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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻5号

2007年04月発行

文献概要

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に 各論

2.音声言語ならびに嚥下 3)嗄声

著者: 牟田弘1 望月隆一2

所属機関: 1牟田耳鼻咽喉科医院・大阪回生病院大阪ボイスセンター 2大阪回生病院耳鼻咽喉科・大阪回生病院大阪ボイスセンター

ページ範囲:P.149 - P.152

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Ⅰ はじめに

 斉藤成司1)のmicrolaryngoscopyの開発により,それまでは音声外科の適応とはされていなかった歌手の小さな声帯結節などが,安全確実に外科的に治癒させることができるようになった。古くから,言語聴覚士や声楽の教師からの保存的な音声治療でしか治療方法がなかったとされていたsinger's nodeやteacher's nodeなどの器質的疾患が,音声外科の禁忌疾患ではなくなっただけでなく,内転型痙攣性発声障害や声帯溝症に加えて,声帯膜様部の萎縮をともなった難治性の喉頭肉芽腫や男性化音声などの,従来では外科的治療で完治させることが困難とされていた疾患にまで,microlaryngoscopyの発展により,内視鏡下での甲状披裂筋切除術2)や,声帯粘膜固有層浅層に生じた粘膜上皮と声帯靭帯の癒着病変の剝離術や,声帯内自家脂肪注入術3)などが安全確実に行うことができるようになり,音声外科的治療法の適応症例がますます増加してきている。

 しかしながら,音声外科の適応症例が増加していく反面,それらの音声外科症例に対しては,音声外科医からの指導による単純な沈黙療法ぐらいしか行われてこなかった。それに対して,1997年の言語聴覚士法により,長年の念願であった言語聴覚士が国家資格として制定されたため,そのなかでも,特に音声障害に対する音声治療をsub-specialtyとする言語聴覚士と音声外科医とのチーム医療に積極的に参加することが求められるようになった。

 筆者が2004年まで,国立大阪病院にて年間200例弱のmicrolaryngoscopyを行っていた際には,同施設に言語聴覚士が在籍していなかったこともあり,術前・術後には,ほとんど音声治療を施行することが不可能であった。2004年4月に大阪回生病院の大阪ボイスセンターが設立され,筆者も,開業しての日常臨床のかたわら,大阪ボイスセンターのセンター長として非常勤でお手伝いをするようになった後は,3名の音声障害に対する音声治療を得意とする言語聴覚士と音声外科医とのチーム医療が容易になった。現在は,年間100例以上のmicrolaryngoscopyの手術を行っているが,その約1/3の症例に対して,チームを組んだ言語聴覚士からの音声治療を行うようになり,その割合は年々増加してきている。また,過緊張性発声障害や痙攣性発声障害などの音声外科の適応の決定が困難な症例に対しても,音声外科の手術前に,経験を積んだ言語聴覚士からの音声治療を綿密に行うことにより,手術適応や術式の決定に関しても,音声外科医とともに言語聴覚士とがチームを組むことにより,両者が同じ意見に賛同した最適な治療計画に基づいて音声障害に取り組むことが当たり前になってきている。

 極論を許されるとすれば,器質的疾患であれ,機能性疾患であれ,音声障害に対する臨床を行うには,経験を積んだ音声外科医と言語聴覚士との綿密なチーム医療が必須であり,加えて,容易に麻酔科・歯科・呼吸器科・消化器科・精神科・臨床病理などとも,常に密接なチーム医療を行うことが可能な『ボイスセンター』でなければ,最良の音声障害の臨床を行うことは不可能であると断言してもよいと考えている。

参考文献

1)斉藤成司:音声外科―発声機構の基礎的研究および喉頭内腔への臨床的アプローチ.耳鼻臨 23:171-184,1977
2)小野淳二,牟田 弘,望月隆一・他:痙攣性発声障害に対する新しい外科的治療法.喉頭 10:17-21, 1998
3)望月隆一,牟田 弘・他:難治性喉頭肉芽腫に対する声帯内自家脂肪注入術の治療成績.日気食会報 58:30-37,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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