文献詳細
文献概要
シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際
⑬内視鏡下鼻副鼻腔手術
著者: 松脇由典1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.255 - P.265
文献購入ページに移動Ⅰ はじめに
1.DPCについて
急性期入院医療にかかる[診断群分類](diagnosis procedure combination:DPC)点数表は,これまでの出来高払いによる点数表に代わって包括払いを導入・普及する目的でつくられた。DPC点数表を採用する病院では,対象となる患者についてはこの包括点数を算定したうえで,さらに包括外とされる部分の出来高点数を加算して請求する。DPCの大きな特徴は,包括評価であることおよび入院期間に応じた報酬が特に入院の初期に重点的に評価されているため,必要な医療をできるだけ効率的に提供し,漫然とした長期入院をなくすことが求められ,クリニカルパス(以下,パスと略す)の重要性が大きい。パスの工夫と活用により,適切な医療の提供のための必要なコスト管理と分析が可能になると考えられている1)。
慢性副鼻腔炎(手術あり)で入院した場合,DPCでは在院日数に応じて包括点数を請求される。すなわち特定入院期間Ⅰ未満(1日当たり2,522点)は最初の4日間,特定入院期間Ⅱ未満(1日当たり1,930点)は5~9日目,特定入院期間Ⅱ以上(1日当たり1,641点)は10~13日目,入院14日目以降は出来高払いとなる。またこれ以外に出来高として算定できる項目として,(1)手術料(手術時使用した医療材料・薬剤料を含む),(2)病理診断料,病理学的検査判断料,(3)内視鏡検査,(4)画像診断(画像診断管理加算1・2)などが挙げられる。しかし算定できるからといって手術直後(入院中)に全例CTやMRIなどの画像検査が必要とは考えにくく,検査の施行に当たっては医師の裁量が求められる。
2.クリニカルパス(clinical pathway)について
パスは入院中に行う患者指導,検査,手術,与薬,処置,食事などについて,各項目ごとに作業工程を時系列に一覧表示し,進行管理を行うことを一般的に指す。作成したスケジュール表自体を,わが国ではパスと呼ぶことも多い2)。
臨床業務におけるパスの導入は,(1)医療の標準化,(2)インフォームド・コンセントの向上,(3)平均在院日数の短縮,(4)医療コストの削減,(5)ケアスタンダードの明確化,(6)職種間のコミュニケーション強化(チーム医療の向上)などを,目指したものである3~5)。パスを作成すると,それ以前の慣例的に行われてきた医療行為が見直し・改良される。また医療に携わるスタッフが情報を共有し,ミスを予防する意味もある。その結果,より適切な医療が患者へ提供されるようになる。またパスを作成するに当たっては,その病院の地域的特徴,設備(医療機器)の充実度,医師数,症例数なども考慮して作成されるが,DPC対応病院ではやはりDPCに対応したパスの作成が必須となる。本稿では,DPCに対応した内視鏡下鼻副鼻腔手術(鼻中隔矯正手術を含む)のパスについて,当院で実際に使用しているパスを紹介する。ちなみに当病院では内視鏡下鼻副鼻腔手術は年間400~500例施行し,全身麻酔と局所麻酔の割合は約5:1である。両側施行例(鼻中隔矯正手術を含む)で入院は手術日前日を基本とし,平均在院日数は9.4日〔平成17(2005)年度〕である。
1.DPCについて
急性期入院医療にかかる[診断群分類](diagnosis procedure combination:DPC)点数表は,これまでの出来高払いによる点数表に代わって包括払いを導入・普及する目的でつくられた。DPC点数表を採用する病院では,対象となる患者についてはこの包括点数を算定したうえで,さらに包括外とされる部分の出来高点数を加算して請求する。DPCの大きな特徴は,包括評価であることおよび入院期間に応じた報酬が特に入院の初期に重点的に評価されているため,必要な医療をできるだけ効率的に提供し,漫然とした長期入院をなくすことが求められ,クリニカルパス(以下,パスと略す)の重要性が大きい。パスの工夫と活用により,適切な医療の提供のための必要なコスト管理と分析が可能になると考えられている1)。
慢性副鼻腔炎(手術あり)で入院した場合,DPCでは在院日数に応じて包括点数を請求される。すなわち特定入院期間Ⅰ未満(1日当たり2,522点)は最初の4日間,特定入院期間Ⅱ未満(1日当たり1,930点)は5~9日目,特定入院期間Ⅱ以上(1日当たり1,641点)は10~13日目,入院14日目以降は出来高払いとなる。またこれ以外に出来高として算定できる項目として,(1)手術料(手術時使用した医療材料・薬剤料を含む),(2)病理診断料,病理学的検査判断料,(3)内視鏡検査,(4)画像診断(画像診断管理加算1・2)などが挙げられる。しかし算定できるからといって手術直後(入院中)に全例CTやMRIなどの画像検査が必要とは考えにくく,検査の施行に当たっては医師の裁量が求められる。
2.クリニカルパス(clinical pathway)について
パスは入院中に行う患者指導,検査,手術,与薬,処置,食事などについて,各項目ごとに作業工程を時系列に一覧表示し,進行管理を行うことを一般的に指す。作成したスケジュール表自体を,わが国ではパスと呼ぶことも多い2)。
臨床業務におけるパスの導入は,(1)医療の標準化,(2)インフォームド・コンセントの向上,(3)平均在院日数の短縮,(4)医療コストの削減,(5)ケアスタンダードの明確化,(6)職種間のコミュニケーション強化(チーム医療の向上)などを,目指したものである3~5)。パスを作成すると,それ以前の慣例的に行われてきた医療行為が見直し・改良される。また医療に携わるスタッフが情報を共有し,ミスを予防する意味もある。その結果,より適切な医療が患者へ提供されるようになる。またパスを作成するに当たっては,その病院の地域的特徴,設備(医療機器)の充実度,医師数,症例数なども考慮して作成されるが,DPC対応病院ではやはりDPCに対応したパスの作成が必須となる。本稿では,DPCに対応した内視鏡下鼻副鼻腔手術(鼻中隔矯正手術を含む)のパスについて,当院で実際に使用しているパスを紹介する。ちなみに当病院では内視鏡下鼻副鼻腔手術は年間400~500例施行し,全身麻酔と局所麻酔の割合は約5:1である。両側施行例(鼻中隔矯正手術を含む)で入院は手術日前日を基本とし,平均在院日数は9.4日〔平成17(2005)年度〕である。
参考文献
1)三菱ウエルファーマ株式会社営業本部営業推進部:DPCはやわかりマニュアル.三菱ウエルファーマ株式会社営業本部(編).三菱ウエルファーマ株式会社,大阪,2006,pp1-31
2)加我君考:耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術とクリニカルパス.JOHNS 20:1041,2004
3)龍田眞行・他:クリニカルパスの実際―われわれはこうしている―幽門部胃切除術のクリニカルパス.外科治療 85:278-288,2001
4)木所昭夫・他:クリニカルパスの実際―われわれはこうしている―乳がん手術.外科治療 85:303-312,2001
5)鴻 信義:耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術とクリニカルパス,眼窩壁骨折整復術.JOHNS 20:1091-1094,2004
6)高橋勇二・他:DPC対応型クリニカルパスの作成.医療マネジメント会誌 6:638-641,2006
7)池田俊也:DPCとクリニカルパス―DPCに対する医療機関の対応.医療マネジメント会誌 6:599-603,2006
8)今田光一:電子カルテのクリニカルパス―実例から見た利点・問題点.医療マネジメント会誌 6:594-598,2006
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