Conradi-Hunermann disease),X-linked recessive type,Rhizomelic typeに分類されている。

chromosomal breakage syndrome(染色体切断syndrome)

著者: 和田哲郎 ,   原晃

ページ範囲:P.61 - P.61

定義・概念

 染色体切断や染色体交換などの染色体異常が高頻度に生じる先天性疾患群を指す。このような異常を示す疾患として,Fanconi貧血,Bloom症候群,あるいは毛細血管拡張性運動失調症(ataxia-telangiectasia)がよく知られている1)

chronic fatigue syndrome(CFS)(慢性疲労syndrome)

著者: 加瀬康弘

ページ範囲:P.62 - P.64

定義・概念

 慢性疲労症候群(以下,CFS)とは疲労,倦怠感をきたす,基礎疾患がなく6か月以上にわたり持続あるいは再発を繰り返す慢性疲労を主訴とする原因不明の症候群である1)。1988年,米国防疫センターがCFSという新しい疾患概念を提示した2)

Chubby Puffer syndrome

著者: 加瀬康弘

ページ範囲:P.65 - P.65

定義・概念

 肥満に加えアデノイドまたは口蓋 へん桃の肥大に起因する睡眠時の呼吸障害を伴う症候群を,1977年にStoolら1)がChubby Puffer syndromeと命名した。

Cockayne syndrome

著者: 加瀬康弘

ページ範囲:P.66 - P.66

定義・概念

 1936年にCockayne1)が報告した常染色体劣性遺伝疾患で,代表的な遺伝性早発老化疾患の1つである2)

Coffin-Lowry syndrome

著者: 内田真哉 ,   出島健司

ページ範囲:P.67 - P.67

定義・概念

 特異顔貌,精神発達遅滞,低身長,骨格奇形などを特徴とする奇形症候群で,1966年にCoffinら1)が2例の散発例を最初に報告した。1971年にはLowryら2)が3世代にわたる家系をそれぞれ別の疾患として報告したが,1975年に,これらは同一のものとしてCoffin-Lowry症候群と名付けられた。

Cogan syndrome

著者: 髙橋光明

ページ範囲:P.68 - P.68

定義・概念

 眼科医Cogan1)は,急激に発症する実質性角膜炎に加え,嘔気,嘔吐,回転性めまい,耳鳴,難聴などのメニエール病様の耳症状を呈する4症例を報告した。したがってCogan症候群の典型例は上記症状を満たすものと定義される。

病因

 角膜や内耳組織に対する抗体を認めたとの報告がある。自己抗体など免疫学的異常を示す患者が多く,免疫障害が疑われている。現在では全身性血管炎の一分症とする考えが主流である。

Cohen syndrome

著者: 髙橋光明

ページ範囲:P.69 - P.69

定義・概念

 歯科医師のCohenら1)が3例を記載し,その後に追加症例があり疾患単位として確定した。しかし,報告された症例により著しい異型があり,Cohenらの報告した患者の表現型を持つ症例(筋緊張低下,肥満,目立つ門歯,精神遅滞,高い鼻稜)とそうでない症例がCohen症候群として報告されている。Kondoら2)は網膜色素斑(mottled retina)を持つものをフィンランド人型,網膜色素斑のないものをユダヤ人型とする分類を提唱している。また,Mirhosseini-Holmes-Walton症候群はCohen症候群と同じ疾患と示唆する報告もある。

病因・疫学

 病因は不明であるが,家族,兄弟姉妹の発症例が多くみられる常染色体劣性遺伝疾患とされる。結合織疾患の可能性が示唆されている。フィンランドとイスラエルからの報告が多い。わが国では稀にしか報告されていない2)

Collet-Sicard syndrome(CSS)

著者: 枝松秀雄

ページ範囲:P.70 - P.70

定義・概念

 後頭骨底部の骨折などにより,第9,10,11,12脳神経麻痺が生じる1)。フランス人の耳鼻咽喉科医Frederic Justin Collet(1870-1966)が頭部の弾丸外傷例を報告した2)。Jean Athanase Sicardはフランス人神経科医(1872-1929)である。

 別名,後破裂孔症候群(posterior lacerocondylar syndrome),Bonnet-Collet syndrome,Weisenberg-Sicard-Robineau syndromeという。

common variable immunodeficiency(分類不能型免疫不全症)

著者: 枝松秀雄

ページ範囲:P.71 - P.71

定義・概念

 免疫不全症では,原因疾患の有無により原発性と続発性に分類される。分類不能型免疫不全症は,どの原発性の病形にも分離することができないが,抗体欠乏症の一群に属するとされている。原因不明の低ガンマグロブリン血症などのいくつかの免疫異常な病態を一括している1)

congenital cytomegalovirus syndrome(先天性サイトメガロウイルスsyndrome)

著者: 枝松秀雄

ページ範囲:P.72 - P.72

定義・概念

 妊婦がサイトメガロウイルス初感染を受けると,胎児に初感染(垂直感染)するため全身臓器に多彩な障害が生じる。感染細胞は核内封入体を有する巨大細胞であるため,サイトメガロと命名された。

 別名,先天性巨細胞体封入病(congenital cytomegalic inclusion disease)は先天性サイトメガロウイルス感染症の病理学的名称である。また,先天性唾液腺ウイルス感染症(congenital salivary viral infection)ともいう1)

congenital neurocutaneous syndrome①―神経線維腫症

著者: 西平茂樹

ページ範囲:P.73 - P.74

定義・概念

 神経線維腫症(NF)は神経皮膚症候群または母斑症に属する常染色体優性遺伝性疾患で,本邦特定疾患の1つである。レクリングハウゼン病と呼ばれるⅠ型(NF-1)と両側聴神経腫瘍を主徴とするⅡ型(NF-2)がある1)。両者は遺伝学的に異なる疾患であることが同定されているが,遺伝子検出率が65~95%であることや臨床像の多彩さから診断困難な例もある2~4)

congenital neurocutaneous syndrome②―結節性硬化症

著者: 西平茂樹

ページ範囲:P.75 - P.76

定義・概念

 神経皮膚症候群または母斑症に属する常染色体優性遺伝性疾患で,本邦特定疾患の1つである。遺伝子解明の進歩に伴い両者は別々の疾患であることが同定されたが,臨床的に鑑別することが困難なため,最近はTSC(結節性硬化症複合体:TS complex)と表記される。全身多臓器に主に過誤腫性病変が多発する疾患である。これまで皮膚白斑や顔面血管線維腫,精神薄弱,てんかんが三主徴とされてきたが,1998年に診断基準が改訂され精神薄弱とてんかんが除外された1)

congenital rubella syndrome(CRS)(先天性風疹syndrome)

著者: 佐野光仁

ページ範囲:P.77 - P.77

定義・概念

 1941年にオーストラリアの眼科医Gregg1)が風疹の流行と先天性白内障の発生に注目したことに端を発し,胎内で風疹ウィルスに感染すると生じる先天性奇形症候群である。先天性風疹症候群は感染症新法では第4類の全数届出疾患となり,保健所に届け出なければならない。1965年の沖縄において400人の大流行以降,わが国ではワクチン接種が1977から女子中学生に対して行われるようになった。しかし,MMRワクチンによる無菌性髄膜炎の発生により一時ワクチン接種が中止になっていたが,1994年の予防接種法改正より1歳以降から中学生の男女に風疹単味ワクチンが定期接種されるようになった。

congenital toxoplasmosis(先天性トキソプラズマsyndrome)

著者: 佐野光仁

ページ範囲:P.78 - P.78

定義・概念

 原虫のToxoplasma gondiiの経胎盤感染により,胎児に網脈絡膜炎,脳内石灰化,精神運動障害・水頭症などを生じる疾患をいう。

Cornelia de Lange syndrome(Branchmann-de Lange syndrome)

著者: 望月高行 ,   望月幸子

ページ範囲:P.79 - P.79

定義・概念

 1933年にCornelia de Langeにより2例が報告され,この名で呼ばれることが多いが,1916年にBranchmannが1症例を報告していることから,Branchmann-de Lange症候群と呼ぶほうが適切1)である。3q部分トリソミー症候群でも類似した症状がみられるが,症状が一部異なることや連鎖解析から本症とは除外して考える。

Costello syndrome

著者: 望月高行 ,   米田律子

ページ範囲:P.80 - P.80

定義・概念

 1977年,Costelloが報告した低身長,軽度精神遅滞,特異顔貌,手掌・足蹠・指の皮膚弛緩症,カールした頭髪,口囲,鼻孔の乳頭腫を伴う2例をもとに,1991年,Der Kaloustianらが命名した奇形症候群である1)

Costen syndrome(disturbed function of the temporomandibular joint)

著者: 山本祐三

ページ範囲:P.81 - P.81

定義・概念

 1934年,Costen1)は顎関節機能不全が原因で発症したと考えられる耳鼻咽喉科症状を呈する11症例を報告した。難聴,耳閉感,耳鳴,耳内および耳周囲の疼痛,めまい,頭頂,後頭および耳後部などの疼痛,咽頭,舌,鼻などの灼熱感,鼻漏,鼻痛などの副鼻腔症状などを主訴とする症例が含まれる。

crocodile tears syndrome(ワニの涙syndrome)

著者: 山本祐三

ページ範囲:P.82 - P.82

定義・概念

 食事のときに涙流が起こる現象である。ワニが獲物を食べるとき,偽善的な涙を流すことに由来する。

Crouzon syndrome

著者: 橋本省

ページ範囲:P.83 - P.83

定義・病因

 頭蓋顔面骨形成不全症(craniofacial dysostosis)ともいわれる。頭蓋骨間(主に冠状縫合あるいは全縫合),頭蓋骨と顔面骨との間の縫合が早期に閉じることにより,上顎形成不全・眼球突出・尖頭をきたし特異な顔貌を示す1)。さらに合指肢症を合併するとApert症候群となる。常染色体優性遺伝とされ,原因遺伝子は第10染色体上のFGFR2(fibroblast growth factor recepter 2)遺伝子である2)。ただし,約25%の症例は家族歴がなく突然変異とされる。

病態生理

 胎生期に眼窩壁に沿って上顎骨の上方・後方の縫合が癒合することにより,上顎骨の前下方への成長・平行移動が妨げられ中顔面の発育不全が起こるため,相対的に眼球突出が生じる。同様に相対的に下顎突出も起きるが,下顎自体も大きいことが多いとされる。ただし小額症を合併することもある。頭蓋は複数あるいは全縫合の癒合により前後,外側に拡大できないため大泉門に向かって大きくなり尖頭をきたす。

Crow-Fukase syndrome

著者: 橋本省

ページ範囲:P.84 - P.84

定義・概念

 多発性末梢性神経炎に免疫グロブリン異常や多彩な全身症状を伴う症例が1967年以降わが国で数多く報告され,わが国で最初に報告1)した深瀬の名と,このような症例を1956年に最初に報告2)したCrowの名を冠してCrow-Fukase syndromeと呼ばれるようになった。欧米では主要な症候であるpolyneuropathy,organomegaly,endocrinopathy,monoclonal gammopathy,skin changeの頭文字を取ってPOEMS症候群と呼ばれることが多い。しばしばmonoclonal gammopathyや形質細胞腫を認めることから,plasma cell dysplasiaの一亜型として位置付けられる。ただし,本症の本態が形質細胞の異常にあるか否かははっきりしていない。

Cushing syndrome

著者: 奥野妙子

ページ範囲:P.85 - P.85

定義・概念

 糖質ステロイド(コルチゾール)の慢性的過剰分泌によって起こる代謝障害をいう。

D

Dandy-Walker syndrome

著者: 奥野妙子

ページ範囲:P.86 - P.86

定義・概念

 小脳虫部の形成不全,第四脳室と連続する後頭蓋窩囊胞,水頭症を基本病態とする疾患である。1914年,DandyとBlackfan1)が報告し,1954年にそれまでの報告をまとめてBenda2)がDandy-Walker症候群と命名した。

de Barsy syndrome

著者: 大久保公裕

ページ範囲:P.87 - P.87

定義・概念

 1968年にベルギーの神経学者であるde Barsyが発見した角膜混濁,皮膚症状,神経学的異常をきたす非常に稀な疾患である1)

病因

 常染色体劣性遺伝により生じる。

DeMyer syndrome

著者: 野中学

ページ範囲:P.88 - P.88

定義・概念

 前頭と鼻骨の形成異常を呈する症候群である。鼻部正中裂,鼻翼の切れ込みや裂を伴うことが多く,DeMyer1)が顔面奇形の程度を分類しDeMyer syndromeとして報告し,以後広く知られるようになった。

De Sanctis-Cacchione syndrome

著者: 渡邊健一

ページ範囲:P.89 - P.89

定義・概念

 1932年,De SanctisとCacchioneが色素性乾皮症と神経障害の合併症例を報告したとされており1),以来,De Sanctis-Cacchione syndromeと呼ばれている。皮膚症状は色素性乾皮症と同様であるが,近年,両者は遺伝因子の異なる疾患と考えられてきている2)

症状

 1968年,Cleaver3)は,紫外線により生じるDNA損傷の修復機構の低下,あるいは欠如が本症候群の病因であると報告した。色素性乾皮症の発生率は人口10万人当たり1~2.5人4)であり,De Sanctis-Cacchione syndromeは色素性乾皮症の約14%であると報告されている1)

Dejerine syndrome(延髄傍正中部syndrome)

著者: 池園哲郎

ページ範囲:P.90 - P.91

定義・概念

 延髄には人名を冠する症候群が多く知られているが,一般に認知されているのはWallenberg症候群(延髄外側症候群lateral medullary syndrome:以下,LMS)とDejerine症候群1)(延髄内側症候群medial medullary syndrome:以下,MMS)である。上記のLMSとMMSが合併するとBabinski and Nageotte syndromeと呼ばれる。MMSは椎骨動脈(以下,VA)あるいは前脊椎動脈(anterior spinal artery:ASA)が責任血管である。Dejerine自身がオリーブ核間症候群と呼称したように,延髄レベルでオリーブ核より正中よりの構造物の虚血で発症する(図1)。

Diallinas-Amalric syndrome

著者: 今井透

ページ範囲:P.92 - P.92

定義・概念

 蝸牛障害による難聴と,網膜色素上皮細胞の変性を示す疾患群である1,2)

DIDMOAD syndrome(Wolfram syndrome)

著者: 今井透

ページ範囲:P.93 - P.93

定義・概念

 尿崩症(diabetus inspidus),糖尿病(diabetus mellitus),視神経萎縮(optic atrophy),難聴(deafness)を主徴とする疾患である。1938年にWolframとWagnerにより報告され,Wolfram症候群とも呼ばれる。

DiGeorge syndrome

著者: 川上理郎 ,   林伊吹

ページ範囲:P.94 - P.94

定義・概念

 1965年にDiGeorge1)によって提唱された第3,4鰓囊の発達異常による胸腺の無形成ないし低形成に由来する免疫不全を主徴とする症候群である。主要な症状である心血管奇形(cardiac defect),異常顔貌(abnormal facies),胸腺低形成(thymic hypoplasia),口蓋裂(cleft palate),低カルシウム血症(hypocalcemia)の頭文字と第22染色体の異常からCATCH22とも称される。円錐動脈幹異常顔貌症候群,軟口蓋心臓顔貌症候群も本症候群と近縁と考えられている2)

Donohue syndrome(妖精症,leprechaunism)

著者: 川上理郎 ,   林伊吹

ページ範囲:P.95 - P.95

定義・概念

 1948年にDonohueら1)によって報告された妖精に似た外観を呈する先天的疾患である。特有の顔貌と発育障害,栄養障害(著しい痩せ),知能障害,糖代謝異常(インスリン抵抗性)を示す。常染色体劣性遺伝を示すものが多い2)

Down syndrome

著者: 酒井陽子 ,   池田勝久

ページ範囲:P.96 - P.96

定義・概念

 1866年,Down1)は人類学的な顔形の整理法で精神発達遅滞者の分類を行った。そのなかで蒙古人型についての詳しい検討がなされ,疾患群として識別がなされて蒙古症(mongolism)と報告した。その後,1958年に蒙古症に染色体過剰がみられることがLejeuneら2)により報告され,のちにこの過剰染色体が21番目の染色体であることが決定し,ダウン症候群あるいは21トリソミー症候群と呼ばれるようになった。

Dubowitz syndrome

著者: 金隆澤 ,   池田勝久

ページ範囲:P.97 - P.97

定義・概念

 Dubowitz syndromeは1965年にDubowitz1)が子宮内発育不全,低身長,小頭症,顔貌異常,皮膚湿疹,軽度の精神発達遅滞のある生後13か月女児と,子宮内発育不全と皮膚性合趾症を呈し生後3か月で死亡した姉を最初に報告し,これが症候群と認められ,以後,報告が相次いだ。現在では,先天性多発性奇形,精神発達遅滞,成長障害を主訴に湿疹などのアレルギー性疾患に罹患しやすい免疫異常と,血液リンパ系疾患の罹患傾向を持つ症候群と定義されている。1987年に近藤ら2)は,初めて日本人症例を報告した。また,1996年に塚原ら3)は,文献よりの105例と36の自験例の合計141例について詳細な分析を行った。

Duchenne-Erb syndrome(上部腕神経叢syndrome)

著者: 古川正幸 ,   池田勝久

ページ範囲:P.98 - P.98

定義・概念

 Duchenne-Erb syndromeとは,上部腕神経叢(C5-C6)の伸展,引き抜き,外傷により生じる麻痺である。Duchenne-Erb palsyまたはDuchenne-Erb paralysisとも呼ばれる。

E

Eagle syndrome

著者: 藤森正登 ,   池田勝久

ページ範囲:P.99 - P.99

定義・概念

 過長茎状突起が舌咽神経,頸動脈を圧迫することにより,咽頭痛,嚥下時痛,放散性の耳痛,頭痛,顔面痛,肩こりなどの多彩な症状を呈する状態をいう。Stylohyoid syndromeともいわれる1)

ECP(ectrodactyly-cleft palate)syndrome

著者: 石原明子 ,   喜多村健

ページ範囲:P.100 - P.100

定義・概念

 ECP(ectrodactyly-cleft palate)症候群は,Opitzら1)によって,常染色体優性遺伝形式で,口蓋裂と手足の指の欠損を5世代にわたり有する大きな家系として報告された。

EEC(ectrodactyly-ectodermal dysplasia-clefting)syndrome

著者: 石原明子 ,   喜多村健

ページ範囲:P.101 - P.101

定義・概念

 Ectodermal dysplasia(外胚葉異形成)は,歯・皮膚・付属器(髪,爪,脂腺,汗腺など)の2つ以上の欠損をきたす疾患群である1)。胎児の外胚葉組織の異常によって,組織の異常が出現する。そのうち,EEC(ectrodactyly-ectodermal dysplasia-clefting)症候群は,ectrodactyly(手足の指の欠損),ectodermal dysplasia(外胚葉異形成),口唇および口蓋裂,涙管の異常などを合併する疾患である。

Ehlers-Danlos syndrome

著者: 石原明子 ,   喜多村健

ページ範囲:P.102 - P.102

定義・概念

 Ehlers-Danlos症候群は,細胞外マトリックスを構成するコラーゲンタンパク分子の異常に起因する疾患群であり1),臨床的に10種類に分類される。

Ellis-van Creveld syndrome

著者: 石原明子 ,   喜多村健

ページ範囲:P.103 - P.103

定義・概念

 Ellis-van Creveld症候群は,chondroectodermal dysplasiaとも呼ばれ,骨格および外胚葉の異形成をきたす疾患である1)

EMG syndrome

著者: 神崎晶 ,   小川郁

ページ範囲:P.104 - P.104

定義・概念

 Beckwith-Wiedemann syndromeと同義。

Epstein syndrome

著者: 神崎晶 ,   小川郁

ページ範囲:P.105 - P.105

定義・概念

 難聴,遺伝性腎炎,巨大血小板性血小板減少症を三主徴とする遺伝性疾患である。Alport症候群の亜型として,1972年にEpsteinらによって報告された1)

Eyring-Eisenberg syndrome

著者: 新田清一 ,   小川郁

ページ範囲:P.106 - P.106

定義・概念

 頭蓋骨・管状骨の過剰骨化を特徴とする。1968年にEyringとEisenbergにより報告された1)。ほかの骨形成不全症とは異なる性質を持つ。

F

Fechtner syndrome

著者: 新田清一 ,   小川郁

ページ範囲:P.107 - P.107

定義・概念

 遺伝性腎炎,難聴,先天性白内障,血小板異常(巨大血小板・血小板減少),白血球封入体を特徴とする。1985年にPetersonらによりAlport syndromeの亜型として報告された1)。“Fechtner”は初めて報告された家系の名前である。

fetal alcohol syndrome(胎児アルコールsyndrome)

著者: 伊藤博之 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.108 - P.108

定義・概念

 妊娠時にアルコールを摂取することにより胎児に顔面や外表の奇形,神経管欠損,心臓血管奇形などが生じるもの。1973年にJonesとSmithが胎児アルコール症候群(fetal alcohol syndrome:以下,FAS)として報告した1)。非典型例は胎児アルコール効果(fetal alcohol effect:以下,FAE)と呼称されている。

fetal valproate syndrome(胎児バルプロ酸症syndrome)

著者: 伊藤博之 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.109 - P.109

定義・概念

 妊娠初期にバルプロ酸を摂取することにより胎児に顔面や外表の奇形,神経管欠損,心臓血管奇形などが生じる1,2)

Foix syndrome(海綿静脈洞syndrome,cavernous sinus syndrome)

著者: 長谷川達哉 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.110 - P.110

定義・概念

 海綿静脈洞症候群(以下,CSS)は1922年にFoixが最初に報告した病態1)で,外転神経を主として動眼神経,滑車神経,三叉神経(Ⅴ1,Ⅴ2),交感神経叢,内頸動脈(C3,C4)が障害を受け,多彩な症状が出現する症候群である。

Forestier syndrome

著者: 長谷川達哉 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.111 - P.111

定義・概念

 本症候群は1950年にForestierが,脊椎の前,側面に骨化をきたし強直する高齢者の男性に多い病態を変形性脊椎症や強直性脊椎炎と異なる概念として報告した1)。1971年には,本症が老人のみに特有なものではないとして,彼自身が強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis:以下,ASH)と呼ぶことを提唱した2)。現在ではResnickらが1975年に提唱した全身の骨肥厚病変(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)の脊椎病変とされている3)

Foville syndrome

著者: 石井正則

ページ範囲:P.112 - P.112

定義・概念

 Foville syndromeとは,フランス精神科医師Foville(フォヴィル)が報告した症候群であり,橋下部の病変で患側への側方注視麻痺,患側の末梢性顔面神経麻痺,対側の片麻痺がみられるものをいう(狭義)。広義には,側方注視麻痺の症状を認めるものを指す。

fragile X syndrome(脆弱X syndrome)

著者: 石井正則

ページ範囲:P.113 - P.113

定義・概念

 Fragile X syndromeは,X染色体にあるFMR1(fragile X mental retardation 1)遺伝子の突然変異によって引き起こされる精神発達遅滞である。特徴的な顔貌を呈し,両親のいずれかがこの遺伝子を持つことによりその子どもに症状が発現する。

François-Haustrate syndrome

著者: 石井正則

ページ範囲:P.114 - P.114

定義・概念

 Mandibulofacial dysostosis(dysostosis mandi-bulofaciasis),Franceschetti syndromeと同意語である。つまり,Treacher Collins syndromeと同じ意味をなす。Treacher Collins syndromeの項を参照のこと。

Fraser syndrome

著者: 石井正則

ページ範囲:P.115 - P.115

定義・概念

 Fraser(フレーザー)症候群とは,潜在眼球症(cryptophthalmos),合指症(syndactyly),喉頭奇形,尿生殖器奇形,顎顔面奇形,口唇口蓋裂,精神発達遅滞,筋骨格奇形などを認めるものをいう。

Freeman-Sheldon syndrome(笛吹き顔貌syndrome)

著者: 杉尾雄一郎 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.116 - P.116

定義・概念

 1938年,FreemanとSheldonが特有な顔貌・頭蓋,手指の異常,内反足を示す2症例を報告1)して以来,本症はFreeman-Sheldon syndromeと呼ばれる。口笛を吹いたような顔貌を呈することから笛吹き顔貌syndrome(whistling face syndrome)とも呼ばれる。

Frey syndrome

著者: 杉尾雄一郎 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.117 - P.117

定義・概念

 味覚刺激に際し,耳下部の皮膚に発赤,熱感,軽度の疼痛,発汗がみられる症候群で,主として耳下腺の手術,外傷後にみられる。Auriculotemporal syndrome,gustatory sweating syndromeともいう1)

Friedreich ataxia

著者: 杉尾雄一郎 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.118 - P.118

定義・概念

 1863年にFriedreichによって報告された遺伝性脊髄小脳変性症で,典型例では25歳以下で発症し,運動失調,腱反射の消失,眼振,構音障害,深部感覚障害,運動麻痺に加え時に脊柱側彎などの骨格病変,心筋障害,糖尿病などを合併する1)

Fryns syndrome

著者: 杉尾雄一郎 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.119 - P.119

定義・概念

 1978年のFitchら1)による報告が最初とされるが,1979年にFrynsら2)によって報告されて以来Fryns syndromeと呼ばれる。横隔膜ヘルニア,顔貌異常,四肢末端奇形を特徴とする奇形症候群であるが3),横隔膜ヘルニアは必須の症状ではないという意見もある4)

G

Garcin syndrome

著者: 山内宏一 ,   甲能直幸

ページ範囲:P.120 - P.120

定義・概念

 Garcin syndromeとは片側全脳神経麻痺を呈する特異な症候群で,四肢の運動麻痺や知覚障害などの脳症状を示さず,乳頭浮腫などの脳圧亢進症状を伴わず,また通常,画像診断上,頭蓋底部に骨破壊を認めるもの1)である。

Gardner syndrome

著者: 山内宏一 ,   甲能直幸

ページ範囲:P.121 - P.121

定義・概念

 1951年,Gardner1)が大腸腺腫症に骨腫および軟部腫瘍を伴う1家系を調査し,遺伝することを初めて報告した。1958年,Smith2)は,大腸ポリポーシス,骨腫および軟部腫瘍の三徴を有する症例をGardner syndromeと呼称することを提唱した3)

Gilles de la Tourette syndrome

著者: 山内宏一 ,   甲能直幸

ページ範囲:P.122 - P.122

定義・概念

 多彩で激しい運動性および発声チックの存在,奇妙な人目を引く汚言,反響症状など特異な症状を示す疾患である1)

Goldenhar syndrome(Goldenhar-Gorlin syndrome)

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.123 - P.123

定義・概念

 1952年にGoldenharが報告した。外耳の奇形,顔面の非対称を伴う上顎の低形成,眼瞼結膜類上皮腫や脊椎奇形をみる。第一・第二鰓弓の発生異常によって起こる症候群1)である。

Goltz syndrome(focal dermal hypoplasia syndrome)

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.124 - P.124

定義・概念

 1962年にGoltzらが報告した。顔面,体幹,四肢の非対称,皮膚の萎縮,毛細血管拡張,線状の色素沈着,限局性の皮膚表面の脂肪沈着,粘膜と顔面周囲皮膚の多発性乳頭腫,四肢の骨格異常をきたす症候群1,2)である。

Gorlin-Cohen syndrome(frontometaphyseal dysplasia)

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.125 - P.125

定義・概念

 1969年にGorlinとCohenが報告した。前頭形成異常と骨幹端形成異常をきたす症候群1,2)である。

Gradenigo syndrome(Gradenigo-Lannois syndrome,petrous apical syndrome)

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.126 - P.126

定義・概念

 1904年にGradenigoが報告した。急性中耳炎の合併症である錐体尖端炎の症状のうち,中耳炎,三叉神経痛,外転神経麻痺を三徴候とする症候群1)である。

Greig cephalopolysyndactyly syndrome

著者: 西村剛志 ,   佃守

ページ範囲:P.127 - P.127

定義・概念

 巨大頭蓋,幅広い鼻根などの特徴的な頭蓋・顔面奇形と多合指趾症を主徴とする常染色体優性遺伝疾患である1)

Guillain-Barré syndrome

著者: 西村剛志 ,   佃守

ページ範囲:P.128 - P.128

定義・概念

 感冒,下痢などの先行感染症状に引き続いて1~3週後に発症する四肢の筋力低下,および深部反射消失を主徴とする多発ニューロパチーである。

H

Hajdu-Cheney syndrome

著者: 西村剛志 ,   佃守

ページ範囲:P.129 - P.129

定義・概念

 末節骨の骨吸収,進行性骨粗鬆症,頭蓋骨変形を特徴とする特発性骨粗鬆症type Ⅳに分類される骨吸収性症候群である1,2)

Harboyan syndrome

著者: 西村剛志 ,   佃守

ページ範囲:P.130 - P.130

定義・概念

 先天性角膜ジストロフィと進行性感音性難聴を呈する常染色体劣性遺伝疾患である1)

Heerfordt syndrome(ぶどう膜耳下腺syndrome)

著者: 佐野肇 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.131 - P.131

定義・概念

 1909年にHeerfordt1)が,微熱,ぶどう膜炎,耳下腺腫脹,顔面神経麻痺を呈する3症例を報告した。1938年にBruins-Slot2)によりこの症候群がサルコイドーシスの一亜型であることが明らかにされた。ぶどう膜炎,耳下腺腫脹,顔面神経麻痺の三主徴がそろったものを完全型,2症状と微熱を伴ったものを不全型としている。

Heiner syndrome

著者: 佐野肇 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.132 - P.132

定義・概念

 Heinerら1)によって報告された,牛乳を与えられた新生児~乳児に発症する慢性的呼吸器疾患である。

Helweg-Larsen syndrome

著者: 佐野肇 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.133 - P.133

定義・概念

 1946年にHelweg-Larsenら1)が先天性の無汗症と成人後に発症する感音難聴を主症状とする一家系を報告した。

Herrmann-Pallister-Opitz syndrome(葉酸拮抗物質syndrome)

著者: 佐野肇 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.134 - P.134

定義・概念

 頭蓋骨縫合の早期癒合,橈骨と腓骨の欠損および口唇裂,口蓋裂を示す症候群である。1969年にHerrmann,Pallister,Opitzが報告した。

holoprosencephaly sequence

著者: 井上泰宏

ページ範囲:P.135 - P.135

定義・概念

 Holoprosencephaly(以下,HPE)とは,胎生3週における前脊索中胚葉の発生異常により大脳半球や側脳室へ発達するべき胎児期の前脳(embryonic forebrain)がまったく分割しないか,不十分なために顔面,脳の形態および機能異常を生じる先天性異常である。通常,(1)lobar,(2)semi lobar,(3)alobarの3つのタイプに分類される1)

病因・病態・疫学

 HPEの発生頻度は,胎生期の1/250,出生児の1/16,000といわれており,病因として,染色体異常,遺伝子異常,母体の糖尿病や低コレステロール血症,サイトメガロウイルス感染などが示唆されている2)。非症候性HPEの家族発症例は不完全浸透を示す常染色体優性遺伝と考えられているが,68%が散発例ともいわれており,家族内の再発危険率は13~14%とされる。Trisomy 13やtrisomy 18などが関与するとの報告があるほか,責任遺伝子としてSIX3(2p21),SHH(7q36),TGIF(18p11.3),ZIC(13q32)などが報告されている。また,Meckel's syndromeやoral-facial-digital syndrome,Pallister-Hall syndrome,Smith-Lemli-Opitz syndromeなどに伴う多重奇形の1つとして発症することもある。

Horner syndrome

著者: 八尾和雄

ページ範囲:P.136 - P.136

定義・概念

 Hornerの三徴は,一側の眼瞼下垂,縮瞳,および眼球陥凹をいう1,2)

Hunter syndrome(ムコ多糖症Ⅱ型)

著者: 八尾和雄

ページ範囲:P.137 - P.138

定義・概念

 1917年,Hunter CAが,8歳,10歳の兄弟症例を初めて報告した1)。ムコ多糖症Ⅱ型には軽症型,重症型があり,前者は無色素角膜を認め,知能は正常で成人まで生存できるが,後者は精神運動障害,身体障害の進行を認め,4~14歳までに死亡する。後者は前者の3~4倍の頻度である。Hunterの報告例は前者である。

 X染色体上のMPSⅡ位置での突然変異で生じ,ライソゾーム酵素の欠乏ないし機能異常により身体・精神機能異常を生じる疾患である2)

Hutchinson-Gilford(progeria)syndrome(早老症)

著者: 井上泰宏

ページ範囲:P.139 - P.139

定義・概念

 Hutchinson-Gilford(progeria)syndrome(以下,HGPS)は老化が異常に早期に進行する疾患であり,Hutchinsonが最初に報告し,その後Gilfordの命名によりprogeriaと呼ばれるようになった1,2)

病因・病態・疫学

 米国の報告では800万人に1人(出生児では400万人に1人)の頻度で発症するとされている。男女比は1.5:1と男児に多く,そのうち97%は白色人種といわれる。以前は常染色体劣性遺伝と考えられていたが,ほとんどの症例は散発的で家族内発症が認められていないことなどから,正確な遺伝様式は不明である。

 HGPS症例では,尿中ヒアルロン酸濃度が正常の20~30倍であることが知られているが,ヒアルロン酸は筋肉,皮膚,血管壁の維持に必要なグルコサミノグリカンの代謝物であることから,これらの代謝異常が発症に関与する可能性が示唆されている。また,細胞周期を調節するテロメアの活動性の異常や,成長ホルモンの異常が病態に関与する可能性も指摘されている。

hypereosinophilic syndrome(HES)(特発性好酸球増多syndrome)

著者: 佐藤斎 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.140 - P.140

定義・概念

 特発性好酸球増多症候群とは,原因不明の末梢血好酸球増多と,好酸球浸潤に伴う多臓器の障害を引き起こす原因不明の稀な難治性疾患である1)。増加した好酸球が組織浸潤とサイトカイン放出によって臓器障害を引き起こす。

I,J

idiopathic thrombocytopenic purpura(ITP)(特発性血小板減少性紫斑病)

著者: 佐藤斎 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.141 - P.141

定義・概念

 特発性血小板減少性紫斑病とは,薬剤などの原因や基礎疾患が明らかでないにもかかわらず,血小板破壊が亢進して血小板減少をきたす後天性疾患である1)

infectious mononucleosis-like syndrome(伝染性単核球症様syndrome)

著者: 佐藤斎 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.142 - P.142

定義・概念

 伝染性単核球症(infectious mononucleosis)はEpstein-Barr virus(以下,EBV)によって発症する へん桃炎の特殊型である。一方,伝染性単核球症と同様な臨床像,検査所見がみられるにもかかわらずEBVの感染が証明されず,むしろほかの原因であることが証明あるいは強く疑われる場合に伝染性単核球症様症候群という1)

Jackson-Mackenzie syndrome

著者: 佐藤斎 ,   髙橋姿

ページ範囲:P.143 - P.143

定義・概念

 種々の原因により,同側の迷走神経,副神経,舌下神経の3神経が核下性に障害された場合,Jackson-Mackenzie syndromeと呼ぶ1)。ほかにHughlings Jackson's syndrome,Jackson's syndromeⅡ,Jackson's paralysis,Mackenzie's syndrome,Mackenzie-Jackson syndromeとしても知られ,dysphagia-dysphonia syndrome,hemiplegia alterans hypoglossica,paramedian oblongata syndrome,vago-accessory-hypoglossal syndromeなどが同義に使われる。

Johanson-Blizzard syndrome

著者: 鈴木宏明 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.144 - P.144

概念・定義

 鼻翼低形成,膵外分泌機能不全,先天性難聴を特徴とする症候群である。そのほかに甲状腺機能低下,精神運動発達遅滞,頭部正中皮膚部分欠損,永久歯欠損などがある。1971年にJohansonとBrizzardが最初に報告し症候群名となった1)

K

kabuki make-up syndrome(歌舞伎メーキャップsyndrome)

著者: 我妻道生 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.145 - P.145

定義・概念

 特異顔貌,骨格奇形,低身長,発達遅滞,特有の皮膚紋理を特徴とする先天性症候群である。1981年に新川ら1)・黒木ら2)が個別に発表,顔貌が歌舞伎役者の隈取りに似ていることからkabuki make-up syndromeと名付けられたが,誤解を招くためmake-upを削除しkabuki syndrome(以下,KS)と表記されることが多い2,3)

Kallmann syndrome

著者: 鬼頭良輔 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.146 - P.146

定義・概念

 Kallmann syndromeは低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と嗅覚障害を合併する症候群であり,ゴナドトロピン単独欠損症のなかでは代表的な疾患である。1944年にKallmannら1)が遺伝歴のある類宦官症に嗅覚脱失を認めた症例を報告し,日本では1972年の土持ら2)の報告が最初である。

Kartagener syndrome(immotile cilia syndrome)

著者: 上條篤 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.147 - P.148

定義・概念

 副鼻腔炎,気管支拡張症,内臓逆位を三徴とする疾患で,20世紀初頭から報告があり,1933年にKartagener1)が4症例を報告している。

 Kartagener症候群患者では,精子鞭毛超微形態に異常があることが1975年に報告され2),不妊の原因となっていることが判明した。その後,気道上皮においても線毛超微形態の異常が指摘されるなど,全身の線毛あるいは鞭毛の先天的形態異常をきたす疾患と認識され,immotile cilia syndromeという名称が使用された。最近では,必ずしもすべての症例で線毛運動の停止が認められるわけではないことから,先天的に線毛運動の低下・停止あるいはリズムや協調性の異常が認められる症例に対し,primary ciliary dyskinesia(以下,PCD:原発性線毛運動不全症)という呼称が一般的に用いられ,Kartagener症候群はその一部分症と捉えらている。

Kasabach-Merritt syndrome

著者: 今村俊一 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.149 - P.149

定義・概念

 1940年に放射線科医のKasabach HHと小児科医のMerritt KKは広範な血管腫に血小板減少性紫斑病を伴った新生児症例を報告している1)。以後,新生児の皮膚血管腫に合併する血小板減少症を指すが,近年では,年齢,発症部位を問わず,血管腫に合併した血小板減少,線溶系の亢進,凝固因子の消費などもKasabach-Merritt syndrome(以下,KMS)とする場合が多い。

Kawasaki disease(川崎病)

著者: 松崎全成 ,   増山敬祐

ページ範囲:P.150 - P.151

定義・概念

 川崎病(mucocutaneous lymph node syndrome:MCLS,小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)の診断の手引きが旧厚生労働省川崎病研究班によって定められている(表1)1)

Kearns-Sayre syndrome

著者: 古川仭

ページ範囲:P.152 - P.152

定義・概念

 1958年,KearnsとSayre1)は,外眼筋麻痺と網膜色素変性,心伝導障害を伴う2症例を報告した。その後,Zintzらが眼筋と肩の筋肉で,Shyらが骨格筋においてミトコンドリアの異常を見いだした。1989年,Holtら2)がミトコンドリアDNA変異を証明したことからミトコンドリア病と考えられた。本症候群は,Kearns-Shy症候群,慢性進行性外眼筋麻痺症候群(chronic progressive external ophthalmoplegia:CPEO)とも呼ばれる。

病因・病態・疫学

 女性に多発し20歳以前に発症する。約60~70%の患者にミトコンドリアDNAの欠失が認められる。本疾患では,ほかのミトコンドリア病であるMERRF(myoclonus epilepsy with ragged red fibers),およびMELAS(mitochondrial encephalomyopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes)とは異なり,異常ミトコンドリアは筋組織にみられ,血液や皮膚線維芽細胞には通常みられない。

Keipert syndrome

著者: 古川仭

ページ範囲:P.153 - P.153

定義・概念

 1973年にKeipertら1)が兄弟例を報告したのが最初の記載である。鼻と指と聴覚の異常(感音難聴)を呈するところから,鼻・指・聴覚症候群(naso-digital-acoustic syndrome),Keipert type,Keipert症候群ともいわれる。

病因・病態・疫学

 男性が多く両親に同様症状がないことからX連鎖性劣性と考えられるが,常染色体劣性遺伝も否定できない。頻度は稀である2)

Kenny(Caffey)syndrome

著者: 古川仭

ページ範囲:P.154 - P.154

定義・概念

 1966年,Kennyら1)が均整のとれた小人症の母子例を報告し,Caffey(1967)2)がX線的特徴を詳しく報告した。長幹骨髄質の狭細化,低カルシウム血症,大泉門閉鎖遅延,高度遠視を特徴とする。Kenny-Caffey症候群ともいう。

病因・病態・疫学

 当初は常染色体優性遺伝(type 2)の報告が大半であったが,Franceschiniら3)が常染色体劣性遺伝家系(type 1)を報告し,遺伝子座は1q42-q43にマップされている。後者で22q11微細欠失を伴った母子例の報告がある。男女とも同程度に発症する。

Klinefelter syndrome

著者: 古川仭

ページ範囲:P.155 - P.155

定義・概念

 通常の男子よりX染色体過剰に由来する性染色体異常症候群で,男子の性腺発育不全症候群,男性不妊症として知られる1)。1942年,Klinefelterらは小さな睾丸,女性型乳房を特徴とし,睾丸組織に特有な所見(精細管の硝子様変性,Leydig細胞の膠様増殖)を示す男性の性機能不全症候群の1つとして最初に報告した。

病因・病態・疫学

 1959年,Jacobsが性染色体の基本構成は47,XXY核型であることを確認した。そのほかXXXY,XXYY,XXXYY,XXXXYなどの存在が知られる。派生頻度は男子の600~1,000人に1人の割合でみつかるとされる。結婚後に初めて病気に気づくケースが多い。

Klippel-Feil syndrome

著者: 北村みわ ,   友田幸一

ページ範囲:P.156 - P.156

定義・概念

 頸椎の先天性癒合による分節障害で,外観異常を伴う広範な頸椎癒合を指す。

Klippel-Trénaunay-Weber syndrome

著者: 北村みわ ,   友田幸一

ページ範囲:P.157 - P.157

定義・概念

 上肢あるいは下肢の肥大,皮膚血管腫,静脈瘤の三徴を持つ疾患1)であり,血管の過形成や形成異常を伴う限局性巨大発育症である。

L

Landau-Kleffner syndrome

著者: 北村みわ ,   友田幸一

ページ範囲:P.158 - P.158

定義・概念

 てんかん発作を伴う獲得性失語症候群である。

Langer-Giedion syndrome

著者: 北村みわ ,   友田幸一

ページ範囲:P.159 - P.159

定義・概念

 毛髪・鼻・指症候群Ⅱ型であり,頭髪の形成不全,鼻部変形,彎指を特徴とする症候群である。

Langerhans cell histiocytosis(Langerhans細胞組織球症,Hand-Schuller-Christian病)

著者: 藤枝重治

ページ範囲:P.160 - P.161

定義・概念

 ランゲルハンス細胞性組織球が増える病気である。Hand Schuller-Christian病は,頭蓋骨の欠損(骨の黄色腫様変化)・眼球突出・尿崩症を三主徴とし,病理学的にはランゲルハンス細胞の非腫瘍性増殖を特徴とする原因不明の慢性進行性全身性疾患である。

Larsen syndrome

著者: 藤枝重治

ページ範囲:P.162 - P.162

定義・概念

 先天性多肢的脱臼と特有の顔貌を持つ遺伝疾患である1)

lateral pontmedullary syndrome(前下小脳動脈syndrome)

著者: 藤枝重治

ページ範囲:P.163 - P.163

定義・概念

 前下小脳動脈の閉塞によってめまいを訴え,数時間後,顔面神経麻痺,難聴,反対側の上下肢の温痛覚障害,小脳症状が出現する症候群1)である。

Laurence-Moon syndrome(Laurence-Moon-Bardet-Biedl syndrome)

著者: 藤枝重治

ページ範囲:P.164 - P.164

定義・概念

 肥満,夜盲,知能低下,性器発育不全,多指症を示す遺伝性疾患1)である。

Lenz-Majewski syndrome

著者: 三澤清 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.165 - P.165

定義・概念

 Lenz-Majewski syndromeは,最初の報告は1969年にBrahamらによってなされ,1974年にLenzとMajewskiによって全身性骨硬化像,近位指節関節癒合,合指症,皮膚弛緩,精神発達遅延,眼間隔離,エナメル質低形成を主徴とする先天性骨疾患として名付けられた1,2)

LEOPARD syndrome

著者: 三澤清 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.166 - P.166

定義・概念

 全身の皮膚に多発する黒子と多臓器に合併する種々の先天性異常を特徴とする。LEOPARD症候群の名称の由来は以下の主要症候の頭文字を並べたもので,多発性黒子(lentigines),心電図異常(electrocardiographic abnormalities),両眼隔開離(ocular hypertelorism),肺動脈狭窄(pulmonary stenosis),性器異常(abnormalities of genitalia),発育障害(retardation of growth),感音性難聴(deafness)などの症状が組み合わせでみられる1~3)

Lermoyez syndrome

著者: 三澤清 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.167 - P.167

定義・概念

 1919年にフランスのLermoyezが,「聞こえをよくするめまい」,「耳自身が自分の聞こえをよくするために,自分を犠牲にして戦った」と表現した疾患群である。(1)よい聞こえ,(2)ゆっくり進行する難聴,(3)突然のめまい,(4)難聴の急な回復が特徴であるとされている1)。最近では,めまいと蝸牛症状の起こる順番にこだわらず,めまい発作を契機に聴力が急速に改善する症例をLermoyez syndromeと呼ぶことも多い2)

Lesch-Nyhan syndrome

著者: 中田誠一 ,   中島務

ページ範囲:P.168 - P.168

定義・概念

 Lesch-Nyhan syndromeはプリン・サルベージ回路の異常から起こる高尿酸血症とともに知能障害,運動機能遅延などの中枢神経症状を起こす症候群である。1964年,Lesch(アメリカの医学生)1)が8歳と5歳の兄弟で知能障害,アテトーゼ様の中枢性神経障害,自傷行為,脳性麻痺を主徴とし,高尿酸血症,高尿酸尿症を伴う伴性劣性遺伝性代謝疾患をみいだし,Nyhan1)とともに「中枢神経機能異常を伴う家族尿酸代謝異常症」として初めてこの疾患の存在を世に知らしめた。

Louis-Bar syndrome(毛細血管拡張性運動失調症)

著者: 中田誠一 ,   中島務

ページ範囲:P.169 - P.169

定義・概念

 別名,毛細血管拡張性運動失調症ともいう。小児期早期から発症する小脳性失調症,眼球結膜と皮膚の毛細血管拡張,リンパ系の異常による免疫不全状態とそれに起因する呼吸器を中心とする易感染性や高率に悪性腫瘍に合併する症候群である。常染色体劣性遺伝形式をとる。

Lyell syndrome(中毒性表皮壊死融解症)

著者: 中田誠一 ,   中島務

ページ範囲:P.170 - P.170

定義・概念

 別名,中毒性表皮壊死融解症(toxic epidermal necrosis:以下,TEN)ともいう。種々の病的過程のある時期に,ちょうど第2度熱傷のように表皮が広範に剝離する状態を呈する症候群1)である。成人の場合,薬剤によるものが圧倒的に多く(これが通常でのTEN),小児の場合,黄色ブドウ球菌の産生する表皮剝奪毒素(exfoliative toxin:以下,ET)による全身中毒反応により生ずる。別名,ブドウ球菌性TEN,staphylococcal scalded skin syndrome(SSSS)ともいい,両者ともLyell syndromeの範疇に入るが病態・予後はまったく異なる。

M

Maffucci syndrome

著者: 中田誠一 ,   中島務

ページ範囲:P.171 - P.171

定義・概念

 1881年,Maffucci(マフッチ)1)により初めて記載された,多発性内軟骨種に軟部組織血管種を合併するきわめて稀な疾患である。

Marfan syndrome(Beals syndrome)

著者: 渡邉暢浩 ,   村上信五

ページ範囲:P.172 - P.172

定義・概念

 Marfan syndromeは先天性結合織異常より生ずる疾患の1つであり,細く長い四肢とクモ状指趾に代表される骨格の異常,水晶体亜脱臼,青色強膜などの眼の異常,僧帽弁・大動脈弁閉鎖不全,解離性大動脈瘤などの心・大血管系の異常などを示す常染色体優性遺伝の疾患である。

Maroteaux-Lamy syndrome(ムコ多糖症Ⅵ型)

著者: 渡邉暢浩 ,   村上信五

ページ範囲:P.173 - P.173

定義・概念

 Maroteaux-Lamy syndromeはムコ多糖症(mucopolysaccharidoses)の1つであり,そのⅥ型に分類される遺伝性代謝疾患である。ムコ多糖症はリソゾームにあるムコ多糖分解酵素の1つが障害されるために起こる症候群である。欠損する酵素の種類,重症度によりⅠ~Ⅶ型に分類されている。本症候群は1963年にMaroteauxらが,また1965年にMaroteauxとLamyが症例報告したもので1),Hurler syndromeと共通する特徴的な顔貌,低身長などを示すが,異なる点として知能障害を認めず,尿中に多量のデルマタン硫酸を排泄することが挙げられる全身性の疾患である。

Marshall-Smith syndrome

著者: 渡邉暢浩 ,   村上信五

ページ範囲:P.174 - P.174

定義・概念

 1971年,Marshallら1)が初めて報告した症候群で,新生児・乳児期の過成長症候群の1つであり,これまで20例ほどの報告があるにすぎない稀な疾患である。根本的には生下時に骨年齢が亢進,早期成熟しているにもかかわらず,その後の成長遅滞がある。特徴的な顔貌として,広い前額,狭い眼窩に伴う眼球突出,鼻尖が上を向いた小さな鼻などがあるほか,多毛,青色強膜,臍ヘルニア,脳梁欠損などを合併するが,呼吸不全を繰り返し早期に死亡する予後不良の症候群である。

May-White syndrome

著者: 渡邉暢浩 ,   村上信五

ページ範囲:P.175 - P.176

定義・概念

 1968年,MayとWhiteが遺伝性,進行性の難聴,ミオクローヌス,運動失調をきたした一家系を初めて報告し,彼らにちなんで名付けられた症候群である1)。当時病因については明らかでなかったが,その後,ミトコンドリア異常による進行性ミオクローヌスてんかんとしてmyoclonus epilepsy with ragged-red fibers(MERRF)という概念が確立され,本症候群との重複の可能性が指摘されるようになり,Vaamondeら2)により実証された。

 ただし,彼らの報告後に,ミトコンドリア病の一型であることが明らかとなったためMay-White症候群の名称は用いられなくなっている。

McCune-Albright syndrome(MCAS)

著者: 稲福繁 ,   佐藤圭

ページ範囲:P.177 - P.177

定義・概念

 McCune-Albright症候群(MCAS)は線維性骨異形成(polyostotic fibrous dysplasia),カフェオレ斑,思春期早発症を三主徴とする遺伝子異常の疾患である。1937年,McCuneとBruchが初めて報告し,Albrightにより新しい疾患概念として確立した1)

Meckel-Gruber syndrome

著者: 稲福繁 ,   稲川俊太郎

ページ範囲:P.178 - P.178

定義・概念

 Meckel-Gruber syndromeは,後頭部の脳瘤(meningocele,meningoencephalocele),囊胞腎,多指趾症の三主徴を主にする先天奇形症候群である。1822年にMeckelが初めて報告し,その後1934年にGruberがAkrocephalosyndactylie und Dysencephalia splanocysticaとして症例報告1)したが,1969年,OpitzとHoweは疾患単位として両症候群が同義と報告し,Meckel-Gruber syndromeと確立し命名された2)

Melkersson-Rosenthal syndrome

著者: 稲福繁 ,   坂野立幸

ページ範囲:P.179 - P.179

定義・概念

 Melkersson-Rosenthal syndrome(以下,MRS)は再発性顔面神経麻痺,口唇腫脹,ひだ状舌(lingua plicata)を三主徴とする症候群である。1928年,Melkerssonが血管神経浮腫を伴う反復性顔面神経麻痺の1例を報告し,その後1931年,Rosenthalがひだ状舌が随伴症状の1つであるとして報告しMelkersson-Rosenthal syndromeとなった1,2)

Melnick-Needles syndrome

著者: 稲福繁 ,   砂川博

ページ範囲:P.180 - P.180

定義・概念

 1966年にMelnickとNeedlesが報告している1)。特異な顔貌と全身の骨格異常,長管骨のS字状彎曲などが特徴的である。耳鼻科的には,大耳介,小下顎,両眼窩間の開離,頭蓋骨硬化像,伝音難聴の報告もある2)

Mendelson syndrome

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.181 - P.181

定義・概念

 Mendelsonが1946年に示した疾患概念で,無痛分娩に対する妊婦の麻酔導入時に,胃液など酸性化学物質の胃内容物が肺に逆流して誤嚥性肺炎を起こし重篤な呼吸不全となるものをいう。死亡率が高く,麻酔科医が克服すべき課題とされている1)

Méniere disease

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.182 - P.182

定義・概念

 内耳膜迷路の内リンパ水腫を病態とする回転性めまいと難聴の発作を反復する疾患であり,耳鼻咽喉科領域ではあまりにも有名である。

Mikulicz syndrome(Mikulicz disease)

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.183 - P.183

定義・概念

 唾液腺,涙腺に対称的な腫脹を有し,白血病,結核,類肉腫症,リンパ系肉腫症などの基礎疾患を持つものをMikulicz症候群,持たないものをMikulicz病とする1)

Miller-Dieker syndrome(MDS)

著者: 内藤健晴

ページ範囲:P.184 - P.184

定義・概念

 17番染色体短腕p13.3の微細な欠損が原因で,滑脳症と特異な顔貌(小頭症,側頭部の陥没,突出した広い前額)を特徴とする予後不良の奇形症候群1,2)である。

Miller Fisher syndrome(Fisher syndrome)

著者: 伊藤八次

ページ範囲:P.185 - P.185

定義・概念

 Fisher syndromeは,急性発症する外眼筋麻痺・運動失調・深部反射低下または消失を三主徴とする症候群である。1956年にMiller Fisher1)が急性突発性多発神経炎(Guillan-Barré症候群)の亜型として報告した。

MLF syndrome

著者: 伊藤八次

ページ範囲:P.186 - P.186

定義・概念

 MLF syndrome(内側縦束症候群)は,内側縦束の障害による眼球運動異常を主体とした症候群である。BenderらがサルのMLFを実験的に損傷し,それによる眼球運動障害をsyndrome of MLFとした1)ことに由来する2,3)。核間性眼筋麻痺(internuclear ophthalmoplegia:INO)とほぼ同義語と解釈されている。

Moebius syndrome

著者: 伊藤八次

ページ範囲:P.187 - P.187

定義・概念

 Moebius syndromeは先天性両側性顔面神経麻痺を主症状として,ほかの脳神経麻痺や四肢・顔面の形成不全を伴う症候群である。先天性両側性顔面神経麻痺については,1880年,von Graefeが初めて1症例を報告した。その後いくつかの報告を経て,1888年,1892年にMoebiusは先天性両側性顔面神経麻痺にほかの先天異常を合併する症例について,自験例および過去の報告例を詳細にまとめた。以後,本症候群はMoebius syndromeと呼ばれるようになった1)。わが国では,1959年,谷ら2)の報告が最初とされる。

Morquio syndrome(ムコ多糖症Ⅳ型)

著者: 竹内万彦 ,   間島雄一

ページ範囲:P.188 - P.188

定義・概念

 Morquio syndrome1)はムコ多糖症の1つである。ムコ多糖症は,正式にはムコ多糖代謝異常症といい,ムコ多糖を分解する酵素の欠損により全身にムコ多糖が蓄積し,種々の臓器や組織が次第に損なわれる進行性の病気ある。Morquio syndromeは生化学的にA型とB型に分けられ,A型はN-acetylgalactosamine-6-sulfate sulfataseの,B型はβ-galactosidaseの欠損による。

Mounier-Kuhn syndrome(巨大気管気管支)

著者: 竹内万彦 ,   間島雄一

ページ範囲:P.189 - P.189

定義・概念

 Mounier-Kuhn syndromeは,Mounier-Kuhn1)により1932年に初めて記載された稀な疾患であり,著しい気管と気管支の拡張と繰り返す下気道感染を特徴とする。Tracheobronchomegaly(巨大気管気管支)とも呼ばれる。

Muckle-Wells syndrome

著者: 竹内万彦 ,   間島雄一

ページ範囲:P.190 - P.190

定義・概念

 Muckle-Wells syndromeは1962年にMuckleとWells1)によって初めて記載された常染色体優性遺伝形式をとる蕁麻疹と難聴とアミロイドーシスを特徴とする症候群である。

Muir-Torre syndrome

著者: 西村忠己 ,   細井裕司

ページ範囲:P.191 - P.191

定義・概念

 多発する脂腺系腫瘍と内臓悪性腫瘍の合併を特徴とする症候群である。1967年にMuirら1)が,また1968年にTorre2)が報告して以来,Muir-Torre syndrome(以下,MTS)と称されている。

multiple pterygium syndrome(多発性翼状片syndrome)

著者: 西村忠己 ,   細井裕司

ページ範囲:P.192 - P.192

定義・概念

 先天性の多発性関節拘縮と,関節から顔にかけての翼状片を特徴とする症候群である。1902年にBussiere1)により初めて報告された。1968年にGorlinら2)がpopliteal pterygium syndromeとの相違点を報告,1978年にはEscobarら3)が過去の報告例をまとめ疾患概念が確立した。

Munchausen syndrome

著者: 西村忠己 ,   細井裕司

ページ範囲:P.193 - P.193

定義・概念

 1951年,Asher1)により報告された症候群で,現実的利益を認めない身体症状の自己産出,あるいは偽装を特徴とする疾患である。当初の報告では,患者の特定の「困った」行動パターンや人格傾向が注目されていた。しかしその後,徐々に疾患概念が変化し,現在の診断基準では虚偽性障害のなかに含まれ,身体症状を自ら慢性的に産出する一群を指すようになった。

N

Nager syndrome

著者: 西村忠己 ,   細井裕司

ページ範囲:P.194 - P.194

定義・概念

 Treacher Collins症候群と同様の顎・顔面の形態異常に加えて,橈側肢の低形成を特徴とする症候群である。Treacher Collins症候群の1亜型とも考えられている。1948年にNagerら1)が顎・顔面奇形,伝音難聴,両母指の無形成などを合併した症例として報告したのがはじまりである。

Nance-Sweeney syndrome

著者: 清水猛史

ページ範囲:P.195 - P.195

定義・概念

 Nance-Sweeney syndromeはotospondylomegaepiphyseal dysplasia(OSMED)とも呼ばれる遺伝性疾患で,軟骨形成不全による小人症と感音難聴を呈する症候群である。NanceとSweeney1)によって1970年に初めて報告された。

病因・病態生理

 コラーゲンⅩⅠのα2サブユニットを決定するCOL11A2遺伝子の変異が原因の常染色体劣性遺伝と考えられる。コラーゲンⅩⅠはα1,α2,α3のトリマーで構成され,それぞれCOL11A1,COL11A2,COL2A1遺伝子がかかわっているが,変異の部位に違いによって表現型の異なる類似疾患がある。COL11A1の変異でMarshall症候群,Stickler症候群2型,COL2A1の変異でStickler症候群1型,OSMEDと同様なCOL11A2の変異で優性遺伝形式のStickler症候群3型(nonocular Stickler症候群)やWeissenbacher-Zweymuller症候群などが報告されているが,遺伝子診断の進歩によりこうした病態分類が整理されつつある2,3)

neck-tongue syndrome

著者: 清水猛史

ページ範囲:P.196 - P.196

定義・概念

 Neck-tongue syndromeは急激な頸部回旋時に,後頭部痛とともに同側の舌半分のしびれ感が一過性に出現する疾患で,1980年にLanceとAnthony1)が初めて報告した。

neonatal progeroid syndrome(新生児早老症様syndrome,Wiedemann-Rautenstrauch syndrome)

著者: 清水猛史

ページ範囲:P.197 - P.197

定義・概念

 Neonatal progeroid syndromeは出生時から早老症様顔貌や症状が認められ,胎児期と生後を通じて著しい成長障害をきたす予後不良の症候群である。Wiedemann1)(1979)やRautenstrauch2)(1977)によって最初に報告されたことなどから,Wiedemann-Rautenstrauch syndromeとも呼ばれている。

Neu-Laxova syndrome

著者: 辻純

ページ範囲:P.198 - P.198

定義・概念

 子宮内発育遅滞と多発奇形を特徴とする稀な致死的疾患で,中枢神経系,皮膚,眼の異常を持つ1,2)。本邦ではHirotaら3)の報告がある。

Noonan syndrome

著者: 辻純

ページ範囲:P.199 - P.199

定義・概念

 特異な頭部顔面の異常,翼状頸,漏斗胸,停留睾丸,肺動脈狭窄を主要症状とする先天異常症候群である1)。ターナー症候群に似た身体所見から,男性ターナー症候群などと呼ばれることもある。

Norman-Landing syndrome

著者: 辻純

ページ範囲:P.200 - P.200

定義・概念

 ライソゾーム中で糖脂質のガングリオシド(ganglioside)を分解するβガラクトシダーゼ欠損のため,中枢神経系や肝臓・脾臓,骨軟骨系などに異常が生じる遺伝疾患である。欠損の程度によって発症時期が異なり,幼少時に発症するものをGM1gangliosidosisのtype 1と呼ぶ1,2)

numb chin syndrome

著者: 馬場均 ,   久育男

ページ範囲:P.201 - P.201

定義・概念

 Numb chin syndromeとは,オトガイ神経の単麻痺によって生じるオトガイおよび下口唇の知覚低下のことである。本症候群は1963年にCalverleyら1)によってsyndrome of the numb chinと命名された。なお,Bell麻痺で知られているCharles Bellは,Calverleyらの報告よりも100年以上前に本症に該当する症例について記載している2)

O

omohyoid muscle syndrome

著者: 島田剛敏 ,   久育男

ページ範囲:P.202 - P.202

定義・概念

 嚥下時に肩甲舌骨筋(omohyoid muscle)の膨隆によって,側頸部に索状または腫瘤状の隆起を生じ,安静時には消退する症候群である。

病因・病態・疫学

 本邦では1例の報告を散見するのみであり,まとまった数の報告はない。Ye1)が1980年に10例を報告しているが,これが最多症例の報告である。若い男性に多いとされている。Omohyoid muscleの膨隆の原因について一定した見解は報告されていないが,変性筋疾患のなかでYe1)はhyaline degenerationを,牧野ら2)は外傷後のmyogenic atrophyを病理組織学的診断を根拠にその原因と報告している。またCaswell3),渋沢ら4)は,omohyoid muscleの舌骨付着部の位置異常により嚥下時に動く甲状軟骨がomohyoid muscleを刺激して筋硬直や異常感が生じるとしている。

one-and-a-half syndrome

著者: 鈴木敏弘 ,   久育男

ページ範囲:P.203 - P.203

定義・概念

 One-and-a-half syndromeとは一側橋被蓋下部の小病変に伴う眼球運動障害で,患側眼球の内・外転障害と健側眼球の内転障害を呈する。すなわち,水平眼球運動において健側眼球の外転のみが保たれほかは障害される。1967年,Fisher1)が特徴的な眼球運動障害の所見から命名した。

oral-facial-digital syndrome(口顔指syndrome)

著者: 土井直 ,   山下敏夫

ページ範囲:P.204 - P.204

定義・概念

 1954年にPapillon-LeageとPsaumeによって初めて報告され1),1962年にGorlinとPsaumeによって定義づけられた2)稀な遺伝性症候群で,特異顔貌,口腔異常(分葉舌,口腔内小帯,歯槽不整),指趾異常(短指,合指,彎指,多指)を主徴とする。現在その表現型や遺伝形式から9つの型に分類されているが,原因的異質性が高く,いまだ疾患単位としては確立されていない。

orbital apex syndrome(眼窩先端部syndrome)

著者: 土井直 ,   山下敏夫

ページ範囲:P.205 - P.206

定義・概念

 眼窩先端部には上眼窩裂と視神経管があり,眼窩先端部の病変によりそのなかを通る神経が障害される。上眼窩裂には動眼神経(Ⅲ),滑車神経(Ⅳ),外転神経(Ⅵ),三叉神経第一枝(Ⅴ1)の眼神経および眼交感神経が通り,視神経管には視神経(Ⅱ)が通っている。これらすべての神経が障害され,(1)全外眼筋麻痺,(2)三叉神経第1枝の眼神経領域の知覚低下,(3)視神経障害を三主徴とする症候群が眼窩先端部症候群である。1927年にRolletとColratにより“syndrome de l'apex orbitoire”と記載されたものが初めてと考えられている1)

orthostatic dysregulation syndrome(起立性調節障害)

著者: 土井直 ,   山下敏夫

ページ範囲:P.207 - P.207

定義・概念1)

 起立性調節障害の基本病像は起立時循環調節不全であり,起立不耐症状が中核をなす。思春期に起こりやすい自律神経失調と考えられている。自律神経中枢の機能異常に関連した睡眠障害,体温調節障害,精神症状を認める。また,末梢性自律神経機能異常による心血管症状,消化器症状,皮膚汗腺症状も出現する。

 最初の発表は,1826年のフランス内科医師Piorryの“cerebral syncope”の複数例の発表といわれている2)。なお,国内での初めての報告は昭和33年に行われている3)

osteogenesis imperfecta(骨形成不全症)

著者: 土井直 ,   山下敏夫

ページ範囲:P.208 - P.208

定義・概念

 骨密度の低下に伴う骨脆弱性,易骨折性と骨折に伴う骨変形を主な症状とする疾患である。先天的な結合組織の異常を伴う。1788年,Ekman1)が常染色体優生遺伝を示した家族発症例をosteomalacia congenita(先天性骨軟化症)として初めて報告した。

oto-palato-digital syndrome

著者: 竹中洋 ,   萩森伸一

ページ範囲:P.209 - P.209

定義・概念

 伝音難聴,口蓋裂および手指足趾の奇形を特徴とする遺伝性奇形症候群である。死産か5か月以内に死亡しやすいものをtype 2,それ以外の軽症のものをtype 1と,2つの型に分類される。type 1はTaybi1)が,type 2はFitchら2)やAndreら3)が初めて報告し,これらは当初別の遺伝疾患とされたが,近年は逆に同一疾患であるという概念が確立されつつある。

P

Pallister mosaic syndrome

著者: 竹中洋 ,   萩森伸一

ページ範囲:P.210 - P.210

定義・概念

 1977年,Pallisterら1)によって報告されたisochromosome 12pのモザイクによる染色体異常症であり,重度の全身筋緊張低下,特異な顔貌,皮膚色素の異常,精神発達遅滞などを伴う。別名,Pallister-Killian syndrome,Pallister-Killian mosaic syndrome,isochromosome 12pモザイクなどとも呼ばれる。

Pancoast syndrome

著者: 竹中洋 ,   萩森伸一

ページ範囲:P.211 - P.211

定義・概念

 肺尖部に生じた病変が,胸郭の外まで波及したために起こる諸症状のこと。主に肺尖部の癌によって生ずる。肩部から前腕尺側にかけての頑固な疼痛,知覚障害や運動麻痺を伴う筋萎縮,同側のHorner症候群が特徴的である。

paraneoplastic syndrome(腫瘍随伴syndrome)

著者: 竹中洋 ,   萩森伸一

ページ範囲:P.212 - P.213

定義・概念

 腫瘍随伴症候群,新生物随伴症候群あるいは傍腫瘍症候群とも呼ばれる。腫瘍の原発巣または転移巣から離れた臓器に生ずる臓器機能障害と定義される。悪性新生物に直接起因する症候群であるが,罹患部位の腫瘍による直接浸潤や圧迫によって生ずるものは含まれない。

Parinaud syndrome

著者: 山本昌彦

ページ範囲:P.214 - P.214

定義・概念

 パリノー症候は,フランスの眼科医であるHenri Parinaud(1844-1905)が垂直共同視麻痺について記載したために用いられるようになった症候である。この症候は,歴史の流れのなかで多くの論議をもたらしてきた症候群である。パリノー以前には,このような垂直共同注視麻痺については動眼神経核による障害とされている(Henoch)。パリノーが報告した後にこの症候の考えが分かれた。パリノー症候は上方注視麻痺とするもの,垂直注視麻痺とするもの,垂直注視麻痺と輻輳麻痺のあるものの3つの考え方が指摘されてきた。

 パリノー症候,パリノー症候群,パリノー徴候などいろいろな呼び方はあるが,パリノーが報告で示した症例で重要なことは,側方および上方の共同注視麻痺であり,また輻輳麻痺,拡散麻痺の4つのそれぞれの眼運動麻痺について共同麻痺としての共同注視中枢の存在を考え,麻痺を核上性麻痺としたことである。

Parkinson syndrome

著者: 山本昌彦

ページ範囲:P.215 - P.216

概念・定義

 James Parkinsonは1775年にイギリスに生まれた。1817年,「振戦麻痺(Essay on the Shaking Palsy)について」という冊子を出版して報告し,フランスのジャン・マルタン・シャルコー(1825-1893)によってパーキンソン病と命名され有名になった。しかし,パーキンソン病とパーキンソン症候群とは区別して診断することが必要である。パーキンソン症候群とは,パーキンソン病とパーキンソン病様症状を呈する疾患の総称である。
Ⅰ.パーキンソン病

症状・診断

 パーキンソン病(Parkinson disease:以下,PD)は,1つの疾患としての診断基準や治療法が成立しており,わが国では旧厚生省特定疾患・神経変性疾患調査研究班が作成した診断基準があり,海外ではCalneの診断基準や英国Brain Bankの診断基準などがある。基本的な症状として,手足の震え(振戦),緩慢な動作(筋固縮・寡動),姿勢と歩行障害が出現し(安静時振戦,固縮,無動,姿勢反射障害を四主症状とする),病気によってヤールの5段階病期がよく使われる(表1)。

Parry-Romberg syndrome

著者: 芳川洋

ページ範囲:P.217 - P.217

定義・概念

 片側顔面の緩徐な皮下脂肪の進行性萎縮をきたす進行性顔面片側萎縮症(progressive facial hemiatrophy:PFH)であり,同部位の皮膚,軟骨,結合織,筋,骨の萎縮を伴うことがある。Parryにより1825年に初めて報告され,Rombergにより1846年に詳細な臨床像が報告された1~3)

Pena-Shokeir(typeⅡ)syndrome

著者: 芳川洋

ページ範囲:P.218 - P.218

定義・概念

 Pena-Shokeir syndromeは,PenaとShokeirが先天性多発性関節拘縮,異常顔貌,肺低形成を主徴とする致死的な奇形症候群を1974年に報告したことによる1,2)。同症候群にはtypeⅠとtypeⅡが知られるが,各々は別の疾患としてShokeirにより記載された4,5)。Pena-Shokeir(typeⅠ)syndromeは,arthrogryposis multiple congenita with pulmonary hypoplasiaと呼ばれる1,3,4)。一方,Pena-Shokeir(typeⅡ)syndromeは,先天性多発関節拘縮,異常顔貌に加えて小頭症,小眼球および白内障などを主徴とし,cerebro-oculo-facio-skeletal syndrome(COFS症候群)と呼ばれる2,5)

Pendred syndrome

著者: 角南貴司子 ,   山根英雄

ページ範囲:P.219 - P.219

定義・概念

 Pendred syndrome(以下,PDS)とは常染色体劣性遺伝する,感音難聴,内耳の形態異常,ヨード輸送の異常による二次性の甲状腺腫をきたす症候群である。

Pickwick syndrome

著者: 楠木誠 ,   山根英雄

ページ範囲:P.220 - P.220

定義・概念

 Pickwick症候群は,極度の肥満,傾眠傾向,周期性呼吸,右心不全を主徴とする疾患であり1),肥満と覚醒時の高二酸化炭素血症および重症の睡眠時無呼吸を伴う。肥満低換気症候群と同義とされている。

Pierre Robin syndrome

著者: 高山雅裕 ,   山根英雄

ページ範囲:P.221 - P.221

概念・定義

 小顎症,舌根沈下,吸気性呼吸障害を合併する先天性疾患であり,Pierre Robinの報告がよく知られており病名にもなっている。Robin sequenceとも呼ばれる。

Plummer-Vinson syndrome

著者: 井口広義 ,   山根英雄

ページ範囲:P.222 - P.222

定義・概念

 鉄欠乏性貧血,舌炎,嚥下困難を三主徴とする症候群である。Plummer(1912年)とVinson(1922年)により報告されたが,1919年にはPatersonとKellyが報告していることからPaterson-Kelly症候群とも呼ばれている。また,sideropenic dysphagia(鉄欠乏性嚥下困難症)も同義語である1)

pontine syndrome(橋syndrome)

著者: 村田清高

ページ範囲:P.223 - P.223

定義・概念

 橋下部内側症候群(脳底動脈の傍正中枝の梗塞),橋下部外側症候群(前下小脳動脈領域の梗塞),橋上部内側症候群(上部脳底動脈傍注枝の梗塞),橋上部外側症候群(上小脳動脈領域の梗塞)などに分けられる1,2)

Potter syndrome

著者: 村田清高

ページ範囲:P.224 - P.224

定義・概念

 胎生早期の発生異常の結果,羊水過少と両側腎無形成を認める1)。Oligohydramnios syndrome,bilateral ranal agenesis2)(Potter syndrome)といわれる3)。1/3,000~1/9,000の出産に対して起こる。患者の75%は男性である4)

Prader-Willi syndrome(PWS)

著者: 村田清高

ページ範囲:P.225 - P.225

定義・概念

 (1)知能障害,(2)筋緊張低下,(3)肥満および(4)特に男性で性機能不全が特徴で,(5)糖尿病になりやすく1~4),hypotonia-hypomentia-hypogonadism-obesity syndrome3)といわれる。

Proteus syndrome

著者: 田村真司 ,   山中昇

ページ範囲:P.226 - P.226

定義・観念

 指趾の部分的肥大,色素性母斑,半側肥大,皮下腫瘍などを伴う過誤腫様疾患1)である。Wiedemannら2)が1983年に確立した新しい症候群。ギリシャ神話の「変幻自在に姿を変える海神Proteus」から命名した。てんかん,脳奇形を伴う重症な小児例の報告があり,神経皮膚症候群の一疾患として再認識する必要がある3)

prune-belly syndrome

著者: 田村真司 ,   山中昇

ページ範囲:P.227 - P.228

定義・観念

 腹壁筋の欠損,腎尿路の先天奇形および停留睾丸を主症状とする症候群である。腹部の皮膚が干したすもも(prune)のように弛緩して皺が寄ってみえたことから命名された1)。1839年にFröhlichが最初に記載した。1895年にParkerが泌尿器系奇形を合併することを明らかにした。別名Eagle-Barrett症候群。干しすもも腹症候群ともいう。

Pyle disease

著者: 田村真司 ,   山中昇

ページ範囲:P.229 - P.229

定義・観念

 1931年にPyle1)が,年齢の割に背の高い前頭部の突出した頭の大きい症例を報告したことに始まる。骨幹端のモデリング異常(undermodeling)による管状骨のErlenmeyer-flask変形を特徴とする骨異形成症である。頭蓋骨の軽度の骨硬化像もみられる2,3)。Craniometaphyseal dysplasiaと同一疾患とする説もあるが,モデリング異常はPyle病でははるかに強く,逆にcraniometaphyseal dysplasiaはPyle病にはみられないほど強い頭蓋骨硬化を示し,異なる疾患の可能性が強い4,5)

R

Ramsay Hunt syndrome

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.230 - P.230

定義・概念

 1907年,Ramsay Hunt Jにより報告された外耳道や耳介周囲の帯状疱疹に起因する顔面神経麻痺である1)

Raynaud syndrome

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.231 - P.231

定義・概念

 寒冷曝露や情動ストレスなどにより誘発される四肢末梢の血流障害のため,四肢の色調が蒼白から青紫,赤へと変化する現象をレイノー現象という。レイノー現象の原因となる基礎疾患を伴わないものをレイノー病,伴うものをレイノー症候群と分類する1~3)

Refsum syndrome

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.232 - P.232

定義・概念

 1946年,Refsumにより報告された網膜色素変性,多発性ニューロパチー,小脳失調,髄液蛋白増加,血清フィタン酸増加を特徴とする常染色体劣性遺伝病である1,2)

relapsing polychondritis(再発性多発軟骨炎)

著者: 都築建三 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.233 - P.233

定義・概念

 全身の軟骨組織,眼球,心臓弁膜,大血管壁などにおいて反復性の慢性炎症をきたす自己免疫疾患である。

Rendu-Osler-Weber syndrome(Osler病,遺伝性出血性毛細血管拡張症)

著者: 都築建三 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.234 - P.234

定義・概念

 全身の粘膜,皮膚,内臓の末梢血管拡張(図1),その血管拡張部位からの出血を特徴とする遺伝性疾患1)である。

respiratory distress syndrome of newborn(RDS)(新生児呼吸窮迫syndrome)

著者: 都築建三 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.235 - P.235

定義・概念

 肺の未熟性による肺胞表面活性物質である肺サーファクタントの欠如のために,生直後より広範な肺胞虚脱を起こす疾患1,2)である。

Reye syndrome

著者: 武田憲昭

ページ範囲:P.236 - P.236

定義・概念

 Reye症候群とは,乳幼児期に発症する急性脳症である。1963年にReyeらが発熱を伴う先行感染に引き続き,嘔吐,意識障害,痙攣を生じて死亡した21例を報告し,脳浮腫と脂肪肝を特徴とする新しい疾患概念として提唱した1)

Rieger syndrome

著者: 武田憲昭

ページ範囲:P.237 - P.237

定義・概念

 前眼房の異常を主とした眼奇形に,歯牙の低形成,臍周囲皮膚の退縮不全などの身体奇形を伴う症候群である。

Riley-Day syndrome(家族性自律神経失調症)

著者: 武田憲昭

ページ範囲:P.238 - P.238

定義・概念

 1949年にRileyとDayによる,流涙欠如,痛覚欠如,発作性高血圧などの自律神経症状を呈するユダヤ人5例の報告が最初である。1954年に家族性自律神経失調症(familial dysautonomia)と名付けられ,現在では遺伝性知覚性・自律神経性ニューロパチーのⅢ型(hereditary sensory and autonomic neuropathy Ⅲ)に分類されている。

Roberts syndrome

著者: 唐木將行 ,   森望

ページ範囲:P.239 - P.239

定義・概念

 1919年,Roberts1)により報告された症候群である。アザラシ肢,口唇口蓋裂,精神遅滞,子宮内成長障害を主徴とする。症状のそろったものから,軽度の精神遅滞のみの症例まで幅が広い。アザラシ肢を伴う場合に,偽性サリドマイド症候群またはRoberts SCアザラシ肢症と呼ぶことがある。

Rothmund-Thomson syndrome

著者: 唐木將行 ,   森望

ページ範囲:P.240 - P.240

定義・概念

 1868年にドイツの眼科医Rothmund1)が最初に報告し,その後,イギリスの皮膚科医Thomson2)が報告した遺伝性疾患である。幼児期にみられる多形皮膚萎縮症が特徴で,さまざまな顔立ちや骨格異常などがみられる。

Rowley syndrome

著者: 唐木將行 ,   森望

ページ範囲:P.241 - P.241

定義・概念

 1969年,Rowley1)により報告された症候群である。Rowley1)は両側頸瘻,両耳瘻孔,両混合難聴を呈した1例を報告し,以後これらの三症候を合併する者はRowley症候群と呼ばれている。

Rubinstein-Taybi syndrome

著者: 暁清文

ページ範囲:P.242 - P.242

定義・概念

 幅広い親指,大きな手足の指先,精神遅滞,特異な顔貌を特徴とする症候群で,広母指趾症候群とも呼ばれる。1963年,RubinsteinとTaybiにより初めて報告された。

Russell-Silver syndrome

著者: 暁清文

ページ範囲:P.243 - P.243

定義・概念

 低身長,逆三角の顔貌,顔面や四肢の左右非対称を特徴とする症候群で,Silverら(1953年)およびRussell(1954年)により初めて報告された。

S

Sanfilippo syndrome(ムコ多糖症Ⅲ型)

著者: 暁清文

ページ範囲:P.244 - P.244

定義・概念

 ムコ多糖症に分類される症候群の1つで,ヘパラン硫酸の全身組織への蓄積と尿への排出を特徴とする。1963年,Sanfilippoにより初めて報告された。中枢神経症状が顕著で,重篤な知能障害,多動がみられる。ムコ多糖症に特徴的な粗野な顔貌,関節・骨の変形などの身体的所見は比較的軽微である。常染色体劣性遺伝をとる。

Scheie syndrome(ムコ多糖症IS型)

著者: 竹田泰三

ページ範囲:P.245 - P.246

定義・概念

 ムコ多糖症は,正式にはムコ多糖代謝異常症という。アミノ糖を成分に持つ多糖類の一群であるムコ多糖体を分解する酵素が遺伝的に欠損しているために生じる疾患である。欠損遺伝子は4p16.3に座位する常染色体性劣性遺伝病に属する。尿中には大量のムコ多糖体が排泄され,また結合組織中のライソゾームにもムコ多糖体が蓄積する。病型には7型あり,そのうちalpha-L-iduronidase酵素の欠損によって生じるMPSⅠ型は,3つの異なる臨床型,Hurler syndrome,Scheie syndrome,Hurler-Scheie syndromeを呈する。このなかでScheie syndromeは最も軽症である。

Schmidt syndrome(vagoaccessory syndrome)

著者: 竹田泰三

ページ範囲:P.247 - P.247

定義・概念

 1892年にAdolf Schmidt1)によって報告された,核性,または核下に迷走,副神経が障害された症例に名付けられた症候群である。原典は両側性であるが,現在では一側性の声帯,軟口蓋,胸鎖乳突筋の麻痺を特徴とする症候群で,僧帽筋麻痺,斜頸,頭部の捻転障害なども伴う。Schmidt syndromeには特発性アジソン病に慢性甲状腺炎を伴う自己免疫疾患の異症候群がある。通常Schmidt syndromeといえばそれを指す。そこで混乱を避けるため,本症例は迷走副神経症候群(vagoaccessory syndrome)と呼ばれている。

Schwartz-Jampel syndrome(筋緊張性異栄養症)

著者: 竹田泰三

ページ範囲:P.248 - P.249

定義・概念

 Schwartz-Jampel症候群は,1962年,Oscar SchwartzとRobert S. Jampelによって特異な筋障害を伴う先天性瞼裂狭小例として初めて報告された。本症候群は常染色体性劣性遺伝疾患で,筋硬直,筋衰弱(大部分は非進行性)と,軽度であるが多くの形態的異常を伴う。これらの障害による運動障害は生後1年までに,しばしば出生直後より発現する。通常,特異な風貌によって初期診断が下される。本症候群は,typeⅠ(A,B)とtypeⅡに分類されているが,typeⅡは遺伝子変異の座がtypeⅠAとⅠBと異なるためStuve-Wiedemann症候群と同一のものではないかと考えられている。

Seckel syndrome

著者: 西﨑和則

ページ範囲:P.250 - P.250

定義・概念

 Seckel症候群は,子宮内および生後の成長障害で重度の低身長症を示すが,均整のとれた小人症で,精神発達遅滞,小頭症を特徴とする。Seckelが鳥の頭様低身長症(bird-headed dwarfism)として最初に報告した(1960)。原因遺伝子の存在する位置によってⅠ,Ⅱ,Ⅲ型に分類される。

Shprintzen-Goldberg syndrome

著者: 西﨑和則

ページ範囲:P.251 - P.251

定義・概念

 Shprintzen-Goldberg症候群は頭蓋癒合症,Marfan徴候,骨格系,神経系,心血管系,結合織の異常を伴う稀な症候群である。名称が似ているShprintzen症候群やGoldberg-Shprintzen症候群は別の症候群である。

Shy-Drager syndrome

著者: 西﨑和則

ページ範囲:P.252 - P.252

定義・概念

 1960年,ShyとDrager1)によって報告された自律神経症状を主とする症候群である。現在ではパーキンソニズムを主体とする線条体黒質変性症や脊髄・小脳変性症状を主体とするオリーブ橋小脳萎縮症とともに多系統萎縮症(multiple system atrophy:以下,MSA)に包括される2)。自律神経症状が主な場合はShy-Drager症候群と慣例的に呼ばれている。泌尿器系の自律神経症状で発症することが多いが,起立性障害が初発症状のことがある。自律神経症状が主体の場合でも運動機能障害が2年以内に明確になる。運動障害で発症する場合には5年以内に自律神経障害が出現する。

sinobronchial syndrome(副鼻腔気管支syndrome)

著者: 原田保

ページ範囲:P.253 - P.253

定義・概念

 副鼻腔気管支症候群(sinobronchial syndrome)は上気道と下気道に非特異的慢性感染性炎症疾患を併発した疾患である。上気道疾患として慢性副鼻腔炎,下気道疾患としてびまん性汎細気管支炎,気管支拡張症,慢性気管支炎である。上気道から下気道に及び,one way one diseaseとして本疾患を理解し治療戦略を立てる必要がある。Kartagener症候群,immotilecilia症候群,Young症候群,cystic fibrosisなどは特殊例と考えられている。

sinopulmonary infertility syndrome(副鼻腔・肺・不妊syndrome)

著者: 原田保

ページ範囲:P.254 - P.254

定義・概念

 Sinopulmonary infertility syndrome(以下,SIS)は,副鼻腔・肺の慢性気道感染性炎症疾患と不妊症を合併した疾病に付けられたものである。Immotilecilia症候群(以下,ICS:Kartagener症候群を含む),cystic fibrosis(以下,CF),Young症候群(以下,YS)がこの疾患群に含まれる。

Sipple syndrome

著者: 原田保

ページ範囲:P.255 - P.255

定義・概念

 Sipple症候群(以下,SS)は,甲状腺髄様癌に副腎髄質由来の褐色細胞腫あるいは副甲状腺機能亢進症の一方もしくは両者を合併する多発性内分泌腺腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:以下,MEN)である。SSはMENの2A型に属し,2B型は甲状腺髄様癌に口腔粘膜の神経腫,Marfan様体形や脊柱側彎とともに巨大結腸症などを合併するが副甲状腺の病変は伴わない。

Sjögren syndrome

著者: 平川勝洋 ,   小川知幸

ページ範囲:P.256 - P.256

定義・概念

 Sjögren症候群(以下,SS)は中年女性に好発する眼球,口腔乾燥症状を主症状とする自己免疫疾患で,1933年にスウェーデンの眼科医Sjögrenにより報告され基本概念が形成された1)。ほかの膠原病を合併しない一次性SSと,合併する二次性SSに分類される。

sleep apnea syndrome

著者: 平川勝洋 ,   小川知幸

ページ範囲:P.257 - P.257

定義・概念

 Sleep apnea syndrome(以下,SAS)は1976年にGuilleminaultら1)により,7時間の睡眠中に10秒以上続く無呼吸がノンレム睡眠を含めて30回以上認められるか,睡眠1時間あたりの無呼吸が5回以上生じ,さまざまな臨床症状を呈する状態と定義された。現在は無呼吸・低呼吸指数が1時間に5回以上出現し,臨床症状を伴うものをSASという。SASは中枢型,閉塞型,混合型に分類され,多くは閉塞型(obstructive SAS:以下,OSAS)である。

Sluder neuralgia syndrome

著者: 平川勝洋 ,   小川知幸

ページ範囲:P.258 - P.258

定義・概念

 Sluder1)により報告された片側の顔面痛で,症状の発現が翼口蓋神経節に関連があるとされ,sphenopalatine ganglion neuralgiaともいう。疼痛は一側性に鼻根部から同側の眼窩,顔面の下半分に広がり,時に乳突部,後頭部,頸部,肩,胸部,腕に放散する2)。発作の持続時間は数分~数日間で3),患側の自律神経症状(鼻閉,水様鼻汁,流涙など),知覚異常(軟口蓋,咽頭,鼻の知覚低下,顔面の知覚過敏など),また運動異常(患側軟口蓋の挙上など)を伴うことがある2)。現在では,症状の類似性から群発頭痛との関連性が指摘されている。

Sly syndrome(ムコ多糖症Ⅶ型)

著者: 北野博也

ページ範囲:P.259 - P.259

定義・概念

 Hurler症候群やHunter症候群を思わせる臨床症状を呈する疾患であり,β-glucuronidase活性低下が原因とされる1)

Smith-Lemli-Opitz syndrome

著者: 北野博也

ページ範囲:P.260 - P.260

定義・概念

 Smith-Lemli-Opitz syndrome(SLO症候群)は,1987年,Opitzら1)により初めて報告された発育障害,精神運動発育遅滞,小頭,外性器異常(男児)などを特徴とする症候群である。

Sotos syndrome(脳性巨人症)

著者: 北野博也

ページ範囲:P.261 - P.261

定義・概念

 過成長症候群の1つであり,末端肥大症様顔貌,過成長,精神運動発育遅延,脳室の拡大,小脳萎縮などを示す症候群である1,2)

staphylococcal scalded skin syndrome(SSSS)(ブドウ球菌性熱傷様皮膚syndrome)

著者: 川内秀之

ページ範囲:P.262 - P.262

定義・概念

 咽頭,鼻咽腔などの黄色ブドウ球菌感染病巣から産生された表皮剥脱毒素(exfoliative toxin:以下,ET)1)が血流を介して全身の皮膚に到達し,びまん性紅斑や表皮剝脱を引き起こす中毒性疾患である。乳幼児に多く,免疫能の低下した成人にも稀に発症する。

Stevens-Johnson syndrome

著者: 川内秀之

ページ範囲:P.263 - P.263

定義・概念

 皮膚の水疱,糜爛を伴う滲出性の紅斑の出現とともに,口腔粘膜,眼球結膜などの粘膜組織が障害される急性炎症性疾患である。多型滲出性紅斑の重症型に属する。

Stickler syndrome

著者: 川内秀之

ページ範囲:P.264 - P.264

定義・概念

 1965年にSticklerら1)により報告された眼症状および全身の結合組織に異常をきたす疾患である。

Sturge-Weber syndrome

著者: 菅原一真 ,   山下裕司

ページ範囲:P.265 - P.265

定義・概念

 Sturge-Weber症候群(以下,SWS)とは,Sturgeらが1879年に報告した症例が最初とされる疾患で,三叉神経領域の顔面血管腫と同側の脳軟膜血管腫を特徴とする先天性疾患である。眼の脈絡血管異常,緑内障を伴い牛眼を呈するものも存在し,古くは顔面血管腫,脳軟膜血管腫,牛眼が三主徴とされた。

sudden infant death syndrome(乳幼児突然死syndrome)

著者: 菅原一真 ,   山下裕司

ページ範囲:P.266 - P.266

定義・概念

 Sudden infant death syndrome(乳幼児突然死症候群:以下,SIDS)は,特に誘因なく乳幼児が突然死する疾患である。旧厚生省の定義では「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず,しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない,原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」とされる1)。死亡する場所が家庭内や保育施設であることがほとんどである。家庭内,社会の影響は小さくなく,場合によっては訴訟にまで発展するという問題がある。

superior orbital fissure syndrome(上眼窩裂syndrome)

著者: 菅原一真 ,   山下裕司

ページ範囲:P.267 - P.267

定義・概念

 動眼神経,滑車神経,三叉神経第一枝,外転神経の4つの脳神経は,頭蓋内より上眼窩裂を通過して眼窩内に至る(図1)。上眼窩裂周辺の小さな病変が原因でこれらの神経の麻痺症状が同時に生じる状態をsuperior orbital fissure syndrome(上眼窩裂症候群)と呼ぶ1)。さらに,視神経が障害された場合は眼窩先端部症候群と呼ばれる。

Sweet disease(スイート病)

著者: 鈴木秀明 ,   上田成久

ページ範囲:P.268 - P.268

定義・概念

 急性の発熱と末梢血白血球増多を伴い,顔面,頸部,上肢に有痛性の隆起性紅斑あるいは結節が多発する疾患で,病理組織学的には真皮上・中層に多数の好中球浸潤がみられる。1964年にSweet1)によって報告された。Sweet syndrome(スイート症候群),neutrophilic dermatosis(好中球性皮膚症),acute febrile neutrophilic dermatosis(急性熱性好中球性皮膚症)とも呼ばれる。

syndrome of superior cerebellar artery(上小脳動脈syndrome)

著者: 上田成久 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.269 - P.269

定義・概念

 上小脳動脈症候群は,上小脳動脈領域の梗塞による病巣と同側の小脳性運動失調および反対側の温痛覚障害を特徴とする疾患で,Mills症候群,上部橋外側症候群とも呼ばれる1)

systemic inflammatory response syndrome(SIRS)(全身性炎症反応syndrome)

著者: 上田成久 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.270 - P.270

定義・概念

 Systemic inflammatory response syndrome(以下,SIRS)は,sepsisの定義統一のため1992年に米国でされた概念である1)。全身性炎症反応症候群と邦訳されるが,その概念が広く普及した現在ではSIRSが使われることが多い。

 種々の侵襲による全身性炎症状態をSIRSとし,感染症によるSIRSをsepsisとした。またsepsisでなくても外傷,熱傷,急性膵炎などの非感染性侵襲によりsepsisと同様の全身性炎症を呈する病態が認識され,これらを含めた広い症候群としてSIRSが提唱された1)

T

Tapia syndrome

著者: 白土秀樹 ,   小宗静男

ページ範囲:P.271 - P.271

定義・概念

 喉頭麻痺をその一症候とし,それに種々の脳神経麻痺の組み合わせを伴う疾患群は「混合性喉頭麻痺」と呼ばれるが,Tapia症候群(vagohypoglossal syndrome)もその一亜型である。

 1906年,Tapiaら1)は迷走神経,舌下神経が末梢性に麻痺した症例を報告し,1864年にJacksonらが報告した症例と異なり軟口蓋麻痺を伴わないことに注目し発表した。鑑別すべき類似疾患としてCollet-Sicard症候群,Vernet症候群,Schmidt症候群,Avellis症候群,Villaret症候群などが知られている。実際の臨床例では,例えば腫瘍の占拠部位によって障害される神経が決まるため,これらの症候群のいずれも該当しないものも多い。

telecanthus-hypospadias syndrome(内眼角外方偏位-尿道下裂syndrome,Opitz syndrome)

著者: 白土秀樹 ,   小宗静男

ページ範囲:P.272 - P.272

定義・概念

 1965年,Opitzら1)が両眼開離と尿道下裂などの奇形を示す男性家系を報告した。現在ではOpitz-G症候群,Opitz-BBB症候群,hypertelorizm-hypospadias症候群,telecanthus-hypospadias症候群,Opitz oculogenitolaryngeal症候群,Opitz-Frias症候群などは,Opitz症候群と同義語と考えられている2,3)

Tietz(e) syndrome(肋骨肋軟骨関節炎)

著者: 白土秀樹 ,   小宗静男

ページ範囲:P.273 - P.273

定義・概念

 Tietze症候群は1921年にTietzeが初めて記載した肋軟骨の良性有痛性疾患で1),肋軟骨炎とならんで前胸部痛の原因疾患である。肋軟骨炎に比べて稀で若い女性に多い。定義がやや曖昧で臨床症状は胸肋鎖骨過骨症と類似するが,自然治癒することが多い。

Townes-Brocks syndrome

著者: 加藤寿彦

ページ範囲:P.274 - P.274

定義・概念

 1972年にP. L. TownesとE. R. Brocksが報告した鎖肛,手足の指の奇形,耳介の変形と感音難聴を伴った遺伝性疾患である1)

toxic shock syndrome

著者: 加藤寿彦

ページ範囲:P.275 - P.275

定義・概念

 Toxic shock syndrome(以下,TSS)は米国の小児科医であるToddらにより1978年に報告された1)。黄色ブドウ球菌が産生するtoxic shock syndrome toxin(以下,TSST-1)やエンテロトキシン(staphylococcal enterotoxin B, C)という外毒素によって起こる疾患である。

Treacher Collins syndrome

著者: 加藤寿彦

ページ範囲:P.276 - P.276

定義・概念

 Treacher Collins症候群は顔面部の種々の形成不全をきたす奇形症候群で,顎顔面骨形成不全症と総称される疾患であり,1900年にTreacher Collinsが2例を報告した1)

tricho-rhino-phalangeal syndrome type I(TRPS type I,毛髪・鼻・指節syndrome 1型)

著者: 星野志織 ,   飯野ゆき子

ページ範囲:P.277 - P.277

定義・概念

 細く粗な毛髪,鼻翼低形成による西洋梨状の鼻,短指趾症,低身長などを特徴とする症候群(online mendelian inhertance in man:以下,OMIM190350)。Giedion1)は1966年に,このような症例をtricho(=毛髪)-rhino(=鼻)-phalangeal(=指節骨)syndrome(以下,TRPS,TRPS-typeⅠ)と命名した。1984年にLangerら2)は,これらの特徴のほかに多発性軟骨性外骨腫,精神遅滞,小頭症を合併したものをTRPS-typeⅡ(OMIM150230)(Langer-Giedion syndrome)として確立した。さらにNiikawaら3)やSugio4)らが発表したTRPSは特に著明な短指趾症,高度な低身長があり,かつ精神遅滞のないものでTRPS-type Ⅲ(Sugio-Kajii syndrome)(OMIM190351)と報告された。

疫学・病因・遺伝性

 世界では150例を超える報告がある。本邦でも多数の報告があるが,軽症例は未診断の場合もあり,発生頻度は定かでない。遺伝形式は常染色体優性遺伝である。男女比は1:2で女性に多い。一部の症例で疾患遺伝子は8番染色体長腕(8q24.12)に局在するTRPS1遺伝子と証明されている5)。患者の90%でTRPS1遺伝子の変異が同定されている。

tricho-rhino-phalangeal syndrome type III(TRPS type III,毛髪・鼻・指節syndrome 3型)

著者: 星野志織 ,   飯野ゆき子

ページ範囲:P.278 - P.278

定義・概念

 1984年,SugioとKajii1)は細く粗な毛髪,西洋梨状の鼻,中手骨短縮による短指を示す4世代9人の家計を報告した。1986年にNiikawaとKamei2)は同様な症状を示す症例をtricho(=毛髪)-rhino(=鼻)-phalangeal(=指節骨)syndrome:TRPS-type Ⅲ(OMIM190351)もしくはSugio-Kajii syndromeとして報告した。TRPS-type ⅢはTRPS-typeⅠの重症型である。

疫学・病因・遺伝性

 TRPS-type Ⅲの報告は少なく,本邦では渉猟し得た限り3家族例1,3,4),2散発例2,5)の報告があるのみである。遺伝形式は常染色体優性遺伝と考えられている。原因遺伝子はTRPS-typeⅠと同様,TRPS1遺伝子と証明されている6)

Trisomy 13 syndrome

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.279 - P.280

定義・概念

 古典的常染色体トリソミー症候群(21,13,18)の1つである。最初の報告は,1960年のPatau1)による。13番染色体が3本となり,13番染色体上に座位する遺伝子量が50%増加することにより胎児の発生過程に影響を及ぼし,さまざまな症状を呈する先天的な多奇形を持つ症候群である。

Trisomy 18 syndrome

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.281 - P.282

定義・概念

 古典的常染色体トリソミー症候群(21,13,18)の1つであり,ダウン症に次ぐ染色体異常による多奇形症候群である。最初の報告は1960年のEdwardsら1)による。18番染色体が3本となり18番染色体上に座位する遺伝子量が増加し,胎児の発生発育過程に影響を及ぼしさまざまな症状を呈する。

Turner syndrome

著者: 中島格

ページ範囲:P.283 - P.283

定義・概念

 染色体上45Xで代表されるX染色体短腕の欠失を特徴とする染色体異常で,Y染色体のない核型,またはそれを含むモザイクである。

U,V

Usher syndrome

著者: 中島格

ページ範囲:P.284 - P.284

定義・概念

 Usher症候群は感音難聴と網膜色素変性を合併する常染色体劣性遺伝性疾患である1)

van der Woude syndrome

著者: 中島格

ページ範囲:P.285 - P.285

定義・概念

 下口唇小窩と唇裂または唇・口蓋裂を主症状とする唇小窩,唇裂症候群で,van der Woudeが遺伝性奇形症候群として確立させた常染色体優性遺伝性疾患である1)

Váradi syndrome(Váradi-Papp syndrome)

著者: 井之口昭

ページ範囲:P.286 - P.286

定義・概念

 口・顔・指症候群のⅥ型で,口・顔・指症候群の共通症状である顔面小奇形,口腔異常および指趾奇形に加えて,小脳奇形がある1)

VATER association(VATER連合)

著者: 井之口昭

ページ範囲:P.287 - P.287

定義・概念

 1973年にQuanとSmith1)によって提唱されたもので,椎骨異常(vertebral defects),鎖肛(anal atresia),食道閉鎖を伴う気管食道瘻(tracheoesophageal fistura with esophageal atresia),橈骨あるいは腎臓の異形成(radial and renal dysplasia)の頭字語をとって命名された奇形の連合である。このうち3つの症状があればVATER連合と診断する。現在は疾患概念を拡大して,心奇形(cardiac malformation),四肢奇形(limb anomalies)を加えてVACTERL連合とも称される2)

velo-cardio-facial syndrome(口蓋帆・心臓・顔貌syndrome)

著者: 井之口昭

ページ範囲:P.288 - P.288

定義・概念

 報告者の名をとってShprintzen症候群とも呼ばれる1)。染色体22番の長腕q11.2部位の微小欠損による多発先天形態異常症候群であり,類似症状を持つDiGeorge症候群,円錐動脈幹異常顔貌症候群とあわせてCATCH22(cardiac anomaly, abnormal facies, thymic hypoplasia, hypocalcemia, chromosome 22)と総称されることもある。

Vernet syndrome(頸静脈孔syndrome)

著者: 道津充 ,   高橋晴雄

ページ範囲:P.289 - P.289

定義・概念1)

 1916年,Maurice Vernetが初めて報告した症候群で,外傷,腫瘍,炎症,血管性病変による頸静脈孔の障害による一側脳神経の第Ⅸ(舌咽神経),第Ⅹ(迷走神経),第ⅩⅠ(副神経)の麻痺によりなる。別名,jugular foramen syndromeともいう。

Villaret syndrome(耳下腺後部syndrome)

著者: 道津充 ,   高橋晴雄

ページ範囲:P.290 - P.290

定義・概念1)

 Ⅸ・Ⅹ・ⅩⅠ ・ⅩⅡ 脳神経および頸部交感神経幹の障害によって起こり,Horner症候群とCollet-Sicard症候群の合併したものである。

Vogt-Koyanagi-Harada syndrome

著者: 道津充 ,   高橋晴雄

ページ範囲:P.291 - P.291

定義・概念1,2)

 本症は,(1)眼症状(ぶどう膜炎による症状として流涙,羞明,視力障害),(2)皮膚症状,毛髪症状(頭髪の脱落,白変,睫毛や眉毛の白変,体幹・四肢の皮膚白斑など),(3)耳症状(めまい,感音性難聴,耳鳴)がみられる症候群である。

von Hippel-Lindau(VHL)syndrome

著者: 鈴木正志 ,   末永智

ページ範囲:P.292 - P.292

定義・概念

 中枢神経系(小脳,脳幹,脊髄)の血管芽腫や網膜血管腫,腎細胞癌,褐色細胞腫,膵,腎,精巣上体の囊胞性病変,側頭骨の内リンパ管腫などを発生する常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性腫瘍症候群である。臨床的には褐色細胞腫を伴わないtype 1と,褐色細胞腫を伴うtype 2に分けられる。

W

Waardenburg syndrome

著者: 鈴木正志 ,   末永智

ページ範囲:P.293 - P.293

定義・概念

 白髪,白斑,虹彩異色などの色素異常と感音性難聴を主徴とする常染色体優性遺伝の疾患である。Waardenburg1)により1951年に,内眼角側方偏位をはじめとする眼の異常と難聴を合併する症候群として報告された。現在,臨床症状の違いからⅠ~Ⅳ型までの4型に分類されている。先天性難聴例の1%前後を占めるとされている。

Wagner syndrome

著者: 鈴木正志 ,   末永智

ページ範囲:P.294 - P.294

定義・概念

 常染色体優性遺伝の網膜硝子体変性症で,1938年にWagner1)が2世代13症例に認めた網膜,硝子体,水晶体の病変を伴う遺伝性疾患をdegeneratio hyaloideo-retinalis hereditariaとして報告したのが最初である。眼所見に加え,全身の骨端異形性,関節の過伸展,顔面中央部形成不全,口蓋裂,難聴などが合併した場合はStickler症候群と称されているが,その区別は明確にされていない部分もある。

Walker-Warburg syndrome

著者: 湯本英二

ページ範囲:P.295 - P.295

定義・概念

 Walker-Warburg症候群はⅡ型滑脳症,先天性眼疾患,先天性筋ジストロフィを主徴とし,常染色体劣性遺伝する稀な疾患である。1942年にWalker1)は,滑脳症,水頭症,小眼球症と網膜異常を持つ症例を,1971年にWarburg2)が先天性水頭症,小眼球症,網膜剝離を伴う例を報告し,本症候群の概念が確立した。

Wallenberg syndrome(延髄外側syndrome)

著者: 湯本英二

ページ範囲:P.296 - P.297

定義・概念

 Wallenberg症候群は延髄外側の梗塞によって起こる症候群で,1895年にWallenbergによって報告された1)。病巣側の顔面解離性感覚障害(温痛覚が障害され,触覚・深部感覚が正常に保たれる状態),ホルネル徴候,軟口蓋・咽頭・喉頭麻痺と対側の四肢軀幹の解離性感覚障害,小脳前庭症状をきたす。

Wegener granulomatosis(Wegener肉芽腫症)

著者: 湯本英二

ページ範囲:P.298 - P.298

定義・概念

 Wegener肉芽腫症(以下,WG)は1939年にWegenerによって報告され,(1)上気道と肺の壊死性肉芽腫,(2)壊死性肉芽腫性血管炎,(3)壊死性半月体形成腎炎を三主徴とする全身性の自己免疫疾患である。

Wer(n)er syndrome

著者: 湯本英二

ページ範囲:P.299 - P.299

定義・概念

 早期老化をきたす疾患の1つで,ほかに強皮症様皮膚変化,内分泌異常,悪性腫瘍の合併などの臨床的特徴を有し,常染色体劣性遺伝形式を示す。

Wernicke-Korsakoff syndrome

著者: 宮之原郁代 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.300 - P.300

定義・概念

 健忘症候群の1つで,長期のアルコール連用後にビタミンB1(チアミン)欠乏によりWernicke脳症を発症し,これに引き続いてKorsakoff症候群が顕在化してくることが多いためWernicke-Korsakoff症候群,あるいはWernicke-Korsakoff脳症と総称される1)

Wildervanck syndrome(cervico-oculo-acoustic syndrome)

著者: 宮之原郁代 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.301 - P.301

定義・概念

 1952年にWildervanckが,先天性難聴,Klippel-Feil症候群,外転神経麻痺(Duane症候群)を伴う症候群を報告し,のちに本症をWildervanck症候群とすることを提唱した。頸・眼・聴覚症候群ともいわれる。三主徴を伴わない不全型も存在する1,2)

Williams syndrome

著者: 宮之原郁代 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.302 - P.302

定義・概念

 遺伝性の神経発達障害で,しばしば軽度から中等度の精神発達遅滞を伴う。

Winter syndrome

著者: 宮之原郁代 ,   黒野祐一

ページ範囲:P.303 - P.303

定義・概念

 腎奇形,内性器異常,中耳の低形成を伴う遺伝性疾患1,2)である。

Y,Z

Young syndrome

著者: 玉城三七夫 ,   東野哲也

ページ範囲:P.304 - P.304

定義・概念

 Young症候群は慢性副鼻腔炎,気管支拡張症または慢性気管支炎に特発性閉塞性無精子症を合併した病態である1)

s

Zellweger syndrome(脳肝腎syndrome)

著者: 玉城三七夫 ,   東野哲也

ページ範囲:P.305 - P.305

定義・概念

 Zellweger症候群(脳肝腎症候群)は,ペルオキシソームの形成異常,多彩な代謝異常,重篤な中枢神経障害を特徴とする常染色体劣性遺伝性の疾患群であり,1964年にBowenらにより初めて報告された1)

 新生児型副腎白質ジストロフィ,乳児型Refsum病とともにペルオキシソーム形成異常症に分類される。これら3病型には明確な区別があるわけではなく,連続的な表現型と考えられている2)

zinc deficiency syndrome(亜鉛欠乏syndrome)

著者: 玉城三七夫 ,   東野哲也

ページ範囲:P.306 - P.306

定義・概念

 Zinc deficiency症候群(亜鉛欠乏症候群)は,必須微量元素である亜鉛が欠乏状態となり,味覚障害や皮膚炎などさまざまな症状を引き起こした病態である。1963年,Prasadら1)によりヒトにおける亜鉛欠乏症の最初の報告がなされた。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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