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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻6号

2006年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

原発不明頸部神経内分泌癌の1症例

著者: 長尾淳一 ,   田口享秀 ,   佐久間直子 ,   三上康和 ,   佃守

ページ範囲:P.358 - P.359

神経内分泌腫瘍は全身のあらゆる部位に発生しうる1)が,頭頸部領域に発生する神経内分泌癌はきわめて稀である。今回われわれは,原発不明頸部神経内分泌癌と考えられた症例を経験したので報告する。

Current Article

内視鏡下鼻副鼻腔手術の応用編

著者: 田村学

ページ範囲:P.361 - P.371

Ⅰ はじめに

 内視鏡下鼻副鼻腔手術は,1985年頃にKennedy1)とStammberger2)により発表されて以来,またたく間に普及し,副鼻腔炎に対する外科的治療の主流となっている。上顎洞,前頭洞の開口部と鼻腔の交通路によって形成される部位をostiomeatal complexと呼ぶが,内視鏡下鼻副鼻腔手術はこのostiomeatal complexの病変を除去することにより副鼻腔と鼻腔の交通路を確立でき,副鼻腔における換気と排泄が可能となることによって副鼻腔炎は治癒するという概念に基づいて普及してきた。CaldwellやLuc以来,約100年,副鼻腔内の粘膜をすべて摘出する副鼻腔根本術を行ってきた耳鼻咽喉科医にとっては画期的な理論で,またたく間に世界中に普及した。当初,内視鏡下鼻副鼻腔手術は副鼻腔炎の治療のために開発され,そして改良されてきたわけだが,今日では内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術は低侵襲で深部での手術操作を可能とするという特性を生かして,副鼻腔炎のみならず副鼻腔の周辺組織における疾患にも用いられるようなり,その威力を発揮している。

 本稿では,内視鏡の持つ“低侵襲で深部での手術操作が可能”という特性を生かした手術を紹介するため,内視鏡下鼻副鼻腔手術の応用編として表1に示した副鼻腔周辺における内視鏡手術について概説する。

原著

小児Ramsay Hunt症候群の3例

著者: 横山哲也 ,   山崎一春 ,   石島健 ,   佐藤宏昭 ,   小林有一

ページ範囲:P.373 - P.377

I.はじめに

 小児期におけるRamsay Hunt症候群の発症頻度は,全顔面神経麻痺症例の2.3~3.9%1,2)と低い。一般に予後は成人と比較し良好であるとされているが,成人と変わらないとする報告1,3)もあり,その治療法についても一定の見解が得られていない。今回われわれは,3例の小児Ramsay Hunt症候群症例に対してアシクロビルとプレドニゾロンの併用療法を施行し良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加え報告する。

喉頭平滑筋肉腫の1例

著者: 藤田健介 ,   兵頭政光 ,   杉本晃 ,   鵜久森徹 ,   山形和彦

ページ範囲:P.379 - P.383

I.はじめに

 喉頭原発の悪性腫瘍はほとんどが扁平上皮癌で,非上皮性腫瘍は約1%と少ない1)。一方,非上皮性腫瘍のうち肉腫については,頭頸部領域では横紋筋肉腫が多くを占め,平滑筋肉腫は稀である1)。平滑筋肉腫の診断は,臨床的にも組織学的にもほかの間葉系腫瘍との鑑別が困難であるとされているが,近年の免疫組織学的検査法の進歩によりその報告も徐々に増えつつある。しかし喉頭原発の平滑筋肉腫は本邦では十数例の報告があるのみで,治療方針も確立されていない。今回われわれは,喉頭に発生した平滑筋肉腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

皮下気腫が進行し“マジック・ボイス”様の音声変化をきたした症例

著者: 今滝修 ,   富澤恒二 ,   南波美伸 ,   角田紘二

ページ範囲:P.385 - P.387

I.はじめに

 胸腔穿刺に伴う皮下気腫の合併は比較的頻度は低い。皮下気腫は通常,経過観察のみで治癒し,何らかの治療的介入を必要とすることはほとんどない。広範かつ重度の皮下気腫は,多くは気管もしくは気管支の損傷の際にみられる稀な合併症の1つである1,2)。また気管切開の際には,臨床上問題となるような皮下気腫の頻度は1.4%である3)。経皮的に胸腔内や気道内にチューブ挿入を行い生じた皮下気腫は,チューブを入れ替えるか抜去することで自然に改善し,特別な処置を要することはない。しかし,皮下気腫から縦隔気腫を併発した場合,縦隔内の気泡が気道を圧排し緊急の処置が必要となることが想定される。また,皮下気腫が頭頸部に進展した場合,上気道の粘膜下に貯留した気泡が気道を狭小化し,嗄声や鼻声および音声変化をきたすことが知られている4,5)

 今回われわれは,中心静脈カテーテル挿入に伴う外傷性気胸のために行った胸腔内ドレナージチューブの挿入部から皮下気腫をきたし,ドレナージチューブ抜去後も皮下気腫が進展し音声変化を認めるに至った症例を経験した。これは,皮下気腫が頭頸部に進展した際の気道粘膜下気腫の程度を予測するのに重要な知見であり,稀な合併症として文献的考察を加えて報告する。

外頸静脈に生じたvenous aneurysmの1例

著者: 松井雅裕 ,   島田剛敏 ,   中野宏 ,   上田大 ,   四ノ宮隆 ,   中井茂 ,   久育男

ページ範囲:P.389 - P.393

I.はじめに

 頸部腫瘤を主訴とする疾患のなかで,静脈脈瘤は稀で本邦報告例は33例に過ぎない。今回われわれは,右の頸部腫瘤を主訴に受診した外頸静脈に生じたvenous aneurysm例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

甲状腺濾胞性腫瘍の手術適応の検討

著者: 藤久仁親 ,   藤井隆 ,   上村裕和 ,   栗田智之 ,   赤羽誉 ,   鈴木基之 ,   宇和伸浩 ,   吉野邦俊

ページ範囲:P.395 - P.398

I.はじめに

 甲状腺の悪性腫瘍である濾胞癌と良性腫瘍である濾胞腺腫との手術前の鑑別は,細胞異型や組織構築の異型ではなく,被膜浸潤や脈管浸潤の有無,甲状腺外への転移に有無により決定される。そのため,臨床所見や超音波検査,穿刺吸引細胞診などで微小浸潤型濾胞癌の術前診断をつけることは非常に困難な場合がある。このような場合,診断を含めた手術を患者に勧めることが多く,諸施設間で術式,追加治療が異なるのが実情である。

 そこで,腫瘍最大径と術前サイログロブリン値に関して濾胞癌と濾胞腺腫の間で比較し,手術適応の補助になるかどうかを検討した。

頸部放線菌症の1例

著者: 深谷和正 ,   大久保啓介

ページ範囲:P.399 - P.402

I.はじめに

 放線菌症は,人の常在菌である放線菌によって発症する稀な炎症性の疾患である。放線菌は口腔内常在菌であり,なかでも齲歯や歯垢などに常在する放線菌が原因となり発症することが多い。そのため,顔面頸部領域が放線菌症の好発部位となっている5)。近年は,抗菌薬の普及によって慢性型の肉芽腫病変として経験されることも多い。そのため頭頸部領域において放線菌症は,腫瘍に似た臨床像を呈し腫瘍との鑑別が困難であることがある。今回われわれは,右顎下部腫瘤を認め種々の検査により悪性腫瘍が否定できず摘出術を行った結果,放線菌症と判明した1症例を経験したので報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

③めまい(前庭機能障害)

著者: 鎌田英男 ,   古屋信彦

ページ範囲:P.409 - P.414

Ⅰ はじめに

 クリニカルパスはクリティカルパスとも呼ばれ,Zander1)は「患者が内科的,外科的,精神的な危機から回復したり,状態が安定したりするのを援助するために,特定の時間の枠組みのなかでケアや医療スタッフ,支援部門が必要とする行動をまとめているツール」と述べている。

 現在では,クリニカルパスは「医療チームが患者の通常の臨床経過とケアに関する理解を共有することによる,医療の質を向上するための患者管理システム」であり2),1つの疾患群で入院での医療介入計画を時系列で記載した医療計画書とその介入に際しての医療内容の質の管理と至適化,医療の効率化を目的とする,評価,改善のシステムである3)。また,包括医療(以下,DPC)の導入施設ではクリニカルパスを導入することにより在院日数の短縮,医療経済に対する有効性が期待される。

 クリニカルパスは本来,1つの疾患群について,医療介入計画を医療内容(職種)ごとに介入内容と期待される効果(アウトカム)を時系列で表示し,一覧表あるいは日めくり帳形式で記載された総合医療計画書,それに対する医療内容と質の管理,至適化,医療経営の効率化を目的とした,評価,改善のシステムである。このことから,頻度が高くバリアンス(予測される結果と実際の差)が生じにくい複雑でない疾患群がパスの適用に適しているされる。めまい症例ではいろいろな疾患群が含まれているが,初期の対応(診断までの経過)は共通性があると考えられるためにクリニカルパスを作成している。

 DPCのなかでの入院めまい症例に対してのクリニカルパスについて述べる。

③めまい(前庭機能障害)

著者: 渡辺行雄

ページ範囲:P.415 - P.418

Ⅰ はじめに

 耳鼻咽喉科におけるクリニカルパスは,経過が定型的である各種の手術,顔面神経麻痺や突発性難聴に対する保存的治療などの治療計画を標準化することにより,診療側,患者側に種々の利点をもたらすものである。

 しかし,めまいでは,発症後の経過が多様であり,クリニカルパスを策定する場合にはかなり複雑なコース設定をする必要がある。本稿では,救急搬送された急性発症のめまい患者に対し入院加療を行うことを前提としたクリニカルパスの基本的な考え方について解説する1,2)

鏡下咡語

宇宙実験余話

著者: 五十嵐眞

ページ範囲:P.406 - P.407

いよいよ宇宙tourism時代の幕開けということのようですが,私が過去40年余にわたって関与してきたいくつかの宇宙実験を通じて得られた体験(専門分野以外の事柄も含めて)の一部をお話ししようと思います。

 Astronautsが選び抜かれた人材であることはその顔ぶれをみれば良くわかりますが,宇宙医学の研究者側の顔ぶれをみると,やはりMITをはじめIvy LeagueのHarvardやJohns HopkinsとかCalifornia州やTexas州などの有力大学の面々が名をつらね,学閥の力を強く感じさせられます。宇宙飛行実施関係の方でも,空軍や海軍のパイロット出身が適当に数とか順番をふりわけあってやっている感じです。私がいまだHoustonで働いていたころに選抜されてこられた日本人のastronauts第1期生の毛利,向井,土井の3先生は,ほれぼれするような人柄と素晴らしい才能を兼ねそなえられた方たちで,流石と感じられたことでした。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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