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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科78巻7号

2006年06月発行

雑誌目次

特集 知っておきたい耳鼻咽喉科疾患の病理

1.中耳・外耳疾患

著者: 横山哲也 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.449 - P.456

Ⅰ. はじめに

 聴器腫瘍は基本的に耳鼻咽喉科医が診断し加療する疾患であるが,耳介や外耳道は皮膚科医や形成外科医が扱うことも多い。頭頸部癌取扱い規約に聴器癌の記載はなく,耳介癌はUICCのTNM分類でも皮膚腫瘍として取り扱われている。聴器腫瘍は発生部位により耳介腫瘍,外耳腫瘍,中耳腫瘍に分類されるが,皮膚,軟骨,骨,粘膜が複雑に存在する器官であり,表1に示すようにその病理組織型は多岐にわたる。

 本稿では諸家の報告をもとに聴器(耳介,外耳道,中耳)腫瘍を概説したうえで,典型的な鼓室型グロムス腫瘍例と鼓室型グロムス腫瘍との鑑別が困難であった中耳カルチノイド腫瘍例を呈示する。

2.鼻・副鼻腔疾患

著者: 平川勝洋

ページ範囲:P.457 - P.463

Ⅰ. はじめに

 鼻科領域の疾患においても病理学的知見は疾患の良・悪性の鑑別のみならず,悪性である場合,その程度や病勢の診断に重要であることは他領域と同様である。本稿では鼻・副鼻腔疾患の病理について概説する。

3.口腔・咽頭疾患

著者: 河田了 ,   辻求

ページ範囲:P.465 - P.468

Ⅰ. はじめに

 口腔・咽頭領域の病理で問題となる疾患は多数あるが,そのなかで前癌病変が問題となる口腔疾患,すなわち口腔白板症・紅板症および扁平苔癬について,また粘膜下進展が特徴とされて下咽頭癌について述べる。また下咽頭癌では直達鏡検査時にルゴール染色が行われるようになったが,その不染帯の病理組織についても述べる。

4.喉頭疾患

著者: 金谷洋明 ,   平林秀樹

ページ範囲:P.469 - P.476

Ⅰ. はじめに

 頭頸部外科医にとって,診断ないし治療のために切除された病変を,病理形態学的に理解できるか否かは重要なことと思われる。病理形態像を理解するということは,疾患そのものを理解することにほかならないからである。時にレジデントや若手の医師から「学生時代に病理学が苦手だったので,病理標本に興味はなく,みてもさっぱりわからない」といった言葉を聞くが,非常に残念なことに思われる。ここでは,日常診療で遭遇する頻度の高い喉頭疾患,あるいは頻度は高くないが特徴的な病理形態像を示す疾患を中心に,知っておきたい病理組織像を呈示した。また,病理レポートに記載されているさまざまな用語も折にふれて解説した。いずれも筆者がかつて病理医としてのトレーニングを受けた際に疑問に思い,また臨床医からよく質問された内容である。なお外科病理学に関する国内外のいくつかの素晴らしいテキスト1~4)があるので,ぜひ参考にしていただきたい。

5.唾液腺疾患

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.477 - P.482

Ⅰ. はじめに

 唾液腺腫瘍をはじめとする唾液腺疾患は多岐にわたり,その病理組織像はきわめて多彩である。これらの理由から症例によっては病理診断がしばしば困難で,生検のみならず腫瘍全摘出後の組織でさえ病理医によって診断が一致しないことがある。手術後の診断で困惑させられた経験を持つ耳鼻咽喉科医も少なくないと考えられる。比較的特殊な唾液腺腫瘍の専門病理医が少ないこともあり,良・悪性の診断でさえあいまいなことも経験する。治療に当たり唾液腺疾患のそれぞれの概念と臨床的特徴を理解することはいうまでもないが,われわれ臨床医も各腫瘍の病理組織像の特徴を理解しておくことは診断と治療を行ううえで重要なことと考えられる。

6.甲状腺疾患

著者: 北野博也 ,   堀江靖

ページ範囲:P.483 - P.490

Ⅰ. はじめに

 甲状腺疾患のうち,われわれ頭頸部外科医が主としてかかわるのは甲状腺腫瘍であろう。甲状腺腫瘍を取り扱う基礎となる病理組織分類について,2004年にWHOから新しい分類が発表された(表1)1)。それを受けて,本邦の甲状腺外科研究会は甲状腺取扱い規約を2005年9月に改訂した(表2)2,3)。今回の改訂は国際分類基準との互換性をも念頭に置いたものであり,いくつかの大きな変更点がある。本稿では新しい甲状腺取扱い規約(第6版)での留意すべき点も含め,甲状腺腫瘤の病理学的診断に関して頭頸部外科医が注意すべき点について述べる。

 当然のことながら,病理学的に検索するためには組織の採取が必要である。手術時あるいは手術終了後,摘出標本より組織を採取する場合を除いて生検を行う。生検方法には切開して組織を採取する方法や,直接切除する方法,針生検,穿刺吸引細胞診などがある。甲状腺の診断の際には,通常エコーガイド下の穿刺吸引細胞診が行われている。穿刺吸引細胞診が行われるのは,侵襲が比較的小さく安全性が高いことと,診断成績がよいためである。ここで注意すべきことは,甲状腺癌の大多数を占める乳頭癌の診断に際して穿刺細胞吸引診はほぼ満足できるが,乳頭癌についで多い濾胞癌の診断は難しいことをはじめとして,穿刺吸引細胞診の限界を知って行うことである。

 まず,甲状腺腫瘤に対する穿刺吸引細胞診の実際を中心に述べる。

目でみる耳鼻咽喉科

稀な中耳腺腫の1症例

著者: 茂木英明 ,   大塚明弘 ,   我妻道生 ,   工穣 ,   上原剛 ,   宇佐美真一

ページ範囲:P.434 - P.435

 中耳に発生する腫瘍は非常に稀であり,術前に的確に診断することが困難である症例が多い。今回われわれは,術前に中耳腫瘍を念頭に置き鼓膜切開を行い,採取した組織について術中迅速病理診断を行ったうえで全摘出した中耳腺腫の症例を経験したので報告する。

Current Article

好酸球性鼻・副鼻腔炎症におけるプロスタグランジンD2/E2代謝の位置付けと治療への展望

著者: 岡野光博

ページ範囲:P.437 - P.447

Ⅰ はじめに

 プロスタグランジン(以下,PG)は脂質メディエーターの1つであり,免疫・アレルギーを制御する分子として重要である1)。なかでもPGD2およびPGE2は気道炎症と密接に関与する2)。PGはそれぞれに特異的な受容体に結合し生理作用を発揮する。受容体遺伝子のクローニングが進み,現在までにPGD2には2種類の,またPGE2には4種類の受容体が同定されている。さらに共役する細胞内情報伝達機構が明らかとなり,改ためてPGD2およびPGE2の多彩な作用が注目されている。

 本稿では,鼻・副鼻腔におけるPGD2/PGE2代謝関連分子(PG自身や合成酵素あるいは受容体発現など)の発現について,われわれの研究結果を交えながら最近の知見を紹介し,アレルギー性鼻炎やいわゆる好酸球性副鼻腔炎などの好酸球性鼻・副鼻腔炎症におけるPGD2/PGE2代謝の臨床的な意義について概説する。

 また,鼻・副鼻腔における好酸球性炎症には,好酸球自身はもとよりマクロファージやリンパ球などの浸潤細胞,および線維芽細胞や血管内皮細胞などの構築細胞が,細胞接触あるいは産生するケモカイン・サイトカインなどを介して関与すると考えられる。今回は好酸球性炎症の制御細胞としてこれらの細胞の中からT細胞を取り上げ,PGD2/PGE2によるT細胞機能の制御について諸家の報告に自験例を交え概説し,鼻・副鼻腔の好酸球性炎症に対するPGD2/PGE2代謝を利用した制御戦略の可能性について考察する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

④アデノイド切除・扁桃摘出術(小児)

著者: 佐野光仁

ページ範囲:P.497 - P.502

Ⅰ はじめに

 前例のない超高齢化社会に突入し,また超低体重児などの小児医療の進歩により,医療の水準は進歩するものの医療費は増加を続けている。現行の出来高払い制度は,ややもすると過剰診療に陥りやすいことや,医療の質が十分に評価に反映されないなど批判が多い。そのために医療費をいかに適正化するかが検討されている。これらを踏まえて2003年より特定機能病院の一般病床で診断群分類(diagnosis procedure combination:以下,DPC)1,2)による包括的診療報酬制度が導入され,またさらに2004年からは一部の民間病院にもDPCに基づく包括的医療評価の対象が広がった。このような風潮は特定機能病院だけでなく,一般病院にも広がると推察される。そこには医療内容の明確化,医療の標準化,業務の効率化,また医療の質の向上を目的としてクリニカルパス(以下,パス)による治療3)が採用され,その使用も増加している。耳鼻咽喉科領域においても用いられるようになった4~6)

 われわれの病院では包括診療報酬制度は導入されていないが,今後の展開を見据えて,耳鼻咽喉科で行われている,パスにより治療計画が立てやすい扁桃摘出術とアデノイド切除術のパスを紹介する。

④アデノイド切除・扁桃摘出術(小児)

著者: 工藤典代

ページ範囲:P.503 - P.510

Ⅰ はじめに

 アデノイド切除術・扁桃摘出術(以下,アデレク)は当科で最も多い手術術式である。当院開設以来17年が経過し,常に年間130~150例の手術件数があり,治療・監視体制や入院日数など開院当初とほとんど変わらずに経過していた。したがってクリニカルパス(以下,CP)導入に当たっては,それまでの約2,000例の手術症例と経験から日常行っている治療や評価項目を表にし,スムーズにCPを作成することができた。当科の現状を以下に述べる。

鏡下咡語

サイクルヒット

著者: 村上泰

ページ範囲:P.493 - P.495

 2005年の日本シリーズは阪神タイガースの4連敗で,関西に住まう者としては何となく後味の悪い結末であったが,テレビで観戦した限りでは当然の結果であったようにも思われる。10点という大差のせいでそうみえたのかも知れないが,千葉ロッテマリーンズの若い選手達の元気はつらつとしたプレーに対して,タイガースの選手達は皆一様に萎縮してみえた。シーズン中の大事なゲームでは,ここぞというときに必ず打ちまくって甲子園を埋め尽くした大観衆を狂喜させたあのガッツ溢れるプレーは,一体どこに消え失せてしまったのであろうか。バレンタイン・マジックにたぶらかされたとしかいいようのない摩訶不思議な現象であった。それにしても第1戦~第3戦にかけて,9打席連続ヒットという途轍もないシリーズ新記録を打ち立てた選手もいて,大差のわりには最後まで興味深く観戦することができた。傍若無人の日本バッシングを国是としている近隣覇権主義国からの度重なる傲慢無礼な「通達」と,それに対する当局の優柔不断な対応をみるにつけ,どうにも歯がゆい思いの毎日であっただけに,その鬱憤を晴らしてくれるかのように楽しいイベントであった。

 野球の打撃部門の快挙として,サイクルヒットがある。一試合中にある打者が,ホームラン,三塁打,二塁打,シングルヒットのすべてを打った場合のことで,日本のプロ野球界でもすでに何人もこのおめでたい記録に名を連ねている。すでに古希を迎えた私には,野球でのサイクルヒットなど遠い昔の夢になってしまった。しかし,必ずしもサイクルヒットは野球だけに限られたものではない。いろいろな分野で,これに類する記録に挑戦している方々も沢山おられる。ここでは,私自身が経験したサイクルヒットについて述べてみたい。自慢話になってしまうので誠に恐縮ではあるが,一老医の世迷いごととして聞き流していただければ幸いである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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