icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻4号

2007年04月発行

特集 耳鼻咽喉科領域の真菌感染の治療

3.鼻副鼻腔真菌症の臨床

著者: 川内秀之1

所属機関: 1島根大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.311 - P.316

文献概要

Ⅰ.成因

 真菌が鼻副鼻腔に侵入して定着・増殖することによって真菌感染を引き起こすが,菌体側の病原性が強いことと同時に,宿主の感染抵抗性が減弱していることが発症の要因と考えられている。真菌の菌種としてはAspergillusが最も多く,次いでMucor,Candidaといわれている。AspergillusCandidaによる副鼻腔真菌症は健常者に発生することが多い。Aspergillusは嫌気状態で病原性を発揮することから,副鼻腔の酸素濃度の低下が原因となることが示唆されている1)。一方で,Mucorによる真菌症は糖尿病に合併して発生する場合が多い。本症の原因として知られているクモノスカビは糖を多く有しており,酸性条件下で存在しやすいことと,ケトアシドーシスにより宿主側の食細胞の機能が低下していることが関係していると考えられている。また,抗菌薬,副腎皮質ステロイド薬の長期連用は,真菌症の誘因となることが示唆されている。

参考文献

1)市村恵一:副鼻腔炎の病態.真菌を中心に.耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK 1.副鼻腔炎.大山 勝(編).金原出版,東京,1986,pp69-74
2)Hora JF:Primary aspergillosis of the paranasal sinuses and associated area. Laryngoscope 75:768-773, 1965
3)Bent JP, et al:Diagnosis of allergic fungal sinusitis. Otolaryngol Head Neck Surg 111:580-588, 1994
4)Millar JW, et al:Allergic aspergillosis of the maxillary sinuses. Thorax 36:710, 1981
5)Smith HW, et al:Cerebral mucormycosis. Arch Otolaryngol 68:715-726, 1958
6)Kawauchi H, et al:Updated diagnosis and treatment strategy of invasive aspergillosis in paranasal sinus-our experience of 6 cases. 日本耳鼻咽喉科感染症研究会会誌 24:125-128,2006
7)石光亮太郎,川内秀之・他:上顎洞破壊型アスペルギルス症例.耳鼻臨床 91:915-918,1998
8)北 秀明:鼻副鼻腔真菌症の臨床的検討.耳鼻臨床 92:151-155,1999
9)中村英生:副鼻腔真菌症に対するESS.JOHNS 16:87-90,2000
10)Malani PN, et al:Prevention and prophylaxis of invasive fungal sinusitis in the immunocompromised patient. Otolaryngol Clin North Am 33:301-312, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら