文献詳細
特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に
総論
2.リハビリテーション科からみた耳鼻咽喉科疾患『何が対象となるのか』
著者: 山口淳1 田中一成1
所属機関: 1大阪医科大学リハビリテーション科
ページ範囲:P.17 - P.24
文献概要
種々の疾患によって生じるさまざまな機能障害は,多くの場合,原疾患を治療することで軽減あるいは消失する。しかし,原疾患が難治性・進行性であったり,完治しても重度の障害が残存したり,さらに治療の過程で新たな障害が生じることも少なくない。
治療を主体とした従来の医療において限界と考えられていたこれらの『障害』も,QOL(quality of life:人生の質,生活の質)を重視する現代の医療では避けては通れない課題であり,これに対応すべき医学体系として,保健医学,予防医学,治療医学に並ぶ『第4の医学』と呼ばれるリハビリテーション医学が注目されるようになった。
20世紀の医療では『治療』と『延命』が主役であったが,21世紀では『再生』と『更生(=リハビリテーション)』が重視されるといわれている。すなわち,さまざまな機能障害に対して,多職種からなるチーム医療であるリハビリテーション医療を実践することによって障害を最小限にくい止め,最大限のQOLを達成することが求められるようになった。
これまでもリハビリテーションの必要性や重要性は叫ばれてきたが,いまだ多くの診療科において,疾患の診断と治療が優先され,障害は軽視され,全人的復権を目指すリハビリテーションの視点での取り組みは後回しになっていた感は否めない。
近年,QOL概念の普及とリハビリテーション医学の進歩に伴い,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域においても,対象疾患の治療成績のさらなる向上とともに,原疾患やその治療過程によって生じるさまざまな障害に対する本格的な取り組みが始められている。
本稿では,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域において,何がリハビリテーションの対象となるのか,リハビリテーションをどう考え,どう取り組めばよいのか,を総論的な切り口で述べることにする。
参考文献
掲載誌情報