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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻10号

2007年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

内視鏡下に修復を行った髄液鼻漏症例

著者: 鈴木幹男 ,   平川仁 ,   又吉宣 ,   親泊美香 ,   伊志嶺了

ページ範囲:P.712 - P.714

I.はじめに

 髄液鼻漏は外傷性と非外傷性に分けられる1)。外傷性では,頭部外傷や医原性(頭蓋底手術後など)があり,髄液鼻漏の約96%を占める。非外傷性には腫瘍,水頭症,先天性裂隙などが含まれる。われわれは副鼻腔炎術後5年を経過して発症した髄液鼻漏症例を経験した。当初,副鼻腔炎手術合併症を疑ったが,手術所見から副鼻腔の先天性裂隙に生じた髄液漏と診断したので報告する。

Current Article

内耳を3次元画像で観察する目的と方法

著者: 枝松秀雄

ページ範囲:P.715 - P.722

I はじめに―内耳の3次元画像が必要な理由

 内耳の病変である難聴やめまいの診断には,内耳形態の病理組織学的な確認が重要であるが,一般臨床の現場では生体内耳を直接観察することはできない。このため,ABRやENoG検査などの電気生理学的検査法や純音聴力検査などの聴覚心理検査が主として用いられてきたが,これらは内耳病変の直接的な確認ではなく間接的な検査法であるため医学的診断としては少なからぬ制限がある1~3)

 従来の画像診断法での内耳の観察には大きな問題があった。その理由は,内耳は蝸牛,前庭,三半規管,内耳道など複雑な立体構造を有し,またその大きさがミリ単位の微細な器官であるため,従来の2次元的な情報ではたとえ経験を積んだ耳鼻科の専門医であっても画像診断で正常と異常の鑑別さえ困難な場合が少なくないからである4)

 人体は3次元的に構成されているが,従来のX線情報ではCTに代表されるような2次元的な切断面における情報が主体であった。このため,各断面の不連続な画像情報を基にして病変の範囲や病態そのものを視覚的に統合して把握することは,臨床経験の少ない若い医師や医学生には困難であり,インフォームド・コンセントを受ける患者やその家族にとっても必ずしも理解しやすい視覚材料とはいえない。

 最近のコンピュータ技術の著しい発展に伴って,最新の画像撮影機器が臨床の各分野に新しく導入されたため,耳鼻咽喉科領域におけるさまざまな病態の画像診断にも3次元画像が可能となってきた。特に内耳の3次元CTとMRIでは,解剖の図譜を見るように立体的に内耳の全体像を観察することが可能となり,人工内耳の術前検査として蝸牛内に電極挿入のためのスペースや外リンパの存在を確認するためにも有用である。これらの新しい画像処理システムの革新的な進歩により,従来では不可能であった内耳性病変による難聴やめまいに対して新しい画像診断の可能性が生まれようとしている5~9)

原著

迷路気腫を伴った術後性外リンパ瘻の1例

著者: 新藤晋 ,   池園哲郎 ,   八木聰明

ページ範囲:P.725 - P.729

I.はじめに

 迷路気腫(pneumolabyrinth)とは,1984年にMafeeら1)が初めて使用した用語で,外リンパ瘻に伴い内耳に気泡が存在する状態である。本症の原因として,先天奇形2),外傷3~7),中耳手術後1,8~11)の報告があるが,国内では外傷による2症例12,13)の報告のみである。本稿では,アブミ骨手術後に発症した迷路気腫を伴う外リンパ瘻に対して手術を施行し,著明な聴力改善が得られた症例を経験したので,迷路気腫の特徴について考察しながら報告する。

外耳道肉腫の1例

著者: 和田昌興 ,   岡本牧人

ページ範囲:P.731 - P.734

I.はじめに

 悪性軟部腫瘍は全悪性腫瘍の0.1%とその占める割合はきわめて低い。多くは上・下肢に発生するため頭頸部領域に発生することはきわめて稀とされている1)

 われわれは外耳道より発生したと考えられる分類不能型の肉腫症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

耳介に生じた紡錘形細胞脂肪腫の1例

著者: 石原明子 ,   高橋直人 ,   西嶌渡 ,   鈴木政美 ,   大野十央 ,   得丸貴夫 ,   出雲俊之 ,   西田一典

ページ範囲:P.735 - P.737

I.はじめに

 紡錘形細胞脂肪腫(spindle cell lipoma)は脂肪組織由来の腫瘍の特殊型であり,中高年男性の後頸部や背部,肩部皮下に認められることが多い1)。ほかにも頻度は低いが,顔面や前額部,頭皮,頰部,上腕に生じたものも報告されている2~4)。しかし,これまでに耳介に生じた紡錘形細胞脂肪腫の報告5)はほとんどない。今回われわれは,30年の経過で耳介に生じた紡錘形細胞脂肪腫の症例を経験したので報告する。

上顎spindle cell carcinomaの1例

著者: 西嶋文美 ,   金子富美恵 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.739 - P.742

I.はじめに

 Spindle cell carcinomaは上皮系由来の紡錘型細胞からなる悪性腫瘍で,肉腫様所見を呈する扁平上皮癌の亜型である。頭頸部領域では喉頭での報告例が多いが頻度は低く1,2),上顎洞ではきわめて稀な腫瘍といえる3)。今回われわれは左上顎洞に発生したspindle cell carcinomaを経験したので報告する。

Branchio-oto症候群の1例

著者: 亀田聡子 ,   樋上訓子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.743 - P.747

I.はじめに

 1975年にMelnickら1)により報告された鰓原性奇形(branchiogenie dysplasia:側頸瘻,耳瘻孔,外耳奇形など),難聴(otodysplasia:内耳奇形,中耳奇形など),腎形成不全(renal dysplasia)を特徴とする症例はbranchio-oto-renal(BOR)症候群と総称されている。さらに本症候群の亜型として腎形成不全を伴わないものはbranchio-oto(BO)症候群と称されている。

 今回,われわれは両側感音難聴を伴う第二鰓裂由来と考えられた先天性両側側頸瘻を示したBO症候群の1症例を経験したので報告し,併せてわが国において過去に報告された本症候群45例について考察する。

耳下腺intraductal papillomaについての検討

著者: 小林克彦 ,   内藤武彦 ,   塚本耕二 ,   金井信一郎 ,   伊藤信夫

ページ範囲:P.749 - P.752

I.はじめに

 唾液腺の導管内乳頭腫(intraductal papilloma:IDP)は導管乳頭腫(ductal papilloma)の一亜型であり1),単房性の拡張を伴い,導管上皮の管腔への乳頭状増殖を示すのが特徴である。IDPは唾液腺腫瘍3,100例中4例(0.13%)に認めるのみできわめて稀な良性腫瘍であり2),小唾液腺に発生頻度が高く,大唾液腺では少ない1)。今回われわれは耳下腺に発生したIDPを経験したので報告する。

フォンレックリングハウゼン病に合併した鎖骨下動脈瘤の1症例

著者: 松田帆 ,   後藤穣 ,   島田健一 ,   横山有希子 ,   酒主敦子 ,   馬場俊吉 ,   愛野威一郎

ページ範囲:P.753 - P.755

I.はじめに

 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域では,日常診療において頸部腫脹や腫瘤はよく遭遇する病態である。原因は多岐に及ぶので,理学的所見や画像診断から診断が容易な典型的疾患から,診断に苦慮する症例までさまざまである。今回われわれは頸部腫脹を主訴とし,術中の血管造影で鎖骨下動脈瘤と診断した症例を経験したので報告する。

上気道閉塞に伴った陰圧性肺水腫例

著者: 望月幸子 ,   望月高行 ,   米田律子 ,   廣瀬肇 ,   佃守

ページ範囲:P.757 - P.760

I.はじめに

 頭頸部の手術は術後出血や気道浮腫,上気道閉塞に伴う呼吸困難などさまざまな合併症を生じることがある。今回われわれは,睡眠時無呼吸症候群患者に全身麻酔下で鼻内と咽頭・舌の複合手術を施行し,気管内チューブ抜管直後に上気道閉塞に伴った呼吸困難を生じ,再挿管にも難渋した結果,急性の陰圧性肺水腫を合併した症例を経験したので文献的考察と反省点を加えて報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

⑲口蓋扁桃摘出術(成人)

著者: 高巻京子 ,   李昊哲 ,   竹中洋

ページ範囲:P.771 - P.778

I はじめに

 1983年に米国で『診断群別定額支払方式』(DRG/PPS:diagnosis related groups/prospective payment system)が導入されたことをきっかけとして,カレン・ザンダー看護師が生産工程管理に使われていたクリニカルパス手法を医療の世界に導入し,クリニカルパスの運用が開始された1)

 米国でのクリニカルパス(以下,パスと略す)導入の目的は,出来高払いから定額払いに対応するために在院日数を短縮し,医療の質を保証し,業務を効率化することであった。日本におけるパスの目的には,これに加えインフォームド・コンセントを充実させることやチーム医療を推進することなども含まれている。また,定額払いの規制が米国に比べ緩やかであるため,急性期のみならず,亜急性期,慢性期医療をも包括し,独自の道を歩み始めつつある2)

 耳鼻咽喉科領域では口蓋扁桃摘出術の手術件数が多い。この手術は術後経過が比較的一定で,入院期間も短期間に限られるため,パスの良い適応である。そこで本稿では,当科における口蓋扁桃摘出術の医療者用パス(図1)と患者用パス(図2)に用いる用紙を呈示し,パス運用に伴う利点および欠点について若干の考察を加えた。

⑲口蓋扁桃摘出術(成人)

著者: 杉尾雄一郎 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.780 - P.786

I はじめに

 クリニカルパス(以下,パスと略す)は,一定の疾患をもつ患者に対する看護活動,検査,治療,栄養指導,薬剤管理,安静度および日常活動,入院中および退院後の生活指導などを経時的に表にまとめたもので,1985年頃に米国の看護師Zander1)によって考案され,看護の質の向上,患者の満足度の上昇,医療スタッフの教育,医療施設の経営改善などに効果を上げる臨床マネージメントツールとして,欧米の医療施設に急速に浸透した。

 本邦では1990年代半ばから導入する施設が増加し,現在では多くの施設でパスが使用されている。当科でも1998年からパスを導入2)し,医療の質の標準化,ケアの効率化,新人スタッフの教育,スタッフ間の協調に一定の効果を上げている。また2003年からは,従来の出来高による算定であった入院診療報酬が,DPC(diagnosis procedure combination:診断群分類構築)と呼ばれる疾患ごとの分類によって決められた係数と,医療機関別包括評価という施設別の係数を掛け合わせた定額支払い制に変更された。この方式によれば,在院日数が短いほど病院の収入は多くなる。その結果,必然的にパスも,在院日数の短縮や医療経済的効果も考慮したものに変貌している。このような状況下において,当科における口蓋扁桃摘出術のパスについて,導入当初のものと現在のものとを比較,検討した。

鏡下咡語

科学的に確立された治療法など

著者: 上村卓也

ページ範囲:P.767 - P.769

I.はじめに

 昨年,それまでに書きためていた文章を集めて,メディカル・コラム集『さわらびの握りこぶし』1)と題して出版した(西日本新聞社)。そこで,このなかの2編のテーマを選んで,ここに紹介した。

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あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.792 - P.792

 現在7月後半であとがき原稿を書いておりますが,先日,日耳鼻夏期講習会が台風接近のなか開催されました。残念なことに九州地方の多くの先生方は飛行機がキャンセルとなり出席できませんでした。私も講師の1人として参加いたしましたが,受講される先生方(すでに専門医も取得されているベテランの先生とまさに8月に専門医試験を受けられる先生)は皆とても真剣に聞いておられ,私だけでなく,他の講師の先生方も講演に熱が入っておりました。専門医試験も昨年からMCQが導入され,受験される先生方もその対応のための努力は大変なものと推察します。今後,新臨床研修制度で耳鼻咽喉科医の人数が極端に少ない年度も出てきますし,さらに新しい専門医受験資格の世代は2年のgeneralの研修後,耳鼻咽喉科研修4年(従来の耳鼻咽喉科研修より1年少ない)で受験することになるのでその結果も若干の相違が出るかもしれません。9月号が発刊される頃には合否も出ることでしょう。

 本誌のさまざまな企画は日常臨床の場で有用なだけでなく,きっと専門医試験の際にも参考になっていると考えます。他科の専門医試験の受験資格の多くは,自著論文の有無を明言しています。つまり何篇かの論文執筆を経験していなければ受験できないということです。耳鼻咽喉科も今後同様の流れになる可能性が大です。昨今,医師の大学離れが指摘されていますが,耳鼻咽喉科に限らず他科も大学に在籍しているとき,また指導医のいる関連病院にいるときが,最も論文の書きやすい環境です。特に若い先生は,症例報告・検討を論文にまとめる習慣をぜひ身につけてください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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