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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻12号

2007年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

MRI拡散強調像が有用であった真珠腫性中耳炎症例

著者: 宮下武憲 ,   印藤加奈子 ,   外山芳弘 ,   森望

ページ範囲:P.896 - P.898

I.はじめに

 真珠腫性中耳炎は上皮が骨を破壊しながら中耳で増殖していく疾患であり,多くの場合,手術を要する。診断には耳内所見と側頭骨CTが非常に有用であるが,滲出性中耳炎を合併すると病変の進展範囲および確定診断が困難である場合がある。今回,滲出性中耳炎に合併した骨病変の軽微な初期の真珠腫性中耳炎で,耳内所見および側頭骨CTでは真珠腫性中耳炎の確定診断および進展範囲の把握が困難であったが,MRI拡散強調像により,早期の確定診断が可能であった症例を経験したので報告する。

Current Article

全身免疫能操作による進行性感音難聴の予防と治療

著者: 岩井大

ページ範囲:P.899 - P.905

I はじめに

 急性難聴の予防や治療を目ざして,モデル動物を用いた幹細胞や神経栄養因子,遺伝子などの局所投与が多く検討されている。一方,加齢性進行性感音難聴(老人性難聴)が75歳以上の年長者の40%に認められ1),さらに人口高齢化による難聴人口の増加が見込まれるものの,この老人性難聴の予防法や治療法はいまだに確立されていない。

 老化に伴いヒト,動物ともに全身免疫機能障害(免疫老化)が生じ,感染症・自己免疫性疾患・癌などを引き起こしやすくなるが2,3),この加齢性障害は胸腺の萎縮に由来するTリンパ球機能の低下によるとされる4,5)。また,全身免疫機構は内耳免疫機構と密接に関係し,蝸牛細胞の維持にも関与するとされる5)

 筆者はこれまでに,『蝸牛異常に起因しない蝸牛疾患』の存在を提唱してきた。本稿では,骨髄-全身免疫機能操作による進行性難聴の予防や治療について述べる。

原著

急激に平衡障害の悪化をきたした肺小細胞癌の1例

著者: 前田恵理 ,   中原はるか ,   坂田阿希 ,   室伏利久

ページ範囲:P.907 - P.910

I.はじめに

 現在,画像診断においてmagnetic resonance imaging(MRI)の果たす役割は大きく,めまい・平衡障害の診断においても頭部MRIは重要な役割の一端を担っている。一方,MRIの技術進歩に伴い,目的とする病変に合わせた撮像条件の選択も必要となってきており,単純MRIのみで器質的病変の変化をどこまで検出できているのかについては不明な部分もある。

 今回われわれは,当初,単純MRI画像所見上,異常を認めなかったものの,急速な平衡障害の悪化をきたし,造影MRIにて多発性脳転移が発見された肺小細胞癌の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

早期診断で救命しえた破傷風の1症例

著者: 星野朝文 ,   柴崎修

ページ範囲:P.911 - P.913

I.はじめに

 破傷風(tetanus)は,破傷風菌(Clostridium tetani)によって産生される毒素の1つである神経毒素により,強直性痙攣を引き起こす感染症である。1968年より乳児への破傷風トキソイドの接種が開始され,その罹患数や死亡者数は激減しているものの,いまだに年間100人程度の発症がある1)。重篤な場合には死に至ることもあるため,破傷風はいまだに重要な疾患である。不幸な結果を招かないためには,早期の診断(疑いも含めて)とICUでの全身管理を含めた適切な治療が重要である2)。全身の強直性痙攣の前駆症状である開口障害,嚥下障害を呈した患者2)が耳鼻咽喉科を受診する可能性は高く,耳鼻咽喉科医にとって常に念頭に置かなければならない疾患である。今回,われわれは急速に進行した破傷風で,早期診断が救命につながったと思われる1症例を経験したので報告する。

頭頸部領域に転移した腎細胞癌の2例

著者: 縄手彩子 ,   川上美由紀 ,   佐伯忠彦 ,   谷口昌史 ,   寺下健洋

ページ範囲:P.915 - P.918

I.はじめに

 腎細胞癌は血行性の多発性転移をきたしやすく,頭頸部領域への転移性腫瘍としては最も頻度が高い癌である1~3)。また,この癌は一次治療後に長期間に遠隔転移を起こす可能性があることも特徴とされている1,2)。今回われわれは,これまでに報告のみられない翼口蓋窩に転移した腎細胞癌と反復する鼻出血のために手術を余儀なくされた上顎洞および顎下腺に転移した腎細胞癌の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺原発癌肉腫例

著者: 福田宏治 ,   山崎一春 ,   石島健 ,   佐藤宏昭 ,   上杉憲幸 ,   菅井有 ,   中村眞一 ,   柏克彦

ページ範囲:P.919 - P.923

I.はじめに

 癌肉腫(carcinosarcoma)は悪性の上皮成分と悪性の間葉成分からなる腫瘍で,全唾液腺腫瘍の0.04~0.16%,全悪性唾液腺腫瘍の0.4%と非常に稀な腫瘍である1)。組織学的には高悪性度の腫瘍に分類されており,その予後はきわめて不良である2)

 今回われわれは耳下腺に発生した癌肉腫を治療する機会を得たので,その臨床経過を述べるとともに若干の文献的考察を加えて報告する。

鼻腔に発生した血管筋脂肪腫の1例

著者: 上田大 ,   中井茂

ページ範囲:P.925 - P.929

I.はじめに

 血管筋脂肪腫は一種の過誤腫と考えられている。血管,平滑筋と脂肪組織が混在し,通常は被膜をもたない腫瘍であり,腎皮質に生じることが多い1)。今回われわれは鼻中隔を原発として鼻腔に発生した血管筋脂肪腫の治療を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

自覚症状なく長期間経過した成人鼻腔異物症例

著者: 物部寛子 ,   村田麻理 ,   戸島均

ページ範囲:P.931 - P.933

I.はじめに

 鼻腔異物はそのほとんどが10歳以下1)あるいは5歳以下2)の小児で問題となり,成人で問題となることは稀である。今回われわれは長期にわたって存在したと考えられる成人での鼻腔異物症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

喉頭気管分離術を行った誤嚥性肺炎11症例の検討

著者: 大淵豊明 ,   永谷群司 ,   塩盛輝夫 ,   村上知恵 ,   上田成久 ,   藤村武之 ,   寳地信介 ,   門川洋平 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.935 - P.938

I.はじめに

 保存的治療で改善しない難治性の誤嚥性肺炎に対してさまざまな誤嚥防止術が施行されている1)。誤嚥防止術は術後に発声機能を喪失するという欠点があるが,難治性の肺炎を防止し,家族の介助を軽減させ,経口摂取や在宅管理が可能となりうるなど,多くの利点も存在する1,2)。なかでも最近は形態上喉頭を温存し,理論的には発声機能の再獲得も可能な喉頭気管分離術を行う例が増加している2~4)

 今回われわれは喉頭気管分離術を行った難治性の誤嚥性肺炎患者11例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

㉑喉頭微細手術

著者: 馬場均 ,   久育男

ページ範囲:P.947 - P.954

I はじめに

 クリティカルパス(critical pathway)は,米国で製造業界の工程管理を効率化するために導入された概念であり,1980年代には医療にも導入された1)。医療においてはクリティカルという語を使用することに抵抗があるため,クリニカルパス(clinical pathway:以下,パスと略す)と呼ばれることが多い。

 米国では診断群別定額支払制度(diagnosis related group/prospective payment system:DRG/PPS)が1983年から導入されており,病院側のDRG/PPSへの対応策として有用であることからパスは急速に普及した。経営面の利点だけでなく,医療の標準化,在院日数の短縮,患者参加型医療の実践など医療の質を向上させるという観点からもパスは有用である2)

 わが国でも,1990年代半ばからパスが医療に導入され使用施設が増加している。

 当科では2001年にパスを導入し,現在,口蓋扁桃摘出術,鼻内副鼻腔手術,喉頭微細手術,頸部手術(耳下腺,顎下腺,囊胞性疾患,甲状腺葉峡切除術などに適用)の4種類のパスを運用中である。現在のパスは,2003年の特定機能病院への診断群分類構築(diagnosis procedure combination:DPC)導入以前に作成したものであるが,パス自体が一度作成すればそれで完成するというものではなく,順次改訂することを前提としたものであり,現在検討中の改善点を含めて紹介する。

㉑喉頭微細手術

著者: 齋藤康一郎 ,   長西秀樹 ,   小川郁

ページ範囲:P.955 - P.961

I はじめに

 喉頭微細手術(LMS)は耳鼻咽喉科領域で全身麻酔を要する疾患のなかで,侵襲・バリアンスが少なく,クリニカルパス(以下,パスと略す)の良い対象といわれている1)。当科でも1997年2月よりパスの使用を開始して適宜改訂が行われた2~4)。導入当初に期待し,また得られたメリットは,記録の短縮・明確化,多方面の医療スタッフの円滑なコミュニケーション,医療スタッフと患者の情報の共有ならびにインフォームド・コンセントにつながるツールとしての利用,新人医師・看護師のオリエンテーションツールとしての有用性,といったことであった3,4)。2003年度より入院医療の包括評価(diagnosis procedure combination:DPC)の導入が始まったことで,各病院において在院日数の見直しなどが行われたが,当科でのLMS施行時の原則入院期間は3~5日間と短く,DPC導入を契機にしたパスの改変は特に行っていない2)。LMSは当科では年間200例程度が施行される症例数の多い手術である。手術日は月曜日と木曜日で,原則として月曜日の手術症例は,土曜日に入院(各月第三週は金曜日入院)で火曜日に退院,木曜日の手術症例は水曜日に入院で金曜日に退院としている。後述するように,パスは外来発生とし,入院日数は3~7日間に対応できるようにしている。

鏡下咡語

ドイツ医学でよかったのか

著者: 綿貫幸三

ページ範囲:P.943 - P.945

 黒船来航による目覚めから,日本は明治維新の革命的近代化に乗り出した。まず西欧による植民地化を避けるため急速な富国強兵が必要であった。そのために採用した重要な柱の1つがプロイセン(ドイツ)の徴兵制である。その軍隊の健康管理に西洋医学は必要だった。

 日本の近代医学は西欧からやってきた。かつて,ポルトガルは南蛮医学をもたらし,次いで,オランダから紅毛医学が伝わった,そのお陰で前野良沢,杉田玄白らによる解体新書の翻訳出版も可能だったのである。ちなみに,解体新書の原本『ターフル アナトミア』はドイツの解剖書,ヨハン クルムス著,1734年のオランダ語訳であった。これは後のドイツ医学との関係を予感させるものであった。江戸時代末期にはシーボルトの来日がある。彼はオランダ商館医だったが,ビルツブルグ大学出身のドイツ人だったのでまたまたドイツ医学とは奇しくも縁があることになる。

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あとがき

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.968 - P.968

 学部学生にとって病院実習はどのように位置づけられているのでしょうか? この命題はある種謎めいています。その理由として実は教員であるわれわれが既に答えを予想しているからでもあります。いわば『自明の理』の部分もあるわけです。各校によって違いがあるでしょうが,私が勤務している大学では5回生の春にオリエンテーションがあります。CBT(共用試験)とOSCEの試験は当然済んでいますので,病院についてはよくわからないにしても実習については理解しているはずです。

 全体のオリエンテーション後1週間を経て病院実習が始まります。耳鼻咽喉科のクリニカルクラークシップは,月曜日の朝8時半から教授室での面談でスタートします。その際の私の最初の質問は『君たちにとって病院実習とは何ですか?』です。大抵の学生が質問の意味を理解していません。「なぜ,医学部の学生には病棟実習が必修なの?」とか少し切り口を変えてやると,「将来,医師になるために診療科を見ておくためです。」とか「本や講義で勉強したことを確認するためです。」等々答えてきます。どれも間違ってはいないのですが,そもそもが違っているのではないでしょうか?

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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