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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻5号

2007年04月発行

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に

各論

1.聴力とめまい 1)人工内耳―成人

著者: 篠森裕介1 高橋信雄2 暁清文1

所属機関: 1愛媛大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2愛媛大学教育学部聴覚言語障害研究室

ページ範囲:P.59 - P.65

文献概要

Ⅰ はじめに

 一般の難聴患者には,人工内耳医療=人工内耳埋め込み手術と捉えられがちである。しかし,手術後直ちに音声の聴取が可能になるわけではなく,術後のリハビリテーションが不可欠であることはいうまでもない。成人の人工内耳によるリハビリテーションとは,広義には術前の聴取能評価やカウンセリングから術後の聴能訓練と評価,その後の社会参加まで含む手術前後の一連の機能回復への取り組みのことを指すと考えられる。一方,狭義のリハビリテーションとは術後のマッピング調整や聴能訓練のことであろう。これらを主に担うのは耳鼻咽喉科医と言語聴覚士であるが,多くの施設では言語聴覚士が主要な役割を果たしている。言語聴覚士がリハビリテーションを担当する施設においては,耳鼻咽喉科医はマッピングや訓練の具体的なスキルまでは熟知していないことが多い。しかしさまざまな患者の術後成績を評価し,以後の人工内耳医療にフィードバックさせていくためには,医師側にもリハビリテーションの目標,訓練方法,評価方法の基本的な部分については理解しておくことが求められる。

 リハビリテーションの方法は,個々の患者の年齢,失聴時期・期間,挿入電極の状態,使用環境などのさまざまな要因によって千差万別である。当科における治療成績でも,音入れ後,短期間で電話による会話が可能となるような症例から,長期のリハビリテーションを経ても日常会話の聴取が困難な症例まで個人差が大きい。また,本人のリハビリテーションへの意欲やそれをサポートする家庭環境など,医学的知識のみでは対応できない問題への配慮も要する。したがって個々に対応した適切なリハビリテーションを行うためには聴覚のみに偏ったマニュアル的なマッピング・訓練の方法論だけでなく経験やコツを要することが多い。

 当科では,愛媛大学教育学部聴覚言語障害研究室と共同で人工内耳医療に取り組んでおり,特に広義のリハビリテーションという枠組みで人工内耳装用者とかかわるように努めている。同研究科と当科において経験した人工内耳術後例を紹介し,リハビリテーションの実際について解説する。

参考文献

1)濱田豊彦:中途失聴者・難聴者と高齢難聴者へのコミュニケーション支援.聴覚障害,日本聴能言語士協会講習会実行委員会(編).協同医書出版社,東京,2002,pp271-285
2)上田敏・他:生き生きとした生活機能の向上を目指して.「高齢者のリハビリテーションのあるべき方向」普及啓発委員会(編).平成15年度厚生労働省老人保健推進費等補助金報告書,東京,2004
3)Tye-Murray N:Foundations of Aural Rehabilitation. Thomson, New York, 2006, pp35-150

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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