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文献概要
原著
頸部放線菌症の1例
著者: 深谷和正1 大久保啓介1
所属機関: 1佐野厚生総合病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.399 - P.402
文献購入ページに移動I.はじめに
放線菌症は,人の常在菌である放線菌によって発症する稀な炎症性の疾患である。放線菌は口腔内常在菌であり,なかでも齲歯や歯垢などに常在する放線菌が原因となり発症することが多い。そのため,顔面頸部領域が放線菌症の好発部位となっている5)。近年は,抗菌薬の普及によって慢性型の肉芽腫病変として経験されることも多い。そのため頭頸部領域において放線菌症は,腫瘍に似た臨床像を呈し腫瘍との鑑別が困難であることがある。今回われわれは,右顎下部腫瘤を認め種々の検査により悪性腫瘍が否定できず摘出術を行った結果,放線菌症と判明した1症例を経験したので報告する。
放線菌症は,人の常在菌である放線菌によって発症する稀な炎症性の疾患である。放線菌は口腔内常在菌であり,なかでも齲歯や歯垢などに常在する放線菌が原因となり発症することが多い。そのため,顔面頸部領域が放線菌症の好発部位となっている5)。近年は,抗菌薬の普及によって慢性型の肉芽腫病変として経験されることも多い。そのため頭頸部領域において放線菌症は,腫瘍に似た臨床像を呈し腫瘍との鑑別が困難であることがある。今回われわれは,右顎下部腫瘤を認め種々の検査により悪性腫瘍が否定できず摘出術を行った結果,放線菌症と判明した1症例を経験したので報告する。
参考文献
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